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第1章 「俺たちの出会い。」
おじさんの大切な話。
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おじさんが虎雅と俺にコーヒーを出してくれたとの同時に、おじさんは席に着くなり話を始めた。
「コーヒーでも飲みながらゆっくり聞いてくれればいいから。...あのね、今日この店に来ていた紫翠 優(しすい ゆう)くんについてなんだけど...。優くんは、昔は本当によく喋る子だったんだ。でも...ある日、彼は変わってしまった。その理由は...彼の周りにいた大人達のせいでもあったんだ。実はね、優くんは、元々プロのピアニストに認められたほどの、素晴らしい才能の持ち主だったんだ。それはそれは、本当にすごくてね...今もそれは変わらないんだけどね...。」
「そんな彼が何故...??」
おじさんの話を黙って聞いていた虎雅は、話の続きが気になり、おじさんに催促するように質問を投げかけた。
そんな虎雅に一際真剣な表情を向けたおじさんは、話を再開させた。
「...優くんは、人身売買されたんだ。...それだけじゃない...彼の父親は良くない人でね...人身売買も実は、彼の差し金だったんだ。彼は、親に身と才能を売られた、可哀想な子なんだよ...。彼の父親は、海外の金持ちが集う闇の競売場に、彼の容姿と才能を高値で売ろう考えて、彼を競売にかけたんだ。優くんは、お父さん子でねぇ...本当にお父さんのことが大好きで信じていたんだ。競売にかけられる日も、優くんは、お父さんに『お前のピアノの才能を買ってくれる人達のところに行こうか。』と言われて、なんの疑いも持たずに、お父さんについて行ってしまった。そして、会場に立たされた時...彼はやっと、自らの置かれている状況を理解したんだ。彼は...実際に外国の金持ちに売られて...お金儲けの道具に使われた...。」
「でも、まだ良かったんじゃないんですか??だって、お父さんよりはお金もあって...裕福な暮らしができたわけでしょ??」
「いいや、もっと酷い生活を強いられていたらしい...。彼は、ピアノを公の前で演奏する時以外は、まるで奴隷のように主のおもちゃにされていたそうだ...。...だから、彼は日本に帰ってきて自分のことを拾ってくれた、今の家族にも本当の心を閉ざしたまま...だから、彼のことを...。」
おじさんの言葉に目に涙を溜めて、口を引き結んでいた俺とは対照的に口をあんぐりと開けていた虎雅は、おじさんに焦った顔をしてこう聞いた。
「優さんと...この間来ていた時に一緒にいたのは...赤の他人の子供???...いや、それよりも...おじさんに聞きたいことがあるんだ。...優さんは何故...乙四奏者の話にあんなに...『ちょっと虎雅!!!』翔真っ...いいだろ??しっかり聞いとかないと、バンド仲間として誘えない。なぁ、おじさん!!答えてくれるよな??」
「...はぁ、分かった...虎雅くんが、こうやって聞いてくる時は、もう逃げることは出来ないって知ってるからなぁ...。...優くんは、危険物の闇に取り憑かれているからだ。危険物は...悪魔の曲なんだよ。...私も、危険物に取り憑かれている...だから今も、危険物の旋律を弾きたくて...紙にその旋律を書き連ねたくてたまらないんだ。」
「えっ...悪魔の曲!??...にわかには信じ難いな...そんな非現実なこと...。」
「虎雅くん...危険物が何故こんなにも取り扱いに制限がかけられているのか分かるかい??...危険物には...終わりがないんだ。一度、危険物の闇に飲まれたら最後...その終わりない闇にどっぷりとハマって...最終的には、精神を酷く病んで...自殺に追い込まれるからなんだ...。」
「嘘だろ...終わりがないって...曲に終わりがないって一体...。」
虎雅は、おじさんが嘘を言っているようには見えなくて...。
そんなおじさんに、この話を一体どうやって理解したらいいのかを聞きたくてたまらなくなった虎雅は、おじさんをじっと見つめていた。
そんな虎雅におじさんは、しばらく悩んだ後、深呼吸をひとつして小さく口を開いた。
「...それだけこの曲の魅力が強大だってことだ。どれだけ極めても、完璧という言葉にたどり着くことが出来ない。そういう曲なんだよ...それだけ...。」
おじさんは、ここまで言うと席を立ち虎雅と翔真に背を向けると、震える声でこう告げた。
「...すまないが、今日はもう帰ってもらっても大丈夫かな??...危険物を弾きたくてたまらないんだ。君たちに、私と同じ運命を辿ってもらいたくない...だから、もうこれ以上...危険物を耳にしてはいけない!...分かったらさっさと帰るんだ!!」
おじさんの怒りを含んだ声色に、身震いをした二人は、おじさんに小さく『失礼します。』と告げると、足早に店を去ったのだった。
「乙四は...俺の人生の全てだ。...はぁ、もっと極めなければ...もっと...もっとだ!!」
虎雅と翔真の帰ってすぐに、おじさんは人が変わったように薄気味悪い笑みを浮かべて、目の前の鍵盤をゆっくりと撫でて...気が狂ったように、鍵盤をめちゃくちゃにたたき出したのだった。
