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17歳
771 恋愛
あんまり突っ込んだ質問をしてこないブルース兄様は、俺とティアンの付き合う宣言に少し耳を傾けただけで足早に去って行った。
『ブルースくん、反応薄いねぇ』
修羅場好きの綿毛ちゃんが、ちょっぴり不満そうにブルース兄様が消えた方角を眺めている。ブルース兄様は普段すごく口うるさいのに、こういうときには意外と反応が薄いのだ。前にブルース兄様が仕事で長期間ヴィアン家を不在にしていたときもそうだった。
兄様のいない間にお喋りする犬(綿毛ちゃん)を拾ったのだが、それを見た兄様は思考を放棄したみたいに適当に話を終わらせてしまった。あのときは疲れているのだと思っていたのだが、どうやらブルース兄様は時折考えることをやめるらしいとわかった。
あっさり去って行ったブルース兄様に、ティアンも拍子抜けしたらしい。色々文句を言われるかもしれないと覚悟していたようだ。
しかしブルース兄様は、基本的には俺の考えを尊重してくれる。だから別に本気で反対したりはしないだろうと思っていた。それにしても反応薄くてちょっとびっくりしたけど。
なんとなくティアンを見上げて、さりげなく手を繋いでみる。一瞬だけビクッと肩を跳ねさせたティアンであるが、振り払われることはなかった。
どちらも言葉を発することなく、廊下の真ん中でただただ手を繋ぐ。
「……やっぱりさ」
「はい?」
唐突に口を開いた俺に、ティアンが首を傾げる。
「ブルース兄様は恋愛に興味ないんだよ」
「え、あ。はい。そうかもしれませんね」
ずっと一緒にいて、浮いた話は聞いたことがない。アリアと結婚したけど、それもアリアの強い申し出があったからだし、なにより一番はお互いの利益が一致したからだ。夫婦という在り方に興味の薄いふたりが、世間体だけを考えて協力した結果である。
これだけ恋愛とは遠いところにいるブルース兄様なのだが、不思議なことにお母様だけは兄様が夜な夜な女遊びしていると疑っている節がある。まぁ、これはもっぱらアロンのせいなんだけど。
立ち尽くすのにも飽きたので、ティアンの手を引いて部屋に戻る。せかせか歩く綿毛ちゃんが『オレは恋愛に興味あるよ。ブルースくんと違って』と謎主張をしている。綿毛ちゃんが興味あるのは恋愛じゃなくて修羅場だろう。
「綿毛ちゃんの恋愛対象って犬なの?」
ふと気になって尋ねると、毛玉がむっとした。灰色もふもふが、わかりやすく怒っている。綿毛ちゃんは犬なのに表情豊かだ。
『違うもんね。オレ、犬じゃないもんね。そもそも犬の言葉とかわかんないもーん』
「へー、そうなんだ」
そういえば、そうだった。
綿毛ちゃんは見た目完全に犬なのに、エリスちゃんとは意思疎通ができない。人間に作られたから、人間の言葉しかわからないと言っていた。犬と恋愛するのは無理そうだな。
「じゃあ人間が恋愛対象なの?」
綿毛ちゃんも、一応は人間になれる。長髪のかっこいいお兄さんだ。俺が頼んでも、あんまり人間姿にはなってくれないけど。なんでも人間姿を維持するのは疲れるらしい。
ちょっと考えてみせる綿毛ちゃんであるが、すぐに首を傾げて『わかんなーい』と言い放った。
へらへら笑う綿毛ちゃんは、適当である。
『でもオレ、ロニーさん好きぃ』
「うるさいぞ、毛玉!」
ニヤッと悪い笑みを浮かべた綿毛ちゃんに、眉を吊り上げる。素早く俺から距離を取った綿毛ちゃんは、確実に俺を揶揄って遊んでいる。毛玉のくせに生意気だぞ。
『坊ちゃんにはティアンさんがいるもーん。オレはロニーさんと仲良くしよー』
へらへら笑いながら俺の周りを駆ける綿毛ちゃんは、全力で俺を煽ってくる。むっと唇を引き結ぶ俺に、ティアンが苦笑した。
思わず拳を握る俺であったが、隣にいたティアンが「ルイス様」と優しく呼んだ。
「ルイス様には僕がいるじゃないですか」
冗談っぽい響きではあるが、繋いだ手にぎゅっと力が込められる。どこか強張った表情に、内心でティアンがちょっと緊張していることが伝わってきた。
「うん。そうだね」
にこりと笑う俺に、ティアンがホッと肩の力を抜いた。どうやら俺がティアンよりもロニーも選ぶのではないかと思ったらしい。
ロニーのことは好きだけど、なんだろうな。優しいお兄さんって感じであって、別に恋愛感情はない。いや、過去にはロニーに告白しちゃったんだけどさ。
