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第8章 「俺達の...スタートライン。」
「神の旋律...覗く視線。」
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「それでは...月並みのみなさん......これから、ウィンター・ソニック・オーディションの第二審査を開始します。...どうぞよろしく。」
『よろしくお願いします。』
俺達は、部屋に来た審査員5人に大きな声で頭を下げると、早速...それぞれの持ち場についた。
そして...俺から、審査員にこれから弾く曲の説明を始めたのだった。
「...これから披露させて頂くのは......バロック&ロックさんの曲で...『時を改め。』のアレンジ曲です。.....私達は、バロック&ロックさんのような素晴らしい演奏を披露することはできません。...ですが、私達なりの弾き方で、バロック&ロックさんのこの曲に込めた思いを演奏にのせ...お伝えしたいと考えています。」
この言葉に審査員の一人が...
「そうですか...では、早速どうぞ。」
と促してきたため、俺達は顔を見合わせると、大きく頷き合い、演奏を始めたのだった。
正直びっくりした...。
優のピアノが.........あの不協和音を奏でていたピアノが...この世にないほど美しく...何故か...俺の心に必死に語りかけてくるようで...。
俺は、そんな優のピアノの音を意識していた為か、気付いた時には、演奏が終わっていた。
優のピアノの違和感に気がついたのは、俺だけじゃなかったようで...審査員の人達は、目をまん丸くさせ、優のことをじっと見つめていた。
一人の審査員は、優のピアノに対してダメ出しをしてきた。
「そんな不協和音...聴いていられない。...最悪だよ。」
一人の審査員の声に他の審査員も、口を揃えて、優のことを集中攻撃しだした。
あぁ...やっぱりダメだったか...。
こう思い、諦めかけた矢先...中央の椅子に腰をかけていた審査員だけは...反応が違っていた。
俺達が歯を食いしばりながら一礼すると...それを合図に中央に座る審査員の一人が、優に酷く取り乱した様子でこう質問を投げかけてきたのだった。
「不協和音...??いや......ピアノの旋律が......一体どうやって弾いたんだね!???」
中央に腰をかける審査員の言葉に、少し照れた様子で、優はこう答えた。
「...ピアノの旋律が、不協和音を示していて......それで、よくよく考えたら...スティックが起こっていることに気づきました。...それから、しばらく考えて...スティックで音が出なくなっている箇所の音を...どうやったら作れるのかを必死で考えて、なるべく壊れている鍵盤だけは使わないように、頭でアレンジしながら......でもまぁ、結局使わないといけない箇所は出てくるんですけど......そこは、あえて壊れているキーと、そのキーと相性の良い鍵盤キーの、1オクターブ低いキーと、その反対の1オクターブ高いキー...その3つを同時に押したんです。そしたら...出ない音をカバーしつつ、不協和音を少しでも抑えられました。半分は賭けだったんですけどね。(笑)...あとは、俺を信じてくれた仲間のおかげですかね。」
優の説明に、信じられないと言った顔をした中央の審査員が、席から立ち上がると深々と俺たちに頭を下げてきた。
「...大変失礼を致しました。......オーディションという大切な時に...壊れたままのピアノを扱わせてしまい......。......ですが、それさえも...音楽に変えられるあなたの才能は、まさに神の領域です。......この先もぜひ...神の腕を持つことを...自分のピアノの才能を誇りに思い、ピアノと向き合っていってください。......審査は以上です。...ありがとうございました。...それと......この度は、私の部下が大変失礼な態度をとってしまったこと...心からお詫び申し上げます。......今後、しっかりと指導していくので、どうか...これからも私たちと良い関係を築いていってください。」
こう言った中央の審査員以外の審査員たちは、バツが悪そうな顔をして俺たちに頭を下げると...部屋を出ていった。
そんな審査員達とは異なり...優のピアノを褒めてくれた審査員は去り際に...優に対して...
「素敵なメーセージ...メロディを...どうもありがとう。...今日は私にとって記念ともなり得る素敵な日だ。」
と言って、微笑みを向けると、前に出ていった審査員を追いかけるように、部屋を出ていったのだった。
残された俺達は、しんとした部屋の中で、顔を見合わせると...次の瞬間、手を叩きあって喜びあった。
そう...すべては、優のおかげ。
優が......壊れたピアノを上手く使ってくれたから成り立ったんだ。
だが、俺達が微笑み合い、喜びを分かちあっていた時......審査会場の扉の隙間から覗く鋭い視線が、こんなことを言っているなんて...思いもよらなかった...。
「...くそっ...審査員の買収、それに加えてピアノの旋律をめちゃくちゃにしてやったのに......なんでだよ!!!なんで上手くいくんだよ...!!!......桜宮虎雅...冬月翔真...。あの二人は...あの二人だけは、絶対に許さないからな。必ず、どんな手を使ってでも、地獄をみせてやるからな。(笑)」
『よろしくお願いします。』
俺達は、部屋に来た審査員5人に大きな声で頭を下げると、早速...それぞれの持ち場についた。
そして...俺から、審査員にこれから弾く曲の説明を始めたのだった。
「...これから披露させて頂くのは......バロック&ロックさんの曲で...『時を改め。』のアレンジ曲です。.....私達は、バロック&ロックさんのような素晴らしい演奏を披露することはできません。...ですが、私達なりの弾き方で、バロック&ロックさんのこの曲に込めた思いを演奏にのせ...お伝えしたいと考えています。」
この言葉に審査員の一人が...
