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17歳
809 不真面目
ロニーとしばらく会話していた俺であるが、ロニーにも仕事がある。そんなに長時間は拘束できない。
「話聞いてくれてありがとう」
「私でよければいつでも。私もルイス様とお話できて嬉しいですよ」
にこりと微笑んで嬉しいことを言ってくれるロニーは、やっぱり優しい。離れるのが名残惜しくて、ついロニーの顔を眺めてしまう。忙しそうに足元を行ったり来たりしていた綿毛ちゃんが『オレもロニーさんとお話できて嬉しい!』と会話に割り込んでくる。
そうこうしているうちに、ティアンがやって来た。
小走りで姿を現したティアンは、俺の顔を見てから安堵したように「ルイス様」と言った。
「なんでこんなところに。探したんですけど」
「あ、ごめん」
人目につかないところを探して、騎士棟の隅にいたのだ。俺がいなくて心配してくれたのだろうか。そうだったら、なんか嬉しい気がする。
仕事に戻るというロニーと別れて、俺はティアンを見上げる。さりげなくロニーについて行こうとしていた綿毛ちゃんは、ティアンにさっと捕獲されていた。この毛玉、なんで隙をついてロニーに絡もうとするのだろうか。
足をシャカシャカ動かす綿毛ちゃんは、目を閉じていた。もしかして、自分がティアンに抱っこされていることに気がついていないのだろうか。綿毛ちゃん、大丈夫か?
忙しそうな毛玉から意識を逸らして、ティアンを見る。けれども、どうしてもティアンの腕の中にいる毛玉が視界に入る。まだ足を動かしている。ダメだ。集中できない。
「綿毛ちゃん! うるさい!」
『なんでぇ? オレ、なにもしゃべってないけどねぇ』
不思議そうに呟く綿毛ちゃんは、ようやく足を止めた。それを確認してから、ティアンが綿毛ちゃんを地面に戻した。ロニーが去った方角を名残惜しそうに見つめる綿毛ちゃんは、悲しそうな背中をしていた。尻尾が垂れている。そんなにロニーと遊びたかったのだろうか。でも俺を差し置いてロニーと遊ぶのはダメ。
頭を振って、綿毛ちゃんを思考から追い出す。
ティアンに寄って、ぴたりと隣にくっついてみる。
「ルイス様?」
なんだか驚いた様子で離れようとするティアンの腕を両手で勢いよく掴んだ。
「なんで避けるの!?」
「え、いや。え?」
面食らったように目をぱちぱちさせるティアンは、「なんでそんなにくっつくんですか」と言った。やんわり俺を引き離そうとしてくる。
「くっつきたいから!」
「え……」
それ以外に理由なんてない。
呆気にとられるティアンは、動きを止めてしまう。
ティアンを相手にして遠慮するなんて馬鹿みたいだと思う。でも、こうやっていざ無遠慮に接してみるとティアンの反応が少し怖い。縋るようにティアンの腕を掴む手に力を込めた。少しだけ眉を寄せたティアンは「痛いです」と言った。だが、俺はまだ手を離す気はないぞ。
「付き合ってるんだから、もっとちゃんと恋人っぽくして」
「……ですが、仕事もありますし」
「仕事とか関係ないもん」
だいたいティアンの仕事って俺のお世話だろう。俺の近くにいれば、それでいいと思う。そこまで真面目になる必要はない。
「みんな仕事してないじゃん!」
「そんなことないですよ。少しは真面目に仕事してますよ」
自信なさそうに応じるティアンは、視線を泳がせていた。きっとティアンの頭の中には、アロンやニックの顔が浮かんでいるのだろう。真面目に働かない先輩たちを思い出して、心が揺れているに違いない。
「ちゃんと俺の相手して! 俺のこと避けないで!」
「ちょっと、ルイス様」
「真面目に俺と付き合って!」
仕事だけじゃなくて、俺とのお付き合いにも真面目になるべきだ。勢いでそう指摘すれば、少し間を置いてからティアンが笑った。思わずといった感じの笑みである。
「なんで笑うの」
「いえ、すみません」
笑いをかみ殺そうとしているティアンは、でも失敗している。どう見ても笑いを誤魔化せていない。
腹が立ったので、ティアンの腕を強く引っ張る。
よろけもしないティアンは、「すみません」と笑いながら繰り返した。
「僕、不真面目でしたか」
不意に問われて、頷いておく。
「俺の相手、ちゃんとしてなかった」
「そうですか。すみません。今度から気をつけます」
頬を緩ませるティアンは、謝りつつも楽しそうだ。
なんだかいい感じの空気である。これは、キスに再挑戦できるのでは?
