引きこもりの僕がある日突然勇者になった理由

ジャンマル

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詰み状態

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「役目は終わった。行くぞ」
「しかし花沢晴の確保が……」
「気が変わった。今日のところは撤退だ」

そういうと何事も無かったかのように彼らは撤退していく。今の数十分のやり取りは、鮮明に記憶に残った。彼は笑っていた……平然と人体実験をする、そういった。それほどまでに狂気に満ちた人間に、太刀打ちできるのか……?

「うっ、……くっ、逃げられたか……」
「エルザさん、半蔵さん!」

とりあえず2人の応急処置をする為に、晴ちゃんが医務室へ向かった。
だけど、何故ああなってしまったのか。聞かない訳にも行かない。情報共有はもはや必須だ。ふたりの知っている情報を、教えてもらう。

「ケビン・アルトベルト……あいつはやばい。だから私達は深くまで探らずに撤退してきたが……」

傷を見ながら、エルザさんは拳を地面に叩きつけながら言う。もし力があればあの場で彼を止めれた、と。だが彼は既に「手に入れている」のだ。力を。その圧倒的なまでの力の前に彼らは何も出来ずに吹き飛ばされた。そして、彼の計画もいよいよ本題に入った。十分だ。それだけの理由があるなら彼が勝ち誇るには十分だ。
僕らに力が無かっただけの話。彼らに力があっただけの話。それだけなんだ……

「晴ちゃんを今度は本気で殺しにかかるかもしれない。だけど、彼らを止めなきゃ行けない……」
「連れていけば死ぬ。連れていかなくても死ぬ、か。板挟みだな……」

晴ちゃんをどうするか。それについて議論をしていた。彼女の身柄は今はまだこちらにあるが、今後はどうなるかはわからない。途中で誘拐されるかもしれないし、そうじゃないかもしれない。
どうすれば正解なのか僕達にもよく分からない。これから僕達はケビンという男を止めるために行動するが、どうすればいいのか分からない……どうやって止めるのか。どうしたら敵わないはずの彼を止めるのか。
その全てにおいて現状は手詰まりという状況だった。

「……とりあえず、今は二人とも傷の完治を優先してください。きっと、彼らは僕達が動かなければ何もしてこないはずです」
「何故そう言いきれる……?」
「彼のあの目は……きっとただでは殺さないはずです」
「そうか……」

こちらから動かなければーーとは言っても限界はある。だが、今はその限界ギリギリまで粘るしかできなかった。
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