悪役令息(仮)の弟、破滅回避のためどうにか頑張っています

岩永みやび

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6歳

165 かっこいいぼく

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 朝から気合十分なぼくは、お部屋の中央で仁王立ちしていた。

 これからぼくは、リオラお兄様がジョナスに意地悪しているのか確認するという重要ミッションをこなさなければならない。油断はできない。

 ロルフの反応をうかがう限りだと意地悪している可能性が高いと思う。きっとぼくの目が届かない所でやっちゃっているのだ。なんてこった。リオラお兄様が悪役令息やっちゃってる。そこは別に原作通りである必要はないのに。

 ジョナスは色気たっぷりなお兄さんである。あんなに美人さんなのに、原作小説ではモブのような扱いだった。解せない。口元のホクロがとってもセクシーなのに。

 騎士であるジョナスは、リオラお兄様の側近を務めている。リオラお兄様とふたりきりになる場面も多い。そんなときに、リオラお兄様に意地悪されているに違いないのだ。

 とりあえず、リオラお兄様とジョナスをふたりきりにしなければいいと思う。リオラお兄様は、ぼくの前では優しい兄を演じたいようなので、ぼくがずっと側に引っ付いていれば意地悪しないだろう。

 その間に、ジョナスの恋人さんが誰なのか突き止めたい。ジョナスの恋人さんは、つまりリオラお兄様の好きな人でもあるのだ。

 相変わらずリオラお兄様は恋愛下手くそである。どうして素直に想いを告げることができないのだろうか。既に恋人がいると分かったのであれば、相手の幸せを願って引くことも大事だとぼくに教えてくれたのはなんだったのか。お兄様全然引かないじゃん。

「ロルフ。ぼくは今日、お兄様の見張りをします」
「リオラ様の見張りですか。なんのために?」

 首を傾げるロルフはちょっと心配になるくらいの記憶力である。昨日の作戦会議をもう忘れちゃったのか?

「リオラお兄様がジョナスに意地悪しないよう見張ります! 一瞬でも目を離してはいけない」
「はぁ、なるほど?」

 気の抜けた返事をするロルフは、「リオラ様とジョナスさんの事はどうでもいいのでは?」と雑にあしらおうとしてくる。どうでもよくない。

 このまま嫌がらせ行為が続けば、きっと騎士団の面々がリオラお兄様に不信感を抱く。そして仲間意識の強い騎士たちは、リオラお兄様を見限って反撃に出るのだ。お兄様が破滅すれば、ぼくも巻き込まれ破滅しちゃう。六歳のぼくが自力でどうにかするのは難しい。だからそもそも騎士による暴動が起こらないようにするしかないのだ。

「ぼくがお兄様を見張っている間、ロルフにはジョナスの恋人さんが誰なのか探ってほしいです。お願いしまぁす」
「あの人、恋人とかいないと思いますよ」
「いるもん。絶対にいるもん」
「もん……」

 もんもん繰り返すロルフは、確実にぼくを小馬鹿にしていた。ちょっぴり許せない。足を踏んづけておいてやる。

 ぼくがお兄様とジョナスの気を引いている間に、ちゃんと探してねと念押しすれば、へらへら笑ったロルフが「まぁやれるだけの事はやってみます」と曖昧に流してしまう。

 なんて頼りにならないお世話係さんだろうか。だがロルフはお世話係さんなので、情報収集は得意じゃないのかもしれない。これは無茶振りしたぼくが悪いのかも。

 しゅんと眉尻を下げるぼくに、ロルフが「え! なんですかその顔! お腹でも痛いんですか!?」と焦ってしまう。ぼく、どんな顔してるの? そんなにお腹が痛いような顔に見えちゃうの?

 ふるふると首を左右に振って、「ごめんちゃい」と謝っておく。途端に天を仰ぐロルフは「アル様が今日も可愛い……!」とご機嫌だ。ぼくはいつも可愛いと言われてしまう。もう六歳のお兄さんなので、そろそろかっこいいと言われてもおかしくはない頃合いではないだろうか。

「ぼくはかっこよくなりたいです。ライアンみたいに」

 ライアンは原作小説の主人公をやっていただけあってかっこいい。爽やかなお兄さんだ。剣を構える姿も見惚れてしまう。すごく強くて頼りになるのだ。

 しかしロルフは「え」と顔を引きつらせた。

「副団長は確かにかっこいいかもしれませんけど。アル様が目指すべき人物像ではない気がします」
「なんで? ぼくもかっこよく剣を振り回します! いつも枝で練習してます!」

 庭で拾ったお気に入りの枝で、日々リオラお兄様にもらった不気味な置き物と戦っている。今のところぼくの全勝だ。

 手元に枝はないが、構える真似をする。勢いよく腕を上下に振れば、ロルフが「アル様かわいいです!」と声援を送ってくれた。だが内容が間違っている。可愛いではなくかっこいいと言うべきだ。
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