ファンタジア!!

日向 ずい

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第7章「紫翠との熾烈な戦い。」

「取り引き取り引き...生易しくないよ??」

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 俺は、目の前で余裕な顔をしているレミにこう言った。

「...あの...せめて、靴の裏を舐めるのは......勘弁してもらえないでしょうか......??」

 俺のこの言葉にレミは、途端不機嫌そうな顔色を俺に向けてきた。

「はぁ???誰に向かって口を利いているんだよ。お前の気持ちなんざ、コッチは知ったこっちゃねぇんだよ。......おら、分かったらさっさと俺の靴を舐めて小便漏らしながらズラかりな???(笑)」

 レミのこの言葉に俺は、またもや腸(はらわた)を煮え繰り返していた。

  あー、腹立つわ。

  なんで俺が、小便おもらしする前提で話進めてんだよ...。

 しっかし...こいつのこの顔が苦痛に歪むのも時間の問題だ。

 さぁ、あと少しだけ...時間稼ぎをしようか??

 俺は、内心こう考えると、目の前の無能なレミに向かって、猿芝居を続けたのだった。

「......その......俺の唾液であなたの高そうな靴を汚すことになってもいいんですか???言っておきますけど、俺...口臭酷いですよ...??(そういや、さっきまでミントガム噛んでたな......口臭ケアは大事だよな。)」

「はぁ......何度も言わせるな。...俺が舐めろって言ってるんだから、大人しく従ってればいいんだよ。それともなんだ??やっぱり怖気付いたのか??あぁ???」

 レミの挑発的な態度にプンスカプンしながら、俺は心の中で独り言を呟いていた。

 くそっ...どこまでも突っかかってくる奴だ。

 たくっ、わーったよ。

やりゃいいんだろやりゃよ...。

 こう見えても俺は、昔...まだマフィアの下っ端だった頃、仕事をとちっちまって...敵に捕まった時があったんだ...言っておくが、大昔のことだ。

 その時に、敵のマフィアに輪姦(りんかん)された経験を持ってんだよ。

 あん時に比べれば、お前の靴を舐めるぐらい......どうってことない。

 俺は、心の中で決心すると、レミに向かってこう言った。

「......靴を...上げてください。」

 俺の下手に出た発言に、さっきまでのイライラは何処へ行ったのやら、レミは気味の悪い笑みを俺に向け、俺の顔に足先をゆっくり近付けてきた。

「ほぉ???やっとやる気になったか。...だがな、お前が俺に指図するのは..チッチッチッ....礼儀知らずなガキだな!!ドゴッ......!!」

 「......っ!!!(痛)」

 レミは、俺の口元に近づけてきていた足で、勢いよく俺の顔面を蹴り上げてきた。

 俺は、その瞬間顔に酷い激痛が走り、内心悲痛な叫び声を上げた。

 痛ったーー!!!

 このアホ!!!...靴で俺の顔面至近距離で蹴るなよな!!

 受け身とってねぇし...真面目にいてぇよ。

まぁ、骨が折れないように考慮して当たる場所を調節したからいいものの...。

 俺の綺麗な顔に傷一つでもつけてみろ!

 雅が激おこプンプン丸総長になって、お前のことをコテンパンに...ってなればなぁ。

 実際のところは、ブス呼ばわりされて...もれなく、雅に遊んでもらえなくなる。

 って...んな事どうだっていいんだよ!!!

 俺のプライドズタズタにしやがって、許すまじだ...後で覚えてろよ??

 内心イライラMAX沸騰寸前だったが、俺は、俺の顔面を蹴った足を引っつかむとそのまま地面に下ろさせ、俺はゆっくりと口を奴の靴に近づけていった。

 そして...靴に舌が当たる寸前...。

「...レミさん????...どこですか????...米警です!!...レミさん???」

「おおっと、やーっときたか。...おい、お前。靴の掃除は、もういい...とにかく立て。...お前のことを食い物にしてくれる米警くん達が、御出でなさったようだぞ???...まぁ、せいぜい可愛がってもらいな。」

 お待ちかねの米警様登場のようで、俺のことを地面から立ち上がらせると、レミは立ち上がった俺の目を見つめつつ、ニヤニヤ微笑んでいた。

 俺は、鈍感なレミに内心呆れていた。

 奴はまーだ気づかないのかよ。呑気なやつ。(笑)

 俺は、その場にすっと立ち上がるとせっかくおろしたてのスーツの膝が汚れちまったため、軽く払った。

 そうして、目の前でニヤニヤと俺の事を見つめるレミに、クスッと微笑み返してやった。

 そんな俺の様子にレミは、悪態をついてきたが、そんなことどうでもいい。

「...俺はここだ!!...お前らの餌がここでお待ちかねだぞ!!」

 俺の発言に何か引っかかるものがあったのか、レミは軽く笑いながら、俺の発言を訂正してきた。

「はははっ、お前らの餌ねぇ~。...まぁ、あながち間違いじゃないけど...それ自分で言ってどうすんの???」

 俺のこの言葉に首を傾げたレミは、口に溜まった唾液を地面にぺっと吐き捨てると、背後から足音を立てて現れた米警に対して、荒々しくこう命令したのだった。

「おい、お前ら!!!...目の前の男を八つ裂きにして可愛がってやれ!!」

 レミ様よ??...目の前の男って...お前のことだろ???

 なぁ、無能なレミ様???

