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一章 理不尽な別れと新たな出会い
エクリルの歴史
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簡単に自分史をまとめようと思う。
この俺エクリル・マドムウェルは、ヒレーヌ村という北の田舎に生まれた。
優しく慈悲深い両親に恵まれ、申し分ない愛情を受けて育った。
そして、小規模な村で村人同士の距離が近いということもあり友達も沢山いた。
地形的にそこまで頻繁にモンスターが出現することもなく、すくすくと成長していったのだ。
ヒレーヌ村は本当にのどかで、俺は親や友達と思う存分大自然を遊びまわったし、冒険や探検も沢山した。
そんな中で、こんな楽しい冒険を最高の仲間達とできたらどれだけ幸せだろうかと、子供ながらに思うようになっていった。
村の友達や親に、
「俺は絶対世界一の冒険者になる!!」
なんて言ったりしてたっけ。
けど、そんな俺の人生が傾いたのは『デュミナス』の発現が起きた十四の時だ。
デュミナスとは何か、簡単に話しておこう。
デュミナスとは、一般に十~十四歳の頃に発現する特殊スキルのことだ。
時期に差はあれど、ほとんどの人間は十四歳までにデュミナスが発現する。
何故デュミナスなどどいう特殊スキルが人に備わるのかは諸説あるが、現在最も有力とされている説は、モンスターなどの外敵から身を守る為に発現するというものだ。
この世界には友好的なモンスターもいれば、人間や他のモンスターに牙をむくモンスターもいる。
街を破壊しようとしたり、無実の人々を襲ったりするモンスターは人間の天敵だ。
中には、国総動員で撃退しなければいけないほどの恐ろしいモンスターも存在する。
それらに対抗するための進化というのが、デュミナスが備わった理由とされている。
話を戻そう。俺の人生がデュミナスの発現により傾いてしまった、という話だ。
何故俺の人生は傾いたのか。それは、一言で言うと『デュミナスガチャ』を外したからだ。
人間に備わるデュミナスの能力は様々だ。戦闘向きのデュミナスもあれば、サポート向きなど多岐に渡る。
俺はその中でいわゆるハズレを引いてしまったのだ。
いや、ハズレを引いたというより使い手である俺との相性が悪かったんだ。
俺のデュミナスは『飛行』。
飛行と聞けば、一見大当たりのデュミナスに思うかもしれない。
空を自由に飛べるのだし、それを生かして攻撃やサポートができるのではないかと。
しかし、俺は飛行を上手く扱うことができなかった。
飛行といえども鳥みたいに羽で飛ぶわけじゃない。体から湧き出るエネルギーを動力に飛ぶのだ。
俺は元々小柄で、体力もあまりなかった。なので動力となるエネルギーが少なく、あまり長く飛べない。
そして、俺はあまり力がないので剣を振り回したりしながら飛ぶことは難しい。
つまり、俺は空を少し飛べるのはいいものの、攻撃手段が殆どない。
攻撃手段が殆どないというのは冒険者にとっては致命的なのだ。
親が『飛行』の弱さに気づいた時の反応は忘れられない。
俺があまりに冒険者冒険者というので、親は俺に期待していた。この子はすごい冒険者になってくれるのではないかと。
けど『飛行』に苦戦する俺を見て、両親はとても落ち込んだ。
それを子に悟られぬようにしていたつもりだったのか知らないが、両親の笑顔を沢山見てきた俺には表情の曇りなどすぐに分かった。
「そ、空を飛べるなんていい能力じゃないか、エクリル! こりゃあヒレーヌ村から英雄が誕生するかもしれないなぁ。なぁ、母さん?」
「そ、そうね父さん。ま、まぁ、別に冒険者じゃなくても、あなたの好きなようにやればいいのよ、エクリル。危険なモンスターも沢山いるし、別に無理して冒険者になる必要なんてないんだから」
