悪役令息(仮)の弟、破滅回避のためどうにか頑張っています

岩永みやび

文字の大きさ
167 / 178
6歳

167 可愛いは卒業しました

しおりを挟む
 そこからぼくは、頑張ってリオラお兄様を見張っていた。読書したり勉強したりしているお兄様の横を陣取って、じっと視線を送る。

「……アル」
「はぁい」

 呼ばれて返事をすれば、リオラお兄様が頬を引きつらせた。

「外で遊んできたらどうかな。今日はノアとノエルは来ないの?」
「お昼からノエルお兄さんが来ます」
「そうなんだ」

 遠い目をしたお兄様は「お昼までまだ時間があるな」とぼんやり呟いてしまう。暇そうに窓の外を眺めているロルフは、時折思い出したようにぼくに視線を向けてくる。

「アル様。俺と外で遊びますか?」

 ロルフの言葉に、リオラお兄様が「そうだね。それがいいね」と全力で同意している。その熱心さが非常に怪しい。ぼくがここにいたら不都合なことでもあるのだろうか。あれだ。ジョナスに意地悪する隙がないので、ぼくを追い出したいのだろう。なんてこった。リオラお兄様がそこまで意地悪だったなんて。

「ジョナスに意地悪しないでください」

 真正面からお願いしてみれば、リオラお兄様が変な顔をする。当のジョナスは騎士棟に行くと言って、先程ふらりと出て行った。

「私がどうしてジョナスに意地悪しないといけないんだい?」
「お兄様は、ジョナスの恋人さんが好き」
「え? なんて?」

 ぽかんと口を開けるお兄様は、ついでロルフに困ったような視線を移した。それを受けて半笑いで流すロルフは、ぼくの目から見ても頼りない。

「ジョナスに恋人とかいるの? 誰」

 リオラお兄様に問われて、きょとんとしてしまう。誰ってなんだ。リオラお兄様が一番よく知っているんでしょうが。ぼくだって現在ジョナスの恋人さんが誰なのか調査中である。

 リオラお兄様の意地悪な問いに、へにゃっと眉尻を下げる。お兄様がぼくに隠し事をしたい気持ちはわかる。ぼくまだ六歳だもんね。子供だから頼りにならないと思われているのだろう。でもぼくには前世の記憶があったりする。おまけにここがBL小説の世界だということも知っている。この世界において、ぼくより頼りになる存在なんて滅多にいないと思うけど。

「ジョナスは優しいお兄さんです。ぼくと遊んでくれます」
「優しくはないよ。あんなダメな大人に近寄ったらいけないよ」

 ジョナスってダメな大人なの?
 そんなふうには見えないけどなぁ。

 とりあえずリオラお兄様を見張っておけば大丈夫だと思うのだが、ちょっぴり暇になってきた。

 リオラお兄様は椅子に座っているばかりで楽しい行動をしない。ロルフも暇そうだ。

「あのですね、お兄様」
「なんだい」
「ぼくはお兄様と遊んであげたいんですけど。でも、お兄様と遊ぶのあんまり楽しくないかもしれないです」
「……う、うん。ごめんね。つまらない兄で」
「いえいえ」

 ネガティブ発言をするお兄様に、にこりと微笑んでおく。ようするに、リオラお兄様がジョナスに意地悪しないことが確認できればいいのだ。

 だっだらリオラお兄様よりジョナスに張り付いておくべきでは?

 だってリオラお兄様が直接手を下しているとは思えない。なんかこう裏から手を回して嫌がらせしている可能性だってある。むしろそちらの方が可能性としては高い。

 であれば、ジョナスを見張っておく方が確実だと気がついてしまった。

 ぺこぺこ頭を下げて、リオラお兄様から離れる。

「リオラお兄様とは、また今度遊んであげますね」
「うん。ありがとう」

 引きつった顔でお礼をいうお兄様に「お気になさらず」と告げて、廊下に出る。ぼんやりしていたロルフが慌てて追いかけてきた。

「じゃあ庭で遊びましょうか」

 うんと伸びをするロルフの言葉に、「やれやれ」と肩をすくめておく。それを見たロルフが「え! 可愛い!」と大声で叫び始めた。

「ぼくは可愛いじゃなくて、かっこいい」

 もう六歳のお兄さんなので可愛いは卒業しましたと説明するが、ロルフはまたもや「アル様が可愛い!」と顔を覆って天を仰いでしまう。このお世話係さんは、時折奇妙な行動をとる。こういうときは、深入りせずに無視しておくに限る。

