ダメな私と吸血鬼

日向 ずい

文字の大きさ
3 / 62
第1章 「出来損ないの私。」

私の...父親

しおりを挟む
 母と姉が乗った馬車を、自室の窓から見えなくなるまで見つめていると
「コンコンッ。」
と突然部屋のドアがノックされる音がして...エピーヌは、咄嗟に身がまえた...何故なら...。...エピーヌは、深呼吸をひとつすると
「...はい...どうぞ...。」
と言って手をぐっと握り、拳を作った。
「...入るぞ。」
とひと言いって、部屋に入ってきたのは...エピーヌの父親であるジャルースだった...。
 ジャルースは、エピーヌの部屋に入るなり
「...エピーヌ!...お前また、ヴァニーユのものを勝手に盗んだんだってな...。ほんとに...お前という奴は...そんな奴には、罰を与えないとな...(笑)」
と言ってニヤッと気色の悪い笑みを浮かべて一歩ずつエピーヌに近づいて来た...。
 エピーヌは、そんなジャルースを見ると顔から血の気が引き...真っ青な顔をして
「...すみません...ジャルース父様...どうか...お許し下さい...。(汗)」
と言って必死に頭を下げた。
 そんなエピーヌにジャルースは、ゆっくりと距離をつめながら
「...ふん...エピーヌ...お前は、いつもそうだ...。面倒事ばかり起こしやがって...この出来損ないが!!!(怒)」
こういったジャルースは、自分の持っていた杖で頭を下げた状態のエピーヌの背中を思いっきり、殴りつけた。
 「...うっ!?...ぐはっ...はぁ...はぁ...。」
その瞬間...エピーヌは、呻(うめ)き声を上げ、衝撃に耐えきれず膝をつき、力なく地面に倒れてしまった...。
 そんなエピーヌの様子が気に食わなかったのか、ジャルースは、床に倒れたエピーヌに更に罵声(ばせい)を浴びせた。
「...誰が床に寝ろと言った!!(怒)...あっ!!そうだ、いい事を思いついたぞ...(笑)」
と言ったジャルースは、エピーヌを見つめて何かを思いついたようにニヤニヤとしながら自分の胸ポケットを漁りだした...。
 そんなジャルースにエピーヌは
「...申し...訳...ございません...。今...立ち上がりますので...。」
と言って痛みに顔を歪めながら立ち上がろうと体を起こした瞬間...ジャルースは、エピーヌの背中に護身用のナイフを突き立てた。
「...うっ...いっ...痛い...。ジャルース父様...やめて...ください...。」
と言ってジャルースに必死に対抗した...。だが、ジャルースは、そんなエピーヌの事は、知らないというふうにナイフを何度も何度もエピーヌの背中に突き立てると何かを彫り出した...。
「...誰がやめるか...!!エピーヌは、このくらいのことをしたのが、分かっとらんのか!!もう一生このような事がないように、印を刻んどいてやるだけだ!!(笑)ありがたく思えよ!!(笑)」
と言って、苦痛で意識が遠のいていくエピーヌをよそに、ジャルースは、もくもくと不敵な笑みを浮かべ...ナイフを何度も何度もエピーヌの背中に突き立てては、何かを彫り続けるのだった...。
「...うっ...(もうイヤだ...いっそ殺してくれた方がマシだわ...お願い私を...)。」
激痛にもう声が出せなくなったエピーヌは、そのまま意識を失った...。
 そんなエピーヌにジャルースは
「...ん?...エピーヌ...?まったく、父がおる前だというのに、気を失うとは...やはりお前は...出来損ないだな...。いっその事...このまま死んでくれても構わんくらいだわい...。」
ジャルースは、エピーヌの真っ赤に染まった背中を見て、冷ややかな目で言い放ち、エピーヌの部屋を後にした。
 バタンッと扉の閉まる音と共に...エピーヌの部屋からは、深く悲しい血の香りが漂っていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ゲーム未登場の性格最悪な悪役令嬢に転生したら推しの妻だったので、人生の恩人である推しには離婚して私以外と結婚してもらいます!

