ファンタジア!!

日向 ずい

文字の大きさ
38 / 102
第5章「乙四の謎解き開始???」

「ディアマンを捕まえようぜ!!!」その2

しおりを挟む
 俺は、皆の顔を見渡すと優に頼んで、早速乙四を弾いてもらうことにした。

「...優...頼むぞ。」

 「...。」

 俺の言葉に、何も言わず埃を被ったピアノの前に腰を下ろした優は、一呼吸置くと鍵盤に指を添えて、例の旋律を弾き出したのだった。

「♪♪♪~~~~~♪♪♪♪~~~~♪♪...『私を呼び出したのは、お前達か???って、なーんだ。君たちか~~~!!!...それで、俺を呼び出してどうしたの???もしかして...愛の告白とか!???あはっ、こまっちゃうなぁ~~。まさかの俺ってモテ期到来中!??』...んな訳あるか!!...お前を呼び出したのは、俺たちがお前の正体について分かったからに決まってるだろう!!『...っ!!!...俺の正体だって!??...何を馬鹿なことを言っているんだ??俺は闇の存在だぞ??俺にそんな口をきいたら、お前達の命ぐらい簡単に吹き飛ばすことができるんだからな???』..あぁ、すまなかった。少し、口が達者になりすぎたようだ...。さぁ、こんな無駄話をしている時間はない。折角、俺たちの元にやってきてもらったんだ。ちゃっちゃと、本題に入ろうか??」

 俺のこの声に、ディアマンは不機嫌きわまりない口調で、俺たちの話を渋々聞いてやると言って黙った。

 それを合図に取った俺は、姿の見えないディアマンに向かって、単刀直入に事を尋ねた。

「なぁ、ディアマン。俺たちが、暫くお前とコンタクトを取らなかった時間...俺たちは、お前に関する情報を色々と集めていたんだよ...。そしたらな???お前が、変わり者として有名な作曲家のエリック・サティなんじゃないのかと言う話になってな...。『...なぁに言っちゃってんの???...あんたら、ほんまもんの馬鹿なんとちゃうん???...俺がフランスの作曲家エリック・サティやって??何ぬかしおるん???...言っとくけど、俺はそんなんやない...!!俺は、もっとずっと偉大なもんや。そんなんと一緒にすな...!!!』...。(引っかかったな。)」

 俺の言葉に、激しく動揺した様子のディアマンは、重大なミスを幾つも犯してしまい...俺たちは、ディアマンがエリック・サティという確信を得てしまった。いや...正確には、模倣犯とでも言うのか??その証拠に、俺の横に突っ立っていた七緒が...それはそれは焦った様子のエリック・サティに対して、その確信を確かめるため...更に追い打ちを掛けることを告げたのだった。

「ねぇ、明らか動揺してるのバレバレなんだけど???...確かに虎雅さんはエリック・サティという名前を話題に出したよ??...だけど、どうしてエリック・サティを知らないはずのあんたが、エリックの出身国が、フランスであると知っているんだ???この中にいる誰も、エリックがフランス出身なんて、一言も口にしてないのに...。更に加えれば、なんでさっきまで標準語でしゃべっていたはずのあんたが...いきなり、ばりばりの関西弁使えるわけ???明らかにおかしいでしょ...。あんたが本当のエリックなら、フランス出身ということを把握しているのは当たり前だけど...仮に、日本語はしゃべれても...関西弁までもを、容易に使いこなせるわけないし...それにさぁ、もしエリックさんの幽霊なのだとしたら、非現実すぎてあり得ないんじゃない???という事で...あんたは、一体何者なわけ??」

 七緒の適切なツッコミに、何も答えることが出来なくなったディアマンは...暫くうなった後、俺たちを軽蔑するような口調でこう口にした。

「だったら何だ???俺がエリック・サティだとしたら、何だと言うんだよ!!!いいか!??俺は、エリックよりも偉大な作曲家だ。いい加減、口を慎んだらどうなんだ??この...このませガキどもが...!!!!」

「..もう怖くないから...!!!そんなことより俺...実は、気付いちゃったんだよね~。ディアマンが...何者で、今何処にいるのか...何を企んでいるのかもぜ~~~~んぶ!!!」

 七緒は、逆ギレしているディアマンに向かって、挑発的な態度を取った。

 そんな七緒の様子に、ディアマンは更に焦った様子で、必死で反論を述べてきた。

「馬鹿なこと言うなよ!!!俺と、たった2回程度話しただけで...俺の事が分かる訳なんてないだろうが...!!!!何を根拠にそんなこと...。『根拠なら..ある。なぁ、翔真さん???』」

 七緒が、翔真に話を振ったことにより、それまで七緒に集中していた目線が、一気に翔真へと集まった。

「...???...そうだな。決定的な根拠がひと~~つだけ...しかも、さっきディアマンが話していた会話から、読み取ることが出来ちゃった。...ディアマンさん、ありがとうね。(笑)」