これが...危険物の闇だ...ここまで見てしまった君たちは、危険物に取り憑かれないように...せいぜい注意するんだよ??ん??俺は誰かだって...??俺は...教えられないから、今はまだ秘密だよ。
「コーヒーでも飲みながらゆっくり聞いてくれればいいから。...あのね、今日この店に来ていた紫翠 優(しすい ゆう)くんについてなんだけど...。優くんは、昔は本当によく喋る子だったんだ。でも...ある日、彼は変わってしまった。その理由は...彼の周りにいた大人達のせいでもあったんだ。実はね、優くんは、元々プロのピアニストに認められたほどの、素晴らしい才能の持ち主だったんだ。それはそれは、本当にすごくてね...今もそれは変わらないんだけどね...。」
「そんな彼が何故...??」
おじさんの話を黙って聞いていた虎雅は、話の続きが気になり、おじさんに催促するように質問を投げかけた。
そんな虎雅に一際真剣な表情を向けたおじさんは、話を再開させた。
「...優くんは、人身売買されたんだ。...それだけじゃない...彼の父親は良くない人でね...人身売買も実は、彼の差し金だったんだ。彼は、親に身と才能を売られた、可哀想な子なんだよ...。彼の父親は、海外の金持ちが集う闇の競売場に、彼の容姿と才能を高値で売ろう考えて、彼を競売にかけたんだ。優くんは、お父さん子でねぇ...本当にお父さんのことが大好きで信じていたんだ。競売にかけられる日も、優くんは、お父さんに『お前のピアノの才能を買ってくれる人達のところに行こうか。』と言われて、なんの疑いも持たずに、お父さんについて行ってしまった。そして、会場に立たされた時...彼はやっと、自らの置かれている状況を理解したんだ。彼は...実際に外国の金持ちに売られて...お金儲けの道具に使われた...。」
「でも、まだ良かったんじゃないんですか??だって、お父さんよりはお金もあって...裕福な暮らしができたわけでしょ??」
「いいや、もっと酷い生活を強いられていたらしい...。彼は、ピアノを公の前で演奏する時以外は、まるで奴隷のように主のおもちゃにされていたそうだ...。...だから、彼は日本に帰ってきて自分のことを拾ってくれた、今の家族にも本当の心を閉ざしたまま...だから、彼のことを...。」
おじさんの言葉に目に涙を溜めて、口を引き結んでいた俺とは対照的に口をあんぐりと開けていた虎雅は、おじさんに焦った顔をしてこう聞いた。
「優さんと...この間来ていた時に一緒にいたのは...赤の他人の子供???...いや、それよりも...おじさんに聞きたいことがあるんだ。...優さんは何故...乙四奏者の話にあんなに...『ちょっと虎雅!!!』翔真っ...いいだろ??しっかり聞いとかないと、バンド仲間として誘えない。なぁ、おじさん!!答えてくれるよな??」
「...はぁ、分かった...虎雅くんが、こうやって聞いてくる時は、もう逃げることは出来ないって知ってるからなぁ...。...優くんは、危険物の闇に取り憑かれているからだ。危険物は...悪魔の曲なんだよ。...私も、危険物に取り憑かれている...だから今も、危険物の旋律を弾きたくて...紙にその旋律を書き連ねたくてたまらないんだ。」
「えっ...悪魔の曲!??...にわかには信じ難いな...そんな非現実なこと...。」
「虎雅くん...危険物が何故こんなにも取り扱いに制限がかけられているのか分かるかい??...危険物には...終わりがないんだ。一度、危険物の闇に飲まれたら最後...その終わりない闇にどっぷりとハマって...最終的には、精神を酷く病んで...自殺に追い込まれるからなんだ...。」
「嘘だろ...終わりがないって...曲に終わりがないって一体...。」
虎雅は、おじさんが嘘を言っているようには見えなくて...。
そんなおじさんに、この話を一体どうやって理解したらいいのかを聞きたくてたまらなくなった虎雅は、おじさんをじっと見つめていた。
そんな虎雅におじさんは、しばらく悩んだ後、深呼吸をひとつして小さく口を開いた。
「...それだけこの曲の魅力が強大だってことだ。どれだけ極めても、完璧という言葉にたどり着くことが出来ない。そういう曲なんだよ...それだけ...。」
おじさんは、ここまで言うと席を立ち虎雅と翔真に背を向けると、震える声でこう告げた。
「...すまないが、今日はもう帰ってもらっても大丈夫かな??...危険物を弾きたくてたまらないんだ。君たちに、私と同じ運命を辿ってもらいたくない...だから、もうこれ以上...危険物を耳にしてはいけない!...分かったらさっさと帰るんだ!!」
おじさんの怒りを含んだ声色に、身震いをした二人は、おじさんに小さく『失礼します。』と告げると、足早に店を去ったのだった。
「乙四は...俺の人生の全てだ。...はぁ、もっと極めなければ...もっと...もっとだ!!」
虎雅と翔真の帰ってすぐに、おじさんは人が変わったように薄気味悪い笑みを浮かべて、目の前の鍵盤をゆっくりと撫でて...気が狂ったように、鍵盤をめちゃくちゃにたたき出したのだった。
これが...危険物の闇だ...ここまで見てしまった君たちは、危険物に取り憑かれないように...せいぜい注意するんだよ??ん??俺は誰かだって...??俺は...教えられないから、今はまだ秘密だよ。
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