 ロルフを放って庭に向かえば、ロルフが小走りで追いかけてきた。

「なにをして遊びますか? 虫とりでもしますか」

 虫さんも魅力的だが、今日のぼくにはリオラお兄様による嫌がらせを阻止するという重大なミッションがある。虫とりはまた今度だ。

「騎士棟に行きます」

 目的地を告げれば、ロルフが露骨に嫌そうな顔になってしまった。

「危ないですよ。もっと平和に遊びましょう」
「ぼくは平和が好き。平和に遊びます」
「はい。じゃあ虫とりしましょう」
「平和に騎士棟で遊びます」
「ダメですよぉ」

 情けない顔をするロルフであるが、ぼくが騎士棟に向かって駆け出せば追いかけてきてくれる。ぼくだって訓練場に突っ込んでいく気はない。剣とか間近で見るのは怖すぎるもん。平和にジョナスを見守るだけなので安心してほしい。

「ジョナスを探しまぁす」

 宣言すれば、ロルフが「またあの人ですか?」とうんざりした声をもらした。

「ろくでもない人ですよ」
「ロルフとどっちがろくでもない?」
「なんで俺と比べるんですか。俺はまともな大人です」

 堂々としたロルフの宣言に、ぼくは「そうなんだぁ」と温かい目を向けておいた。
しおりを挟む
感想 42

あなたにおすすめの小説

キュートなモブ令息に転生したボク。可愛さと前世の知識で悪役令息なお義兄さまを守りますっ!

をち。「もう我慢なんて」書籍発売中
BL
これは、あざと可愛い悪役令息の義弟VS.あざと主人公のおはなし。 ボクの名前は、クリストファー。 突然だけど、ボクには前世の記憶がある。 ジルベスターお義兄さまと初めて会ったとき、そのご尊顔を見て 「あああ!《《この人》》、知ってるう!悪役令息っ!」 と思い出したのだ。 あ、この人ゲームの悪役じゃん、って。 そう、俺が今いるこの世界は、ゲームの中の世界だったの! そして、ボクは悪役令息ジルベスターの義弟に転生していたのだ! しかも、モブ。 繰り返します。ボクはモブ!!「完全なるモブ」なのだ! ゲームの中のボクには、モブすぎて名前もキャラデザもなかった。 どおりで今まで毎日自分の顔をみてもなんにも思い出さなかったわけだ! ちなみに、ジルベスターお義兄さまは悪役ながら非常に人気があった。 その理由の第一は、ビジュアル! 夜空に輝く月みたいにキラキラした銀髪。夜の闇を思わせる深い紺碧の瞳。 涼やかに切れ上がった眦はサイコーにクール!! イケメンではなく美形!ビューティフル!ワンダフォー! ありとあらゆる美辞麗句を並び立てたくなるくらいに美しい姿かたちなのだ! 当然ながらボクもそのビジュアルにノックアウトされた。 ネップリももちろんコンプリートしたし、アクスタももちろん手に入れた! そんなボクの推しジルベスターは、その無表情のせいで「人を馬鹿にしている」「心がない」「冷酷」といわれ、悪役令息と呼ばれていた。 でもボクにはわかっていた。全部誤解なんだって。 ジルベスターは優しい人なんだって。 あの無表情の下には確かに温かなものが隠れてるはずなの! なのに誰もそれを理解しようとしなかった。 そして最後に断罪されてしまうのだ!あのピンク頭に惑わされたあんぽんたんたちのせいで!! ジルベスターが断罪されたときには悔し涙にぬれた。 なんとかジルベスターを救おうとすべてのルートを試し、ゲームをやり込みまくった。 でも何をしてもジルベスターは断罪された。 ボクはこの世界で大声で叫ぶ。 ボクのお義兄様はカッコよくて優しい最高のお義兄様なんだからっ! ゲームの世界ならいざしらず、このボクがついてるからには断罪なんてさせないっ! 最高に可愛いハイスぺモブ令息に転生したボクは、可愛さと前世の知識を武器にお義兄さまを守りますっ! ⭐︎⭐︎⭐︎ ご拝読頂きありがとうございます! コメント、エール、いいねお待ちしております♡ 「もう我慢なんてしません!家族からうとまれていた俺は、家を出て冒険者になります!」書籍発売中! 連載続いておりますので、そちらもぜひ♡

BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください

わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。 まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!? 悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ユィリと皆の動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵も皆の小話もあがります。 Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新! プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー! ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!

