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17歳
763 まだまだ落ち着かない
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「……」
「……なに?」
朝食も済ませて、特に普段と変わりなく自室で過ごしていた。時折ティアンと視線が合って、互いにニコリと微笑んで。別になにが起きるわけではないけど、妙に楽しい。
そんな中、唐突にやって来たアロンが胡乱な目を向けてくる。
「ねぇ、アロン。なに?」
「……」
「ちょっと」
勝手に訪問してきて勝手に居座るアロンは、先程から俺とティアンをしきりに見比べている。難しい顔で、なにかを考えているらしい。
「仕事しなくていいの?」
きっとブルース兄様が困ってるよと言ってみるが、アロンは「今日は仕事ないので」と堂々と嘘を吐いた。そんなわけないだろ。だが凝視してくる以外、特に害はないので放っておくことにする。
椅子に座って読書する俺。それを遠慮なく見つめてくるアロンは、やはり険しい表情。
『ねー、アロンさん。今日の夜はなにするのぉ? またみんなでお酒飲むぅ?』
「……」
『無視しないでぇ』
綿毛ちゃんは、時折アロンの部屋でお酒を飲んでいる。いつの間にかニックやレナルドみたいになってしまった。ところで今更ではあるのだが、犬ってお酒飲んで大丈夫なのだろうか。綿毛ちゃんは犬じゃないらしいからセーフなのか?
なんとなく綿毛ちゃんの声に耳を傾けていたのだが、視界に影が落ちた。反射的に顔を上げると、すぐ隣にアロンが立っている。テーブルに片手をついて、俺の手元を覗き込んでくる。
「ルイス様。なにを読んでいるんですか?」
「これ? ユリスに借りたの」
ユリスの部屋の本棚から適当に引き抜いてきた。中身はいわゆる冒険小説みたいな感じだ。暇つぶしに読んでいるのだが、結構面白い。ブルース兄様は実用的な本ばかり読んでいるのだが、ユリスは童話やお伽話などの物語が多い。なので読書したいならユリスの本棚をあさるべきだ。
ちらっと表紙を見せてあげるが、アロンは無反応。しばらく無言のときが続く。ティアンが何かを言いたげにアロンを視界に捉えている。
「ルイス様。ティアンになにか言われましたか?」
「……」
そんな中、アロンが急に突っ込んだ質問をしてきた。どうしてそう勘がいいのか。
動きを止める俺に、アロンが目を細めた。今の短いやり取りですべてを察したみたいな顔をするアロンは、ちょっと不機嫌そうに息を吐いた。アロンは、なにかあるとすぐに察知してくる。一体どこで情報を仕入れてくるのだろうか。俺ってそんなにわかりやすい?
ティアンを睨みつけるアロンであったが、やがて肩をすくめた。
「ま、いいですよ」
なにがいいのかは不明だが、あっさり話を終わらせるアロンは俺の肩を軽く叩いてきた。「俺、仕事あるんで」と言い残してそのまま部屋を出て行ってしまう。やっぱり仕事あるんじゃないか。
アロンの背中を見送って、俺はティアンと顔を見合わせる。
あの様子だと、多分俺とティアンの間になにかがあったことを察したに違いない。いつものように不機嫌顔で絡んでくると思ったのに。予想に反して、アロンは多くを語らずに切り上げてしまった。
しんと静かになる室内。
アロンが騒がないと調子が狂ってしまう。
ページを捲って、適当に目を通す。いまいち集中できなくて、結局本を閉じた。
「綿毛ちゃん。これ読む?」
『読まない。オレは忙しいもんね』
「忙しくないだろ」
尻尾を振りながら忙しいと謎アピールをする綿毛ちゃん。
俺とティアンの気持ちが通じ合ったとはいえ、俺の日常がなにか劇的に変化するわけではない。普段と同じような日が流れるだけだが、不思議と気持ちがふわふわしている。
「ティアン。ちょっと散歩でもする?」
「いいですね」
じっとしていられない気分になって、立ち上がった。綿毛ちゃんが『お散歩、お散歩!』と室内をくるくる回り始める。
