ファンタジア!!

日向 ずい

文字の大きさ
83 / 102
第8章 「俺達の...スタートライン。」

「奴らとの出会い。」

しおりを挟む
 俺たちが控え室に入り、緊張した面持ちで、出番を待っていた時...そう...事件は起こった。

「あれ~!!!誰かと思えば、虎雅くんじゃーん!!!どうしたの~、こんな所まで???」

 ...嘘だろ...なんでこいつらが、ここに居るんだよ!!!

 だって、このウィン・ソニは、デモテープを送って選ばれた人達だけが、実際に会場に来ることを許される世界のはずだろ...。

 ...なのになんで...なんで......奴らが???

 俺は、目の前に現れた人物に...同様が隠しきれず、唇を震わせながらその人物を見つめていた。

「ねぇ...久しぶりにあった先輩に対しての態度が......これ???......生意気なんだよ。」

 俺の耳元に顔を寄せてきた......俺の元バンドメンバーの先輩......は、俺にこんなことを言って、その場を去っていった。

「...気の遣えないお前らのバンドが、ちゃんと演奏出来るわけないじゃん。...夢見るのも大概にしな??...じゃあね、恥かかないうちに、とっととお家へ帰った方がいいよ。(笑)」

 俺は、怒りで震える拳を必死に握りしめていた。

 そんな俺に気がついたのか、翔真は俺の肩を叩くと満面の笑みで、苛立つ俺へこんな言葉をくれた。

「虎雅???...なんだろうね、さっきの人たち。...初対面のくせして失礼だよね~。...ほら、もうすぐ俺たちの番だよ??ねぇ、リーダーなんだから、仲間をビシッとまとめてよね!」

「...あっ...あぁ...そうだよな。......ありがとう...翔真。」

 正直...翔真が俺に声をかけてくれなかったら、俺は憎い先輩達を追って、思い切り拳をふり下げていたと思う。

 ...だから...翔真には、感謝している...。

 そうして、俺たちの番がやってきた。

 『...失礼します。』

みんなで声をかけながら、部屋の中に入ると...そこには、いかにも面接官です!っていう雰囲気が漂う3人の面接官が、俺たちのことを待っていた。

 俺達は、彼らと向き合う形で部屋の中央まで行くと、横一列に並び、面接官の言葉を待った。

「...はい、よろしくお願いします。...早速なんですけど、受付番号と...名前を1人ずつ教えてくれるかな??」

 面接官のこの言葉に俺たちの、心拍数は上昇真っ只中だった。

 そんな緊張した空気の中、俺たちの運命を決める第一歩の面接が始まりを告げたのだった。

 そうして無事に面接が終わり...

「はい...本日は以上となります。...綺麗な音色......とてもよく揃っていて聴いていて心地よかったです。これからも......頑張って下さいね。」

『...ありがとうございます。......失礼します。』

 と言って、みんなで部屋を出たのだった。

 部屋を出た瞬間に俺達は、一斉に溜息をつき出した。

 緊張しすぎて、ろくに酸素を吸っていなかったからか...呼吸が苦しくてたまらなかった...。

 俺たちは、それほどまでに、緊張していたのだと、部屋を出てから始めて実感したのだった...。

 俺達は、会場を出るまで一言も喋らずに朝と同じように電車に乗り込むと、これまた朝と同じように、陽気な声で...翔真が、話し出した。

「いや~、楽しかったねぇ~!!!...俺達のこと、きっと分かってくれたよね!!」

 全く...翔真の能天気さには呆れるな...。...でも今は、この行きすぎるぐらいの能天気さが、みんなの疲れた心を癒してくれる、丁度いいものになっていたのも、事実だった。

 そんな翔真に、珍しく反応したのは優だった。

「...翔真。...俺も楽しかった。...面接官に、俺たちの思いが伝わっているといいな。」

「だよな!!...いや~、優はやっぱり分かるやつだよな!!!」

 優と翔真の会話に、その場にいた全員の肩の荷が、やっと減少していき、気がつけば、いつもの『月並み』の温度に戻っていた。

 ...面接官が...褒めてくれたんだ。

 手応えがあったと思うのは、悪いことじゃないだろう...多分な。

 俺は、内心こう考えながら、目の前で持参した駄菓子をみんなに配って、簡易お菓子大会をしている奏也に、苦笑いを向けこう言うのだった。

 「奏也、散らかしたらダメだからな???お菓子、クズこぼさないように、上手に食べるんだぞ??」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。 そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

  【完結】 男達の性宴

蔵屋
BL
  僕が通う高校の学校医望月先生に  今夜8時に来るよう、青山のホテルに  誘われた。  ホテルに来れば会場に案内すると  言われ、会場案内図を渡された。  高三最後の夏休み。家業を継ぐ僕を  早くも社会人扱いする両親。  僕は嬉しくて夕食後、バイクに乗り、  東京へ飛ばして行った。

処理中です...