勇者の俺が、女子高生に転生した話

春のした

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01

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「勇者様!!ありがとうございます。あなたの力で魔王は滅び…この世界にも平和が訪れました!!」

 姫が涙を浮かべて、俺の手を握りしめている。

「勇者として当然の事をしたまでです」

 にやけないよう。俺はぐっと唇の端に力をいれ、ずっと旅の間に考えていたセリフを言った。 
 目の前には、憧れの姫。
 金の柔らかそうな長い髪、大きな瞳に小さな唇…。

……かわいい。

 こんなに顔を近づけられていたら、内心ドキドキが止まらない。
 この日の…この日のためにっ!!俺は頑張ってきたんだ!!

「よくやった!勇者クラウドよ。約束通り、褒美として姫との結婚を許そう」

 そうっ!この日のためにっ!!

「勇者様…これから、よろしくお願いいたします」

 姫が頬を赤く染めた。
 かわいい…かわいいです。ありがとうございます、神様!!

「姫、幸せにします」

 そう、自分の一番のキメ顔で言った。

  言った…瞬間。

ドスッ!!

「えっ?」
「きゃーー!!」

 背中が熱い。燃えるように。

「魔王様の仇…」

 呟きが聞こえて後ろを見た。
 真っ黒のフードを被った男…。
 
「お前は…」

 魔王の側にいた…魔法使い。
 
「一生お前は呪われるのだ!ざまあみろっ!!」

 そう叫んだところで、魔法使いは王国の騎士達に取り押さえられた。
 ドサッ…。
 それと同時に、俺の体が地面に倒れた。

「勇者!勇者っー!」

 姫がかけよって俺を抱き締める。
 熱い。背中が熱い。
 回りを見ると、俺のらしき血が、水溜まりを広げていた。

「姫、ドレスが汚れます……」
「かまいません!かまいませんっ…」

 大粒の涙を、俺の顔に落として姫が言う。

 ああ…かわいいな。
 あとちょっとだったのにな。くやしいな…。

 そう思ったところで、目の前が真っ暗になった。
 ああ、俺は死んだんだ。


―――――――


「くやしいなぁ…」

 あれ?声が出る。
 死んだと思ったが、まだ生きてる?

「気がついた?」

 自分の上から、優しく問う男性の声がした。
 地面が揺れる感覚がわかる。
 もしかしたら、俺は助かったのか?

「はい…」

 そう返事をして、重たい目を開けた。

「……うえ?」

 変な声が出た…。
 そりゃ、そんな声もでる。
 だって、目を開けたら、顔面近くに知らない男がいた。

「どうした?」

 黒髪をさらりと揺らしながら、そう微笑まれる。

「わわわ!!」

 顔が近い!姫なら歓迎だが、男にこんなに近づかれてもっ!
 とっさにのけ反ると

「おっと!」
「うわっ」

 体が大きく傾いた。
 そこで気がついた…俺は、こいつに抱きかかえられている…。
 しかも、女にするように横抱きに。

「お、おろせっ!」
「どうしたの?マユキちゃん」

 暴れて降りようとした所で、横からかわいい声がした。

「姫っ!」

 姫が心配そうに覗きこんでいた。

「姫?」

 不思議そうな顔をした姫は…見たこともない奇妙な服を着ている。
 大きな襟に、胸元にリボン。そして、短いスカート…。

「そんなっ…そんなセクシーな格好を」

 産まれてから、若い女性の露出を見たことがなくて、鼻血がでそうだ。

「どうしたの?マユキちゃん。頭打ったのかな…」
「そうだな…」

 姫と、俺を抱えてる男が顔を見合わせる。

「さっきから、そのマユキちゃんって言うのは…」

 そこまで言いかけた瞬間…俺の脳裏に、まるで走馬灯のように、一人の少女の記憶が駆け巡る。

「あ……」

 激しい頭痛がし、意識を飛ばす寸前…その少女マユキが自分なのだと理解した。
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