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第9章 「最終審査の悲劇。」
「最終審査のお知らせ。」
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「リーダー大変だ!!!!」
「はぁ......前も言っただろう???ここのサークル棟は、ボロなんだ。...奏也...サークル棟の部屋のドアが壊れたら、お前のせいだからな???...弁償しろよ??」
練習部屋でギターの手入れをしていた俺の元に物凄い足音を響かせて、現れたのは......息を切らした奏也だった。
奏也は、ギターの手入れをしている俺のことを目にとめると、大きな声を出して俺の注意を引きつけようとした。
俺はギターの手入れが忙しかったこともあり、奏也に声だけで、軽く冗談をふっかけたのだが...
「.....奏也??聞いているのか???...『月並み』では修繕費を払わないからな???......どうした...そんなに改まって。」
なかなか言葉を返してこない奏也に対して、疑問を抱いた俺は、目の前の奏也に視線を向けた。
すると奏也は、さっきまで息を切らしていたにも関わらず、真剣な表情で俺の事を見つめていた。
俺の問いに、奏也は待ってましたとばかりに大きく息を吸うと、衝撃的なことを言ったのだった。
「...オーディションに受かった...。最終審査に......ご招待だって...。......最終審査に残ったんだよ!!!!!!」
『えっ!????』
それまで無言でいた他のメンバーは、衝撃的な連絡を持ってきた奏也の方を勢いよく振り返っていた。
そんなみんなに、奏也は興奮が冷め止まないのか、口で呼吸をしながらこう続けた。
「...日時は...来週の12時だって...!!!!!!...これに勝ち上がれば、晴れてバロック&ロックさんとのコラボレーションが出来るよ!!!!」
奏也に落ち着けと言いたいところだが...まずいな。
おい、マジで嬉しいぞ......どうしても顔がにやけてしまう...くそっ...バレるだろうが...おさまれよ!!!
俺が緩み出す頬に対して、必死に抑えを発していた時にはすでに......遅かった...。
俺の顔を見た翔真が、余計なことを口にしたのだ。
「うわぁー!!!!虎雅が、ニヤニヤしてる!!!!変態だー!!!!」
いや...変態じゃねぇよ!!!!
このアホ!!!!...って、そりゃそう言われても仕方ないか...。
一人でギター抱えながら、ニヤニヤしてるんだぞ???
うん...気持ち悪くないはずがない。
うわー...マジか...めっちゃ恥ずかしいやつだぞ...これ、どーしよ...。(汗)
俺は、自らの恥ずかしさを消したくて、必死に話の話題を探し...急いで口を開き、自らの過ちを誤魔化した。
「っ......それで......最終審査に残ったのはいいけど...。今度は...なんの曲弾くんだよ????」
こんな俺の問いに、いち早く口を開いたのは、いつもは周りの意見に合わせている優だった。
「メリメラント...「去りノ乱離のリラ」の「メリメラントそれと俺...」が弾きたいです。」
優...お前正気かよ!??
お前は、その曲を最終審査オーディションで披露するつもりか???...そんな代わり曲を...!!!!
