引きこもりの僕がある日突然勇者になった理由。ファイナル

ジャンマル

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LEVELZEROafterSTORY~Venus Tune~

さようなら

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 私のたどり着いた結論。それは、千佳を殺して他の個体に移そう……というものだった。
 もうそろそろ我慢というか、時間をかけすぎるとそれこそ芽衣が死ぬ。それに……殺してしまった方が色々話が早いからだ。
 私の思考は今完全に魔法少女としては完成されただろう。だがそうだとしても私が御蔭に対して好感を持っていないのは確かだ。残忍にならなければ、魔法少女は生きていけない。だって、私たちは殺しをして生きているのだから――
「素手で勝てるわけない! 私の勝ちだ!!」
 千佳はそう言うと、槍を振り回し近づいてくる。でも敗因はおそらくひとつだろう――それは、勝ちを確信してしまったことだ。私はあらかじめ芽衣に何かあったら~と渡されていたナイフを取る。今の千佳はおそらく目の前の敵が見えていない。ならば――隙はある。
 槍の先端をナイフで防ぎ、私の体の位置からずらす。当然、彼女も戦いなれをしている。(データだけだが)しかし、やはり実践で言えば彼女はあの体で初めてといっても過言ではない。槍が私から遠ざかった瞬間、その瞬間に私はナイフを突き刺した。親友の……胸に。
「嫌だ、嫌だ……死にたくない……!!」
「死ねないよ。死ねない。私し達はこれからも永遠の生き地獄を味わい続ける。だから、クローンは壊す」
「でも、壊したら私は!」
「大丈夫。一体は残すから」
 そう言うと、最後の力でクローンの元へ行こうとしていた。その姿を、私は見守ることしかできなかったが……
「ねえ、一つ、お願い、聞いて、くれる?」
 声を出せば早く死ぬ。もちろん、彼女もそれを知っているだろう。最も……私たちは死ねないが。
「なに?」
 彼女が提案したのは、多分今までにはない提案だった。なぜなら――
「私と、契約……して……?」
 そう言ったのだ。無理なはずだった。一度契約した体で、もう一度契約なんて出来るはずがなかった。でも、彼女はしようと言ってきた。なぜ、それはわからないが、彼女は忘れられるならあなたの中で生き続けたい……そう言うような気がした。たとえ彼女が私たちと過ごした千佳ではなくても、やはり彼女は千佳であることに変わりない。
「でも、出来るの?」
「出来……る」
 できる。彼女は最後の力を振り絞った笑顔でそう言った。ならば、急がなければ完全に力尽きて次の個体が動き始める。
「手を、出して」
 そして、彼女ともう一度契約する。事実上の、再契約……私は一度彼女と契約している。だからこそ、今度こそ彼女の存在は私の中から、芽衣の中から消えるだろう。だって、そう言うシステムだから。そう言う機能を持って生まれてきてしまったから。
「あり、がとう……」
 そう言って、契約を終えて彼女は力尽きた。そしてそれと同時に、個体№3008号が動き始める。
 あれ……誰、だっけ……思い出せないや。はは……

―芽衣―

「せいやああああああああ!!」
 私とビーストの戦いは続いていた。そりゃあもうビーストが強いのなんの。でも、私は動じない。だって、最強クラスの魔法少女なんだもの。負けるわけないんだもの。って言っても、3004回死んだ後で言えることじゃないけど、逆にそんなに死んだからこそ言えるんだ。戦闘プログラムを引き続け、幾度も戦い、成長させて来た。だからこそ、最強とも言えるし、最弱ともいえる。
「ぐりぃあいいあああああああ意志fhさあい」
 ビーストが迫ってくるのを、私は得意の武器である鉤爪で応戦する、これは犬が好きだった。という理由だろうか? まあ、今の私には関係ないか。
 どんどんビーストが減っていく。それと同時に増えていく。はは、修業かよ?にしてはスパルタじゃん?
 もはや、冗談にすら思えてくるほど湧き続ける無数のビーストたち。だが、私は腕時計型にしてあった魂残量系を見た。
「すくない……あいつ、何やってんだよ……!」
 この時点で、すでに私は死を選ぶか生を選ぶか。そう選択を強いられていたのだ。残りの魔力で何とかしろ。そう言う事らしい。全く、あいつもずるいよな、自分ばっかいいように魔法を使いやがって……
「ギr茶宇sgdじゃj!!!」
 ビーストを退け、防御に魔力を回そうとした時、確かに魂残量系は0を示していた。はは、ゲームオーバーかよ。私はビーストの攻撃を食らって、足を食いちぎられた。でも、それだけなら、まだ戦えるんだよ……!!
「痛覚なんてぶっ壊れてもいいんだよ! 千佳と綴がまた仲良くなれるなら、私の命なんて軽いもんだ! だって、体のストックもあるしな!!」
 体のストックがある。私は、そう思っていたが、ビーストを殴った後、魂の量が確かに増えたことに気付いた。数は3万ちょいか……
 えっ……?
「ま、待てよ、あいつら全部持ってたってか!? 何してんだよ! はは、予備も無しで、片足も無しでどうしろってんだよ……」
 ビーストは、魔法少女に合わせてそいつを食らう事だけに特化した性能に改良される。こいつは今、私を殺すのに特化している。そして、私は今無防備だ。魔法使っちゃうと、あいつらのこの後に影響しちゃうしな……
「……諦めろ、か……」
 あいつら、私が死なないと思ってちょっと慢心したな? でも、せめても仕方ない。私は、あいつらが戦いやすいようにここを――
「掃除するだけだ!!!」
 ―― ――
「はは、ここまでか……」
 ビーストに、両手両足持ってかれたんだ。もう動けやしねえ。でも……ビーストは多分全部潰した。後は、任せたぞ。二人とも……
「あーあ、みっぐるしなあ、最強さあん?www」
 あいつだ。でも、こいつと会話するだけの気力なんてもうない。
「いいのお? あんたのストックだけはラス一で別の場所に残ってんだけど……」
 そんな情報に騙されるとでも?
「まあその気にならねえなら仕方ねえか。せいぜい、私の手で、親の手で死になぁ!」
 ビーストでもない、一番にくったらしい奴に殺される、か……はは、つくづくついてねえな。私は。

 さようなら。
 私の人生は、そこで幕を閉じた――
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