引きこもりの僕が勇者にされた理由ーnextー

ジャンマル

文字の大きさ
20 / 30
花園編

質問

しおりを挟む
 ヘレンに質問を投げかけ、20分が立っただろうか。それでも、口を開こうとはしなかった。何かの組織に追われて、言っちゃ駄目って事だろうか? それとも、意地を張っているだけだろうか? どちらにしろ……彼女に謎が多いのは確かだ。この組織だって、彼女一人の力でどう成り立っているかもわからない。それはおろか、素性を話した事すらない。素性を聞こうとすると、頑なに話をそらそうとする。だけど、今回はそうはいかない。彼女は、知りすぎているからだ。僕たちの知らないことを、彼女は知っていた。それも、細かく、詳しく。それはおかしい。それに、彼女は父さんも使ったといっていた。だけど、箱を使用したというのは伊勢谷さんが最後のはずだ。それは、先程美雨さんにひっそりと渡された手紙に書いてあったから確かだ。だけども、ヘレンは確かに父さんと言った。
 それはすなわち――
「もしかして、みら……」
「ね、ねえ! こんな事話してないでちゃっちゃと終わらせましょう!」
 また、いつものだ。そうやって、自分の秘密を探られそうになると逃げる。その癖はやめた方がいいと思う。確実に。やめた方がいい。
 とぼけようとしたが、僕はすかさずに聞きつける。
「ねえ、そろそろ教えてよ。ヘレンの正体を。ヘレンの素性を!」
 ここで素性を明かしてはいけない。そんな気がした。だけど、僕が聞いてすぐにヘレンは口を開く。
「私は……私はね、未来から……未来から来たの」
「やっぱり……ね」
 そう言ったのは、これまで無口だったカエデ……ではなく、仙だった。
 仙は彼女を責めることなく、言った。
「別に隠さなくていいじゃん。そんな事。私たちはもう仲間じゃん? 違う?」
 そう言って、ヘレンを励ましているようだった。確かにそうだ。未来から来たからなんだ。別にそれくらいじゃ驚かない。箱の事を言われた後にそんな事言ったって、衝撃が薄いのだ。
(ごめんなさい……ごめんなさい……だまして、騙して……っ!)
 ヘレンは、下を向いた顔を上げ、こちらを見て、申し訳なさそうな顔で
「信じて……くれるの……?」
 と言った。そんな彼女に対して僕は笑顔で、
「まあ、彼女のおかげで今までやってこれたんだし、それに……僕たちが信じなくてどうするんだ」
 そう言ってやった。ヘレンは、少し嬉しそうな顔で、ありがとうとずっと連呼する物だから、ちょっとだけ申し訳ないという気持ちにもなる。しかし、そんなヘレンを責めるように、カエデは言った。
「なんで今まで隠してたの? それって、私たちを信用してなかったって事だよね?」
 確かに、確かにそう言うことになってしまう。だけども、ヘレンはここまでずっと隠してきたんだ。それには理由があるはずだった。
 カエデにそう言われ、ヘレンは、泣きながら説明をする。今まで、隠してきた理由を。
「時間論って言うのは……とても不安定なの。未来の事を過去の人間に教えてしまえば、その事象がなくなってしまうかもしれない。いわば、タイムパラドックス」
 つらそうな顔をしながらも、ヘレンは続ける。
「私のお父さんは、この時代に、もう少し後だけど、私が生まれる事を知るの。でも、そのせいで、父さんは……」
 未来に生まれることを知っていながらも、何故……そこだけが疑問だった。
 普通の人ならば、生まれてくることを喜ぶはずだ。しかし、彼女のお父さんは……それはつまり、そこまで追いつめられる理由があったということだ。
「父さんはね、そのことを『箱を使って』未来から来た私から聞くの。だから、それが辛かったんだと思う」
 そうか、自分は箱を使っている。つまり、呪いの事も理解している。だから、だからこそ、箱を使ってしまう彼女を生んでは駄目だと悟ったのか……でも、それじゃ、それじゃあ生まれてくることすら否定されるヘレンがかわいそうだ……

