魑魅の館

ジャンマル

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その館にて

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 少女に案内されつつ俺は部屋だったり中の調査を始める。そして中を調べていくうちに一つだけとある事実を把握することになる。その事実は今この目でその資料に目を通している俺に対してまるでずっとこの場所で待ちわびていたぞと言わんばかりの内容だった。
「これを見た記者のあなた。ここの取材に関してはとある一つを除いて公開していいですよ」
 まるで見透かしたかのようなこのメモの下の方にこのメモを記した日付のようなものが記載されている。2000年2月23日。このメモにはそう日付が記載されていた。誰がこんなものを? と最初は思っていたがおそらくは元々があまりいい噂のない家庭だったのだろう。そしてその噂はすぐに広まり、この館の主はここに取材に来るかもしれない記者のことを考え残したものだろう。不気味な気もするが……ひとまずはこの館がいつ頃の者なのかというのはあらかた見当がつき始める。このメモはおそらくは売り払う直前くらいに書いたものだろう。
 メモの最後には主の女性のものと思われる指紋が添付してあった。なぜこんなものを? と思ったがメモと一緒に同封されていた家の間取りを見て納得した。部屋の奥にこの指紋がなければ開閉しない大きな倉庫があるらしい。そしてその倉庫の中身は親切にもここに最初に訪れこのメモを見たものに譲る、と。

 もちろん疑いなどがなかったわけではないが有り難くもらえるものはやはり不思議と魅力があり倉庫を調べてみることにした。幸い、この少女は間取りをほとんど把握しているらしく倉庫までほとんど迷わずに来ることが出来た。少女にお礼を言いつつ、指紋認識式のロックを外すと、すぐに目に見えて多くの金銀財宝が見つかった、中にはどこから情報を得たのかわからないが未解決事件の真相などのメモなども一緒に保管されていた。何故こんな場所にそんなものが? さらに調べていくと主の女性のものと思われるファイルがあった。そのファイルによると女性の名前は「新藤恵」。一企業の社長と結婚していて、その旦那が隠居するために買ったこの屋敷で定年となる一昨年2008年まで住んでいたようだ。そして旦那が定年すると同時に、本格的にこの館に家具等を運び、遠くに住んでいたが職を失ってしまい途方に暮れていた息子と共に旦那の多額な貯金を使いつつ生活していたそうだ。
 だが、とあるときに旦那が他界すると後を追うように恵さんは息子と主に心中。館は住む主を失いそのまま放置された……

「もしかして、『銀座の悲劇』の真相……なのか?」

 数年前に未解決となった連続猟奇事件である銀座の悲劇。銀座の交差点にて突如大勢の人間がのどのかゆみを訴え始め、赤になった信号をよそ眼に大渋滞となった交差点はパニック状態になり、かゆみを訴えていた複数人はあたりにいた人間を次々と殺していき、最後には自分たちも自ら命を断った……
 だが原因は不明とされており現在まで解明されていない。しかし――

「この倉庫に事件の真相である危険薬物を保管する。可能ならばこれを見た人は跡形もなくこれを処分してほしい」そうファイルの最後に綴られていた。

 こんな場所に何故そんなものが。そして何故恵さんは事件の証拠を警察につきつけなかったのか……? 探偵というわけではないがこの事件の本当の結末を記事にすれば間違いなく世間の目を引ける。そう確信した俺はメモや残されたファイルをもとにこの不思議な少女と共にこの事件の結末を追っていくこととなる――
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