足元の綿毛ちゃんが『オレを無視しないでぇ』と間に割り込んでくる。相変わらず空気を読まない毛玉である。
『ブルースくん、反応薄いねぇ』
修羅場好きの綿毛ちゃんが、ちょっぴり不満そうにブルース兄様が消えた方角を眺めている。ブルース兄様は普段すごく口うるさいのに、こういうときには意外と反応が薄いのだ。前にブルース兄様が仕事で長期間ヴィアン家を不在にしていたときもそうだった。
兄様のいない間にお喋りする犬(綿毛ちゃん)を拾ったのだが、それを見た兄様は思考を放棄したみたいに適当に話を終わらせてしまった。あのときは疲れているのだと思っていたのだが、どうやらブルース兄様は時折考えることをやめるらしいとわかった。
あっさり去って行ったブルース兄様に、ティアンも拍子抜けしたらしい。色々文句を言われるかもしれないと覚悟していたようだ。
しかしブルース兄様は、基本的には俺の考えを尊重してくれる。だから別に本気で反対したりはしないだろうと思っていた。それにしても反応薄くてちょっとびっくりしたけど。
なんとなくティアンを見上げて、さりげなく手を繋いでみる。一瞬だけビクッと肩を跳ねさせたティアンであるが、振り払われることはなかった。
どちらも言葉を発することなく、廊下の真ん中でただただ手を繋ぐ。
「……やっぱりさ」
「はい?」
唐突に口を開いた俺に、ティアンが首を傾げる。
「ブルース兄様は恋愛に興味ないんだよ」
「え、あ。はい。そうかもしれませんね」
ずっと一緒にいて、浮いた話は聞いたことがない。アリアと結婚したけど、それもアリアの強い申し出があったからだし、なにより一番はお互いの利益が一致したからだ。夫婦という在り方に興味の薄いふたりが、世間体だけを考えて協力した結果である。
これだけ恋愛とは遠いところにいるブルース兄様なのだが、不思議なことにお母様だけは兄様が夜な夜な女遊びしていると疑っている節がある。まぁ、これはもっぱらアロンのせいなんだけど。
立ち尽くすのにも飽きたので、ティアンの手を引いて部屋に戻る。せかせか歩く綿毛ちゃんが『オレは恋愛に興味あるよ。ブルースくんと違って』と謎主張をしている。綿毛ちゃんが興味あるのは恋愛じゃなくて修羅場だろう。
「綿毛ちゃんの恋愛対象って犬なの?」
ふと気になって尋ねると、毛玉がむっとした。灰色もふもふが、わかりやすく怒っている。綿毛ちゃんは犬なのに表情豊かだ。
『違うもんね。オレ、犬じゃないもんね。そもそも犬の言葉とかわかんないもーん』
「へー、そうなんだ」
そういえば、そうだった。
綿毛ちゃんは見た目完全に犬なのに、エリスちゃんとは意思疎通ができない。人間に作られたから、人間の言葉しかわからないと言っていた。犬と恋愛するのは無理そうだな。
「じゃあ人間が恋愛対象なの?」
綿毛ちゃんも、一応は人間になれる。長髪のかっこいいお兄さんだ。俺が頼んでも、あんまり人間姿にはなってくれないけど。なんでも人間姿を維持するのは疲れるらしい。
ちょっと考えてみせる綿毛ちゃんであるが、すぐに首を傾げて『わかんなーい』と言い放った。
へらへら笑う綿毛ちゃんは、適当である。
『でもオレ、ロニーさん好きぃ』
「うるさいぞ、毛玉!」
ニヤッと悪い笑みを浮かべた綿毛ちゃんに、眉を吊り上げる。素早く俺から距離を取った綿毛ちゃんは、確実に俺を揶揄って遊んでいる。毛玉のくせに生意気だぞ。
『坊ちゃんにはティアンさんがいるもーん。オレはロニーさんと仲良くしよー』
へらへら笑いながら俺の周りを駆ける綿毛ちゃんは、全力で俺を煽ってくる。むっと唇を引き結ぶ俺に、ティアンが苦笑した。
思わず拳を握る俺であったが、隣にいたティアンが「ルイス様」と優しく呼んだ。
「ルイス様には僕がいるじゃないですか」
冗談っぽい響きではあるが、繋いだ手にぎゅっと力が込められる。どこか強張った表情に、内心でティアンがちょっと緊張していることが伝わってきた。
「うん。そうだね」
にこりと笑う俺に、ティアンがホッと肩の力を抜いた。どうやら俺がティアンよりもロニーも選ぶのではないかと思ったらしい。
ロニーのことは好きだけど、なんだろうな。優しいお兄さんって感じであって、別に恋愛感情はない。いや、過去にはロニーに告白しちゃったんだけどさ。
足元の綿毛ちゃんが『オレを無視しないでぇ』と間に割り込んでくる。相変わらず空気を読まない毛玉である。
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