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一章 理不尽な別れと新たな出会い
プロローグ
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「だからエクリル、本当にすまない!! パーティーを去ってくれないか……」
「ちょ、待ってくれよ!! ここを追放されたらどう生きていけっていうんだ!! 貯金なんてしてないし、また一から別のパーティーに入れっていうのか!?」
モンスター討伐の帰り道に突然告げられた言葉に、エクリル・マドムウェルは非常に取り乱していた。
それもそのはず、俺は今リストラされかけているのだ。
自身が二年間所属していたパーティーを追放されかけている。
薄々俺が足を引っ張っていることには気が付いていたが、まさか不安が現実になるとは。
「エクリルがパーティーを去った後のことは俺達には分からん……でもきっとお前を受け入れてくれる場所はあるさ」
うーん、そんな慰め、今自分をパーティーから追放しようとしてる奴から受けても……。
「何で……俺の『飛行』に何か不満でもあったのか?」
「……あまりはっきりとは言いたくないんだが、そうなる。すまんがエリク、マーガレットもお前と別れることに賛成している」
そう、俺のデュミナス(特殊スキルの総称)は『飛行』。
飛行。ただの飛行だ。
そして今俺をリストラしようとしている人物は、パーティーのリーダーのキルフェン。
こいつのデュミナスは『メタルフィジカル』。
体を鉄のように固めることが可能で、攻防共に優れた能力だ。
鉄で固めた拳で殴るもよし、鉄の体で身を守るもよし。
いわゆる、『ハイグレードデュミナス』だ。
金色の短髪がチャームポイントのキルフェンは、筋肉質で背も高く頼りがいがある。
俺はこいつを信頼し、リーダー足りうる器だと尊敬していた。
「そりゃ、ハイグレードのお前やエリク、マーガレットには敵わないよ。でも、俺だってやれることはしてきただろ!! 偵察もきちんとこなした、緊急離脱だって俺が居なきゃ――」
「キルフェン!! もう隠さなくていいじゃない……」
俺が声を荒げて抗議していると、キルフェンの後ろにいたマーガレットが突然割って入ってきた。
緑のロングヘアーに丸渕のメガネという大人しい身なりだが、『ポーション』にはずいぶん助けられた。
回復も攻撃もできる優秀なデュミナスだ。
「隠すって何だよマーガレット。おいキルフェン!! お前、何を隠してるんだ? 何か事情があるのか? それなら納得できるかもしれねぇから言えよ!! 何だ、病気か? 体の不調とか精神的な病――」
「新しいメンバーが入ってくれそうなの」
「……え?」
一瞬で頭の中が真っ白になった。
新しいメンバー?
何故俺に何の相談もしてくれなかった? まさか、そいつが優秀だから俺を切るってことか?
「この前、ゴブリンの巣を駆除しに行った後の夜、レンザスのお店で飲んだじゃない?」
「ああ、楽しかったよ」
「その時にね、フリーの冒険者の人が私に話しかけてくれたの。その人、ハイグレードデュミナスの使い手で、『瞬間移動』っていうデュミナスらしいの。パーティーを解散して、新しいパーティーを探してるんだって」
――ああ、そうかよ、そういうことかよ。
『瞬間移動』というデュミナスを聞いた瞬間、俺は全てを悟った。
「……は、はは、ハハハハッ!! 『瞬間移動』か!! そりゃ、『飛行』なんていらないわけだ!! 移動やら回避撤退はそいつのほうが何倍も便利だもんな!!」
どうやらこいつらは、俺の上位互換を知らん間に見つけ出していたらしい。
俺のデュミナスは通常デュミナスだ。
この世界には通常デュミナスを鍛え上げて化け物レベルに強くなる人間もいるが、俺はそうではない。
同じ性質を持つデュミナスがあれば、当然強いほう、ハイグレードデュミナスを取る。
「ごめんエクリル、僕達がこのパーティーを結成した時、世界最強のパーティーを作って英雄になろうって言ってたよね? やっぱり僕はその夢を諦められない……ごめん」
先程まで黙り込んでいたパーティーメンバーのエリクが申し訳なさそうに言う。
「そうか、そうだよな。世界最強のパーティーを作るのに俺は邪魔だ。お前らは友情より実力を取るんだな。分かった、じゃあな。悪かったな、役に立てなくて」
感情が昂って目に溜まった水をこいつらに見られるのは恥ずかしいと思い、ぶっきらぼうに背を向けた。