なんて慰められた時には、ひどく心が抉られたもんだ。
そして村の皆はというと、もはや俺に気を遣って『飛行』というデュミナスについてあまり触れてこなかった。
多分、
「あ、こいつハズレ引いたな」
って思われてたんだろうな。
それが何よりも一番心を抉ったな。冒険者冒険者と豪語していただけに、恥ずかしさと悔しさで眠れない夜もあった。
俺はひたすら空を飛んで、飛んで、飛んで、何かできやしないかと探した。
この能力を活かす方法は必ずある。他の皆をいつか見返してやるんだって思ってひたすら飛んでたんだ。
でも、結局何もできないまま時間だけが過ぎ、十七になったころ親に負い目を感じていた俺は半ば無理やり村を出た。
そして辿り着いた大都市レンザスでキルフェン、エリク、マーガレット達と出会ってパーティーを組んだ。
俺はパーティーをサポートしようと、『飛行』でできる限りのことをやった。
モンスターの討伐や依頼が成功したら、撤退の為街まで皆を運んだ。
モンスターに勝てないと分かれば皆を安全な場所まで連れて緊急離脱した。
事前に作戦を立てることが求められたときは、偵察に一人で出向いた。
――けどその仕事は『瞬間移動』という上位互換のハイグレードデュミナスに奪われ、パーティーを追放された。
これが俺の歴史だ。
※
「クソ、これからどうすれば……」
パーティーを追放された俺は途方に暮れていた。
俺は今や無職になったのだ。これからどう食い繋いでいけばいいのだろうか。
ソロで冒険者をやっていくのは正直自信がない。
「一からパーティーを組んでくれる所を探すか……? ……あ、」
俺はとある重要なことを思いだした。
あいつらと共に住んでいた場所、レンザスの宿に俺の荷物がある。
帰り道に別れたせいで気が付かなかった。
「荷物なしでどうするってんだよ……何やってんだか俺は。もう一回あの部屋に行くのか……正直顔を合わせるのは気まずいけど、仕方ねぇ」
サッと荷物を取って風のように消えよう。
俺は再びレンザスの宿舎に向かうことにした。
この俺エクリル・マドムウェルは、ヒレーヌ村という北の田舎に生まれた。
優しく慈悲深い両親に恵まれ、申し分ない愛情を受けて育った。
そして、小規模な村で村人同士の距離が近いということもあり友達も沢山いた。
地形的にそこまで頻繁にモンスターが出現することもなく、すくすくと成長していったのだ。
ヒレーヌ村は本当にのどかで、俺は親や友達と思う存分大自然を遊びまわったし、冒険や探検も沢山した。
そんな中で、こんな楽しい冒険を最高の仲間達とできたらどれだけ幸せだろうかと、子供ながらに思うようになっていった。
村の友達や親に、
「俺は絶対世界一の冒険者になる!!」
なんて言ったりしてたっけ。
けど、そんな俺の人生が傾いたのは『デュミナス』の発現が起きた十四の時だ。
デュミナスとは何か、簡単に話しておこう。
デュミナスとは、一般に十~十四歳の頃に発現する特殊スキルのことだ。
時期に差はあれど、ほとんどの人間は十四歳までにデュミナスが発現する。
何故デュミナスなどどいう特殊スキルが人に備わるのかは諸説あるが、現在最も有力とされている説は、モンスターなどの外敵から身を守る為に発現するというものだ。
この世界には友好的なモンスターもいれば、人間や他のモンスターに牙をむくモンスターもいる。
街を破壊しようとしたり、無実の人々を襲ったりするモンスターは人間の天敵だ。
中には、国総動員で撃退しなければいけないほどの恐ろしいモンスターも存在する。
それらに対抗するための進化というのが、デュミナスが備わった理由とされている。
話を戻そう。俺の人生がデュミナスの発現により傾いてしまった、という話だ。
何故俺の人生は傾いたのか。それは、一言で言うと『デュミナスガチャ』を外したからだ。
人間に備わるデュミナスの能力は様々だ。戦闘向きのデュミナスもあれば、サポート向きなど多岐に渡る。