僕を振った奴がストーカー気味に口説いてきて面倒臭いので早く追い返したい。執着されても城に戻りたくなんてないんです!

迷路を跳ぶ狐
BL
 社交界での立ち回りが苦手で、よく夜会でも失敗ばかりの僕は、いつも一族から罵倒され、軽んじられて生きてきた。このまま誰からも愛されたりしないと思っていたのに、突然、ろくに顔も合わせてくれない公爵家の男と、婚約することになってしまう。  だけど、婚約なんて名ばかりで、会話を交わすことはなく、同じ王城にいるはずなのに、顔も合わせない。  それでも、公爵家の役に立ちたくて、頑張ったつもりだった。夜遅くまで魔法のことを学び、必要な魔法も身につけ、僕は、正式に婚約が発表される日を、楽しみにしていた。  けれど、ある日僕は、公爵家と王家を害そうとしているのではないかと疑われてしまう。  一体なんの話だよ!!  否定しても誰も聞いてくれない。それが原因で、婚約するという話もなくなり、僕は幽閉されることが決まる。  ほとんど話したことすらない、僕の婚約者になるはずだった宰相様は、これまでどおり、ろくに言葉も交わさないまま、「婚約は考え直すことになった」とだけ、僕に告げて去って行った。  寂しいと言えば寂しかった。これまで、彼に相応しくなりたくて、頑張ってきたつもりだったから。だけど、仕方ないんだ……  全てを諦めて、王都から遠い、幽閉の砦に連れてこられた僕は、そこで新たな生活を始める。  食事を用意したり、荒れ果てた砦を修復したりして、結構楽しく暮らせていると思っていた矢先、森の中で王都の魔法使いが襲われているのを見つけてしまう。 *残酷な描写があり、たまに攻めが受け以外に非道なことをしたりしますが、受けには優しいです。

結婚初夜に相手が舌打ちして寝室出て行こうとした

BL
十数年間続いた王国と帝国の戦争の終結と和平の形として、元敵国の皇帝と結婚することになったカイル。 実家にはもう帰ってくるなと言われるし、結婚相手は心底嫌そうに舌打ちしてくるし、マジ最悪ってところから始まる話。 オメガバースでオメガの立場が低い世界 こんなあらすじとタイトルですが、主人公が可哀そうって感じは全然ないです 強くたくましくメンタルがオリハルコンな主人公です 主人公は耐える我慢する許す許容するということがあんまり出来ない人間です 倫理観もちょっと薄いです というか、他人の事を自分と同じ人間だと思ってない部分があります ※この主人公は受けです

【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】

古森きり
BL
【書籍化決定しました!】 詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります! たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました! アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。 政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。 男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。 自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。 行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。 冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。 カクヨムに書き溜め。 小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。

悪役令息の兄って需要ありますか?

焦げたせんべい
BL
今をときめく悪役による逆転劇、ザマァやらエトセトラ。 その悪役に歳の離れた兄がいても、気が強くなければ豆電球すら光らない。 これは物語の終盤にチラッと出てくる、折衷案を出す兄の話である。

転生令息は冒険者を目指す!?

葛城 惶
BL
ある時、日本に大規模災害が発生した。  救助活動中に取り残された少女を助けた自衛官、天海隆司は直後に土砂の崩落に巻き込まれ、意識を失う。  再び目を開けた時、彼は全く知らない世界に転生していた。  異世界で美貌の貴族令息に転生した脳筋の元自衛官は憧れの冒険者になれるのか?!  とってもお馬鹿なコメディです(;^_^A

処理中です...