浮き足だった俺の気持ちは、まだまだ落ち着きそうにはない。
「……なに?」
朝食も済ませて、特に普段と変わりなく自室で過ごしていた。時折ティアンと視線が合って、互いにニコリと微笑んで。別になにが起きるわけではないけど、妙に楽しい。
そんな中、唐突にやって来たアロンが胡乱な目を向けてくる。
「ねぇ、アロン。なに?」
「……」
「ちょっと」
勝手に訪問してきて勝手に居座るアロンは、先程から俺とティアンをしきりに見比べている。難しい顔で、なにかを考えているらしい。
「仕事しなくていいの?」
きっとブルース兄様が困ってるよと言ってみるが、アロンは「今日は仕事ないので」と堂々と嘘を吐いた。そんなわけないだろ。だが凝視してくる以外、特に害はないので放っておくことにする。
椅子に座って読書する俺。それを遠慮なく見つめてくるアロンは、やはり険しい表情。
『ねー、アロンさん。今日の夜はなにするのぉ? またみんなでお酒飲むぅ?』
「……」
『無視しないでぇ』
綿毛ちゃんは、時折アロンの部屋でお酒を飲んでいる。いつの間にかニックやレナルドみたいになってしまった。ところで今更ではあるのだが、犬ってお酒飲んで大丈夫なのだろうか。綿毛ちゃんは犬じゃないらしいからセーフなのか?
なんとなく綿毛ちゃんの声に耳を傾けていたのだが、視界に影が落ちた。反射的に顔を上げると、すぐ隣にアロンが立っている。テーブルに片手をついて、俺の手元を覗き込んでくる。
「ルイス様。なにを読んでいるんですか?」
「これ? ユリスに借りたの」
ユリスの部屋の本棚から適当に引き抜いてきた。中身はいわゆる冒険小説みたいな感じだ。暇つぶしに読んでいるのだが、結構面白い。ブルース兄様は実用的な本ばかり読んでいるのだが、ユリスは童話やお伽話などの物語が多い。なので読書したいならユリスの本棚をあさるべきだ。
ちらっと表紙を見せてあげるが、アロンは無反応。しばらく無言のときが続く。ティアンが何かを言いたげにアロンを視界に捉えている。
「ルイス様。ティアンになにか言われましたか?」
「……」
そんな中、アロンが急に突っ込んだ質問をしてきた。どうしてそう勘がいいのか。
動きを止める俺に、アロンが目を細めた。今の短いやり取りですべてを察したみたいな顔をするアロンは、ちょっと不機嫌そうに息を吐いた。アロンは、なにかあるとすぐに察知してくる。一体どこで情報を仕入れてくるのだろうか。俺ってそんなにわかりやすい?
ティアンを睨みつけるアロンであったが、やがて肩をすくめた。
「ま、いいですよ」
なにがいいのかは不明だが、あっさり話を終わらせるアロンは俺の肩を軽く叩いてきた。「俺、仕事あるんで」と言い残してそのまま部屋を出て行ってしまう。やっぱり仕事あるんじゃないか。
アロンの背中を見送って、俺はティアンと顔を見合わせる。
あの様子だと、多分俺とティアンの間になにかがあったことを察したに違いない。いつものように不機嫌顔で絡んでくると思ったのに。予想に反して、アロンは多くを語らずに切り上げてしまった。
しんと静かになる室内。
アロンが騒がないと調子が狂ってしまう。
ページを捲って、適当に目を通す。いまいち集中できなくて、結局本を閉じた。
「綿毛ちゃん。これ読む?」
『読まない。オレは忙しいもんね』
「忙しくないだろ」
尻尾を振りながら忙しいと謎アピールをする綿毛ちゃん。
俺とティアンの気持ちが通じ合ったとはいえ、俺の日常がなにか劇的に変化するわけではない。普段と同じような日が流れるだけだが、不思議と気持ちがふわふわしている。
「ティアン。ちょっと散歩でもする?」
「いいですね」
じっとしていられない気分になって、立ち上がった。綿毛ちゃんが『お散歩、お散歩!』と室内をくるくる回り始める。
浮き足だった俺の気持ちは、まだまだ落ち着きそうにはない。
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