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17歳
790 俺とも
「ルイス様。手紙きてますよ」
今日も朝から毛玉二匹のお世話をしていたところ、間延びした声と共にアロンがやってきた。片手に持った手紙をひらひらさせるアロンは、「これどうしますか?」と意味不明な質問をしてくる。
ところで、なんで毎度俺への手紙はアロンが持ってくるのだろうか。謎である。手紙チェックってアロンの仕事なの?
「はい。ありがとう」
綿毛ちゃんの背中の毛をブラシでガシガシ整えていた俺は、左手をアロンに差し出す。綿毛ちゃんが『痛いでーす』と顔をむぎゅっとしていた。だって綿毛ちゃんの毛がもふもふだからすごく絡むのだ。綺麗にしてあげているんだから、おとなしくしていろ。
手紙を渡せという意味で左手を差し出したのだが、なぜかアロンはそのまま手を握ってきた。なんで握手する必要があるんだ。
「なに? ふざけないで」
「ルイス様、たまには俺とも遊んでくださいよ」
「あとでね」
「あとでって具体的にはいつですか。今夜ですか? 今夜ですね。わかりました。また夜にお邪魔します」
「お邪魔しなくていいから」
なんで今夜一択なんだ。
綿毛ちゃんのブラッシングが終わったら遊んでやるから、ちょっと待ってて。
不満そうなアロンは、部屋にティアンがいないことを確認してから椅子に座った。ジャンがちょっぴり困ったような面持ちでアロンを見ている。ジャンは、アロンのことが少し苦手なのだ。
「ルイス様。そんな犬なんてどうでもいいですから。俺の相手をしてくださいよ」
『割り込み反対! 順番は守ってくださーい! あとオレは犬じゃないでーす』
強気に言い返す毛玉は、尻尾を立てて警戒している。綿毛ちゃんはどこからどう見ても犬だけどね。
毛玉の抗議に眉を寄せたアロンは、持参した手紙をテーブルに置いた。
「手紙見ないんですか?」
「見る。誰から?」
「ジェフリーです」
その名前に、俺はブラッシング中の綿毛ちゃんを放り出して椅子に座った。綿毛ちゃんが『途中でやめないでぇ。オレの毛並みがぁ』と言いながらすかさずジャンの足元に寄っていく。苦笑したジャンが、ブラッシングの続きを引き受けてくれた。
『ジャンさん、ブラッシング上手だね。ここだけの話、坊ちゃんはちょっと雑で痛いんだよね。あれはオレの毛を抜こうとしてるよ、絶対』
「聞こえてるぞ、毛玉め!」
『えー? なんの話ぃ?』
とぼける毛玉は、へらへら笑いながらジャンの背中に隠れてしまう。それで誤魔化せると思うなよ。
うるさい毛玉から視線を逸らして、テーブルに置かれた手紙に手を伸ばすと、アロンが「見ちゃうんですか?」と悪い笑みを浮かべた。
「見ちゃだめなの?」
「それティアンにですよ」
「はぁ?」
言われて確認すると、たしかにティアン宛ての手紙であった。じゃあ俺に渡すなよ。
人の手紙を勝手に見るわけにもいかない。そっとテーブルに戻せば、アロンが腕を組んだ。
「また決闘状ですよ。諦め悪いですよね」
「なんで決闘状だってわかるの?」
「中、見たので」
「見たの!?」
衝撃の告白に驚く俺。対するアロンは悪びれることなく手紙を開いてしまう。
「勝手に見たらティアンが怒るよ」
「ティアンが怒ったところで俺にはなんのダメージもありませんね」
「クズだね」
「褒め言葉として受け取っておきますね」
いや、褒めてはいない。
一切の躊躇なく手紙を開いたアロンは、俺にも見ろと押し付けてくる。少し迷ったが、結局は好奇心に負けて文面に視線を落としてしまった。几帳面な文字で、ティアンに対して勝負を申し込む旨の記載があった。
