785 / 964
17歳
795 生意気な後輩(sideアロン)
「で? ルイス様とはいつ頃別れる予定なの?」
「そんな予定ありませんよ」
素っ気なく答える可愛くない後輩の頭を軽く小突いてやった。案の定、険しい顔で「なにするんですか」と文句を言ってくるティアンに、俺は肩をすくめておく。
ルイス様は、勉強のため定期的にアーキア公爵家を訪れている。なんだか面白そうな予感がしたため同行してみれば、予想通り面白い事態が生じた。ジェフリーがティアンに決闘を申し込んだのだ。
前々から思っていたのだが、アーキア公爵家次男のジェフリーは非常に諦めが悪い。今回もその諦めの悪さを発揮して、うだうだとルイス様への未練を表現しているらしい。まぁ、俺も大概諦めは悪い方だと思うけど。
ルイス様は昔から妙なのに好かれる。これは誰にでも平等に気安く接するがゆえだと思っている。ジェフリーのときなんて露骨だ。
突然アーキア公爵家が引き取ってきたよくわからない子供である。おまけに既に社交界でそれなりの立場にいる兄デニスがわかりやすいくらいにジェフリーを嫌っていた。兄の方に睨まれたくないそこらの貴族たちは、当然のようにジェフリーに無関心を装っていた。当のアーキア公爵家も、ジェフリーの扱い方に困っていた。愛人との間の子とはいえ、公爵の血を引いていることは間違いない。おまけに子供はデニスひとりだった。跡継ぎとか世間体とか考えて、結局はジェフリーを渋々引き取ることにしたのが丸わかりであった。
そんな悲しい境遇にいたジェフリーに、ルイス様はいつも通り打算のない笑みを向けた。ジェフリーがルイス様に心奪われるには、それだけで十分だったのだろう。
「ルイス様は優しいよね」
俺の出会った人間の中に、ここまで優しい人間は他にいない。しみじみ呟けば、ティアンが「なんですか、突然」と眉を寄せる。
「いやー、ルイス様は優しいから。頼まれると断れない性格だから。ね?」
「は? なにが言いたいのかさっぱりわかりません」
つんと澄ましているティアンは、相変わらず生意気だ。
ルイス様がお勉強されている間、俺たちは別室で待機となっているのだが、これがまた暇で仕方がない。無愛想なティアンは、先程から真面目な顔で本を読んでいる。ちょっと足を伸ばして、ティアンの足を蹴ってやった。すぐに「なんですか」と苛立ったような声が返ってくる。
「俺の話聞いてる? ルイス様は優しいよねって」
「聞いてますよ。だからなんですか」
「優しいから、君に告白されて断りきれなかっただけだと思うよ」
「そんなわけないでしょ。いい加減色々と諦めてくださいよ」
「はぁ?」
諦めるのはそっちだろう。腹が立ったので、今度は強めにティアンの足を蹴っておく。いい加減にしてくださいと言われたが、聞こえなかったふりをしておく。
そもそもルイス様って、いつからティアンのことが好きなんだ。ティアンよりもロニーに熱中しているように見えたけどな。
「こんな面白味もない男のどこがいいんだか」
「悪かったですね。面白味がなくて」
ティアンに睨まれて、俺は笑顔を返しておいた。
ルイス様と付き合うのは一度諦めたはずなのだが、こう近くに達成した男がいるとどうしても諦めきれないという感情が湧いてくる。
「俺は、全力で君の邪魔をしようと思うんだけど」
「それ聞かされて僕はどうすればいいんですか。嫌なのでやめてください」
「実家に帰れば? お父さん元気?」
ティアンの父は、ヴィアン家騎士団の元団長だ。なんか頭の硬い男だった。俺が何度あの人に怒鳴られたことか。その点、今の団長は無口で助かる。
「しばらく会ってないので知りませんけど。元気じゃないという話も聞かないので、元気なんじゃないですか」
