ファンタジア!!

日向 ずい

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第11章 「俺たちの世界...ファンタジア。」

「俺たちの夢は終わらない....いや、終われない。」

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 俺たちは、マネージャーとの交渉の末に、晴れて優とともにアイドル活動をすることが出来、更に元々の目標であった月並みとしてのバンド活動....これらをこなす、前よりももっと多忙な日々が始まった。

 でも、何でか分からないけれど...前の俺たちの中に流れていた、嫌な雰囲気はいつの間にか消え失せており、代わりにみんなの目標が一つになったのか、前よりも団結力....そして、活気が溢れるようになっていた。

 前よりも、忙しくて辛いはずなのに、自然とそんな事を感じなくなっていた。

 それは、俺だけではないらしく....ほら、俺が大学の講義無いから早いのは当たり前だけど....こんな走ってくるか普通。

 足音が防音室の中にまで聞こえてきてるぞ??

 「....おっしゃ~~~~!!!一番乗り~~~~!!!!って.....えっ、何だよ....。また、虎雅が一番乗りかよ....。」

 「...残念だったな。...というよりも、ここは仕事場だぞ????アイドルがそんな猛ダッシュで来て大丈夫なのかよ...。(汗)お前の足音....この防音室の中まで聞こえてきていたぞ???」

 俺のこの呼びかけに、目の前で軽く汗をかいている翔真は、目をまん丸くさせていた。

 「えっ、...嘘????俺の足音、この部屋の中まで聞こえていたの???...それ絶対あとでマネージャーさんにお叱りを受けちゃう一時間のお叱りコースを予約しちゃったやつじゃん...。うわぁ、面倒くさいなぁ...。うん、よし!!バンド練習終わったら即帰ろっ!!!!」

 目の前の翔真は、以前より狡賢くなった気がするのは....おそらく気のせいではないだろう。

 俺は、こんなしょうも無いことを考えながら、今日の練習...月に二回出来るようになった、バンド練習の準備をいそいそと始めるのだった。

 そうして、そんな多忙な...それでいて、どこか充実した生活を送っていた俺たちは...今緊張のまっただ中にいる...。

 「おい、そっちの照明...ちゃんと、準備できているのか????....あっ、そこコードあるから気をつけて!!!!」

 「もうすぐ本番だ。みんな慎重に進行するように!!!!....本番開始まで10秒前....10...9...8.....7....6....5...4.....3.........(スタート!)」

 裏方のスタッフさん達の声に合わせて、俺たちはそれぞれの武器を持ち、勢いよく舞台袖からステージに飛び出た。

その瞬間、聞こえてくる大歓声....。

 この声を聞くと、俺たちの名前がようやく世間に認めてもらえるまでになったんだと、改めて実感することが出来る。

 「みなさん、こんにちは!!!!...俺たちは、ファンタジーな世界からやってきた!?ような人...でおなじみの五人組のアイドルグループ『ファンタジア』です!!!!....は、今日の俺たちの姿ではなくて...今日の俺たちは、男性ロックバンド『月並み』です!!!!...今日は俺たちの音楽...いえ、真の俺たちと一緒に盛り上がりましょう!!!!!」

 俺のマイクに通したこの声に、舞台を見上げていた観客のみんなは、大歓声を上げていた。

 俺たちは今...世界を股に掛けるほどの超人気アイドルグループ『ファンタジア』の顔と....俺たちの夢の原点でもあった『月並み』としての、超人気ロックバンドの顔...そう、俺たちは今二つの顔を持つ新たなユニットとして、メディアなどから注目を集めている。

 俺たちが、夢を諦めなかったから...きっと叶ったんだよな。

 こんな幸せな日々、もう2度とやってこないだろう...。

 俺は内心こんな事を考えながら、翔真...優、七緒、奏也と共に、ライブ開始の合図を唱えた。

 そう言えば、この間、聞いた話なんだけど...優の家に散々嫌がらせしていた先輩方は、SINさんのおかげで大企業の社長である彼らの親に、謝罪会見を開かせる事に成功し...事の発端を作った先輩方はと言うと、親から『お前は、この家の恥だ!!!!』と言われて、縁を切られたそうだ...。

 まぁ、当然だよな???

 優の家自体を困らせて、家族共々飢え死にさせようとしたんだから。

 この罪の代償は大きいよね。

 とまぁ、そんなこんなで、俺たちは無事に大きなドームのライブを終え、控え室に帰るとだら~んとだらけていた。

 「あ~~~、疲れたよ~~~~!!!!!もう腕も足も...体力も脳みそも目ん玉から足の爪まで...限界。」

 「...ははは、翔真しっかりしろよ???おまえから、体力奪ったら...何も残んなくなるからな???(...目ん玉から足の爪って...本当に、限界を迎えるとどうなるんだ...謎だな...???)」

 「はぁ!???ちょっと、それどういう意味!???...いくら、毎回頑張ってくれてるリーダーの虎雅でも、その言葉は聞き捨てならないよ!!!!!」

 俺がソファでだらけている翔真に、冗談をふっかけると、元気がないと言っていた割には、俊敏なスピードでソファから起き上がると、翔真は俺に挑発的な視線を送ってきた。

 そんな俺たちのことを、クスクスと笑いながら、やんわりと止めに入ったのは...。

 「あははっ、もう翔真も虎雅さんもやめませんか???...なんだか、弟たちの喧嘩を見ているようで、微笑ましく思います。(笑)」

 「はぁ!????...っ、いいか???子供なんてな!!!このグループには、翔真一人で十分なんだよ!!!!」

 「ちょっ!!!虎雅!???今日の虎雅酷くない!???...なにげ俺ばっか攻撃してくるじゃん。」

 こう言って、悔しそうな顔をしている翔真に俺は、にんまりとした笑みをむけながら、こう答えた。

 「はぁ、お前にいつもいつもふりまわされているからな。それの仕返しだ。」

 俺のこの言葉に、翔真はほっぺたをぷくっと膨らませながら、すねた子供のように俺の方を見ていた。

 全く、ほんとに子供なんだから...。

 こんなことを考えながら、俺は目の前でふてくされてる翔真に近づくと...優しく頭を撫でてやるのだった。

 「...くそっ。虎雅に頭撫でられると、なんでか...怒っていても許しちゃう...。意味わかんないし...クソ悔しいし。」

 はぁ、翔真は手が放せない子供のように可愛いな。

 仕方ないよな...お前は家では、しっかり者のお兄ちゃんだもんな。

 たまには、俺がこいつの兄になってやるのもいいのかもな。

 なんて考えていることは、心の戸棚にしまい込んで...俺たちは、やっと終わりを告げた、俺たちの...バンドとしての...『月並み』としての世界ツアーの締めくくりでもある今日は、東京にいるということもあり、いつかの時のように...俺たちの運命を変えてくれたお店に、打ち上げに行くことになった。

 用意も早々に部屋を出ようとした俺たちの元に現れたのは...まさかの人物だった。

 「...やぁ、みんな久しぶりだね!!!元気にしてた???.........」
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