「そうですか...では、早速どうぞ。」
と促してきたため、俺達は顔を見合わせると、大きく頷き合い、演奏を始めたのだった。
正直びっくりした...。
優のピアノが.........あの不協和音を奏でていたピアノが...この世にないほど美しく...何故か...俺の心に必死に語りかけてくるようで...。
俺は、そんな優のピアノの音を意識していた為か、気付いた時には、演奏が終わっていた。
優のピアノの違和感に気がついたのは、俺だけじゃなかったようで...審査員の人達は、目をまん丸くさせ、優のことをじっと見つめていた。
一人の審査員は、優のピアノに対してダメ出しをしてきた。
「そんな不協和音...聴いていられない。...最悪だよ。」
一人の審査員の声に他の審査員も、口を揃えて、優のことを集中攻撃しだした。
あぁ...やっぱりダメだったか...。
こう思い、諦めかけた矢先...中央の椅子に腰をかけていた審査員だけは...反応が違っていた。
俺達が歯を食いしばりながら一礼すると...それを合図に中央に座る審査員の一人が、優に酷く取り乱した様子でこう質問を投げかけてきたのだった。
「不協和音...??いや......ピアノの旋律が......一体どうやって弾いたんだね!???」
中央に腰をかける審査員の言葉に、少し照れた様子で、優はこう答えた。
「...ピアノの旋律が、不協和音を示していて......それで、よくよく考えたら...スティックが起こっていることに気づきました。...それから、しばらく考えて...スティックで音が出なくなっている箇所の音を...どうやったら作れるのかを必死で考えて、なるべく壊れている鍵盤だけは使わないように、頭でアレンジしながら......でもまぁ、結局使わないといけない箇所は出てくるんですけど......そこは、あえて壊れているキーと、そのキーと相性の良い鍵盤キーの、1オクターブ低いキーと、その反対の1オクターブ高いキー...その3つを同時に押したんです。そしたら...出ない音をカバーしつつ、不協和音を少しでも抑えられました。半分は賭けだったんですけどね。(笑)...あとは、俺を信じてくれた仲間のおかげですかね。」
優の説明に、信じられないと言った顔をした中央の審査員が、席から立ち上がると深々と俺たちに頭を下げてきた。
「...大変失礼を致しました。......オーディションという大切な時に...壊れたままのピアノを扱わせてしまい......。......ですが、それさえも...音楽に変えられるあなたの才能は、まさに神の領域です。......この先もぜひ...神の腕を持つことを...自分のピアノの才能を誇りに思い、ピアノと向き合っていってください。......審査は以上です。...ありがとうございました。...それと......この度は、私の部下が大変失礼な態度をとってしまったこと...心からお詫び申し上げます。......今後、しっかりと指導していくので、どうか...これからも私たちと良い関係を築いていってください。」
こう言った中央の審査員以外の審査員たちは、バツが悪そうな顔をして俺たちに頭を下げると...部屋を出ていった。
そんな審査員達とは異なり...優のピアノを褒めてくれた審査員は去り際に...優に対して...
「素敵なメーセージ...メロディを...どうもありがとう。...今日は私にとって記念ともなり得る素敵な日だ。」
と言って、微笑みを向けると、前に出ていった審査員を追いかけるように、部屋を出ていったのだった。
残された俺達は、しんとした部屋の中で、顔を見合わせると...次の瞬間、手を叩きあって喜びあった。
そう...すべては、優のおかげ。
優が......壊れたピアノを上手く使ってくれたから成り立ったんだ。
だが、俺達が微笑み合い、喜びを分かちあっていた時......審査会場の扉の隙間から覗く鋭い視線が、こんなことを言っているなんて...思いもよらなかった...。
「...くそっ...審査員の買収、それに加えてピアノの旋律をめちゃくちゃにしてやったのに......なんでだよ!!!なんで上手くいくんだよ...!!!......桜宮虎雅...冬月翔真...。あの二人は...あの二人だけは、絶対に許さないからな。必ず、どんな手を使ってでも、地獄をみせてやるからな。(笑)」
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