ターコイズブルー

ジャンマル

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青春のカタチ

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 いじめっ子になることといじめを耐えること。どちらが苦しいのか。それは多分言い方は悪いけど人によるんだと思う。いじめられる方が苦しい人もいれば、いじめっ子でいる方が苦しい人もいる。それぞれが違う考えを持っているから衝突して、勘違いして、悲しいことになる。だけど一つだけ確かなのはそうやって生み出された争いで1人は絶対に苦しんでいる人がいるということ。苦しいからこそ何も言えなくなってしまう。誰も信じられず、誰も頼れず、自分の殻にこもることでなんとか精神を保つことが出来る。そうすることで守れる命があるなら安いもんだと。

 果たして本当にそうか? 俺は思う。いじめは決して無くなることはないと思うがいじめられた子に寄り添うことは増やすことが出来る。傷つける行為がどんなに減らなくても、傷を減らしたり傷を癒してあげることは増やすことが出来る。それもまたひとつの強さだと思うから。だけど頼るのと甘えるのは違う。苦しい時どんなに頑張ってもきつい時とかは助けてあげられるし助けてあげたい。だけどなんでとして貰えると甘えきって、自堕落になって行くのはちょっと違う。そうなる為に色々してあげる訳でもないし。
 だけど出来ることは何でもしてあげたいという気持ちが勝る。だけどそれじゃダメなんだ。

 虐められているから、となんでもやってもらう。それは少し違う。いじめを理由に甘えるのはずるい事だと思う。もちろんその考え方も人それぞれだし全てが答えはないし回答出来ない所謂正解のないから迷うこと。なんだと思う。少なくとも俺は自分が可哀想だとかそういう感情で頼りっきりになったりするのはずるい事だと思ってた。思ってたけど頼られる喜びもあるのも確かなことなんだ。
 結局、ずるい事すら生きていく上では必要なスキルだってことだ。
 ずるをして、苦しんで、悩んで悩んで悩み抜いて。そうした先にあるのがきっとその時自分が出せるいちばん賢い答えなんだろう。人間の感情というものは仕事とかと違って結果が全てじゃない。その時どうしてそう思ったのか。その答えに至るまでにどれだけ悩んだのか。きっとそっちの方が価値がある。
 時間というもの自体に価値があるんだと思う。

 時間はどれほど自分のために使えたか、どれほど考えて使えたかできっと人間の一生は決まる。だけどそれは社会に出てからの時間じゃない。学生の間にどれだけ有効に賢く使えたかだ。でも正直そんなこと誰にも測れないし見れない。だからこその価値があるんだと。

「敦くん考え方が大人すぎて私には真似出来ないよ」
「真似なんてしなくていい。お前はお前だ」
「でも憧れちゃうなぁ。敦くんみたいな考え方」

 憧れるほどのものでは無いし真似するほどのものじゃない。自分だって他人を蹴落としてその上で成り上がってきた人間だ。人一倍楽をしようとした分、人一倍苦しみかけた。だけどその時間を楽しい時間に変えてくれたのは他の誰でもない、彼女だ。考え方を真似したりすることがあんまり良くないことだとしても、彼女の生き方を肯定してあげることくらいは出来るんじゃないだろうか? 彼女に、君の生き方は間違ってないんだよ。と言ってあげることが1番の救いなのではないだろうか? 彼女と出会って、そして触れ合ったからこそ分かることもある。それは彼女がどんなに強い人間かって言うことだ。あんなに酷いことをされていたのに彼女は嫌がる素振りを決して本人たちには見せなかった。それは強がりでもなんでもない。彼女自身が言っては悪いけど許してしまえるほどの強い心があるからだ。
 もちろんいじめを許すのはどうかと思うけどそれは彼女の強い部分が出たのがたまたまいじめられていたから、というだけだ。

 彼女と知り合い、触れ合う中で俺は彼女に心を許した。なんでも話せる、なんでもしてあげたいと。今まで恋愛とか愛とかそういうのってくだらないと思ってきた。だけどいざ自分がそうなってみると驚く程に興味が出た。見向きもしなかった感情に突然襲われた。言葉にしたらこの時間は終わってしまうかもしれないという恐怖。だけどそれを勝るほどに俺はーー彼女が好きになった。

「宮村さん」
「なぁに? 敦くん」
「俺さ……君が好きみたいだ」

 言葉にしてしまったその言葉は今思えば正しい事だったのか分からない。だけどもその瞬間の彼女の顔はとてもじゃないけれど忘れることが出来ないほど、俺の心に「ひとつの思い出」として残り続けた。きっと自分は好きだと伝えてはいといって欲しかったんじゃないんだと思う。だからこそお互いに初めて心の底から本音でぶつかれたこの瞬間の時間は俺の中でいちばん大切な時間として残り続ける。
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