嫌われ令息に成り代わった俺、なぜか過保護に愛でられています

岩永みやび

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17歳

801 全然だめ

「どうだった?」

 戻ってきたユリスに結果を尋ねたところ、ユリスは軽く肩をすくめて「ダメだな」と言った。ダメだったんかい。どうやらティアンはすぐにユリスだと気がついたらしい。そんなに簡単にバレてしまったのか。嬉しいような、面白くないような微妙な気分である。しかしティアンが俺とユリスを間違えなかったのは、やはり嬉しいかもしれない。

「やっぱりね、ユリスがやる気のない目をしてるからだよ」
「悪かったな。目が死んでて」

 どんまいとユリスの肩を叩く。
 半眼になるユリスの後ろから、綿毛ちゃんがニヤニヤ顔で出てくる。なにを笑っているんだ。

 俺とユリス、そんなに似ていないのだろうか。顔は同じなのに、どうにも上手くいかない。そんなに雰囲気違うのだろうか。

 考え込む俺を横目に、ユリスは髪を整えて欠伸した。

「僕はもう寝る。おまえも部屋に戻れ」
「一緒に寝よう」
「寝ない。僕はひとりで寝る」
「えー」

 素っ気ないユリスは「その猫も持って帰れ」とベッドで丸くなるエリスちゃんを顎で示した。呑気なエリスちゃんは、気にせず熟睡していた。可愛い。

 起こすのは可哀想なので、そっとエリスちゃんを抱き上げる。すやすや寝ている猫は、目を覚ます気配がない。

「じゃあ、おやすみ」
「あぁ」

 ユリスがうるさいので、部屋に戻ることにする。へらへら笑いながら追いかけてくる綿毛ちゃんは、挙動不審だ。しかしこの犬の言動がおかしいのは、いつものことでもある。気にしないでおこう。

 エリスちゃんを俺のベッドに置いて、もう寝ることにする。

『坊ちゃん』
「うるさいぞ。猫が起きたらどうする」

 静かにしろと綿毛ちゃんを睨むと、『ひどいよぉ』とわざとらしい泣き真似をされた。

 ベッドに転がる俺の隣を陣取って、綿毛ちゃんがニヤニヤ笑っている。口元が緩みっぱなしである。そんなに面白いことがあったのか?

 気になるけど、毛玉は詳しいことを教えてくれない。しかしちょっと考えた末に、やはりニヤニヤしながら『よかったねぇ』と言った。

「なにが?」
『ティアンさん、坊ちゃんのこと大好きだよ』

 言われた言葉の意味を理解して、目を瞬いた。

「そんなこと、綿毛ちゃんに言われなくても知ってるもん」
『えー?』

 なんだか揶揄うように笑う綿毛ちゃんの頭を軽く叩いてやった。俺を揶揄って遊ぶんじゃない。


※※※


「あ、ブルース兄様だ」

 翌朝。
 綿毛ちゃんを日に当てようと窓際に置いていた俺は、窓の外にブルース兄様の姿を発見した。

 眩しそうに目を細める綿毛ちゃんは『これ、なんか意味あるのぉ?』と不満そうだ。太陽の光に当てると、毛がふわふわになる気がするのだ。意味はある。

 綿毛ちゃんの背中をペシペシ叩きながら、ブルース兄様を観察する。また花壇を物色している。窓を開けて「兄様ぁ!」と呼んでみる。顔を上げたブルース兄様は、俺に気が付いて手をあげてくれた。

「なにしてるのぉ!?」

 大声で叫ぶと、兄様が手を振る。
 なにか言っているらしいが、よく聞こえない。別にそこまで興味はないので、俺も笑って手を振っておく。どうせまた花瓶に活ける花でも探しているのだろう。またお母様に文句言われるだけだと思うけど。

 綿毛ちゃんを窓際に残して、椅子に座る。のんびり欠伸している毛玉は、今にも寝てしまいそうだ。

「ねー、ティアン」
「なんですか」

 すぐに返事をしてくれるティアンは、いつもと変わらない。

「夜、ユリスがティアンの部屋に行ったでしょ?」
「あー、はい。そうですね」
「なんでユリスってわかったの?」
「……え?」

 なんだか変な顔をするティアンは、「え、あれってルイス様のフリをしていたんですか?」と今更の質問をしてきた。おい、ユリス。全然ダメじゃないか。

 どうやら普通にユリスだと思ったらしい。俺かと思って対応したのに、そこにいたのがユリスだったので相当驚いたのだとか。

「ユリスは俺の真似が下手くそだね」
「そう、みたいですね」

 ぎこちなく肯定したティアンは、苦笑している。一瞬たりとも騙せなかったという事実に、俺も笑いが込み上げてきた。
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