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17歳
811 時間の無駄
渋るティアンを伴って、俺は屋敷の中にあるアロンの部屋に向かった。いつもへらへらしているアロンが酔い潰れている姿は貴重だと思う。あと単純に面白そう。
嬉々として足を進める俺に、綿毛ちゃんが『オレもたまに二日酔いする』と、どうでもいい報告をしてくる。この犬は、俺の目を盗んでからお酒を飲んでいるのだ。大抵はアロンと一緒である。悪い犬なのだ。
「オーガス兄様は、酔うと面倒だよね」
そう言ってから、オーガス兄様は素面でも面倒だったなと思い直す。常に弱気なのに、変なところでプライド高いから。
「ルイス様。もっと他のことに時間を使いましょう。はっきり言って、時間の無駄です」
「なんでそんな冷たいこと言うの?」
明らかに面倒臭いという態度のティアンは、アロンのことが苦手なのだ。アロンはクソみたいな性格をしているからね。真面目なティアンとは色々と合わないのだろう。
アロンの部屋をノックしてみるけど、反応がない。これは本当に中で酔い潰れているのだろうか。途端にわくわくしてきた俺は、一方的に「入るね!」と声をかけてからドアノブを回した。鍵はかかっておらず、すんなり開いてしまう。
「アロン? 寝てるの? 大丈夫?」
「ちょっと、ルイス様。ルイス様が入るような部屋じゃないですから」
『散らかってるもんね』
横から邪魔してくるティアンは、苦い顔だ。綿毛ちゃんは、さらっと失礼なことを言っている。しかし綿毛ちゃんの言った通り、室内は散らかっていた。なんか物が散乱している。
「アロン。ちょっとは片付けたほうがいいよ」
ソファに横たわる人影が見えたので、そう苦言を呈しておく。しかし返事がない。もしや本当に体調でも悪いのだろうかとソファを回り込んだ俺は、そこにいた人物を確認して「あれ?」と首を捻った。
そこにいたのは、アロンではなかった。
「クソピアス」
「え!」
ぼんやり呟いた俺に、ティアンが慌てて駆け寄ってくる。なぜかアロンの部屋のソファを占領していたのは、クソピアス改めハドリーであった。
アロンの友達の情報屋さんである。アロンに似てクソな性格のお兄さんである。前にどんぐりをくれた人。
「なんでここにいるの? アロンは?」
ソファに横たわったままピクリとも動かないハドリー。これ生きてるよね?
心配になった俺は、綿毛ちゃんをハドリーの顔にのせてみた。ティアンが「なにしてるんですか」と綿毛ちゃんに手を伸ばすけど、それよりも前にクソピアスがガバリと上半身を起こした。
「なに!?」
きゃあとわざとらしい悲鳴をあげた綿毛ちゃんが、慌てて俺の後ろに隠れる。寝起きらしいハドリーは、きょろきょろしてから「え! ここどこ!?」と間抜けな顔で言った。
「どこって。アロンの部屋だけど。なんでここにいるの?」
「……あれ? ルイス様じゃん」
少し落ち着きを取り戻したハドリーは、目元を擦ってから「え、ここどこ」と先程と同じ疑問を投げかけてきた。だからアロンの部屋だって。
立ち上がったハドリーは、「え? ヴィアン家のお屋敷?」と窓に駆け寄った。外を見回して驚いている。自分がいる場所すらも覚えてないの?
挙動不審なハドリーに、ティアンが険しい表情になった。俺の前に出たティアンは、「ここでなにを?」と強めに問いかけた。
「なにを? え、俺はなにをしてたんだ?」
「……大丈夫?」
いまいち記憶が曖昧らしいハドリーに、俺はちょっと心配になった。まさかこいつ、記憶をなくすまで飲んでたのか?
ジトッと疑いの目を向ける俺に、ハドリーがさっと視線を逸らした。小さい声で「頭痛い」と呟いた。それ絶対に二日酔いじゃん。
「アロンはどこ?」
「知らない」
「アロンと飲んでたの?」
「たぶん」
腕を組んで考えるハドリーは、やがてどっかりとソファに腰を下ろした。偉そうに足を組んで「腹減った。なんか食べる物ない?」とティアンを見上げる。ティアンがすごく不愉快といった表情になった。
そんな最悪の空気の中、綿毛ちゃんが無言で壁際の棚に寄っていく。短い前足で、引き出しのひとつをペシペシし始めた。
綿毛ちゃんに代わって開けてみれば、そこにはなんか高そうな箱があった。
「なにこれ」
綿毛ちゃんを見れば、得意な表情であった。どういうこと? 開けてみろってこと?