素っ気ない返答に、ふーんと返しておく。小さい頃はクレイグの後をきらきらした目で追いかけていたような気もするのだが、今のティアンは素っ気ない。
「あなたこそ、実家に戻らなくていいんですか?」
仕返しとばかりに投げられた言葉に、目を瞬いた。
妹のアリアがブルース様と結婚してしまった以上、伯爵家を継ぐのは俺だろう。長男だし。昔は、当然のように俺が早々に跡を継ぐと思っていた。
それがどうして、こんなにも先延ばしになっているのだろうかと苦笑した。
不思議なことに、今はそれほど伯爵家に興味がないのだ。それよりももっと興味を持てる人を見つけてしまったから。
「ま、父親が元気なうちは大丈夫でしょ」
いまだに飄々としていて、掴みどころのない父親の顔を思い出した。ルイス様は俺と父親の顔がそっくりだと言っていたが、自分ではあまりそうは思わない。
なにより俺は、あそこまで性格悪くはない。
「そうですか。あなたが実家に戻ったら、たぶんルイス様は寂しがると思いますよ」
「それなに目線からのコメント?」
妙な余裕を出す後輩に、ため息がこぼれてしまう。まぁ、でも。ルイス様が寂しがるのであれば、当分の間は実家には戻れないなと、腕を組んだ。
「そんな予定ありませんよ」
素っ気なく答える可愛くない後輩の頭を軽く小突いてやった。案の定、険しい顔で「なにするんですか」と文句を言ってくるティアンに、俺は肩をすくめておく。
ルイス様は、勉強のため定期的にアーキア公爵家を訪れている。なんだか面白そうな予感がしたため同行してみれば、予想通り面白い事態が生じた。ジェフリーがティアンに決闘を申し込んだのだ。
前々から思っていたのだが、アーキア公爵家次男のジェフリーは非常に諦めが悪い。今回もその諦めの悪さを発揮して、うだうだとルイス様への未練を表現しているらしい。まぁ、俺も大概諦めは悪い方だと思うけど。
ルイス様は昔から妙なのに好かれる。これは誰にでも平等に気安く接するがゆえだと思っている。ジェフリーのときなんて露骨だ。
突然アーキア公爵家が引き取ってきたよくわからない子供である。おまけに既に社交界でそれなりの立場にいる兄デニスがわかりやすいくらいにジェフリーを嫌っていた。兄の方に睨まれたくないそこらの貴族たちは、当然のようにジェフリーに無関心を装っていた。当のアーキア公爵家も、ジェフリーの扱い方に困っていた。愛人との間の子とはいえ、公爵の血を引いていることは間違いない。おまけに子供はデニスひとりだった。跡継ぎとか世間体とか考えて、結局はジェフリーを渋々引き取ることにしたのが丸わかりであった。
そんな悲しい境遇にいたジェフリーに、ルイス様はいつも通り打算のない笑みを向けた。ジェフリーがルイス様に心奪われるには、それだけで十分だったのだろう。
「ルイス様は優しいよね」
俺の出会った人間の中に、ここまで優しい人間は他にいない。しみじみ呟けば、ティアンが「なんですか、突然」と眉を寄せる。
「いやー、ルイス様は優しいから。頼まれると断れない性格だから。ね?」
「は? なにが言いたいのかさっぱりわかりません」
つんと澄ましているティアンは、相変わらず生意気だ。
ルイス様がお勉強されている間、俺たちは別室で待機となっているのだが、これがまた暇で仕方がない。無愛想なティアンは、先程から真面目な顔で本を読んでいる。ちょっと足を伸ばして、ティアンの足を蹴ってやった。すぐに「なんですか」と苛立ったような声が返ってくる。
「俺の話聞いてる? ルイス様は優しいよねって」
「聞いてますよ。だからなんですか」
「優しいから、君に告白されて断りきれなかっただけだと思うよ」
「そんなわけないでしょ。いい加減色々と諦めてくださいよ」
