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17歳
788 黙っていたほうが
「俺はそういうことには興味がない。悪いが諦めてくれ」
きっぱり告げたブルース兄様は、疲れた顔でため息を吐いてしまう。しゅんと肩を落とすロレッタは「また振られてしまいました」と呟いた。彼女の使用人さんが「元気出してください。お嬢様!」とあわあわしている。
「ほら、おまえたちは出ていけ」
ブルース兄様に背中を押されて、俺とユリスは部屋を追い出されてしまう。ティアンは安堵の表情を見せていた。綿毛ちゃんはしれっと部屋に居座ろうとしていたけど、気がついた兄様に追い払われてしまった。
「そのうち見つかるよ。ちゃんと好きな人が」
落ち込むロレッタを励ましながら、さりげなく外へと誘導する。居座られても厄介なので、このまま彼女を帰してしまおう。足早に玄関まで向かいながら、俺はロレッタの隣に並んだ。
「誰にでも好きって言うから、本気にされないんじゃない? 好きとか結婚したいとか。そういう大事な言葉は、ここぞという時にとっておかないと。ティアンみたいに」
ね? とティアンを振り返ると、彼は目を見開いていた。
「いや、僕は関係ないですよ」
「えー? だってティアンはずっと俺のこと好きだったのに全然言わなかったじゃん」
「今はその話、関係ないですよね」
ちょっぴり冷たいティアンは、確実に照れていた。ティアンは照れると、態度が素っ気なくなる。えいっとティアンの肩を押して揶揄っていると、ポケットに手を突っ込んだユリスが「僕の視界に入るところでイチャつくのはやめろ」と半眼になった。別にイチャついてはいない。さっとティアンから距離をとっておく。
玄関近くまで連れて行けば、ロレッタが丁寧にお辞儀した。やはり仕草は上品だ。すごくいいところのお嬢様っぽい。
「……ロレッタはさ。黙っていたらモテるんじゃない?」
「黙って……?」
失礼だとは思いつつも、指摘せずにはいられなかった。首を傾げるロレッタに、俺はロレッタの仕草や外見だけはすごくお嬢様っぽく見えるよと教えてあげる。彼女に一目惚れする人もそれなりにいるのではないだろうか。
「黙ってたら、そのうち恋人できるんじゃない?」
「そんな消極的な姿勢で本当に結婚できるのでしょうか」
「たぶん、できると思う」
ロレッタは、なんか喋ると残念な感じになるのだ。
俺の提案に、ユリスも「たしかにな」と同意する。
納得いかないような顔をしつつも、ロレッタは小さく頷いた。これはあまり喋らないように努力してみるという意味だろうか。頑張って。
ロレッタを見送って、俺はホッと息を吐いた。
「……なんか、すごく疲れたね」
心から呟けば、いつの間にか犬姿に戻っている綿毛ちゃんが『疲れたぁ』と俺の真似して伸びをしている。エリスちゃんと一緒に暮らしているからだろうか。綿毛ちゃんは時折猫っぽい仕草をする。
欠伸をしながら屋敷に戻ると、色々歩き回って疲れたらしいユリスは部屋に戻ってしまう。
「綿毛ちゃん、ちょっと厨房に行ってクッキー持ってきて」
『わかったぁ』
「ダメですよ!」
せっかく毛玉が了承したのに、ティアンが邪魔をしてくる。せかせか足を動かす綿毛ちゃんは、ティアンに抱えられてもまだ足を動かしている。それ、歩いているつもりなのか?
