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『月経前症候群/月経困難症』 ~廃棄される月光
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紗矢加と心路(こころ)がお持ち帰り牛丼とデザートのコンビニスイーツを食べ、心路の部屋で微睡んでいた時。
「ヤバいな…。眠いわ」
そう言って目を擦りながら、心路がもそもそと自分のベッドへと入っていった。
食べ終わってから5分も経っていない。
「寝るの?」
「眠い」
訊かれた紗矢加にそう答えると、心路は横になってそのまま寝てしまった。
格好はさっき出掛けた時に着ていた部屋着ジャージ。
せっかくのブランドもののジャージも、パジャマ兼部屋着兼コンビニぐらいになら着ていける服になっている。
「寝て食って、また寝て。まあしょうがないけど」
自堕落な恋人の姿に呆れる紗矢加だが、こればかりは仕方ないとばかりに二人分の牛丼の空き容器と、心路が食べたチーズケーキのカップを片付ける。
そして心路がHDDレコーダーに録画していたテレビ番組を勝手に見始めた。
ちょうど見逃していた映画が録画されていたので、音量を絞ってそれを見る。
二時間ほど経っただろうか。
心路が寝返りとともに起きた。
「何時?」
ベッドとテーブルの間に挟まるようにしてテレビを見ていた紗矢加に訊く。
ほったらかしにしていた恋人のことなど気にもしない。
「もう4時だよ」
「うわあー、結構寝たなあ」
そう言いながら伸びをした心路が床に置いてあったペットボトルのお茶を一口飲み、
「こっち来て」
「なに?えっ?」
紗矢加を温かいベッドの中に引きずり入れる。
布団の中で抱きしめ、服の中に手を入れ始めた。
「いきなり?」
「いいじゃん」
「まだ映画見てるし」
「あとあと」
寝起きのまだ温かい身体を心路が押し付けてくる。
そのぬくぬくしたベッドと恋人の匂いに、まあいいかと紗矢加は思ってしまう。
師走という世間とは関係なく、女子高生は暖かなベッドで肌を重ねて冬休みを満喫していた。
食って、寝て、やって、また寝て、起きたら食って、寝て、起きたらやる。その繰り返し。
その一週間は一ヶ月のうち、心路の動物的本能が剥き出しになる時期だからそれは仕方ない。
「何個あった?」
「すげえ多い」
冬休み前。お互いのケータイで、紗矢加と心路は月経前症候群というものについて調べていた。
詳しい説明が載っているサイトには、『当てはまる項目の数によって貴女が月経前症候群かわかります』というお決まりの診断コーナーがあった。
二人は自身に該当する項目をチェックしていく。
・やけに眠くなる
・過食になる
・ムラムラする
・イライラする
・やけに喉が渇く
・食べ物の好みが変わる
・胸が張る
・肌が荒れる
・考えがうまくまとまらない
・空虚感を感じる
・判断力が低下する
など、質問はかなりの数があった。
「これって生理中は違うの?」
紗矢加がサイトページを指差しながら心路に訊く。
「それはまた別。ナントカ困難症みたいの」
紗矢加が調べると、生理中の症状について同じような質問チェックシートがヒットした。
「あ。あった」
「どれ」
紗矢加が検索して出したサイトを心路が自分のケータイでも開いてみる。
ナントカ困難症は正式には機能性月経困難症、大きく言えば生理痛のことらしい。
・腹痛
・腰痛
・頭痛
・吐き気
・貧血
・イライラ
・食欲不振
・過食
・憂鬱
・だるい
・体のだるさ
・のぼせ
・めまい
・不眠
・冷や汗をかく
「めまいはないかな」
心路がチェックしていくが、先程のと合わせどちらもチェックされた項目が多い。
「大変だね」
チェックされた数の多さに、紗矢加が自分の痛みのように言う。
ひどい人は本当にひどいと聞くが、心路はそのひどい人らしい。
そもそも紗矢加は生理の症状がこんなにあるとは知らなかった。
せいぜい軽い腹痛ぐらいだった。
心路のチェックシートを見て、紗矢加があることに気付く。
「生理前に過食になって、生理中は食欲落ちるの?」
生理前の症状には過食がチェックされ、生理中の症状には食欲減退にチェックされていた。
「生理前になるといくら食べても食べても食べたくなるんだよね。肉もご飯も甘いものも。逆に生理中は何も食べたくなくなる。たぶん生理中に食べないから、本能的に生理前に食べて蓄えてるんじゃない?食べる割には体重増えないし。あと生理中眠り浅い分、生理前すげえ眠かったりするし」
「生理中に眠れないのはおなか痛くて?」
「それもあるけど。寝てる時になんか漏れたかもって思って、ハッ!てなって起きる」
「それは夜用の最強のやつ使えばいいんじゃないの?おなか痛いのや頭痛は薬でどうにかなるし」
「飲むけど効かないんだよねー。ピル飲もうかなー」
「ピルって生理痛に効くの?」
心路の話によれば避妊以外にも効くらしい。
避妊も生理痛も、自分には直接関係のないことなので紗矢加は知らなかった。
「サヤ、生理来るのいつぐらいかわかる?」
「大体、月の真ん中ぐらいかな。15日前後」
「あたし毎月月末か月の頭ぐらいだけど、生理三日前になるとやたらムラムラするし眠いしお腹空くからすぐわかる」
「三大欲求が強くなるんだ。身体が生命の危機感じてるとか?」