「はぁ?」
諦めるのはそっちだろう。腹が立ったので、今度は強めにティアンの足を蹴っておく。いい加減にしてくださいと言われたが、聞こえなかったふりをしておく。
そもそもルイス様って、いつからティアンのことが好きなんだ。ティアンよりもロニーに熱中しているように見えたけどな。
「こんな面白味もない男のどこがいいんだか」
「悪かったですね。面白味がなくて」
ティアンに睨まれて、俺は笑顔を返しておいた。
ルイス様と付き合うのは一度諦めたはずなのだが、こう近くに達成した男がいるとどうしても諦めきれないという感情が湧いてくる。
「俺は、全力で君の邪魔をしようと思うんだけど」
「それ聞かされて僕はどうすればいいんですか。嫌なのでやめてください」
「実家に帰れば? お父さん元気?」
ティアンの父は、ヴィアン家騎士団の元団長だ。なんか頭の硬い男だった。俺が何度あの人に怒鳴られたことか。その点、今の団長は無口で助かる。
「しばらく会ってないので知りませんけど。元気じゃないという話も聞かないので、元気なんじゃないですか」
素っ気ない返答に、ふーんと返しておく。小さい頃はクレイグの後をきらきらした目で追いかけていたような気もするのだが、今のティアンは素っ気ない。
「あなたこそ、実家に戻らなくていいんですか?」
仕返しとばかりに投げられた言葉に、目を瞬いた。
妹のアリアがブルース様と結婚してしまった以上、伯爵家を継ぐのは俺だろう。長男だし。昔は、当然のように俺が早々に跡を継ぐと思っていた。
それがどうして、こんなにも先延ばしになっているのだろうかと苦笑した。
不思議なことに、今はそれほど伯爵家に興味がないのだ。それよりももっと興味を持てる人を見つけてしまったから。
「ま、父親が元気なうちは大丈夫でしょ」
いまだに飄々としていて、掴みどころのない父親の顔を思い出した。ルイス様は俺と父親の顔がそっくりだと言っていたが、自分ではあまりそうは思わない。
なにより俺は、あそこまで性格悪くはない。
「そうですか。あなたが実家に戻ったら、たぶんルイス様は寂しがると思いますよ」
「それなに目線からのコメント?」
妙な余裕を出す後輩に、ため息がこぼれてしまう。まぁ、でも。ルイス様が寂しがるのであれば、当分の間は実家には戻れないなと、腕を組んだ。
あなたにおすすめの小説
人気アイドルの俺、なぜかメンバー全員に好かれてます
七瀬
BL
デビュー4年目の人気アイドルグループ「ECLIPSE(エクリプス)」に所属する芹沢 美澄(せりざわみすみ)は、昔からどこか抜けていてマイペースな性格。
歌もダンスも決して一番ではないはずなのに、なぜかファンからもメンバーからも目を離されない存在だった。
世話焼きな幼なじみ、明るく距離の近い同い年、しっかり者で面倒見のいい年上、掴みどころのない自由人、そして無言で隣にいるリーダー——。
気づけば、美澄の周りにはいつも誰かがいて、当たり前のように甘やかされていく。
転生したら、主人公の宿敵(でも俺の推し)の側近でした
リリーブルー
BL
「しごとより、いのち」厚労省の過労死等防止対策のスローガンです。過労死をゼロにし、健康で充実して働き続けることのできる社会へ。この小説の主人公は、仕事依存で過労死し異世界転生します。
仕事依存だった主人公(20代社畜)は、過労で倒れた拍子に異世界へ転生。目を覚ますと、そこは剣と魔法の世界——。愛読していた小説のラスボス貴族、すなわち原作主人公の宿敵(ライバル)レオナルト公爵に仕える側近の美青年貴族・シリル(20代)になっていた!
原作小説では悪役のレオナルト公爵。でも主人公はレオナルトに感情移入して読んでおり彼が推しだった! なので嬉しい!