ティアンの手から綿毛ちゃんを取り返して、もふもふをぎゅっと抱きしめる。人間姿もカッコよくて好きだけど、やはりもふもふも捨てがたい。
「綿毛ちゃんは犬のほうが可愛いよ」
『どうもどうも。犬ではないけどねぇ』
へらへらしながら言い返す毛玉は、ちょっと得意な顔をしていた。褒められて喜んでいるらしい。
「でもさ、お父様とお母様に反対されなくてよかったね」
「はい」
「ティアンのご両親にも挨拶しないとね」
「いえ、それは本当に結構です。わざわざ言うほどのことでもないので」
「いや、ちゃんと言わないと」
ティアンは父親であるクレイグを慕っているけど、なんでも報告するような関係性ではないらしい。ここの親子関係はよくわからない。ただ照れているだけなのか。ティアンは家族への報告を頑なに拒否している。
「まぁ、でも一応みんなに報告できたしね。よかったね」
「はい」
にこっと笑うと、ティアンも微笑み返してくれる。それが嬉しくて、俺は頬を緩めた。
きっぱり告げたブルース兄様は、疲れた顔でため息を吐いてしまう。しゅんと肩を落とすロレッタは「また振られてしまいました」と呟いた。彼女の使用人さんが「元気出してください。お嬢様!」とあわあわしている。
「ほら、おまえたちは出ていけ」
ブルース兄様に背中を押されて、俺とユリスは部屋を追い出されてしまう。ティアンは安堵の表情を見せていた。綿毛ちゃんはしれっと部屋に居座ろうとしていたけど、気がついた兄様に追い払われてしまった。
「そのうち見つかるよ。ちゃんと好きな人が」
落ち込むロレッタを励ましながら、さりげなく外へと誘導する。居座られても厄介なので、このまま彼女を帰してしまおう。足早に玄関まで向かいながら、俺はロレッタの隣に並んだ。
「誰にでも好きって言うから、本気にされないんじゃない? 好きとか結婚したいとか。そういう大事な言葉は、ここぞという時にとっておかないと。ティアンみたいに」
ね? とティアンを振り返ると、彼は目を見開いていた。
「いや、僕は関係ないですよ」
「えー? だってティアンはずっと俺のこと好きだったのに全然言わなかったじゃん」
「今はその話、関係ないですよね」
ちょっぴり冷たいティアンは、確実に照れていた。ティアンは照れると、態度が素っ気なくなる。えいっとティアンの肩を押して揶揄っていると、ポケットに手を突っ込んだユリスが「僕の視界に入るところでイチャつくのはやめろ」と半眼になった。別にイチャついてはいない。さっとティアンから距離をとっておく。
玄関近くまで連れて行けば、ロレッタが丁寧にお辞儀した。やはり仕草は上品だ。すごくいいところのお嬢様っぽい。
「……ロレッタはさ。黙っていたらモテるんじゃない?」
「黙って……?」
失礼だとは思いつつも、指摘せずにはいられなかった。首を傾げるロレッタに、俺はロレッタの仕草や外見だけはすごくお嬢様っぽく見えるよと教えてあげる。彼女に一目惚れする人もそれなりにいるのではないだろうか。
「黙ってたら、そのうち恋人できるんじゃない?」
「そんな消極的な姿勢で本当に結婚できるのでしょうか」
「たぶん、できると思う」
ロレッタは、なんか喋ると残念な感じになるのだ。
俺の提案に、ユリスも「たしかにな」と同意する。
納得いかないような顔をしつつも、ロレッタは小さく頷いた。これはあまり喋らないように努力してみるという意味だろうか。頑張って。
ロレッタを見送って、俺はホッと息を吐いた。
「……なんか、すごく疲れたね」
心から呟けば、いつの間にか犬姿に戻っている綿毛ちゃんが『疲れたぁ』と俺の真似して伸びをしている。エリスちゃんと一緒に暮らしているからだろうか。綿毛ちゃんは時折猫っぽい仕草をする。
欠伸をしながら屋敷に戻ると、色々歩き回って疲れたらしいユリスは部屋に戻ってしまう。
「綿毛ちゃん、ちょっと厨房に行ってクッキー持ってきて」
『わかったぁ』
「ダメですよ!」
せっかく毛玉が了承したのに、ティアンが邪魔をしてくる。せかせか足を動かす綿毛ちゃんは、ティアンに抱えられてもまだ足を動かしている。それ、歩いているつもりなのか?
ティアンの手から綿毛ちゃんを取り返して、もふもふをぎゅっと抱きしめる。人間姿もカッコよくて好きだけど、やはりもふもふも捨てがたい。
「綿毛ちゃんは犬のほうが可愛いよ」
『どうもどうも。犬ではないけどねぇ』
へらへらしながら言い返す毛玉は、ちょっと得意な顔をしていた。褒められて喜んでいるらしい。
「でもさ、お父様とお母様に反対されなくてよかったね」
「はい」
「ティアンのご両親にも挨拶しないとね」
「いえ、それは本当に結構です。わざわざ言うほどのことでもないので」
「いや、ちゃんと言わないと」
ティアンは父親であるクレイグを慕っているけど、なんでも報告するような関係性ではないらしい。ここの親子関係はよくわからない。ただ照れているだけなのか。ティアンは家族への報告を頑なに拒否している。
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