クナリ
ファンタジー
江藤樹里は、かつて画家になることを夢見ていた二十七歳の女性。 ある日気がつくと、彼女は大好きな乙女ゲームであるハイグランド・シンフォニーの世界へ転生していた。 しかし彼女が転生したのは、ヘビーユーザーであるはずの自分さえ知らない、ユーフィニアという女性。 ユーフィニアがどこの誰なのかが分からないまま戸惑う樹里の前に、ユーフィニアに仕えているメイドや、樹里がゲーム内で最も推しているキャラであり、どん底にいたときの自分の心を救ってくれたリルベオラスらが現れる。 そして樹里は、絶世の美貌を持ちながらもハイグラの世界では稀代の悪女とされているユーフィニアの実情を知っていく。 国政にまで影響をもたらすほどの悪名を持つユーフィニアを、最愛の恩人であるリルベオラスの妻でいさせるわけにはいかない。 樹里は、ゲーム未登場ながら圧倒的なアクの強さを持つユーフィニアをリルベオラスから引き離すべく、離婚を目指して動き始めた。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

冷徹宰相様の嫁探し

菱沼あゆ
ファンタジー
あまり裕福でない公爵家の次女、マレーヌは、ある日突然、第一王子エヴァンの正妃となるよう、申し渡される。 その知らせを持って来たのは、若き宰相アルベルトだったが。 マレーヌは思う。 いやいやいやっ。 私が好きなのは、王子様じゃなくてあなたの方なんですけど~っ!? 実家が無害そう、という理由で王子の妃に選ばれたマレーヌと、冷徹宰相の恋物語。 (「小説家になろう」でも公開しています)

【完結】番である私の旦那様

桜もふ
恋愛
異世界であるミーストの世界最強なのが黒竜族! 黒竜族の第一皇子、オパール・ブラック・オニキス(愛称:オール)の番をミースト神が異世界転移させた、それが『私』だ。 バールナ公爵の元へ養女として出向く事になるのだが、1人娘であった義妹が最後まで『自分』が黒竜族の番だと思い込み、魅了の力を使って男性を味方に付け、なにかと嫌味や嫌がらせをして来る。 オールは政務が忙しい身ではあるが、溺愛している私の送り迎えだけは必須事項みたい。 気が抜けるほど甘々なのに、義妹に邪魔されっぱなし。 でも神様からは特別なチートを貰い、世界最強の黒竜族の番に相応しい子になろうと頑張るのだが、なぜかディロ-ルの侯爵子息に学園主催の舞踏会で「お前との婚約を破棄する!」なんて訳の分からない事を言われるし、義妹は最後の最後まで頭お花畑状態で、オールを手に入れようと男の元を転々としながら、絡んで来ます!(鬱陶しいくらい来ます!) 大好きな乙女ゲームや異世界の漫画に出てくる「私がヒロインよ!」な頭の変な……じゃなかった、変わった義妹もいるし、何と言っても、この世界の料理はマズイ、不味すぎるのです! 神様から貰った、特別なスキルを使って異世界の皆と地球へ行き来したり、地球での家族と異世界へ行き来しながら、日本で得た知識や得意な家事(食事)などを、この世界でオールと一緒に自由にのんびりと生きて行こうと思います。 前半は転移する前の私生活から始まります。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

残念な顔だとバカにされていた私が隣国の王子様に見初められました

月(ユエ)/久瀬まりか
恋愛
公爵令嬢アンジェリカは六歳の誕生日までは天使のように可愛らしい子供だった。ところが突然、ロバのような顔になってしまう。残念な姿に成長した『残念姫』と呼ばれるアンジェリカ。友達は男爵家のウォルターただ一人。そんなある日、隣国から素敵な王子様が留学してきて……

バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました

美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?

断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます

山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。 でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。 それを証明すれば断罪回避できるはず。 幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。 チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。 処刑5秒前だから、今すぐに!

処理中です...