86 / 139
第三回公演
26、花魁ネタは被りやすいし足グキってなりやすいから気ぃつけなはれや
しおりを挟む
流れてきた音楽に、少々下がっていた二人のテンションと視線が、おっ、と上向きになる。
三味線の小粋な音と、ファンキーで景気のいい管楽器音。
和と洋と所々の電子音と。
そこに若手女性声優達のなやましい歌声が心地よく、淫靡に絡み合う。
韻を踏んだ、終始一貫しての古語の言葉遊び歌詞。
ある種深夜系アニソンのお手本のような曲だ。
流れてきたのは、アニメ 天涯上等チリヌルヲ エンディングテーマ『はないちもんすたーぺありんぐ』だった。
二人目の一曲目にアニソン。
予習もなくこれなら幸先はいい方だ。
ピンクとパープルのライトが付くと、中央舞台には両肩を艶めかしく出したミニ丈着物の踊り子さんが立て膝で坐していた。
手には二つの小さなサイコロと、丁半用の小さな壺。どうやら女賭博師を演じているようだ。
頭にかんざし風に差した小ぶりの風車が可愛い。
流れるような動きで壺にサイコロを放り、舞台の上に押し当てる。
さあさあ張った張った、丁か半か丁か半か。
踊り子さんの煽る動きに舞台周りの老人客が、気分だけで丁だの半だの言ってみせる。ストリップはグレーゾーンな性風俗だが、博打はもっとご法度だが。
衣装は生足、格好は立て膝で、着物の奥が見えそうで見えない。
踊り子さんが動くたびに、舞台周りの客がどうにか秘めた部分を見ようと頭を動かす。あと数分もすれば好きなだけ見れるというのに。
左目にだけカラコンを入れているのか、客席に視線を向けるたび客はその非現実的な瞳に吸いこまれそうになり、ステージに引き込まれていく。
どちらさんもよござんすかと踊り子さんが賭客に視線を巡らせ、伏せた壺に手をかける。と、おっとその前に、といった体で壺から手を離し、着物の袂に手を入れた。
出てきたのは表面を綺麗に彩った蛤。
中のものを小指ですくい、唇に当て横に引くと、すっと紅が引かれた。
古風な演出に若者ニ人がほう、とため息をつく。
鉄火場のお姐さんと萌え系のアニソンがマッチし、不思議な多幸感が生まれてくる。
踊り子さんはそのまま舞台上で胡座をかき、盃で大酒を飲む仕草をしてみる。次は足を揃えて座り、楚々とした仕草で旦那にお酌をする。くるくると、色んな女の面を見せる。
立ち上がって壺の上に足袋を履いた足を置き、缶蹴りの鬼のポーズをとる。
手でひさしを作り、遠くを、近くを見やる。
探しているのは今宵のカモか、恋の相手か。
そんな小芝居を見せていたが、サビからは一転して踊りだした。
アイドルステップ、モンキーダンス、ディスコステップ、盆踊りステップ。
敢えてといった体で様々なチープダンスを繰り出してくる。
編集してあるのか、曲は一番のサビから二番のサビに繋がっていった。
ひと踊りして見せると間奏で着物をなまめかしく脱いでいく。
サラシを巻いた胸が露わになり、結った髪もほどく。
足袋は幼子が脱ぎ着するように、つま先を引っ張って脱ぐ。
最後に壺の中を客に見せると、壺の中にサイコロなんてものはなく、踊り子さんがぺろりと舌を出してみせる。
そして着物を粋に肩に引っかけ、軽やかに袖に戻った。
「今のどうやったの?」
「さあ、やりようなんかいくらでもあるでしょ」
情婦が手品のトリックを聞こうとするが、旦那は面倒くさいので教えてあげない。
曲が変わって場内に雅楽が流れてきた。
やや時間をかけて着替えをすませると、今度は花魁風の無駄に豪奢な着物で出てきた。
真っ赤な傘を差し、煙管を咥え、高下駄でしゃなりしゃなりとたった一人の花魁道中をご覧いただく。
お付きなんぞいなくても一人で歩けますえ、とでも言うように。
柄は豪奢だが、よく見ると着物の生地がプリント素材でどうにも安っぽい。
コスプレ用衣装か何かだろうか。
髪もきちんと結わず、キャバ嬢風にアップでまとめ、簪やコサージュを付けて盛っている。
たっぷりと時間をかけた、派手だけど少しもの寂しい太夫の花魁道中だった。
優雅に袖へと戻ると、今度は大奥を題材とした映画のサントラが流れてきた。
ベッド着は大奥の側室が着るような、白い長襦袢だった。
「なんか一番最初のは曲だけで選んだって感じだったね」
ショーが終わり、場内が明るくなると嵐士がそう言う。
作品を理解して、というよりはそのように見えた。
もしもアニメが好きなら続くステージにももう一曲くらい使いそうなものだ。
あるいは今のような、好きな音楽を掛けていい撮影ショーのBGMなどに。
「たまたま深夜アニメ見て流れてるの聞いて、いいなって思ったとか?」
詩帆がペットボトルの水を飲みながら言う。
日常的にアニソンに触れている二人には分からないが、一般人に対してもそれほど聞き流せない求心力のようなものがアニソンにはあるのかもしれない。
三味線の小粋な音と、ファンキーで景気のいい管楽器音。
和と洋と所々の電子音と。
そこに若手女性声優達のなやましい歌声が心地よく、淫靡に絡み合う。
韻を踏んだ、終始一貫しての古語の言葉遊び歌詞。
ある種深夜系アニソンのお手本のような曲だ。
流れてきたのは、アニメ 天涯上等チリヌルヲ エンディングテーマ『はないちもんすたーぺありんぐ』だった。
二人目の一曲目にアニソン。
予習もなくこれなら幸先はいい方だ。
