昭和90年代のストリップ劇場は、2000年代アニソンかかりまくり。

坪庭 芝特訓

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第三回公演

29、星3つの五つ星喫茶店

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 そして、ステージを見終わった後。

「はあー」

 踊り子さんに拍手を送った嵐士は、席に座ったまま感嘆のため息をつく。
 ショーは見事だった。
 あだチックランドガーディアンの挿入歌から始まり、拘置所戦隊 ムショソルジャーズの劇場版主題歌。ベッドショーはまさかのニカボカ戦隊トビー4のオリジナルビデオ版エンディング曲。
 戦隊モノの楽曲を使ってはいるものの、演目はそれに寄せているというわけではない。
 それが逆にクールだった。

「ふううー」

 お腹いっぱいで嵐士が客席に座ったまま余韻に浸っていると、

「おい。……ほいっ!」
「わっ!びっくりした。あ」

 突然肩をぽんっと叩かれ、振り向く。喫茶店にいたおじちゃん軍団の一人がいた。

「エスカなんとかいうの出来たぞ。食わねえのか」
「ああ、はい、すいません。行きます行きます」

 ショーが終わったのに戻ってこないのでわざわざ呼びに来てくれたようだ。
 お腹がいっぱい過ぎて注文していたのを忘れていた。
 喫茶店に戻るとエスカロップが湯気を立ててテーブルに置かれていた。

「わあーっ」

 仮の性別を忘れて蘭が嬉しそうな声を上げる。まさか食べれるなんてと。
 満腹感はどこへやら、急に食欲が湧いてきた。

「いただきますっ」

 そして手を合わせ、スプーンで一口、デミグラスソースのかかったカツをバターライスと一緒に食べてみる。

「……んーっ!んまいっ!」
「どうだ、当ってるか」
「はじめてたべまふ」
「なんだよ、食ったことねえのかよ」
「じゃあ正解わかんねえじゃねえか」

 嵐士の反応を見てなんだそりゃとおじちゃんたちが笑う。
 若者客を取り囲んで楽しそうに。
 つられて嵐士も笑う。
 それははたから見ればとても幸せな社交場に見えた。



 途中、オープンショーを見るためまたもやダッシュで喫茶店を抜けだしたりした後。

「ふううーっ」

 おじちゃんシェフが見よう見まねで作ってくれたエスカロップで嵐士がお腹を満たし、一息ついていると、

「ほらこれが、清簾ん時のやつ」
「おおー」

 すぐ近くの席でおじさんに足を突っ込んだくらいの客達がお互いのサイン入り写真を見て合っていた。
 その姿はトレーディングカードを見せ合う男の子と変わらない。
 が、嵐士はそれに貼られたシールに目を奪われる。

「それ、」
「ん?ああ、これ?ほら、ショーの後に撮影タイムみたいのあるでしょ。あれで」
「いえ、写真に貼られてるやつ。シールみたいな」
「ああこれか。有志っていうかファンが自分で作って踊り子に渡すんだよ。良かったらみんなに渡す写真に貼ってくれって」
「へえー」

 初心者っぽい嵐士におじさんがそう説明してくれるが、嵐士はシールそのものよりデザインが気になった。
 踊り子さんの名前らしきものがセンスのいい字体で書かれている。

「そのシールのデザインって、」
「うん」

 嵐士がとあるアニメの作品名をあげる。それのフォントを模したものではないかと。

「えっ!?ああ、そうなの?」
「たぶんですけど」

 アニメ自体は見たことがないがそこそこ有名な作品だ。
 パロディAVでなら嵐士も見たこともある。
 仲の良い友人のうち一人でも居ればわかったかもしれないが、いかんせん今は将来を決めるために忙しい。
 シール自体も作るとしても難しいことはない。フリーのアニメロゴジェネレーターなどを使えば素人でも簡単に作れる。
 が、商売としてではなく、完全なる善意としてならそれなりに情熱が無いと出来ないだろう。

「なんだぁ。センスあるなと思ったのに、パクリなんだ」
「いや、パクリってことでも。たぶんそういう、パロディというかお遊び的なやつで。わかる人だけわかればいいっていうか」
「でもこれ作ったのリクオちゃんだろ?」
「そうだな。確か」
「なんだ兄ちゃんそういうの詳しいんか。なんかそういう、アニメとか」
「いえ、ボクはそんなに」

 先程のおじちゃん達も話に加わる。
 むしろ友人達の方が詳しいので嵐士は謙遜しておくが、

「リクオと話し合うんじゃねえか?」
「リクのやつ今日来てなかったけか」
「来てたな。ちょっと呼んでくるか」
「ええっ?あの、」

 なぜかアニメロゴ風シールを作った本人と引き合わせようと、おじさんの一人がバタバタと呼びに行ってしまった。


 数十秒後。出て行ったおじちゃんに連れられ、一人の青年がバタバタと喫茶店に入ってきた。
 背が高く、ひょろ長い手足に中学生みたいな英字ロンTと無名ブランドっぽい細身のジーンズをまとった青年だ。

「ほら、リクオ。そいつだよ」
「ああ、えっ!?君?」

 リクオと呼ばれた青年が目の前にいる嵐士を見て驚く。
 それっぽくない、一見オタクっぽくない彼がネタ元をわかってくれたとはと。

「ああ、そうなんだ。いや、初めてだよ。そうだって気づいてくれた人」

 そして胸に手を当て、感激だなあと嬉しそうに微笑む。
 確かにおじさん、おじいさん客には難しいパロディだが、

「いえ、そんな」

 それに対し、嵐士がはにかむようにして言う。
 青年の感激が伝わり、本来の可愛らしさがにじみ出てくる。
 上の世代に無条件で気に入られてしまう、本来の可愛らしさが。
 その笑顔に、リクオ青年はなにか通じ合えるものを感じた。


 その後、嵐士は男たちと安酒を飲みのみ、ショーを見た。

「おっほぉー!いいぞいいぞお!」
「よっ!日本一!」
「うるっさいわよ!騒ぐとつまみ出すわよ!」
「ワハハハハハ!」
「リクオ!ヤマさん達黙らせなさいよ!」
「あははははッ!」
「アハハじゃないわよ、もーっ」

 踊り子と客達が、舞台の上と下でそんなやりとりをする。
 繁華街でも外れの方にあるため、土着めいた和気藹々さがあった。
 その中に嵐士も混じっていた。
 友人達が将来を決めるべく大人の決断をしている裏で狂宴に興じた。
 さらにその裏、舞台裏では。


「今日ずいぶんかわいい男の子来てたわね」
「あー、いたいた」
「どこ?そんな子いた?」
「ヤマさん軍団の中にいる子」
「えー?」
「どれ?…あ、ほんとだー」
「かわいいッ」
「なんか女の子みたーい」

 踊り子たちが可愛らしい男の子客について品定めをしていた。
 そんな中、一人の踊り子だけが嵐士の正体に気づいていた。



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