よくわからないので、とりあえず蓋を開けてみた。
「わぁ! クッキーだ」
目を輝かせる俺に、綿毛ちゃんが無言で尻尾を当ててくる。意図を察した俺は、一枚とって綿毛ちゃんにあげた。満足そうな顔で、綿毛ちゃんはクッキーを食べた。
ついでに俺も一枚食べておく。美味しい。
「あ、ちょっと。そんな勝手に食べて」
「ティアンにもあげる」
どうぞと一枚差し出すけど、ティアンは受け取らない。代わりにハドリーが受け取った。
「これは、俺が持ってきたクッキーだね」
「そうなの?」
俺の手から箱を奪ったハドリーは、「間違いないね。昨日、俺が買ってきたやつだね」と自信満々に頷いた。
どうやら昨日のことを思い出したらしい。聞けば、夕方頃にアロンの部屋を訪れたらしい。そこから朝までアロンと飲んでいて、気がついたら寝ていたようだ。
「なんで記憶なくすまで飲むの?」
「なんでだろうね? 不思議だね」
へらへら笑うハドリーは、すぐに「頭痛い」と顔を顰めてしまう。やっぱりそれ二日酔いだよ。
嬉々として足を進める俺に、綿毛ちゃんが『オレもたまに二日酔いする』と、どうでもいい報告をしてくる。この犬は、俺の目を盗んでからお酒を飲んでいるのだ。大抵はアロンと一緒である。悪い犬なのだ。
「オーガス兄様は、酔うと面倒だよね」
そう言ってから、オーガス兄様は素面でも面倒だったなと思い直す。常に弱気なのに、変なところでプライド高いから。
「ルイス様。もっと他のことに時間を使いましょう。はっきり言って、時間の無駄です」
「なんでそんな冷たいこと言うの?」
明らかに面倒臭いという態度のティアンは、アロンのことが苦手なのだ。アロンはクソみたいな性格をしているからね。真面目なティアンとは色々と合わないのだろう。
アロンの部屋をノックしてみるけど、反応がない。これは本当に中で酔い潰れているのだろうか。途端にわくわくしてきた俺は、一方的に「入るね!」と声をかけてからドアノブを回した。鍵はかかっておらず、すんなり開いてしまう。
「アロン? 寝てるの? 大丈夫?」
「ちょっと、ルイス様。ルイス様が入るような部屋じゃないですから」
『散らかってるもんね』
横から邪魔してくるティアンは、苦い顔だ。綿毛ちゃんは、さらっと失礼なことを言っている。しかし綿毛ちゃんの言った通り、室内は散らかっていた。なんか物が散乱している。
「アロン。ちょっとは片付けたほうがいいよ」
ソファに横たわる人影が見えたので、そう苦言を呈しておく。しかし返事がない。もしや本当に体調でも悪いのだろうかとソファを回り込んだ俺は、そこにいた人物を確認して「あれ?」と首を捻った。
そこにいたのは、アロンではなかった。
「クソピアス」
「え!」
ぼんやり呟いた俺に、ティアンが慌てて駆け寄ってくる。なぜかアロンの部屋のソファを占領していたのは、クソピアス改めハドリーであった。
アロンの友達の情報屋さんである。アロンに似てクソな性格のお兄さんである。前にどんぐりをくれた人。
「なんでここにいるの? アロンは?」
ソファに横たわったままピクリとも動かないハドリー。これ生きてるよね?
心配になった俺は、綿毛ちゃんをハドリーの顔にのせてみた。ティアンが「なにしてるんですか」と綿毛ちゃんに手を伸ばすけど、それよりも前にクソピアスがガバリと上半身を起こした。
「なに!?」
きゃあとわざとらしい悲鳴をあげた綿毛ちゃんが、慌てて俺の後ろに隠れる。寝起きらしいハドリーは、きょろきょろしてから「え! ここどこ!?」と間抜けな顔で言った。
「どこって。アロンの部屋だけど。なんでここにいるの?」
「……あれ? ルイス様じゃん」
少し落ち着きを取り戻したハドリーは、目元を擦ってから「え、ここどこ」と先程と同じ疑問を投げかけてきた。だからアロンの部屋だって。
立ち上がったハドリーは、「え? ヴィアン家のお屋敷?」と窓に駆け寄った。外を見回して驚いている。自分がいる場所すらも覚えてないの?
挙動不審なハドリーに、ティアンが険しい表情になった。俺の前に出たティアンは、「ここでなにを?」と強めに問いかけた。
「なにを? え、俺はなにをしてたんだ?」
「……大丈夫?」
いまいち記憶が曖昧らしいハドリーに、俺はちょっと心配になった。まさかこいつ、記憶をなくすまで飲んでたのか?
ジトッと疑いの目を向ける俺に、ハドリーがさっと視線を逸らした。小さい声で「頭痛い」と呟いた。それ絶対に二日酔いじゃん。
「アロンはどこ?」
「知らない」
「アロンと飲んでたの?」
「たぶん」
腕を組んで考えるハドリーは、やがてどっかりとソファに腰を下ろした。偉そうに足を組んで「腹減った。なんか食べる物ない?」とティアンを見上げる。ティアンがすごく不愉快といった表情になった。
そんな最悪の空気の中、綿毛ちゃんが無言で壁際の棚に寄っていく。短い前足で、引き出しのひとつをペシペシし始めた。
綿毛ちゃんに代わって開けてみれば、そこにはなんか高そうな箱があった。
「なにこれ」
綿毛ちゃんを見れば、得意な表情であった。どういうこと? 開けてみろってこと?
よくわからないので、とりあえず蓋を開けてみた。
「わぁ! クッキーだ」
目を輝かせる俺に、綿毛ちゃんが無言で尻尾を当ててくる。意図を察した俺は、一枚とって綿毛ちゃんにあげた。満足そうな顔で、綿毛ちゃんはクッキーを食べた。
ついでに俺も一枚食べておく。美味しい。
「あ、ちょっと。そんな勝手に食べて」
「ティアンにもあげる」
どうぞと一枚差し出すけど、ティアンは受け取らない。代わりにハドリーが受け取った。
「これは、俺が持ってきたクッキーだね」
「そうなの?」
俺の手から箱を奪ったハドリーは、「間違いないね。昨日、俺が買ってきたやつだね」と自信満々に頷いた。
どうやら昨日のことを思い出したらしい。聞けば、夕方頃にアロンの部屋を訪れたらしい。そこから朝までアロンと飲んでいて、気がついたら寝ていたようだ。
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