「これさ。前にも同じようなの届いたよね? ティアン断ってたよね」
ちょっと前に、ほとんど同じ文面の手紙がジェフリーからティアンに届いた。すぐにティアンがお断りの手紙を送ったはずなのだが、しれっと二度目の決闘状を送ってきたらしい。
どうなっているんだ、ジェフリー。
「俺、明日ジェフリーの家に行く予定だから。ティアンと一緒に直接お断りしてくるね」
ジェフリーは、よくわからないのだがティアンに勝てば俺とお付き合いができると考えているらしい。俺、強い奴とお付き合いするなんて宣言した覚えはないんだけどな。
やれやれと手紙を封筒に戻していると、アロンが「ルイス様」と俺を呼んだ。
「うん?」
「俺がティアンに勝ったら、俺と付き合ってくれるんですか?」
「付き合わないよ。そういうシステムないから」
「でも俺はルイス様と付き合いたいです」
……まだ諦めていないのか。
見れば、アロンは真剣な表情で俺の瞳を覗き込むようにしていた。
「うーん。でももうティアンと付き合ってるし」
「じゃあティアンには内緒で俺とも付き合っちゃいましょうよ」
「は?」
テーブルに肘をついたアロンが、右手を伸ばして俺の手を掴んできた。
「大丈夫。絶対にバレないようにしますから」
ね? という爽やかウインクと共に、アロンが俺の手を引いた。次の瞬間、俺の手の甲にアロンの唇がそっと触れた。
『ひゃー! 見ちゃった! オレ見ちゃったぁ』
ぴょんぴょん跳ねる綿毛ちゃんの横で、ジャンが「え、あ。すみません!」と謎の謝罪をしながら顔を背けた。いや、待て。なんだその浮気現場を目撃しちゃったみたいな反応は。
「もう! 変なことしないで!」
アロンの手を振りほどいて文句を言うけど、当のアロンは余裕の笑みを浮かべたまま「考えておいてくださいね」と言い添える。考えないから。俺にはティアンがいるって言ってるでしょうが。
今日も朝から毛玉二匹のお世話をしていたところ、間延びした声と共にアロンがやってきた。片手に持った手紙をひらひらさせるアロンは、「これどうしますか?」と意味不明な質問をしてくる。
ところで、なんで毎度俺への手紙はアロンが持ってくるのだろうか。謎である。手紙チェックってアロンの仕事なの?
「はい。ありがとう」
綿毛ちゃんの背中の毛をブラシでガシガシ整えていた俺は、左手をアロンに差し出す。綿毛ちゃんが『痛いでーす』と顔をむぎゅっとしていた。だって綿毛ちゃんの毛がもふもふだからすごく絡むのだ。綺麗にしてあげているんだから、おとなしくしていろ。
手紙を渡せという意味で左手を差し出したのだが、なぜかアロンはそのまま手を握ってきた。なんで握手する必要があるんだ。
「なに? ふざけないで」
「ルイス様、たまには俺とも遊んでくださいよ」
「あとでね」
「あとでって具体的にはいつですか。今夜ですか? 今夜ですね。わかりました。また夜にお邪魔します」
「お邪魔しなくていいから」
なんで今夜一択なんだ。
綿毛ちゃんのブラッシングが終わったら遊んでやるから、ちょっと待ってて。
不満そうなアロンは、部屋にティアンがいないことを確認してから椅子に座った。ジャンがちょっぴり困ったような面持ちでアロンを見ている。ジャンは、アロンのことが少し苦手なのだ。
「ルイス様。そんな犬なんてどうでもいいですから。俺の相手をしてくださいよ」
『割り込み反対! 順番は守ってくださーい! あとオレは犬じゃないでーす』
強気に言い返す毛玉は、尻尾を立てて警戒している。綿毛ちゃんはどこからどう見ても犬だけどね。
