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花園編
質問
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ヘレンに質問を投げかけ、20分が立っただろうか。それでも、口を開こうとはしなかった。何かの組織に追われて、言っちゃ駄目って事だろうか? それとも、意地を張っているだけだろうか? どちらにしろ……彼女に謎が多いのは確かだ。この組織だって、彼女一人の力でどう成り立っているかもわからない。それはおろか、素性を話した事すらない。素性を聞こうとすると、頑なに話をそらそうとする。だけど、今回はそうはいかない。彼女は、知りすぎているからだ。僕たちの知らないことを、彼女は知っていた。それも、細かく、詳しく。それはおかしい。それに、彼女は父さんも使ったといっていた。だけど、箱を使用したというのは伊勢谷さんが最後のはずだ。それは、先程美雨さんにひっそりと渡された手紙に書いてあったから確かだ。だけども、ヘレンは確かに父さんと言った。
それはすなわち――
「もしかして、みら……」
「ね、ねえ! こんな事話してないでちゃっちゃと終わらせましょう!」
また、いつものだ。そうやって、自分の秘密を探られそうになると逃げる。その癖はやめた方がいいと思う。確実に。やめた方がいい。
とぼけようとしたが、僕はすかさずに聞きつける。
「ねえ、そろそろ教えてよ。ヘレンの正体を。ヘレンの素性を!」
ここで素性を明かしてはいけない。そんな気がした。だけど、僕が聞いてすぐにヘレンは口を開く。
「私は……私はね、未来から……未来から来たの」
「やっぱり……ね」
そう言ったのは、これまで無口だったカエデ……ではなく、仙だった。
仙は彼女を責めることなく、言った。
「別に隠さなくていいじゃん。そんな事。私たちはもう仲間じゃん? 違う?」
そう言って、ヘレンを励ましているようだった。確かにそうだ。未来から来たからなんだ。別にそれくらいじゃ驚かない。箱の事を言われた後にそんな事言ったって、衝撃が薄いのだ。
(ごめんなさい……ごめんなさい……だまして、騙して……っ!)
ヘレンは、下を向いた顔を上げ、こちらを見て、申し訳なさそうな顔で
「信じて……くれるの……?」
と言った。そんな彼女に対して僕は笑顔で、
「まあ、彼女のおかげで今までやってこれたんだし、それに……僕たちが信じなくてどうするんだ」
そう言ってやった。ヘレンは、少し嬉しそうな顔で、ありがとうとずっと連呼する物だから、ちょっとだけ申し訳ないという気持ちにもなる。しかし、そんなヘレンを責めるように、カエデは言った。
「なんで今まで隠してたの? それって、私たちを信用してなかったって事だよね?」
確かに、確かにそう言うことになってしまう。だけども、ヘレンはここまでずっと隠してきたんだ。それには理由があるはずだった。
カエデにそう言われ、ヘレンは、泣きながら説明をする。今まで、隠してきた理由を。
「時間論って言うのは……とても不安定なの。未来の事を過去の人間に教えてしまえば、その事象がなくなってしまうかもしれない。いわば、タイムパラドックス」
つらそうな顔をしながらも、ヘレンは続ける。
「私のお父さんは、この時代に、もう少し後だけど、私が生まれる事を知るの。でも、そのせいで、父さんは……」
未来に生まれることを知っていながらも、何故……そこだけが疑問だった。
普通の人ならば、生まれてくることを喜ぶはずだ。しかし、彼女のお父さんは……それはつまり、そこまで追いつめられる理由があったということだ。
「父さんはね、そのことを『箱を使って』未来から来た私から聞くの。だから、それが辛かったんだと思う」
そうか、自分は箱を使っている。つまり、呪いの事も理解している。だから、だからこそ、箱を使ってしまう彼女を生んでは駄目だと悟ったのか……でも、それじゃ、それじゃあ生まれてくることすら否定されるヘレンがかわいそうだ……
人間は、未来を知ると、自分の都合のいいように変えようとする。もちろん、それがいいと僕も思う。だけども、たとえどんな理由があろうと、自分の都合の悪いようにするとは思わないはずだ。だって、それが人間って生き物だから。
例えば、戦国大名なら? 未来を知って、この先自分が死ぬとあらかじめ分かっていれば、対策をすることが出来、さらには相手の軍の大将も取ることが出来る。
例えば、シェイクスピアなら? 彼なら、未来の事を否定はするだろうが、その通りに話を書くはずだ。シェイクスピアが望むものは、最高の舞台なのだから。