俺はその中でいわゆるハズレを引いてしまったのだ。
いや、ハズレを引いたというより使い手である俺との相性が悪かったんだ。
俺のデュミナスは『飛行』。
飛行と聞けば、一見大当たりのデュミナスに思うかもしれない。
空を自由に飛べるのだし、それを生かして攻撃やサポートができるのではないかと。
しかし、俺は飛行を上手く扱うことができなかった。
飛行といえども鳥みたいに羽で飛ぶわけじゃない。体から湧き出るエネルギーを動力に飛ぶのだ。
俺は元々小柄で、体力もあまりなかった。なので動力となるエネルギーが少なく、あまり長く飛べない。
そして、俺はあまり力がないので剣を振り回したりしながら飛ぶことは難しい。
つまり、俺は空を少し飛べるのはいいものの、攻撃手段が殆どない。
攻撃手段が殆どないというのは冒険者にとっては致命的なのだ。
親が『飛行』の弱さに気づいた時の反応は忘れられない。
俺があまりに冒険者冒険者というので、親は俺に期待していた。この子はすごい冒険者になってくれるのではないかと。
けど『飛行』に苦戦する俺を見て、両親はとても落ち込んだ。
それを子に悟られぬようにしていたつもりだったのか知らないが、両親の笑顔を沢山見てきた俺には表情の曇りなどすぐに分かった。
「そ、空を飛べるなんていい能力じゃないか、エクリル! こりゃあヒレーヌ村から英雄が誕生するかもしれないなぁ。なぁ、母さん?」
「そ、そうね父さん。ま、まぁ、別に冒険者じゃなくても、あなたの好きなようにやればいいのよ、エクリル。危険なモンスターも沢山いるし、別に無理して冒険者になる必要なんてないんだから」
なんて慰められた時には、ひどく心が抉られたもんだ。
そして村の皆はというと、もはや俺に気を遣って『飛行』というデュミナスについてあまり触れてこなかった。
多分、
「あ、こいつハズレ引いたな」
って思われてたんだろうな。
それが何よりも一番心を抉ったな。冒険者冒険者と豪語していただけに、恥ずかしさと悔しさで眠れない夜もあった。
俺はひたすら空を飛んで、飛んで、飛んで、何かできやしないかと探した。
この能力を活かす方法は必ずある。他の皆をいつか見返してやるんだって思ってひたすら飛んでたんだ。
でも、結局何もできないまま時間だけが過ぎ、十七になったころ親に負い目を感じていた俺は半ば無理やり村を出た。
そして辿り着いた大都市レンザスでキルフェン、エリク、マーガレット達と出会ってパーティーを組んだ。
俺はパーティーをサポートしようと、『飛行』でできる限りのことをやった。
モンスターの討伐や依頼が成功したら、撤退の為街まで皆を運んだ。
モンスターに勝てないと分かれば皆を安全な場所まで連れて緊急離脱した。
事前に作戦を立てることが求められたときは、偵察に一人で出向いた。
――けどその仕事は『瞬間移動』という上位互換のハイグレードデュミナスに奪われ、パーティーを追放された。
これが俺の歴史だ。
※
「クソ、これからどうすれば……」
パーティーを追放された俺は途方に暮れていた。
俺は今や無職になったのだ。これからどう食い繋いでいけばいいのだろうか。
ソロで冒険者をやっていくのは正直自信がない。
「一からパーティーを組んでくれる所を探すか……? ……あ、」
俺はとある重要なことを思いだした。
あいつらと共に住んでいた場所、レンザスの宿に俺の荷物がある。
帰り道に別れたせいで気が付かなかった。
「荷物なしでどうするってんだよ……何やってんだか俺は。もう一回あの部屋に行くのか……正直顔を合わせるのは気まずいけど、仕方ねぇ」
サッと荷物を取って風のように消えよう。
俺は再びレンザスの宿舎に向かうことにした。
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