昭和90年代のストリップ劇場は、2000年代アニソンかかりまくり。

坪庭 芝特訓

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第三回公演

26、花魁ネタは被りやすいし足グキってなりやすいから気ぃつけなはれや

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 流れてきた音楽に、少々下がっていた二人のテンションと視線が、おっ、と上向きになる。
 三味線の小粋な音と、ファンキーで景気のいい管楽器音。
 和と洋と所々の電子音と。
 そこに若手女性声優達のなやましい歌声が心地よく、淫靡に絡み合う。
 韻を踏んだ、終始一貫しての古語の言葉遊び歌詞。
 ある種深夜系アニソンのお手本のような曲だ。
 流れてきたのは、アニメ 天涯上等チリヌルヲ エンディングテーマ『はないちもんすたーぺありんぐ』だった。

 二人目の一曲目にアニソン。
 予習もなくこれなら幸先はいい方だ。
 ピンクとパープルのライトが付くと、中央舞台には両肩を艶めかしく出したミニ丈着物の踊り子さんが立て膝で坐していた。
 手には二つの小さなサイコロと、丁半用の小さな壺。どうやら女賭博師を演じているようだ。
 頭にかんざし風に差した小ぶりの風車が可愛い。
 流れるような動きで壺にサイコロを放り、舞台の上に押し当てる。
 さあさあ張った張った、丁か半か丁か半か。

 踊り子さんの煽る動きに舞台周りの老人客が、気分だけで丁だの半だの言ってみせる。ストリップはグレーゾーンな性風俗だが、博打はもっとご法度だが。
 衣装は生足、格好は立て膝で、着物の奥が見えそうで見えない。
 踊り子さんが動くたびに、舞台周りの客がどうにか秘めた部分を見ようと頭を動かす。あと数分もすれば好きなだけ見れるというのに。
 左目にだけカラコンを入れているのか、客席に視線を向けるたび客はその非現実的な瞳に吸いこまれそうになり、ステージに引き込まれていく。
 どちらさんもよござんすかと踊り子さんが賭客に視線を巡らせ、伏せた壺に手をかける。と、おっとその前に、といった体で壺から手を離し、着物の袂に手を入れた。

 出てきたのは表面を綺麗に彩った蛤。
 中のものを小指ですくい、唇に当て横に引くと、すっと紅が引かれた。
 古風な演出に若者ニ人がほう、とため息をつく。
 鉄火場のお姐さんと萌え系のアニソンがマッチし、不思議な多幸感が生まれてくる。
 踊り子さんはそのまま舞台上で胡座をかき、盃で大酒を飲む仕草をしてみる。次は足を揃えて座り、楚々とした仕草で旦那にお酌をする。くるくると、色んな女の面を見せる。
 立ち上がって壺の上に足袋を履いた足を置き、缶蹴りの鬼のポーズをとる。
 手でひさしを作り、遠くを、近くを見やる。
 探しているのは今宵のカモか、恋の相手か。
 そんな小芝居を見せていたが、サビからは一転して踊りだした。

 アイドルステップ、モンキーダンス、ディスコステップ、盆踊りステップ。
 敢えてといった体で様々なチープダンスを繰り出してくる。
 編集してあるのか、曲は一番のサビから二番のサビに繋がっていった。
 ひと踊りして見せると間奏で着物をなまめかしく脱いでいく。
 サラシを巻いた胸が露わになり、結った髪もほどく。
 足袋は幼子が脱ぎ着するように、つま先を引っ張って脱ぐ。
 最後に壺の中を客に見せると、壺の中にサイコロなんてものはなく、踊り子さんがぺろりと舌を出してみせる。
 そして着物を粋に肩に引っかけ、軽やかに袖に戻った。

「今のどうやったの?」
「さあ、やりようなんかいくらでもあるでしょ」

 情婦が手品のトリックを聞こうとするが、旦那は面倒くさいので教えてあげない。
 曲が変わって場内に雅楽が流れてきた。
 やや時間をかけて着替えをすませると、今度は花魁風の無駄に豪奢な着物で出てきた。
 真っ赤な傘を差し、煙管を咥え、高下駄でしゃなりしゃなりとたった一人の花魁道中をご覧いただく。
 お付きなんぞいなくても一人で歩けますえ、とでも言うように。

 柄は豪奢だが、よく見ると着物の生地がプリント素材でどうにも安っぽい。
 コスプレ用衣装か何かだろうか。
 髪もきちんと結わず、キャバ嬢風にアップでまとめ、簪やコサージュを付けて盛っている。
 たっぷりと時間をかけた、派手だけど少しもの寂しい太夫の花魁道中だった。
 優雅に袖へと戻ると、今度は大奥を題材とした映画のサントラが流れてきた。
 ベッド着は大奥の側室が着るような、白い長襦袢だった。


「なんか一番最初のは曲だけで選んだって感じだったね」

 ショーが終わり、場内が明るくなると嵐士がそう言う。
 作品を理解して、というよりはそのように見えた。
 もしもアニメが好きなら続くステージにももう一曲くらい使いそうなものだ。
 あるいは今のような、好きな音楽を掛けていい撮影ショーのBGMなどに。
 
「たまたま深夜アニメ見て流れてるの聞いて、いいなって思ったとか?」

 詩帆がペットボトルの水を飲みながら言う。
 日常的にアニソンに触れている二人には分からないが、一般人に対してもそれほど聞き流せない求心力のようなものがアニソンにはあるのかもしれない。
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