毛玉の抗議に眉を寄せたアロンは、持参した手紙をテーブルに置いた。
「手紙見ないんですか?」
「見る。誰から?」
「ジェフリーです」
その名前に、俺はブラッシング中の綿毛ちゃんを放り出して椅子に座った。綿毛ちゃんが『途中でやめないでぇ。オレの毛並みがぁ』と言いながらすかさずジャンの足元に寄っていく。苦笑したジャンが、ブラッシングの続きを引き受けてくれた。
『ジャンさん、ブラッシング上手だね。ここだけの話、坊ちゃんはちょっと雑で痛いんだよね。あれはオレの毛を抜こうとしてるよ、絶対』
「聞こえてるぞ、毛玉め!」
『えー? なんの話ぃ?』
とぼける毛玉は、へらへら笑いながらジャンの背中に隠れてしまう。それで誤魔化せると思うなよ。
うるさい毛玉から視線を逸らして、テーブルに置かれた手紙に手を伸ばすと、アロンが「見ちゃうんですか?」と悪い笑みを浮かべた。
「見ちゃだめなの?」
「それティアンにですよ」
「はぁ?」
言われて確認すると、たしかにティアン宛ての手紙であった。じゃあ俺に渡すなよ。
人の手紙を勝手に見るわけにもいかない。そっとテーブルに戻せば、アロンが腕を組んだ。
「また決闘状ですよ。諦め悪いですよね」
「なんで決闘状だってわかるの?」
「中、見たので」
「見たの!?」
衝撃の告白に驚く俺。対するアロンは悪びれることなく手紙を開いてしまう。
「勝手に見たらティアンが怒るよ」
「ティアンが怒ったところで俺にはなんのダメージもありませんね」
「クズだね」
「褒め言葉として受け取っておきますね」
いや、褒めてはいない。
一切の躊躇なく手紙を開いたアロンは、俺にも見ろと押し付けてくる。少し迷ったが、結局は好奇心に負けて文面に視線を落としてしまった。几帳面な文字で、ティアンに対して勝負を申し込む旨の記載があった。
「これさ。前にも同じようなの届いたよね? ティアン断ってたよね」
ちょっと前に、ほとんど同じ文面の手紙がジェフリーからティアンに届いた。すぐにティアンがお断りの手紙を送ったはずなのだが、しれっと二度目の決闘状を送ってきたらしい。
どうなっているんだ、ジェフリー。
「俺、明日ジェフリーの家に行く予定だから。ティアンと一緒に直接お断りしてくるね」
ジェフリーは、よくわからないのだがティアンに勝てば俺とお付き合いができると考えているらしい。俺、強い奴とお付き合いするなんて宣言した覚えはないんだけどな。
やれやれと手紙を封筒に戻していると、アロンが「ルイス様」と俺を呼んだ。
「うん?」
「俺がティアンに勝ったら、俺と付き合ってくれるんですか?」
「付き合わないよ。そういうシステムないから」
「でも俺はルイス様と付き合いたいです」
……まだ諦めていないのか。
見れば、アロンは真剣な表情で俺の瞳を覗き込むようにしていた。
「うーん。でももうティアンと付き合ってるし」
「じゃあティアンには内緒で俺とも付き合っちゃいましょうよ」
「は?」
テーブルに肘をついたアロンが、右手を伸ばして俺の手を掴んできた。
「大丈夫。絶対にバレないようにしますから」
ね? という爽やかウインクと共に、アロンが俺の手を引いた。次の瞬間、俺の手の甲にアロンの唇がそっと触れた。
『ひゃー! 見ちゃった! オレ見ちゃったぁ』
ぴょんぴょん跳ねる綿毛ちゃんの横で、ジャンが「え、あ。すみません!」と謎の謝罪をしながら顔を背けた。いや、待て。なんだその浮気現場を目撃しちゃったみたいな反応は。
「もう! 変なことしないで!」
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