昭和90年代のストリップ劇場は、2000年代アニソンかかりまくり。

坪庭 芝特訓

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昭和90年代のストリップ劇場は2010年代アニソンかかりまくり

13、男役/娘役

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 ショーが進むと、一組、チームショーを披露する踊り子さん達がいた。
 片方だけ羽を背負い、手にはシャンシャン、きらびやかなドレスを着た随分濃い舞台メイクの踊り子さんが出てきた。
 最初は一人で踊っていたが、上手からは燕尾服を着た宝塚風の男役メイクを施した踊り子さんが出てくる。
 本家よりもおとなしいが、それをイメージした、というのが衣装とメイクでわかる。
 経費削減か踊りやすいようにか、背負った羽根はお互い片方だけ。
 いや、単に二人で一つ、対になるように、という演出かもしれない。
 ほうほうそういったショーですか、これはこれはと詩帆が期待するが、隣からむうっとした気配があった。
 不機嫌、ご機嫌ななめ、まではいかないがその手前の。
 
 気配を放っているのは当然シャオちゃんだ。
 レビュウショー風のショーを披露すると、娘役の踊り子さんが男役の羽根を回収し、一人だけパタパタと小走りで舞台袖へと戻る。
 残された男役は胡座をかいて本舞台に座る。
 そのまま有名な、ねっとりゆったりした女性ボーカルのJ―POPが流れだす。
 男役はきらびやかな衣装とメイクで、一人ぽつんと胡座で座ったままだ。
 なんだか本板ショーを待つ客みたいだなと詩帆が思っていると、手籠を持って娘役が戻ってきた。
客が律儀に拍手する。


 そして、本舞台に正座して男役さんに向かい合うようにちょこんと座る。
 男役も胡座から正座になった。
 豪奢な衣装に対してなんだかふたりとも可愛らしい。
 照明がピンクになり、ミラーボールが思い出したように回り出す。
 娘役が手籠から何かを取り出すと、それで男役のメイクを落としだした。
 男役が目をつむり、娘役が真剣な表情でメイクを落とす。
 落としやすいようにと男役がちょっと顔を近づけるのがなんだか可愛らしい。
 へえ、と思いつつ詩帆が見ていると、メイクを落としたのは半分だけだった。
 その顔のまま、首を45度動かし、お客さんの方に揃って向く。
 半分だけすっぴんですが何か?とばかりに。
 それに合わせ、タイミングよく曲が止まる。
 呼吸のあった動きに客からは、ンっ、クスクスと笑いが起きる。
 そしてまた向き直り、止まっていた曲が流れ出すと、今度は男役が娘役のメイクを落としにかかる。
 娘役が目をつむり、男役が真剣な表情で。
 半分だけ落とすと、また二人揃ってその顔を客席に向ける。
 また曲が止まり客から笑いが漏れる。
 それらを、純粋に面白いなと思って詩帆は見ていた。

 お互い半分だけメイクを落とすと、今度は互いに服を脱がせ合う。
 男役さんの衣装を脱がすと、胸を抑えつけるチューブトップのようなものをつけていた。
 男役の顔を見ながら娘役がファスナーを口で挟み、チキチキと下ろしていく。
 その姿は何やら他のことを想像させた。
 詩帆がふむふむとそれを見る。
 娘役が攻めで男役が受けかと。
 振り付けの中でメイクを落とした頬を一瞬触れ合わせ、向き合うと、慈しむようにきっちり整えられた男役の髪を娘役が崩す。
 前髪が儚げに額に垂れ、整えていたときより魅力的だったが、

「(訳)イマイチですね」

 突然、シャオちゃんがステージを見てそう評する。むうっと唇を突き出して。
 やはり不服そうだ。
 そうかなと詩帆は思ったが、

「(訳)文化を冒涜しています」

 ああ、それでかと納得する。
 清く正しく美しくな本家の歌劇団に失礼だと。こんな場所でモチーフとして使わんでくれと。
 それに、我が国の文化なのになあと詩帆は思うが、好きなものは国境がないかと考えつつ、

「(訳)あれ?シャオちゃんそもそも好きだっけ。っていうか見たことあったっけ」
「(訳)…ネットで見る程度ですが。でもっ」

 生で、劇場で見たことはないが、ネットでなら見たことあるもんとシャオちゃんが言い訳がましく言う。
 まあ好きなものが変な感じでいじられるのはイヤだというのはわからなくもないが、と詩帆はそんな友人を可愛らしく思った。
 
 その後は娘役が男役を押し倒し、くんずほぐれつなステージを見せてくれた。


 撮影ショーも男役娘役達は仲良く二人でこなした。
 イチャイチャ感が出ていてほっこりしたが、それが終わると一度舞台袖に引っ込み、お互い首に蝶ネクタイとシルバーのピンヒールだけという変態紳士、淑女姿のオープンショーになった。
 ノリのいい曲に合わせて、おかしなだるまさんがころんだのようなポージングを決めるが、途中で履いていた安っぽい化繊パンツを二人揃って脱ぎ出し、

「ウェエエエエーイっ!」
「フゥゥゥゥゥーっ!」

 雄叫びを上げながら人差し指に引っ掛けくるくるくるくると回しだした。
 それを見て、あっ、と詩帆が気付く。
 そして予想通り男性客が立ち上がり、飛んでくるボールを取るように両手を大きく広げる。
 よっしゃ来いとばかりに。だが、

「あ」
「あっ」

 娘役は丸めたパンツを綺麗に客席に放ったが、男役の方のパンツは回転させている内に指からうっかりスっぽ抜けてしまった。
 男役と詩帆が思わず声を上げ、すぐ近くにいた男性客がそれを慌ててキャッチする。
 ラッキーとも言えず、どうしよう、貰って良いのかなと男性客が他の客を見る。
 アクシデント的な貰い方だが今更仕切り直しも出来ず、あーもう、あげるあげると男役さんが笑いながら男性客を指差し、ショーは終わった。
 そんなやり取りを見終え、

「…パンプレデーじゃないのに」

 シャオちゃんが少し驚いたように言う。ちょっとの怒りも込めて。
 パンプレとはパンツプレゼントデーのことだが、やる場合は前もって、イベントとして告知されていることがある。
 しかし告知らしいものはなく、知ってる者だけが参加出来た。
 シャオちゃんは怒っていた。ルール違反じゃないかと。

「まあでもサービスの範囲内じゃないかな」

 そう詩帆が言うが、言った本人はちょっとがっかりしていた。
 媚びているまではいかないが、なんとなくサービス過剰過ぎないかと。
 シャオちゃんは尚もむむゥという顔をし、

「(訳)やるなら取ったのに」

 それを聞き、ああ、そっちと詩帆が苦笑いする。
 突発的イベントに参加したかっただけかと。
 
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