 俺の思考とは裏腹に、偉そうに米警に対して指示を出したレミに、米警は、不思議そうな表情で、短くこう言ったのだ。

「......ボス。...俺達は何を???」

 米警の発言にレミはイライラを募らせつつ、乱暴にこう言い放った。

「...だから、言っているだろう!!!目の前の男を、八つ裂きにして可愛がってやれ!!!」

 レミは、まだ状況が読めていないようで......さすがに可哀想だから、俺が親切に教えてあげることにした。

「...はははっ、アンタバカなの????...と言うよりも...傑作過ぎて笑えるよねぇ。...あのさぁ、ひとつ教えといてあげるけど...俺達が、誰なのかって分かってて、こんな愚かな行動とってるんだよね???......って、分かってないか~。だよね~、分かるわけないよね~...。なんか、可哀想になってきたから、そ~んなお馬鹿ちゃんには、特別補習をしてやるよ。実践を兼ねてな??」

 俺は、目の前で眉間に皺を寄せているレミに、ニヤッと不敵な笑みを向けると、俺の目の前に立っているガタイのいい米警様方にこう声をかけた。

「ねぇねぇ...ネズミの掃除を頼んでも???」

 俺の呼び掛けに威勢のいい声が、一斉に俺の耳へと入ってきた。

「承知しました。ネズミの掃除ということは...刺殺しますか???」

 米警は、俺の命令に正確に従うため、殺し方を質問してきた。

 だから俺は、その質問にハッキリとこう答えてやった。

「いや...じっくりいたぶってから、マウスにでもしたいところだな??」

「...はっ!!...ボスの頼みとあらば......何なりと...ボスへの忠誠を誓って。」

 こう言った米警は、俺の目の前でことの行く末についていけていないレミが、口をポカーンと開けて、俺と米警を交互に見ていた。

 そんなレミに米警は、ゆっくりと近づいていき、一人がレミを背後から羽交い締めにすると、もう一人が前方からレミの空いた腹目がけて勢いよく拳を叩きつけた。

 あまりの衝撃に呻き声を上げたレミは、俺の方に目線を移すと、さっきとは打って変わって遜(へりくだ)った態度を取ってきた。

 これこれ...これを望んでいたのよぉ~!

 はぁ...サイコーすぎ!!

「...あの......せめて命だけは......。」

 俺は、内心高揚しつつ、目の前で命乞いをするレミに、冷たい目を向けてこう言ってやった。

「はははっ、笑わせるよ...。俺がさっき...命だけはって言った時...アンタなんて言ったよ???...俺の言葉に聞く耳持たなかっただろ??」

 俺のこの言葉に、額から凄い量の汗を吹き出しながらレミは、さらに言葉を続けた。

「すまなかった...!!!あんたが...米警を裏で買収してるなんて、知らなかったんだ!!...その...だから、何とか...。」

 買収ねぇ...。ほんとに子供の言い方だな...そんな生易しいもんじゃないんだよ。

「買収だなんて人聞きが悪い...。きちんとした取引だよ。真っ当なね???...俺達組織と米警が手を組めば、素晴らしい世の中を作れるだろうってね??」

 俺がウインクを交えてレミに言葉を返すと、さっきから定期的に拳を身体に受けているレミは、次第に意識が朦朧としてきているのか、弱々しい声で最後の命乞いを始めた。

「......すまなかった。...これまでの過ち...全て白状するから...だから......どうか殺さないでくれ。......頼む。」

 うわぁー...哀れというのかなんというのか...まぁ、俺も鬼じゃぁない。...だから。

「うーん、どうしようかな~。そうだ!...おい、バイオレット???...ちょっと来てくれるか??コイツ...お前に謝りたいことがあるんだとよ。」 

 俺のこの呼び掛けに、それまで外で待機していたバイオレットが、ガサガサと白い布の裏に回って、俺たちの前に姿を現した。

「......何???...裏切り者の店主さん...。」

 バイオレットとレミの様子に俺は、米警にネズミ掃除を一時中断させるように指示を出した。

 俺の指示を受け取った米警は、レミへの暴行を中断した。

 レミは、バイオレットの冷酷な言葉に、目の前のレミは、ビクッと肩を揺らしたが、米警に暴行されて弱ってきている身体を、何とかもたせるため、はぁはぁと息を落ち着かせると、こう話をしだした。

「...バイオレット...申し訳なかった......。俺は...アンタに復讐するために、アンタに悪魔の曲を聴かせて......復讐する機会を伺っていた...。そして、今日...あなたがこの収穫祭に顔を出すと聞いて...今こそ、俺の仲間の敵を打つ時だって...。それで......市民も巻き込んで、あなたに散々聴かせた、悪魔の曲をここで弾いて、全ての罪をあなたに擦り付けようとしていた。...それが俺に出来る、仲間への復讐だと思っていた。言っておくが、俺の仲間も...お前が悪魔の曲欲しさに、皆殺しにされたんだ。...なら、この方法でお前を地の底に沈ませるのが、一番だろ??...俺はそう思って...。」

 レミのこの言葉に、少し訂正したい箇所があったため、俺はレミに向かってこう発言した。

「......言っておくが...バイオレットは、お前の仲間を皆殺しにした犯人じゃない...。...お前の仲間は...米警に射殺されたんだ。...わかっていないと思うが...奴らは、闇の競売に若い男女を売りに来ていたんだ...。お前の仲間は、人身売買に関わっていたんだよ。」

 俺のこの言葉に、目の前で信じられないといった顔をしているレミに、それまで黙って聞いていたバイオレットは小さくこう呟いた。

「...地獄に落ちろ。...レミ。...お前のピアノの腕は最高だったが......心は真っ黒で汚い...そんな奴のピアノは聴きたくもない。」

 バイオレットのこの一言と同時に、俺は米警にネズミ掃除の再開を合図し、それを受け取った米警は、レミの腹にトドメの一撃として、凄まじい蹴りを入れた。

 その瞬間、レミは完全に意識を失ったのだった。
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