だが問題は、そのラスボス貴族・レオナルト公爵(30代)が、物語の中では原作主人公にとっての宿敵ゆえに、原作小説では彼の冷酷な策略によって国家間の戦争へと突き進み、最終的にレオナルトと側近のシリルは処刑される運命だったことだ。
「俺、このままだと死ぬやつじゃん……」
死を回避するために、主人公、すなわち転生先の新しいシリルは、レオナルト公爵の信頼を得て歴史を変えようと決意。しかし、レオナルトは原作とは違い、どこか寂しげで孤独を抱えている様子。さらに、主人公が意外な才覚を発揮するたびに、公爵の態度が甘くなり、なぜか距離が近くなっていく。主人公は気づく。レオナルト公爵が悪に染まる原因は、彼の孤独と裏切られ続けた過去にあるのではないかと。そして彼を救おうと奔走するが、それは同時に、公爵からの執着を招くことになり——!?
原作主人公ラセル王太子も出てきて話は複雑に!
見どころ
・転生
・主従
・推しである原作悪役に溺愛される
・前世の経験と知識を活かす
・政治的な駆け引きとバトル要素(少し)
・ダークヒーロー(攻め)の変化(冷酷な公爵が愛を知り、主人公に執着・溺愛する過程)
・黒猫もふもふ
番外編では。
・もふもふ獣人化
・切ない裏側
・少年時代
などなど
最初は、推しの信頼を得るために、ほのぼの日常スローライフ、かわいい黒猫が出てきます。中盤にバトルがあって、解決、という流れ。後日譚は、ほのぼのに戻るかも。本編は完結しましたが、後日譚や番外編、ifルートなど、続々更新中。
妖精です、囲われてます
うあゆ
BL
僕は妖精
森で気ままに暮らしていました。
ふと気づいたら人間に囲まれてました。
でもこの人間のそばはとても心地いいし、森に帰るタイミング見つからないなぁ、なんて思いながらダラダラ暮らしてます。
__________
妖精の前だけはドロ甘の冷徹公爵×引きこもり妖精
なんやかんやお互い幸せに暮らします。
【完結】第三王子、ただいま輸送中。理由は多分、大臣です
ナポ
BL
ラクス王子、目覚めたら馬車の中。
理由は不明、手紙一通とパン一個。
どうやら「王宮の空気を乱したため、左遷」だそうです。
そんな理由でいいのか!?
でもなぜか辺境での暮らしが思いのほか快適!
自由だし、食事は美味しいし、うるさい兄たちもいない!
……と思いきや、襲撃事件に巻き込まれたり、何かの教祖にされたり、ドタバタと騒がしい!!
氷の婚約者様に破談を申し出たら号泣された
楽矢
BL
【完結/番外編準備中】
目が覚めると、レースの牢獄のような天蓋付きベッドの上だった。
何も覚えていない出来損ない下級貴族ミラ。無能だクズだと冷酷な罵詈雑言を浴びせてくる氷の騎士セティアス。
記憶喪失から始まる、2人のファンタジー貴族ラブコメディ。
----------
※注)
かっこいい攻はいません。
タイトル通りそのうち号泣しますのでご注意!
貴族描写は緩い目で雰囲気だけお読みいただけると幸いです。
ハッピーエンドです。
激重感情をこじらせた攻→受な関係がお好きな同志の方、どうぞよろしくお願いします!
全16話 完結済み
他サイトにも同作品を投稿しています。
様子を見ながらそのうち統合するかもしれません。
初めての一次創作でまだよく分かっておらず、何かおかしなことをしでかしていたら申し訳ないです!
----------
追記:読んでくださった皆さま、本当にどうもありがとうございました!!
完結しましたが回収しきれていないエピソードが私の中でいくつかあるので笑、後日番外編をアップしたいなと現在準備中です。
詳しい更新日まだ未定ですが、もしよろしかったらゼヒまた覗いてやってくださいねー!
ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました
あと
BL
「お兄ちゃん!一肌脱ぎます!」
完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け
可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…?
攻め:ヴィクター・ローレンツ
受け:リアム・グレイソン
弟:リチャード・グレイソン
pixivにも投稿しています。
ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。