 俺は、翔真の言葉にとっさに、さっきのディアマンの言っていたことを思い返したが、俺には翔真と七緒の言っていることが全く理解出来なかった。

 そんな俺と同じ反応をしている奏也は、じーーっと七緒と翔真のことを見つめて、自分にも分かるように説明して欲しいと顔で訴えかけていた。

 また...俺たちと全く同じ反応をしていたディアマンが、焦ったような声色でこう言った。

「さっきの会話のどこに...!???俺は、細心の注意を払って、お前達に言葉を発していたんだぞ...!!!『あ~~~あ、自白したら駄目じゃん...。案外お馬鹿なの??』...なっ!!!それどういう...!!」

 ディアマンの言葉に、それまで黙って聞いていた優が、おかしそうな声をあげていた。

 その時...ディアマンも、ようやく月並みの皆が考えていたことが理解でき、彼はどう言い訳をしようかと、明らかに動揺した声で、必死に思考を巡らせていた。

 そんなディアマンの声に、七緒は強く言い放ったのだ。

「...ディアマンさん???もう少し...頭が柔らかければ、良かったですね??...それで、あなたは一体何者なんですか???」

 七緒の言葉に、周りにいたメンバーは、ディアマンの返答を、固唾をのんで待っていた。

 暫くの間...しん...っと静まりかえっていた部屋に、やがて諦めたような声が響いたのは、それからインスタントの焼きうどんが完成する時間が経った頃だった。

「...分かった...俺の負けだ。君たちには、種明かしをしよう。まず...俺が誰かだが...俺は、吉波 陽飛(よしなみ はると)...関西に住む売れない作曲家だ。...俺が、ディアマンとして騒ぎを起こしていた理由は...音楽に対して、なんの知識も持ち合わせていない奴が、偉そうにヒット曲を語る...そんな胸くそ悪い奴らに、本当の音楽の厳しさを教えてやりたかったからだよ。...お前達も、ふと思う事はないか???親のコネを使って、人気者になった数々の才能の無い作曲家が、お金を費やしてゴーストライターに曲を書かせている。...そんな何の努力もしない奴が、世間でちやほやされているこの不条理な世の中に...激しく怒りを覚えることは...!!!」

 それまで、ディアマンの話に口を閉じていた優が、ほんの少し同情の色が見え隠れする声で、彼にこう言ったのだ。

「...たしかに...俺も、理不尽だな...って思った事は、何度もあるよ。それこそ、吉波さんの言うように、何の努力もしていない奴が、お金を沢山得て...一生懸命頑張った奴には、平気な顔して自分が食べた後の残飯を与えてくるし...ほんとに、なんて不公平で、いやらしい世の中だろうとね...。でもね、そんな中にも音楽で、例え売れなくても...理解されなくても、どれだけ人に馬鹿にされようとも、決して諦めずに、自分の好きな曲を弾いて、人生を楽しんでいる奴もいるんだよ。そんな長年の苦労が実を結び...全世界の人から愛されるようになった作曲家...歌手...音楽を永遠の職業にした人が、この世界には数え切れないほどいることも...また事実なんだよ。そんな人たちの話を聞くとやっぱり...自分はまだまだ世間に甘えすぎているんだと、冷静に思い直したよ...。吉波さんも、過去に一人ぐらい、そういう人に出会ったことがあるんじゃ無いんですか???...決して努力を怠らない。そんな熱い思いを持った人を...!!」

 「...っ!!」

 七緒のその言葉にディアマンは、何かを懐かしむようにぽつりぽつりと、語り出したのだった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

  【完結】 男達の性宴

蔵屋
BL
  僕が通う高校の学校医望月先生に  今夜8時に来るよう、青山のホテルに  誘われた。  ホテルに来れば会場に案内すると  言われ、会場案内図を渡された。  高三最後の夏休み。家業を継ぐ僕を  早くも社会人扱いする両親。  僕は嬉しくて夕食後、バイクに乗り、  東京へ飛ばして行った。

BL 男達の性事情

蔵屋
BL
漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。 漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。 漁師の仕事は多岐にわたる。 例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。 陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、 多彩だ。 漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。 漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。 養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。 陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。 漁業の種類と言われる仕事がある。 漁師の仕事だ。 仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。 沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。 日本の漁師の多くがこの形態なのだ。 沖合(近海)漁業という仕事もある。 沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。 遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。 内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。 漁師の働き方は、さまざま。 漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。 出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。 休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。 個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。 漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。 専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。 資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。 漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。 食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。 地域との連携も必要である。 沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。 この物語の主人公は極楽翔太。18歳。 翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。 もう一人の主人公は木下英二。28歳。 地元で料理旅館を経営するオーナー。 翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。 この物語の始まりである。 この物語はフィクションです。 この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。 そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。

灰かぶりの少年

うどん
BL
大きなお屋敷に仕える一人の少年。 とても美しい美貌の持ち主だが忌み嫌われ毎日被虐的な扱いをされるのであった・・・。

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

処理中です...