悪役令息(仮)の弟、破滅回避のためどうにか頑張っています

岩永みやび

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155 / 178
6歳

155 ご招待

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 ノエルとノアの手を取って、三人で手を繋ぐ。

「たいしたお構いもできませんが。ぼくと一緒に遊びましょう」
「それは僕とノアが言うべきセリフですね」

 苦笑するノエルは、「転ばないでくださいね」と段差があることを教えてくれた。おかげで転ぶことなく屋敷に入ることに成功した。

 通された客室にて、早速ソファーを陣取る。
 ふかふかで座り心地がよろしい。

「おもてなしどうもでーす。美味しいケーキとジュースがあれば満足です」
「だから。そういうのは催促するものじゃないんだよ」

 呆れたと腕を組むノアは、さりげなくぼくの隣に座ってきた。ノエルは向かいのソファーを独り占めしている。

 お茶菓子を待つ間に、大事なものを渡しておく。ロルフを呼び寄せて「あれをください」と両手を差し出せば、できるお世話係さんが素早く封筒を渡してくれた。

 裏面を確認して、ふたりに手渡す。

「こっちはノエルお兄さん。こっちはノアお兄さんでーす」

 どうぞと差し出せば、ふたりは怪訝な顔で受け取った。

「今度ぼくのお誕生日パーティーを盛大にやる予定です。ふたりもご招待します。それは招待状です。絶対来てね」

 ぱっと表情を明るくするノエルは、「わぁ。楽しみです」と言ってくれる。そんなに喜んでくれるとご招待したかいがあったというもの。

 にこにこ笑顔になるぼくだが、ノアの反応がおかしいことに気がつく。

 手元の招待状をぼんやり眺めて、ため息なんて吐いちゃってる。

「ノアお兄さん? どうしたの」
「僕は行かない」
「え」

 まさかの参加拒否。
 そんな展開想像していなかったぼくは、途端にあわあわしてしまう。ロルフが「アル様! お気を確かに」と背中をさすってくれる。

 けれどもぼくは六歳の大人。

 ふむふむ頷いて、「なぜですか」と理由を尋ねておく。何事にも理由がある。ノアの気持ちを確認しておかないと。

 前髪を掻き上げて「行かない」と繰り返すノアは、それ以上の理由を説明してくれない。それではぼくも対処ができない。

「あのですね、ノアお兄さん。理由を教えてください。ぼくにどうにかできることであれば、どうにかします」

 心配そうにぼくとノアを見比べるノエルは、口を挟もうかと迷っているような様子であった。

 でも、そんなノエルの動きを察してか。ノアが渋々といった感じで口を開いた。

「……知らない人が大勢いるのはちょっと」
「ほほう」

 なるほどなるほど。
 ノアは社交界に顔を出したことがない。ぼくもあんまりないけどね。パーティーと聞いて大規模なものを想像しているらしかった。そんな場に、突然モルガン伯爵家の次男として引き取られたノアが出向くのはちょっとハードルが高いのだろう。

 でもご安心を。

「ぼくの私的なパーティーです。ノアお兄さんとノエルお兄さん。それにお兄様とロルフとライアンくらいしかご招待していません」

 あとはシャルお兄さんとリッキーもご招待予定である。とにかくオルコット公爵家の人間しか参加しないので、身構える必要はない。

 そう説明すれば、ノアが目を瞬いた。

「あ、そう」

 それきり口を閉ざすノアは、それ以上の文句は言ってこない。どうやら納得してくれたらしい。ひと安心である。

「服装は自由でーす。持ち物は、ぼくへのお誕生日プレゼントを忘れないでくださぁい。プレゼント持ってこなかったら会場には入れません」

 注意してくださいと説明すれば、ノエルが苦笑した。ノアは腕を組んで「だから。そういう催促はするもんじゃないよって」とぐちぐち言い始める。

 お誕生日パーティーなんだからプレゼントは必須である。ロルフにも「忘れずに持ってきてね」と言い聞かせれば、「任せてください!」との元気なお返事があった。よしよし。

 招待状も渡せて満足していれば、待ちに待ったケーキが運ばれてくる。使用人さんに混じって、マックスの姿を発見した。

 どうやらノアと一緒にあの屋敷にいた使用人さんたちも共に移ってきたらしい。

「マックス」

 小声で呼んでみれば、マックスがにこりと微笑んでくれた。嬉しくなって小さく手を振っておく。

 出されたケーキを前に、わくわくとフォークを握る。お誕生日ケーキみたいだ。

「ぼくは六歳です。もうお兄さんです」

 ひとりで呟いていれば、ノエルが「そうですね。お兄さんですね」と相槌を打ってくれる。ノエルとノアの誕生日は双子だから一緒。その時はぼくが盛大にお祝いしてあげようと思う。

「お兄さんなので、ロルフにもケーキをちょっぴり分けてあげます」
「え!? いいんですか!?」

 賑やかなお世話係さんは、ひとりで拳を突き上げて大喜びしている。そんなにケーキ食べたかったのかな。大人だから我慢していたに違いない。

 フォークを差し出して「どうぞ」といっておく。
 ありがとうございますと全力でお礼を言うロルフに、双子が呆れたような目を向けている。そういうふとした表情や動きはそっくりだ。さすが双子。

 あーんしてあげれば、ロルフが「美味しいです! 生きててよかった……!」と大袈裟なくらいに感動してしまう。そんなにケーキ好きなの? 思えばロルは、ぼくのはちみつもこっそり食べている。甘いものが大好きなのかもしれないな。
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