俺がこう思ったのも無理はない......だって、『去りのリラ』の曲は...。
この俺の思考は、七緒の発言により見事に語られることとなった。
「...先輩...本気ですか!???...メリ俺は......物凄く変曲の...機械音声の曲じゃないですか!???...どうして......よりにもよって、オーディションなんかでそんな曲を...。(汗)」
そう...。
『メリメラントそれと俺...』は......DTM業界大手の...UMIHAが開発した人工音声の......曲だ。
最近ちまたでは、VOCALOIDとも呼ばれているタイプのもので...その中でも、『メリ俺』は、一言でいうと...人間が歌うことはまず不可能に近いほど、難易度が高い曲なんだ。
そんな曲をなぜ......なぜ優は、ウィン・ソニのような大きなオーディションのよりにもよって、最終審査で披露しようなどと...。
俺のこの考えが伝わったのか、優は、納得のいかない顔をしている他のメンバーにこう説明を始めた。
「......オーディションだからこそです。...難易度の高い『メリ俺』を完璧に披露することが出来れば、俺達は審査で勝ち残れる可能性が格段に高くなると言えます。...だから俺は......この曲に......ここまで一緒にやってきたこのメンバーで、挑みたいんです。...お願いします。...俺に力を貸してください。」
優は、頭を下げると俺達の協力を要請した。
そんな優の様子に、そこにいたメンバーは、誰も否定なんてしなかった...だって、優のおかげで二次審査を通過することが出来たんだ。
だったら、俺達は...優に力を貸すしかない。
優なら、きっとこのオーディションを、俺達の心に一生残る良いものにしてくれるだろうという確かな確信があったからだった。
「...優...顔を上げて。...みんな、大賛成だよ!」
「そうですよ!!!...優先輩のおかげで最終審査まで来ることが出来たんですから、結果がどうであれ、優先輩について行きます!!」
「...俺も、DTM好きだし!!!!...大賛成!!!」
口々にこう明るい声を上げたメンバーに優は、嬉しそうに下げていた顔を上げると、大きな声で
「...みんな...ありがとう!!!!...絶対良いものになると思うから!!!」
と言って、チラッと俺の方を見つめてきた。
俺はそんな優に静かにコクリと頷くと、座っていたソファから立ち上がり、優の事を抱きしめたのだった。
「優......たとえこのオーディションが不発だとしても......俺達の心には、一生...死ぬまで残り続ける。もちろん......楽しかった思い出としてな。...だから、重荷を背負うことはないんだぞ??...リラックスして、みんな一緒にオーディションに臨(のぞ)もう...。」
俺のこの言葉に、俺の背中に手を回した優は、嬉しそうに、でも泣いているのか震える声色で、こう答えてくれた。
「はい、虎雅さん。......俺...みんなと精一杯楽しめるように...必死にアレンジ考えます。......ありがとうございます...虎雅さんが......この『月並み』のリーダーで良かった。...俺のリーダーで良かったです。」
なぁに...こっちこそだ...。
優...お前が俺のいち仲間で良かったよ。
大丈夫だ。
俺たちなら、必ずどこまでも笑顔で突っ走れる。
俺はこんなことを心に浮かべつつ、優から身体を離すと、周りで俺たちのことを見ていた仲間に、練習開始の合図を掛けたのだった。
「はぁ......前も言っただろう???ここのサークル棟は、ボロなんだ。...奏也...サークル棟の部屋のドアが壊れたら、お前のせいだからな???...弁償しろよ??」
練習部屋でギターの手入れをしていた俺の元に物凄い足音を響かせて、現れたのは......息を切らした奏也だった。
奏也は、ギターの手入れをしている俺のことを目にとめると、大きな声を出して俺の注意を引きつけようとした。
俺はギターの手入れが忙しかったこともあり、奏也に声だけで、軽く冗談をふっかけたのだが...
「.....奏也??聞いているのか???...『月並み』では修繕費を払わないからな???......どうした...そんなに改まって。」
なかなか言葉を返してこない奏也に対して、疑問を抱いた俺は、目の前の奏也に視線を向けた。
すると奏也は、さっきまで息を切らしていたにも関わらず、真剣な表情で俺の事を見つめていた。
俺の問いに、奏也は待ってましたとばかりに大きく息を吸うと、衝撃的なことを言ったのだった。
「...オーディションに受かった...。最終審査に......ご招待だって...。......最終審査に残ったんだよ!!!!!!」
『えっ!????』
それまで無言でいた他のメンバーは、衝撃的な連絡を持ってきた奏也の方を勢いよく振り返っていた。
そんなみんなに、奏也は興奮が冷め止まないのか、口で呼吸をしながらこう続けた。
「...日時は...来週の12時だって...!!!!!!...これに勝ち上がれば、晴れてバロック&ロックさんとのコラボレーションが出来るよ!!!!」
奏也に落ち着けと言いたいところだが...まずいな。
おい、マジで嬉しいぞ......どうしても顔がにやけてしまう...くそっ...バレるだろうが...おさまれよ!!!
俺が緩み出す頬に対して、必死に抑えを発していた時にはすでに......遅かった...。
俺の顔を見た翔真が、余計なことを口にしたのだ。
「うわぁー!!!!虎雅が、ニヤニヤしてる!!!!変態だー!!!!」
いや...変態じゃねぇよ!!!!