そんな考えが頭を過って、俺はティアンから手を離した。伺うようにティアンを見上げると、ティアンは目元を指で拭っていた。笑いすぎて涙が出てきたらしい。どんだけ面白かったんだ。なんか失礼だぞ。俺、そんなに面白いこと言ってないから。
「話聞いてくれてありがとう」
「私でよければいつでも。私もルイス様とお話できて嬉しいですよ」
にこりと微笑んで嬉しいことを言ってくれるロニーは、やっぱり優しい。離れるのが名残惜しくて、ついロニーの顔を眺めてしまう。忙しそうに足元を行ったり来たりしていた綿毛ちゃんが『オレもロニーさんとお話できて嬉しい!』と会話に割り込んでくる。
そうこうしているうちに、ティアンがやって来た。
小走りで姿を現したティアンは、俺の顔を見てから安堵したように「ルイス様」と言った。
「なんでこんなところに。探したんですけど」
「あ、ごめん」
人目につかないところを探して、騎士棟の隅にいたのだ。俺がいなくて心配してくれたのだろうか。そうだったら、なんか嬉しい気がする。
仕事に戻るというロニーと別れて、俺はティアンを見上げる。さりげなくロニーについて行こうとしていた綿毛ちゃんは、ティアンにさっと捕獲されていた。この毛玉、なんで隙をついてロニーに絡もうとするのだろうか。
足をシャカシャカ動かす綿毛ちゃんは、目を閉じていた。もしかして、自分がティアンに抱っこされていることに気がついていないのだろうか。綿毛ちゃん、大丈夫か?
忙しそうな毛玉から意識を逸らして、ティアンを見る。けれども、どうしてもティアンの腕の中にいる毛玉が視界に入る。まだ足を動かしている。ダメだ。集中できない。
「綿毛ちゃん! うるさい!」
『なんでぇ? オレ、なにもしゃべってないけどねぇ』
不思議そうに呟く綿毛ちゃんは、ようやく足を止めた。それを確認してから、ティアンが綿毛ちゃんを地面に戻した。ロニーが去った方角を名残惜しそうに見つめる綿毛ちゃんは、悲しそうな背中をしていた。尻尾が垂れている。そんなにロニーと遊びたかったのだろうか。でも俺を差し置いてロニーと遊ぶのはダメ。
頭を振って、綿毛ちゃんを思考から追い出す。
ティアンに寄って、ぴたりと隣にくっついてみる。
「ルイス様?」
なんだか驚いた様子で離れようとするティアンの腕を両手で勢いよく掴んだ。
「なんで避けるの!?」
「え、いや。え?」
面食らったように目をぱちぱちさせるティアンは、「なんでそんなにくっつくんですか」と言った。やんわり俺を引き離そうとしてくる。
「くっつきたいから!」
「え……」
それ以外に理由なんてない。
呆気にとられるティアンは、動きを止めてしまう。
ティアンを相手にして遠慮するなんて馬鹿みたいだと思う。でも、こうやっていざ無遠慮に接してみるとティアンの反応が少し怖い。縋るようにティアンの腕を掴む手に力を込めた。少しだけ眉を寄せたティアンは「痛いです」と言った。だが、俺はまだ手を離す気はないぞ。
「付き合ってるんだから、もっとちゃんと恋人っぽくして」
「……ですが、仕事もありますし」
「仕事とか関係ないもん」
だいたいティアンの仕事って俺のお世話だろう。俺の近くにいれば、それでいいと思う。そこまで真面目になる必要はない。
「みんな仕事してないじゃん!」
「そんなことないですよ。少しは真面目に仕事してますよ」
自信なさそうに応じるティアンは、視線を泳がせていた。きっとティアンの頭の中には、アロンやニックの顔が浮かんでいるのだろう。真面目に働かない先輩たちを思い出して、心が揺れているに違いない。
「ちゃんと俺の相手して! 俺のこと避けないで!」
「ちょっと、ルイス様」
「真面目に俺と付き合って!」
仕事だけじゃなくて、俺とのお付き合いにも真面目になるべきだ。勢いでそう指摘すれば、少し間を置いてからティアンが笑った。思わずといった感じの笑みである。
「なんで笑うの」
「いえ、すみません」
笑いをかみ殺そうとしているティアンは、でも失敗している。どう見ても笑いを誤魔化せていない。
腹が立ったので、ティアンの腕を強く引っ張る。
よろけもしないティアンは、「すみません」と笑いながら繰り返した。
「僕、不真面目でしたか」
不意に問われて、頷いておく。
「俺の相手、ちゃんとしてなかった」
「そうですか。すみません。今度から気をつけます」
頬を緩ませるティアンは、謝りつつも楽しそうだ。
なんだかいい感じの空気である。これは、キスに再挑戦できるのでは?
そんな考えが頭を過って、俺はティアンから手を離した。伺うようにティアンを見上げると、ティアンは目元を指で拭っていた。笑いすぎて涙が出てきたらしい。どんだけ面白かったんだ。なんか失礼だぞ。俺、そんなに面白いこと言ってないから。
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