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昭和90年代のストリップ劇場は2010年代アニソンかかりまくり

8、当劇場の目玉ですがすでに古臭い

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「さあ、続きましてのショーはニュー倖邑新名物、ニュー名物、ポールダンスショーとなります。最前列のお客様、くれぐれもステージ前方にお手を出さぬよう、お願いします。これはフリではありません。うっかりすると大怪我、大惨事、本日の公演中止と相成ります」

 妙な名調子ぶりで場内アナウンスが観客に注意を促す。
 なんだなんだと詩帆達が思っていると、ゴグっ、ブーっという音がし、天井から何か、棒のようなものがゆっくりと中央舞台に降りてきた。
 ポールダンスショー用のポールのようだ。
 それはまっすぐ天井から降りてくると、舞台にあった丸にゆっくり突き進む。
 そしてその丸がチャッという音と共に開き、ポールを迎え入れた。
 ドッキングが済むと従業員がやって来てポールが動かないか掴んで調べる。
 オッケーでーすという声とともに、それでは参りましょう、というアナウンスが聞こえ。
 詩帆が目を凝らすともうステージには踊り子さんが顔を伏せ、スタンバイしていた。


 そして、ショーが始まった。
 流れてきたのは攻め攻め系のクールな打ち込みアイドルソング。
 ファンではないが詩帆も知っていた。
 スポットライトがボンテージ風衣装に身を包んだ踊り子さんを照らす。
 ポールを両手で掴み、踊り子さんが身体を90℃曲げてプリーンと腰を突き出した状態でショーが始まった。
 あまりにわかり易すぎるセクシーポーズに、うぷぷ、それはどうなの、と詩帆は思うが、すぐに踊り子さんはポールを背にして立ち、ドルフィンのような動きで女性にしか出せないS字ラインの美を見せる。
 ライトに照らされた引き締まった腹筋、黒いショートボブ、真っ赤な口紅と自信有りげな笑みに引き込まれていく。
 だが途中で見せるポールをチロリと嘗めるような仕草は。
 棒状のものを男性器に見立てたわかりやすい演出だが、ストリップを見ているとこういった演出は多かった。
 それがない詩帆はどう受け止めたら良いかわからなかったが。
 
 そうこうしているうちに踊り子さんが、ポールの上の位置から足を巻きつかせて回転しながら降りてくる技を披露する。
 ああ、こういうのなんかテレビで見たことある、というやつだ。
 更に手の力だけでポールを登ると、ポールを足で挟み、片手だけでポールを掴んでピタリと空中で静止。
 反対の手は宙に垂らし、浮遊感を演出する。
 詩帆がほおーっとそれを客席から見上げる。
 軽々しくやってみせる不思議な浮遊感と、背筋を初めとした漲る筋肉、緊張感に魅了される。
 客席と舞台とでの高低差もあってか、テレビで見た程度のものでも間近で見るとなかなかだった。
 
 足でポールを挟んだままキュルキュルと踊り子さんが舞台に滑り降りると、自分がしてるわけでもないのにオマタの間の肉が痛くなった。
 ポールを両手で掴み、両足を持ち上げると観客に向かってガバッと空中で股を開き、おおお、はいはい、と詩帆がそれを迎えいれる。
 また、高い位置でポールを抱きしめ、腕の力だけで身体を空中に静止させたり。
 逆に足でポールを挟み込み、そのまま上半身を倒して逆さまで身体を静止させたりと色々見せてくれる。
 だが、

「(訳)イマイチですね」
「ぇぇっ?」

 そうシャオちゃんが辛口で評し、詩帆が小声で驚くが、

「(訳)今時ポールダンスって」
「まあ…、ねえ」

 シャオちゃんが言わんとしてることもわかる。
 ポールダンスは素人さん向けの習い事やダイエットお教室として展開して随分経つ。
 それを今更売りにするのはどうかと。
 金を取れるのかと。
 初めて見た詩帆にはなかなか楽しめたのだが、客にも少しだけだが飽きが見えた。
 やはり売りとしては弱いのか。
 後半になると踊り子さんはポールを扱うのをやめ、ダンスというよりその場でそれっぽいステップを踏み出した。
 最後までやらんのかいとシャオちゃんが苛立たしげに貧乏揺すりをする。
 やはりおこおこだった。
 パフォーマンスに対してはやはり手厳しい。

 オープンショーでは踊り子さんが下半身に何も付けない状態でオマタガバっを披露し、詩帆は少々頭がクラクラした。
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