引きこもりの僕がある日突然勇者になった理由

ジャンマル

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花沢美雨の勇者録

勇者録(3)

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私が捕まってから、数週間がたった。しかし、彼は迎えに、いや、助けにすら来なかった。
「どうして……? 私を助けてくれるって……あの時」
「ごちゃごちゃうるせえんだよガキが!!」
「いっ、痛いっ」
「お前はな……ずっとそうしてればいいんだよ。お前の名前の美雨はなぁ……」
  父が憎かった。虐待が続く中、私の名前すらも侮辱した父を。
 でも、それ以上に、彼が助けに来てくれないことがもっと憎かった。そして私は……助かる事を諦めた。
「おお、わかってんじゃねえか。そうだよ。お前はそうやっておとなしくしてればいいんだよ。何せ、お前は雨のように邪魔な存在だからな」
「……」
 私はその日に、言葉を失った――――
 私が捕まり、さらに数週間がたったころ、私は完全に、父の手元で働かせれていた。まるで、ずっと走り続けるハムスターのように。
「おい、手が止まってるぞ」
「……」
 今の私には、言葉が要らない。うなずくだけで父はわかってくれる。父に言葉をかけたところで、無意味だ。無意味だからこそ、私は喋らなかった。

~休憩時間~

「おら、美雨。休憩時間だ」
「……」
「おい、返事はどうした?」
「……」
「舐めてんのかクソガキが!!!」
「つ……!」
 言葉をかけたところであなたは手を出してくる。ならば、無言のまま虐待を受けたほうがマシだ。声を出すと、周りに迷惑をかけてしまう。そんなことをしたら、この虐待が続くまでだ。
 そんな中、私の耳に入ってきたのはとっては嬉しい知らせだった。
「おい、美雨。妹が生まれたそうだ。迎えに行くぞ。車を出せ」
 車の運転すら私にやらせる。こんなこと、普通の人間だったら捕まっている。しかし、私の家は金持ち。すなわち、父は大手会社の社長だ。警察も下手に手を出せない。
 自分の地位さえも利用する父を私は許さない。今も。そして、これからも。
「……お父さん」
「ん?」
「少し……休ませ……」
「あ? 休めると思ったのか?」
「つ……!?」
 まただ。また、暴力だ。わたしが反抗すれば暴力。私が意見を言えば暴力。もう嫌だ。こんな生活はもう嫌だ。
「なぁ、美雨」
「……?」
 震えて怯えるしかできない。震えて、怯えて。父の言う通りにするしか。
「ちっ……仕方ねえな、おら、休め。15分だ。それ以上は許さねえ」
「……!!」
 与えられたのは、たった数分の自由だった。だが。私には、それで十分だった。
(家の間取はすべて覚えてる……! 15分あれば!!!)
 その考えは甘かった。そう簡単に、うまくはいかないんだ。
「あら? どこに行かれるのですか?」
「と、トイレに……」
「……? トイレなら、向こうでは?」
「は、ははは……そ、そうでした! ご、ごめんなさい!!!」
 逃げようとしても、彼の周りのメイドたちが許さない。でも、それでも……あの場所にさえいければ……!!!-----
「……ちっ……あのガキ、おせえじゃねえか」
「……おい! そこのお前!」
「は、はい!!」
「あのガキを見てねえか!」
「た、確か、あっちに……」
「……! この方向は……あれがある方向じゃねえか! あのガキ、何考えてやがる!!!!」
 逃げたい。だから、今捕まるわけにはいかないんだ。
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