ピンクとパープルのライトが付くと、中央舞台には両肩を艶めかしく出したミニ丈着物の踊り子さんが立て膝で坐していた。
手には二つの小さなサイコロと、丁半用の小さな壺。どうやら女賭博師を演じているようだ。
頭にかんざし風に差した小ぶりの風車が可愛い。
流れるような動きで壺にサイコロを放り、舞台の上に押し当てる。
さあさあ張った張った、丁か半か丁か半か。
踊り子さんの煽る動きに舞台周りの老人客が、気分だけで丁だの半だの言ってみせる。ストリップはグレーゾーンな性風俗だが、博打はもっとご法度だが。
衣装は生足、格好は立て膝で、着物の奥が見えそうで見えない。
踊り子さんが動くたびに、舞台周りの客がどうにか秘めた部分を見ようと頭を動かす。あと数分もすれば好きなだけ見れるというのに。
左目にだけカラコンを入れているのか、客席に視線を向けるたび客はその非現実的な瞳に吸いこまれそうになり、ステージに引き込まれていく。
どちらさんもよござんすかと踊り子さんが賭客に視線を巡らせ、伏せた壺に手をかける。と、おっとその前に、といった体で壺から手を離し、着物の袂に手を入れた。
出てきたのは表面を綺麗に彩った蛤。
中のものを小指ですくい、唇に当て横に引くと、すっと紅が引かれた。
古風な演出に若者ニ人がほう、とため息をつく。
鉄火場のお姐さんと萌え系のアニソンがマッチし、不思議な多幸感が生まれてくる。
踊り子さんはそのまま舞台上で胡座をかき、盃で大酒を飲む仕草をしてみる。次は足を揃えて座り、楚々とした仕草で旦那にお酌をする。くるくると、色んな女の面を見せる。
立ち上がって壺の上に足袋を履いた足を置き、缶蹴りの鬼のポーズをとる。
手でひさしを作り、遠くを、近くを見やる。
探しているのは今宵のカモか、恋の相手か。
そんな小芝居を見せていたが、サビからは一転して踊りだした。
アイドルステップ、モンキーダンス、ディスコステップ、盆踊りステップ。
敢えてといった体で様々なチープダンスを繰り出してくる。
編集してあるのか、曲は一番のサビから二番のサビに繋がっていった。
ひと踊りして見せると間奏で着物をなまめかしく脱いでいく。
サラシを巻いた胸が露わになり、結った髪もほどく。
足袋は幼子が脱ぎ着するように、つま先を引っ張って脱ぐ。
最後に壺の中を客に見せると、壺の中にサイコロなんてものはなく、踊り子さんがぺろりと舌を出してみせる。
そして着物を粋に肩に引っかけ、軽やかに袖に戻った。
「今のどうやったの?」
「さあ、やりようなんかいくらでもあるでしょ」
情婦が手品のトリックを聞こうとするが、旦那は面倒くさいので教えてあげない。
曲が変わって場内に雅楽が流れてきた。
やや時間をかけて着替えをすませると、今度は花魁風の無駄に豪奢な着物で出てきた。
真っ赤な傘を差し、煙管を咥え、高下駄でしゃなりしゃなりとたった一人の花魁道中をご覧いただく。
お付きなんぞいなくても一人で歩けますえ、とでも言うように。
柄は豪奢だが、よく見ると着物の生地がプリント素材でどうにも安っぽい。
コスプレ用衣装か何かだろうか。
髪もきちんと結わず、キャバ嬢風にアップでまとめ、簪やコサージュを付けて盛っている。
たっぷりと時間をかけた、派手だけど少しもの寂しい太夫の花魁道中だった。
優雅に袖へと戻ると、今度は大奥を題材とした映画のサントラが流れてきた。
ベッド着は大奥の側室が着るような、白い長襦袢だった。
「なんか一番最初のは曲だけで選んだって感じだったね」
ショーが終わり、場内が明るくなると嵐士がそう言う。
作品を理解して、というよりはそのように見えた。
もしもアニメが好きなら続くステージにももう一曲くらい使いそうなものだ。
あるいは今のような、好きな音楽を掛けていい撮影ショーのBGMなどに。
「たまたま深夜アニメ見て流れてるの聞いて、いいなって思ったとか?」
詩帆がペットボトルの水を飲みながら言う。
日常的にアニソンに触れている二人には分からないが、一般人に対してもそれほど聞き流せない求心力のようなものがアニソンにはあるのかもしれない。
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
義姉妹百合恋愛
沢谷 暖日
青春
姫川瑞樹はある日、母親を交通事故でなくした。
「再婚するから」
そう言った父親が1ヶ月後連れてきたのは、新しい母親と、美人で可愛らしい義理の妹、楓だった。
次の日から、唐突に楓が急に積極的になる。
それもそのはず、楓にとっての瑞樹は幼稚園の頃の初恋相手だったのだ。
※他サイトにも掲載しております
〈社会人百合〉アキとハル
みなはらつかさ
恋愛
女の子拾いました――。
ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?
主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。
しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……?
絵:Novel AI
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる