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6歳
166 暑がりさん
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枝を振り回す真似なんてしている場合ではなかった。
「急いで! リオラお兄様がジョナスに意地悪しちゃう!」
「それは大変ですね」
たいして大変とは思っていなさそうな様子でのんびり頷くロルフを従えて、お兄様の部屋に向かう。
これからリオラお兄様による意地悪阻止作戦を開始するのだ。ふんと気合を入れて、部屋に突撃する。
「リオラお兄様ぁ! なにしてますかぁ」
「どうしたの、アル」
なにやら窓の外をぼんやり眺めていたリオラお兄様は、ぼくを振り返って驚いたように目を丸くしている。朝から勢いよく突入しちゃったから、びっくりさせたに違いない。ちょっと申し訳ない。
「おはようございます。ぼくも今日も元気です」
「おはよう。元気なの? それはよかった」
くすくす笑うお兄様は、窓を離れてソファに座る。なんとなく、リオラお兄様がなにを見ていたのか気になって窓に駆け寄る。いつも通り庭が見渡せるだけ。特に変わったものはない。外の景色を眺めていたのだろうか。
「お兄様。ジョナスはどこですか?」
「うん? ジョナスならそろそろ来ると思うけど」
お兄様が言い終わるのと同時に、扉が開いた。見ればジョナスがやって来るところであった。
「あれ、アル様。こんな朝早くに珍しいですね」
「……」
にこやかに微笑んでくれるジョナスを前に、ぼくはぽかんと口を開ける。リオラお兄様が「なんて格好してるの!?」と大慌てでぼくとジョナスの間に割り込んできた。
お兄様の言う通り、ジョナスは妙に色っぽい格好をしていた。一応騎士服を着ているらしいが、上着は腕にかけているだけ。上は白い清潔なシャツ一枚なのだが、前が大きく開いている。ほとんど上半身裸に近いぞ、それ。
「ジョナス。ボタンはちゃんと留めたほうがいいと思います」
アドバイスすれば、ジョナスが困ったように首筋に手をやった。そのまま立ち尽くすジョナスは、ボタンを留める気配がない。なぜ。
「ジョナス。服はちゃんと着たほうがいいでーす」
再度教えてあげれば、リオラお兄様がジョナスを追い払うように手を振った。だがジョナスは構わず部屋に入って来ると「いい天気ですね」と、何事もなかったかのように窓を開け放つ。腕にかけていた上着は無造作にソファへと投げ捨てている。
「ジョナス。服」
聞こえていないのかと思い繰り返すが、ジョナスは肩をすくめるだけ。暑がりさんなのかな?
考え込んでいれば、ロルフがぼくを無断で抱っこしてしまう。
「ロルフ。おろして」
「アル様。一旦お部屋に戻りましょう」
「なんで?」
きょとんとロルフを見上げるが、彼は苦い顔でジョナスをチラ見していた。
「ジョナスは、暑がりさん」
「暑がりさん……?」
ぼくの言葉を繰り返したロルフに、目を瞬くリオラお兄様。
「いや、この人のはそういうんじゃなくて」
わたわたするロルフを横目に、ジョナスは笑みを崩さない。よく見るとジョナスの髪の毛がちょっぴり濡れている。お風呂にでも入ってきたのだろうか。そういえば騎士団はたまに早朝から訓練をやっている。今日は訓練の日だったのかな。それで朝から汗を流してきたに違いない。そんでもって仕事に遅れまいと着替えの途中で慌ててリオラお兄様の部屋にやってきたのだ。
「ジョナス。訓練ごくろう」
とりあえず労っておけば、リオラお兄様が「違うよ、アル。ジョナスはそんなに真面目な人間ではないから」と悪口を言い始める。もしやジョナスに意地悪するつもりか。
引き締まった身体を晒し続けるジョナスは、よくわからないがにこにこしている。今日も口元のホクロに思わず目がいってしまう。
ロルフに抱っこされたままジョナス観察をしていれば、「じゃあ戻りましょうか」というお気楽なロルフの声が聞こえた。
ここで部屋に戻ったら作戦失敗で終わってしまうじゃないか。
今日のぼくにはリオラお兄様を見張るという大事な仕事がある。まだ全然仕事ができていない。ジタバタ暴れて、ロルフの腕から脱出を試みる。けれども逆に力を込めるロルフは「危ないので暴れないでください」と平気な顔で頼んできた。ぼくの抵抗がまったく効いていない。なんて無力。
しょんぼりしていると、ジョナスが綺麗な笑顔でぼくに寄ってきてくれる。慌ててジョナスから逃げるように背中を向けたロルフであるが、お世話係さんが騎士に敵うわけもない。
あっさり距離を詰められたロルフは、ぼくを抱えたままあわあわしている。
「アル様。リオラ様になにかご用事ですか?」
優しく問われて、大きく頷いておく。
やっぱりジョナスは優しい。ぼくのことを気遣ってくれる。どうしてロルフとリオラお兄様がジョナスを警戒しているのかわからない。
「あのですね。ぼく、今日はリオラお兄様と一緒に遊びます」
ジョナスに伝えれば、「それは楽しそうですね」と言ってくれる。対するお兄様は「私は忙しいんだよ」と後ろ向きな発言をした。
「ぼくのことはお構いなく。勝手にリオラお兄様と遊ぶので」
「いや、だからねアル。私にも予定があって」
「大丈夫です! お兄様にご迷惑はかけませーん」
きっぱり宣言すれば、リオラお兄様が「困ったな」と眉を寄せてしまった。
「急いで! リオラお兄様がジョナスに意地悪しちゃう!」
「それは大変ですね」
たいして大変とは思っていなさそうな様子でのんびり頷くロルフを従えて、お兄様の部屋に向かう。
これからリオラお兄様による意地悪阻止作戦を開始するのだ。ふんと気合を入れて、部屋に突撃する。
「リオラお兄様ぁ! なにしてますかぁ」
「どうしたの、アル」
なにやら窓の外をぼんやり眺めていたリオラお兄様は、ぼくを振り返って驚いたように目を丸くしている。朝から勢いよく突入しちゃったから、びっくりさせたに違いない。ちょっと申し訳ない。
「おはようございます。ぼくも今日も元気です」
「おはよう。元気なの? それはよかった」
くすくす笑うお兄様は、窓を離れてソファに座る。なんとなく、リオラお兄様がなにを見ていたのか気になって窓に駆け寄る。いつも通り庭が見渡せるだけ。特に変わったものはない。外の景色を眺めていたのだろうか。
「お兄様。ジョナスはどこですか?」
「うん? ジョナスならそろそろ来ると思うけど」
お兄様が言い終わるのと同時に、扉が開いた。見ればジョナスがやって来るところであった。
「あれ、アル様。こんな朝早くに珍しいですね」
「……」
にこやかに微笑んでくれるジョナスを前に、ぼくはぽかんと口を開ける。リオラお兄様が「なんて格好してるの!?」と大慌てでぼくとジョナスの間に割り込んできた。
お兄様の言う通り、ジョナスは妙に色っぽい格好をしていた。一応騎士服を着ているらしいが、上着は腕にかけているだけ。上は白い清潔なシャツ一枚なのだが、前が大きく開いている。ほとんど上半身裸に近いぞ、それ。
「ジョナス。ボタンはちゃんと留めたほうがいいと思います」
アドバイスすれば、ジョナスが困ったように首筋に手をやった。そのまま立ち尽くすジョナスは、ボタンを留める気配がない。なぜ。
「ジョナス。服はちゃんと着たほうがいいでーす」
再度教えてあげれば、リオラお兄様がジョナスを追い払うように手を振った。だがジョナスは構わず部屋に入って来ると「いい天気ですね」と、何事もなかったかのように窓を開け放つ。腕にかけていた上着は無造作にソファへと投げ捨てている。
「ジョナス。服」
聞こえていないのかと思い繰り返すが、ジョナスは肩をすくめるだけ。暑がりさんなのかな?
考え込んでいれば、ロルフがぼくを無断で抱っこしてしまう。
「ロルフ。おろして」
「アル様。一旦お部屋に戻りましょう」
「なんで?」
きょとんとロルフを見上げるが、彼は苦い顔でジョナスをチラ見していた。
「ジョナスは、暑がりさん」
「暑がりさん……?」
ぼくの言葉を繰り返したロルフに、目を瞬くリオラお兄様。
「いや、この人のはそういうんじゃなくて」
わたわたするロルフを横目に、ジョナスは笑みを崩さない。よく見るとジョナスの髪の毛がちょっぴり濡れている。お風呂にでも入ってきたのだろうか。そういえば騎士団はたまに早朝から訓練をやっている。今日は訓練の日だったのかな。それで朝から汗を流してきたに違いない。そんでもって仕事に遅れまいと着替えの途中で慌ててリオラお兄様の部屋にやってきたのだ。
「ジョナス。訓練ごくろう」
とりあえず労っておけば、リオラお兄様が「違うよ、アル。ジョナスはそんなに真面目な人間ではないから」と悪口を言い始める。もしやジョナスに意地悪するつもりか。
引き締まった身体を晒し続けるジョナスは、よくわからないがにこにこしている。今日も口元のホクロに思わず目がいってしまう。
ロルフに抱っこされたままジョナス観察をしていれば、「じゃあ戻りましょうか」というお気楽なロルフの声が聞こえた。
ここで部屋に戻ったら作戦失敗で終わってしまうじゃないか。
今日のぼくにはリオラお兄様を見張るという大事な仕事がある。まだ全然仕事ができていない。ジタバタ暴れて、ロルフの腕から脱出を試みる。けれども逆に力を込めるロルフは「危ないので暴れないでください」と平気な顔で頼んできた。ぼくの抵抗がまったく効いていない。なんて無力。
しょんぼりしていると、ジョナスが綺麗な笑顔でぼくに寄ってきてくれる。慌ててジョナスから逃げるように背中を向けたロルフであるが、お世話係さんが騎士に敵うわけもない。
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「アル様。リオラ様になにかご用事ですか?」
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