そのまま俺は無言でパーティーメンバーの元を立ち去ったのだった。
こうして、俺のぼっち冒険者生活が始まってしまった。
「ちょ、待ってくれよ!! ここを追放されたらどう生きていけっていうんだ!! 貯金なんてしてないし、また一から別のパーティーに入れっていうのか!?」
モンスター討伐の帰り道に突然告げられた言葉に、エクリル・マドムウェルは非常に取り乱していた。
それもそのはず、俺は今リストラされかけているのだ。
自身が二年間所属していたパーティーを追放されかけている。
薄々俺が足を引っ張っていることには気が付いていたが、まさか不安が現実になるとは。
「エクリルがパーティーを去った後のことは俺達には分からん……でもきっとお前を受け入れてくれる場所はあるさ」
うーん、そんな慰め、今自分をパーティーから追放しようとしてる奴から受けても……。
「何で……俺の『飛行』に何か不満でもあったのか?」
「……あまりはっきりとは言いたくないんだが、そうなる。すまんがエリク、マーガレットもお前と別れることに賛成している」
そう、俺のデュミナス(特殊スキルの総称)は『飛行』。
飛行。ただの飛行だ。
そして今俺をリストラしようとしている人物は、パーティーのリーダーのキルフェン。
こいつのデュミナスは『メタルフィジカル』。
体を鉄のように固めることが可能で、攻防共に優れた能力だ。
鉄で固めた拳で殴るもよし、鉄の体で身を守るもよし。
いわゆる、『ハイグレードデュミナス』だ。
金色の短髪がチャームポイントのキルフェンは、筋肉質で背も高く頼りがいがある。
俺はこいつを信頼し、リーダー足りうる器だと尊敬していた。
「そりゃ、ハイグレードのお前やエリク、マーガレットには敵わないよ。でも、俺だってやれることはしてきただろ!! 偵察もきちんとこなした、緊急離脱だって俺が居なきゃ――」
「キルフェン!! もう隠さなくていいじゃない……」
俺が声を荒げて抗議していると、キルフェンの後ろにいたマーガレットが突然割って入ってきた。
緑のロングヘアーに丸渕のメガネという大人しい身なりだが、『ポーション』にはずいぶん助けられた。
回復も攻撃もできる優秀なデュミナスだ。
「隠すって何だよマーガレット。おいキルフェン!! お前、何を隠してるんだ? 何か事情があるのか? それなら納得できるかもしれねぇから言えよ!! 何だ、病気か? 体の不調とか精神的な病――」
「新しいメンバーが入ってくれそうなの」
「……え?」
一瞬で頭の中が真っ白になった。
新しいメンバー?
何故俺に何の相談もしてくれなかった? まさか、そいつが優秀だから俺を切るってことか?
「この前、ゴブリンの巣を駆除しに行った後の夜、レンザスのお店で飲んだじゃない?」
「ああ、楽しかったよ」
「その時にね、フリーの冒険者の人が私に話しかけてくれたの。その人、ハイグレードデュミナスの使い手で、『瞬間移動』っていうデュミナスらしいの。パーティーを解散して、新しいパーティーを探してるんだって」
――ああ、そうかよ、そういうことかよ。
『瞬間移動』というデュミナスを聞いた瞬間、俺は全てを悟った。
「……は、はは、ハハハハッ!! 『瞬間移動』か!! そりゃ、『飛行』なんていらないわけだ!! 移動やら回避撤退はそいつのほうが何倍も便利だもんな!!」
どうやらこいつらは、俺の上位互換を知らん間に見つけ出していたらしい。
俺のデュミナスは通常デュミナスだ。
この世界には通常デュミナスを鍛え上げて化け物レベルに強くなる人間もいるが、俺はそうではない。
同じ性質を持つデュミナスがあれば、当然強いほう、ハイグレードデュミナスを取る。
「ごめんエクリル、僕達がこのパーティーを結成した時、世界最強のパーティーを作って英雄になろうって言ってたよね? やっぱり僕はその夢を諦められない……ごめん」
先程まで黙り込んでいたパーティーメンバーのエリクが申し訳なさそうに言う。
「そうか、そうだよな。世界最強のパーティーを作るのに俺は邪魔だ。お前らは友情より実力を取るんだな。分かった、じゃあな。悪かったな、役に立てなくて」
感情が昂って目に溜まった水をこいつらに見られるのは恥ずかしいと思い、ぶっきらぼうに背を向けた。
そのまま俺は無言でパーティーメンバーの元を立ち去ったのだった。
こうして、俺のぼっち冒険者生活が始まってしまった。
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