「じゃああたし毎月生命の危機だ」
心路はそう笑って答えた。
だから、仕方ないのだ。
女はなにかと大変なのだ。
「ヤバいな…。眠いわ」
そう言って目を擦りながら、心路がもそもそと自分のベッドへと入っていった。
食べ終わってから5分も経っていない。
「寝るの?」
「眠い」
訊かれた紗矢加にそう答えると、心路は横になってそのまま寝てしまった。
格好はさっき出掛けた時に着ていた部屋着ジャージ。
せっかくのブランドもののジャージも、パジャマ兼部屋着兼コンビニぐらいになら着ていける服になっている。
「寝て食って、また寝て。まあしょうがないけど」
自堕落な恋人の姿に呆れる紗矢加だが、こればかりは仕方ないとばかりに二人分の牛丼の空き容器と、心路が食べたチーズケーキのカップを片付ける。
そして心路がHDDレコーダーに録画していたテレビ番組を勝手に見始めた。
ちょうど見逃していた映画が録画されていたので、音量を絞ってそれを見る。
二時間ほど経っただろうか。
心路が寝返りとともに起きた。
「何時?」
ベッドとテーブルの間に挟まるようにしてテレビを見ていた紗矢加に訊く。
ほったらかしにしていた恋人のことなど気にもしない。
「もう4時だよ」
「うわあー、結構寝たなあ」
そう言いながら伸びをした心路が床に置いてあったペットボトルのお茶を一口飲み、
「こっち来て」
「なに?えっ?」
紗矢加を温かいベッドの中に引きずり入れる。
布団の中で抱きしめ、服の中に手を入れ始めた。
「いきなり?」
「いいじゃん」
「まだ映画見てるし」
「あとあと」
寝起きのまだ温かい身体を心路が押し付けてくる。
そのぬくぬくしたベッドと恋人の匂いに、まあいいかと紗矢加は思ってしまう。
師走という世間とは関係なく、女子高生は暖かなベッドで肌を重ねて冬休みを満喫していた。
食って、寝て、やって、また寝て、起きたら食って、寝て、起きたらやる。その繰り返し。
その一週間は一ヶ月のうち、心路の動物的本能が剥き出しになる時期だからそれは仕方ない。
「何個あった?」
「すげえ多い」
冬休み前。お互いのケータイで、紗矢加と心路は月経前症候群というものについて調べていた。
詳しい説明が載っているサイトには、『当てはまる項目の数によって貴女が月経前症候群かわかります』というお決まりの診断コーナーがあった。
二人は自身に該当する項目をチェックしていく。
・やけに眠くなる
・過食になる
・ムラムラする
・イライラする
・やけに喉が渇く
・食べ物の好みが変わる
・胸が張る
・肌が荒れる
・考えがうまくまとまらない
・空虚感を感じる
・判断力が低下する
など、質問はかなりの数があった。
「これって生理中は違うの?」
紗矢加がサイトページを指差しながら心路に訊く。
「それはまた別。ナントカ困難症みたいの」
紗矢加が調べると、生理中の症状について同じような質問チェックシートがヒットした。
「あ。あった」
「どれ」
紗矢加が検索して出したサイトを心路が自分のケータイでも開いてみる。
ナントカ困難症は正式には機能性月経困難症、大きく言えば生理痛のことらしい。
・腹痛
・腰痛
・頭痛
・吐き気
・貧血
・イライラ
・食欲不振
・過食
・憂鬱
・だるい
・体のだるさ
・のぼせ
・めまい
・不眠
・冷や汗をかく
「めまいはないかな」
心路がチェックしていくが、先程のと合わせどちらもチェックされた項目が多い。
「大変だね」
チェックされた数の多さに、紗矢加が自分の痛みのように言う。
ひどい人は本当にひどいと聞くが、心路はそのひどい人らしい。
そもそも紗矢加は生理の症状がこんなにあるとは知らなかった。
せいぜい軽い腹痛ぐらいだった。
心路のチェックシートを見て、紗矢加があることに気付く。
「生理前に過食になって、生理中は食欲落ちるの?」
生理前の症状には過食がチェックされ、生理中の症状には食欲減退にチェックされていた。
「生理前になるといくら食べても食べても食べたくなるんだよね。肉もご飯も甘いものも。逆に生理中は何も食べたくなくなる。たぶん生理中に食べないから、本能的に生理前に食べて蓄えてるんじゃない?食べる割には体重増えないし。あと生理中眠り浅い分、生理前すげえ眠かったりするし」
「生理中に眠れないのはおなか痛くて?」
「それもあるけど。寝てる時になんか漏れたかもって思って、ハッ!てなって起きる」
「それは夜用の最強のやつ使えばいいんじゃないの?おなか痛いのや頭痛は薬でどうにかなるし」
「飲むけど効かないんだよねー。ピル飲もうかなー」
「ピルって生理痛に効くの?」
心路の話によれば避妊以外にも効くらしい。
避妊も生理痛も、自分には直接関係のないことなので紗矢加は知らなかった。
「サヤ、生理来るのいつぐらいかわかる?」
「大体、月の真ん中ぐらいかな。15日前後」
「あたし毎月月末か月の頭ぐらいだけど、生理三日前になるとやたらムラムラするし眠いしお腹空くからすぐわかる」
「三大欲求が強くなるんだ。身体が生命の危機感じてるとか?」
「じゃああたし毎月生命の危機だ」
心路はそう笑って答えた。
だから、仕方ないのだ。
女はなにかと大変なのだ。
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