昴の輝く空の下で

共通ルート

三十一節/二人の気持ち

「なあ、琳」
「ん？　なに？」

　また別の場所でそれは起きていた。二人で作業する中それは告げられる。きっと駿人に悪意はない。彼の考えを貫き、彼女のことを思ったに違いないその言葉で変えは彼女を傷つけた。

「別れ……たい」
「え……？」

　突然のタイミングだったし突然の出来事で本人も混乱しているし頭の整理が追い付いていないだろうに。それでも駿人は別れたいと本人に直接伝えた。何故。どうして、その疑問は彼女本人に語られることはきっと無いだろう。それは駿人なりに考えに考え抜いた結果なのだから。

　淺霧さんが廊下を走っていくのを見た僕は駿人のところへ急いで向かう。そしてその理由について本人に直接聞く。

「淺霧さんがさっきすごいスピードで走っていったけど……」
「……別れたいって言ったんだ俺が」
「え……」

　直接聞いて言葉にならない何かがあった。何故なのか。理由は問い詰めればたくさん出るだろう。だけれど多くは語ろうとはしなかったしたぶん話したくなかったんだろう。沈黙の時間が続く。

「……俺さ、海外留学決まったんだ」
「いつ決まったんだ……？」
「三週間前」

　そのタイミングからずっと悩んでいたらしい。何故なら――

「その留学、一年とかじゃないんだよ……」
「それって――？」
「留学先で結果を残したらそのまま世界有望な企業に入れる」
「……もしかして、そうなったらわざと落ちるかもしれない、ってことか？」
「正直、彼女といることを選ぶかもしれない。だけど、それができなかった……」

　本人は自分が恨まれてもいい。この選択が身勝手だし、相手のことを思ってない、というのもわかっていると……それでも彼はお互いのために別れを告げた。