そうやって、人間は未来を理解すると決まって自分のいいように未来を変えようとする。だけど、それは、救えたかもしれない未来、救えたかもしれない人を助けないことになる。そんなの、僕は嫌だ。みんなが幸せで、みんなが笑い合える世界のがいいに決まっている。でも、ヘレンのお父さんもそれを望んでいたから箱を使ったはずだ。
だったら……
「お父さんに、会わないようにしようよ?」
それは、すなわち、nextの解散も意味するとは、僕は思わなかった。そして、この発言が、僕たちの中を引き裂くことになるなんて、僕は思わなかった――
それはすなわち――
「もしかして、みら……」
「ね、ねえ! こんな事話してないでちゃっちゃと終わらせましょう!」
また、いつものだ。そうやって、自分の秘密を探られそうになると逃げる。その癖はやめた方がいいと思う。確実に。やめた方がいい。
とぼけようとしたが、僕はすかさずに聞きつける。
「ねえ、そろそろ教えてよ。ヘレンの正体を。ヘレンの素性を!」
ここで素性を明かしてはいけない。そんな気がした。だけど、僕が聞いてすぐにヘレンは口を開く。
「私は……私はね、未来から……未来から来たの」
「やっぱり……ね」
そう言ったのは、これまで無口だったカエデ……ではなく、仙だった。
仙は彼女を責めることなく、言った。
「別に隠さなくていいじゃん。そんな事。私たちはもう仲間じゃん? 違う?」
そう言って、ヘレンを励ましているようだった。確かにそうだ。未来から来たからなんだ。別にそれくらいじゃ驚かない。箱の事を言われた後にそんな事言ったって、衝撃が薄いのだ。
(ごめんなさい……ごめんなさい……だまして、騙して……っ!)
ヘレンは、下を向いた顔を上げ、こちらを見て、申し訳なさそうな顔で
「信じて……くれるの……?」
と言った。そんな彼女に対して僕は笑顔で、
「まあ、彼女のおかげで今までやってこれたんだし、それに……僕たちが信じなくてどうするんだ」
そう言ってやった。ヘレンは、少し嬉しそうな顔で、ありがとうとずっと連呼する物だから、ちょっとだけ申し訳ないという気持ちにもなる。しかし、そんなヘレンを責めるように、カエデは言った。
「なんで今まで隠してたの? それって、私たちを信用してなかったって事だよね?」
確かに、確かにそう言うことになってしまう。だけども、ヘレンはここまでずっと隠してきたんだ。それには理由があるはずだった。
カエデにそう言われ、ヘレンは、泣きながら説明をする。今まで、隠してきた理由を。
「時間論って言うのは……とても不安定なの。未来の事を過去の人間に教えてしまえば、その事象がなくなってしまうかもしれない。いわば、タイムパラドックス」
つらそうな顔をしながらも、ヘレンは続ける。
「私のお父さんは、この時代に、もう少し後だけど、私が生まれる事を知るの。でも、そのせいで、父さんは……」
未来に生まれることを知っていながらも、何故……そこだけが疑問だった。
普通の人ならば、生まれてくることを喜ぶはずだ。しかし、彼女のお父さんは……それはつまり、そこまで追いつめられる理由があったということだ。
「父さんはね、そのことを『箱を使って』未来から来た私から聞くの。だから、それが辛かったんだと思う」
そうか、自分は箱を使っている。つまり、呪いの事も理解している。だから、だからこそ、箱を使ってしまう彼女を生んでは駄目だと悟ったのか……でも、それじゃ、それじゃあ生まれてくることすら否定されるヘレンがかわいそうだ……
人間は、未来を知ると、自分の都合のいいように変えようとする。もちろん、それがいいと僕も思う。だけども、たとえどんな理由があろうと、自分の都合の悪いようにするとは思わないはずだ。だって、それが人間って生き物だから。
例えば、戦国大名なら? 未来を知って、この先自分が死ぬとあらかじめ分かっていれば、対策をすることが出来、さらには相手の軍の大将も取ることが出来る。
例えば、シェイクスピアなら? 彼なら、未来の事を否定はするだろうが、その通りに話を書くはずだ。シェイクスピアが望むものは、最高の舞台なのだから。
そうやって、人間は未来を理解すると決まって自分のいいように未来を変えようとする。だけど、それは、救えたかもしれない未来、救えたかもしれない人を助けないことになる。そんなの、僕は嫌だ。みんなが幸せで、みんなが笑い合える世界のがいいに決まっている。でも、ヘレンのお父さんもそれを望んでいたから箱を使ったはずだ。
だったら……
「お父さんに、会わないようにしようよ?」
それは、すなわち、nextの解散も意味するとは、僕は思わなかった。そして、この発言が、僕たちの中を引き裂くことになるなんて、僕は思わなかった――
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