 人間は、未来を知ると、自分の都合のいいように変えようとする。もちろん、それがいいと僕も思う。だけども、たとえどんな理由があろうと、自分の都合の悪いようにするとは思わないはずだ。だって、それが人間って生き物だから。
 例えば、戦国大名なら? 未来を知って、この先自分が死ぬとあらかじめ分かっていれば、対策をすることが出来、さらには相手の軍の大将も取ることが出来る。
 例えば、シェイクスピアなら? 彼なら、未来の事を否定はするだろうが、その通りに話を書くはずだ。シェイクスピアが望むものは、最高の舞台なのだから。

 そうやって、人間は未来を理解すると決まって自分のいいように未来を変えようとする。だけど、それは、救えたかもしれない未来、救えたかもしれない人を助けないことになる。そんなの、僕は嫌だ。みんなが幸せで、みんなが笑い合える世界のがいいに決まっている。でも、ヘレンのお父さんもそれを望んでいたから箱を使ったはずだ。
 だったら……
「お父さんに、会わないようにしようよ?」
 それは、すなわち、nextの解散も意味するとは、僕は思わなかった。そして、この発言が、僕たちの中を引き裂くことになるなんて、僕は思わなかった――
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

少年神官系勇者―異世界から帰還する―

mono-zo
ファンタジー
幼くして異世界に消えた主人公、帰ってきたがそこは日本、家なし・金なし・免許なし・職歴なし・常識なし・そもそも未成年、無い無い尽くしでどう生きる? 別サイトにて無名から投稿開始して100日以内に100万PV達成感謝✨ この作品は「カクヨム」にも掲載しています。(先行) この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。 この作品は「ノベルアップ+」にも掲載しています。 この作品は「エブリスタ」にも掲載しています。 この作品は「pixiv」にも掲載しています。

【完結】うさぎ転生 〜女子高生の私、交通事故で死んだと思ったら、気づけば現代ダンジョンの最弱モンスターに!?最強目指して生き延びる〜

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
 女子高生の篠崎カレンは、交通事故に遭って命を落とした……はずが、目覚めるとそこはモンスターあふれる現代ダンジョン。しかも身体はウサギになっていた!  HPはわずか5、攻撃力もゼロに等しい「最弱モンスター」扱いの白うさぎ。それでもスライムやコボルトにおびえながら、なんとか生き延びる日々。唯一の救いは、ダンジョン特有の“スキル”を磨けば強くなれるということ。  跳躍蹴りでスライムを倒し、小動物の悲鳴でコボルトを怯ませ、少しずつ経験値を積んでいくうちに、カレンは手応えを感じ始める。 「このままじゃ終わらない。私、もっと強くなっていつか……」  最弱からの“首刈りウサギ”進化を目指して、ウサギの身体で奮闘するカレン。彼女はこの危険だらけのダンジョンで、生き延びるだけでなく“人間へ戻る術(すべ)”を探し当てられるのか? それとも新たなモンスターとしての道を歩むのか?最弱うさぎの成り上がりサバイバルが、いま幕を開ける!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています

浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】 ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!? 激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。 目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。 もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。 セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。 戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。 けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。 「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの? これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、 ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。 ※小説家になろうにも掲載中です。

【完結】平凡な魔法使いですが、国一番の騎士に溺愛されています

空月
ファンタジー
この世界には『善い魔法使い』と『悪い魔法使い』がいる。 『悪い魔法使い』の根絶を掲げるシュターメイア王国の魔法使いフィオラ・クローチェは、ある日魔法の暴発で幼少時の姿になってしまう。こんな姿では仕事もできない――というわけで有給休暇を得たフィオラだったが、一番の友人を自称するルカ=セト騎士団長に、何故かなにくれとなく世話をされることに。 「……おまえがこんなに子ども好きだとは思わなかった」 「いや、俺は子どもが好きなんじゃないよ。君が好きだから、子どもの君もかわいく思うし好きなだけだ」 そんなことを大真面目に言う国一番の騎士に溺愛される、平々凡々な魔法使いのフィオラが、元の姿に戻るまでと、それから。 ◆三部完結しました。お付き合いありがとうございました。(2024/4/4)

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

処理中です...