引きこもりの僕が勇者にされた理由ーnextー

ジャンマル

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伊勢谷ルート

意外な出会い

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 さて、この世界でどうしようか。『パッチワークゾーン』と呼ばれる場所には何もなかった。どうしようか……
 そんなときだった。後ろから……
「伊勢谷さあああああああん!!!?」
 んんん!? 急に背中が重くなる。かなり重量があるぞ……
「だ、誰だ……」
「私の事忘れたんですか?」
 後ろを見ようとしても、顔が避けるから意味がない。えっと……マジでどなたです?
 あ……晴ちゃんだ。この声は、ちょっと低くなってるけど、晴ちゃんだ!
「晴ちゃん!?」
「やっと思い出してくれましたか……」
 でも、晴ちゃんは……
「んもう。変な顔芸はよしてください。言われたでしょう? ここは分岐の失敗が集まる地点だって。私も、どこかで失敗したんですよ」
「なるほど……だからこんなに成長を……」
 すごく……大きいです……
 って、違う! そうじゃない!
「でも、晴ちゃんの隣に居るのって……」
「お、伊勢谷か。いやあ、懐かしいな」
 ケビン……だと……!? 何故だ。すべての世界線から存在が消えたはずじゃ……
 確かに存在は消えているはずだった。でも、もし。もし、このケビンが『消すことに失敗した』時間軸なら……
 要するに、僕がケビンを消す前、あるいはその直前のどこかで失敗したのなら。
 直前にこのパッチワークゾーンに来てしまえば、その世界線は他の世界線とは隔離され、この世界に孤立して存在を続けることになる。……はずだ。
「うむ。合格だ。が……少し違うな」
 ケビンはさらにニコニコしながら続ける。
「俺はあの瞬間にいくつか世界線を飛ばしているんだ。この世界に」
 え……?
「俺は元々この世界の存在に知っていたし、何かあればこちらに来れるようにしていたんだ」
 なんて究極の俺理論なんだ。あれ、でも……おかしいことに気付く。なぜなら、箱を所有していないケビンにはそんな技が出来ようがないのだ。もしそれが可能なのだとしたら、それもまた箱の力だ。ケビンに箱の力はないはずだが……?
「俺は元からその箱を所有していたし、能力も使える」
 なんだって? それじゃあ、なんで箱を巡る戦いに参加したんだ!?
「正確にはその箱に元からいる天使の力だけどな」
 天使って、僕が声を聴いていたあの箱の神か? だとすれば、箱自体には何もなく、神に力があるって事に……これ言っちゃいけなさそうだ。
「まあ、俺の戦術の勝ちって事だな。諦めろ、伊勢谷」
 何を……? いや、何を諦めるんだ……
 というかこんなことしてる場合ではない。そろそろ本題について話してほしかった。ここから出る方法だ。
 その方法を探っていたのではないかと僕は思っていたのだが。違うのか?
「さて、まだ感動の再開を喜びたいが……そろそろここからの脱出方法について話してやる」
 そうだ。ここから出る方法を……
「だが、その前に一つだけ覚えておけ。俺はここから出たとき、本当に存在が消える」
 え……?
「お前、ここに来る途中に俺の部下にあったろ? あいつに若干記憶が残ってるのは、あくまでこっちに来る途中でおいて来てしまったものに過ぎない」
 つまり、ここに来るときに一部が残ってしまった。という事だろうか……
 でも、それならばここから出なければいいのでは?
「俺はすでに存在を否定されている。無理にここに残り続ければ、あっちの世界線に影響が出始めるはずだ」
 要は、ここから出ることを強制されているという事か……何か、何か他の方法は……でも、これは僕が選択を誤った結果でもある。……どうしたものか。
「お前が悔やむことじゃねよ。あそこで俺が退場してなければあの後お前らもろともあの施設どかんだったしな」
 じゃあ、僕たちを助けるために……やっぱり、ケビンはすごいよ。そこまでして、僕たちを助けてくれたって言うのは。
 ……ちょっとは、落ち着いたかな。でも、目的を見失っては終わりだ。ここから出る。ただそれだけを見て今は集中しよう。
 晴ちゃんも若干年を取っているが、これは多分、どこかで生きている晴ちゃんが何かしらの失敗をしたという結果ありきの姿だろう。でも、生存ルートあるって知れただけでもうれしいよ……でも、美雨さんは……
「分かってます。お姉ちゃん、どっかいっちゃったんでしょ? あそこで私が死んでも、生きてても。お姉ちゃんがどこかへ行く事象だけは変わらなかったみたい」
 それじゃあ、あの結末は確定された未来なのか……不安定な世界で、どこかで存在するのが確定された事象だ。確定された事象があるからこそ、僕たちの能力は使うことが出来る。『予測が出来ない』ということは、分岐点がどこなのかわからないからだ。でも、確定された未来を探し出し、干渉する。そうすることで、世界線を移動させずにその世界を『あったかもしれない未来』に強制的に導く。それが、あの箱の能力の詳しい詳細だ。

 この力はあの後封印した。だから、今はその力自体使用できない。
「さて…本題だ。ざっくりいうとな、ここから出るためにはお前にはもう一度あの箱をつかってもらうことになる」
 もう一度……? 使う必要はあるのだろうか?
 使う意味をケビンに聞く。一瞬、少し暗い顔でにらんだが、こちらをもう一度見ていった。
「簡単に言うとな、箱の力でこの世界に分岐点を作り出してやるんだよ」
 なんだ、そりゃ……
「元々世界線がないからこそこの世界は存在できる。だから、箱の力で世界線を作り出し、それを崩壊させる。だから箱がいる」
 なるほど……無理やりでも、世界線をもう一つ作ってしまえという事か。世界線があれば箱の力も使用できる。そうすれば、世界線がどんどん分岐していく。でも……待てよ、それじゃあ、脱出したことにはならないじゃないか。
「……結論だけ言う。ここから抜け出すのは……不可能だ」
 え……?
「この世界は何にもとらわれない存在だ。仮に出口があったとしても、そこは無だ」
 ならば、何故結論が出ているのに出る方法を探しているんだ? 本当はあるんじゃないのか? 箱の力で出れる気も……
「箱の力はあくまでその世界の分岐点から結末を引っ張ってくる能力だ。要は、俺たちの力と変わらない」
 それじゃあ、ずっとここで暮らせってか!? 嫌だ! そんなの嫌だ!
「じゃあ、世界線を作るなんて無理じゃないか!」
「無理じゃないんだよ。それは。あの神の実力は本物だ。『創造する』願い事ならば世界線を探さずに作り出す。そんな気まぐれな代物なんだよ。あれは」
 ……そんなでたらめ、僕は今まで信じてきたのか……
「でも、分かったろ。出る方法なんてないって」
 だとしても、僕は探し出して見せる!

 この世界で捕らわれているのは僕だけじゃないはずだ。でも……本当に僕たちが捕らわれているのは、箱の呪縛だった。
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