このアホ!!!!...って、そりゃそう言われても仕方ないか...。
一人でギター抱えながら、ニヤニヤしてるんだぞ???
うん...気持ち悪くないはずがない。
うわー...マジか...めっちゃ恥ずかしいやつだぞ...これ、どーしよ...。(汗)
俺は、自らの恥ずかしさを消したくて、必死に話の話題を探し...急いで口を開き、自らの過ちを誤魔化した。
「っ......それで......最終審査に残ったのはいいけど...。今度は...なんの曲弾くんだよ????」
こんな俺の問いに、いち早く口を開いたのは、いつもは周りの意見に合わせている優だった。
「メリメラント...「去りノ乱離のリラ」の「メリメラントそれと俺...」が弾きたいです。」
優...お前正気かよ!??
お前は、その曲を最終審査オーディションで披露するつもりか???...そんな代わり曲を...!!!!
俺がこう思ったのも無理はない......だって、『去りのリラ』の曲は...。
この俺の思考は、七緒の発言により見事に語られることとなった。
「...先輩...本気ですか!???...メリ俺は......物凄く変曲の...機械音声の曲じゃないですか!???...どうして......よりにもよって、オーディションなんかでそんな曲を...。(汗)」
そう...。
『メリメラントそれと俺...』は......DTM業界大手の...UMIHAが開発した人工音声の......曲だ。
最近ちまたでは、VOCALOIDとも呼ばれているタイプのもので...その中でも、『メリ俺』は、一言でいうと...人間が歌うことはまず不可能に近いほど、難易度が高い曲なんだ。
そんな曲をなぜ......なぜ優は、ウィン・ソニのような大きなオーディションのよりにもよって、最終審査で披露しようなどと...。
俺のこの考えが伝わったのか、優は、納得のいかない顔をしている他のメンバーにこう説明を始めた。
「......オーディションだからこそです。...難易度の高い『メリ俺』を完璧に披露することが出来れば、俺達は審査で勝ち残れる可能性が格段に高くなると言えます。...だから俺は......この曲に......ここまで一緒にやってきたこのメンバーで、挑みたいんです。...お願いします。...俺に力を貸してください。」
優は、頭を下げると俺達の協力を要請した。
そんな優の様子に、そこにいたメンバーは、誰も否定なんてしなかった...だって、優のおかげで二次審査を通過することが出来たんだ。
だったら、俺達は...優に力を貸すしかない。
優なら、きっとこのオーディションを、俺達の心に一生残る良いものにしてくれるだろうという確かな確信があったからだった。
「...優...顔を上げて。...みんな、大賛成だよ!」
「そうですよ!!!...優先輩のおかげで最終審査まで来ることが出来たんですから、結果がどうであれ、優先輩について行きます!!」
「...俺も、DTM好きだし!!!!...大賛成!!!」
口々にこう明るい声を上げたメンバーに優は、嬉しそうに下げていた顔を上げると、大きな声で
「...みんな...ありがとう!!!!...絶対良いものになると思うから!!!」
と言って、チラッと俺の方を見つめてきた。
俺はそんな優に静かにコクリと頷くと、座っていたソファから立ち上がり、優の事を抱きしめたのだった。
「優......たとえこのオーディションが不発だとしても......俺達の心には、一生...死ぬまで残り続ける。もちろん......楽しかった思い出としてな。...だから、重荷を背負うことはないんだぞ??...リラックスして、みんな一緒にオーディションに臨(のぞ)もう...。」
俺のこの言葉に、俺の背中に手を回した優は、嬉しそうに、でも泣いているのか震える声色で、こう答えてくれた。
「はい、虎雅さん。......俺...みんなと精一杯楽しめるように...必死にアレンジ考えます。......ありがとうございます...虎雅さんが......この『月並み』のリーダーで良かった。...俺のリーダーで良かったです。」
なぁに...こっちこそだ...。
優...お前が俺のいち仲間で良かったよ。
大丈夫だ。
俺たちなら、必ずどこまでも笑顔で突っ走れる。
俺はこんなことを心に浮かべつつ、優から身体を離すと、周りで俺たちのことを見ていた仲間に、練習開始の合図を掛けたのだった。
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