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17歳
814 成長したからね
午後になって、ブルース兄様が言った通りエリックがやって来た。最小限のお供を連れたエリックは、やはりお忍びで来たらしい。特になにか用があるといった感じではなく、本当にただ遊びに来たっぽい。
「たまには息抜きも必要だろう」
笑いながらブルース兄様にそう告げたエリックは、前髪をかき上げて「元気だったか?」と俺に問いかけてきた。
「うん。元気」
「そうか。それはよかった」
豪快に笑うエリックは、我が物顔で屋敷に入ってくる。「オーガスはどうした」と視線を走らせる彼に、ブルース兄様が「部屋に」と短く応じている。
オーガス兄様は、いまだにエリックのことが苦手である。気の弱い兄様と、豪快なエリックとでは馬が合わないのだろう。タチの悪いことに、エリックはそうは思っていないらしいけど。
ティアンと共にエリックを庭先で出迎えた俺は、しかしエリックの後を追うことはしなかった。エリックに続いて馬車からおりてきた人物を目にしたからである。
「マーティーだ。何しに来た!」
マーティーが来るなんて聞いていない。強気に問い掛ければ、「なんでそんな喧嘩腰なんだ」と、やや呆れたようにマーティーが応じた。
すっかり成長したマーティーは、やれやれと言わんばかりに肩をすくめてみせた。
「たまには顔を見てやろうと思って」
なぜか上から目線でそう告げるマーティーに、俺は「ふーん」と返しておく。おまえ、ユリスにもその偉そうな態度でいけるのか?
マーティーは小さい頃は泣き虫だった。さすがに十七歳になった今では、泣くことはない。しかし根は弱虫である。いまだにユリスのことをどこか恐れているのだ。
『マーティーくんだぁ。久しぶり』
へらへら笑いながらマーティーに駆け寄る綿毛ちゃん。それにマーティーがギョッとする。素早く後ろに下がったマーティーであるが、相手は空気の読めない毛玉である。気にせずマーティーに突進していく。
『元気ぃ? オレは元気だよ。触る? もふもふだよ』
やたらと毛を触らせたがる綿毛ちゃんに、マーティーが小さく悲鳴をあげた。なんでだよ。
どうやらしゃべる犬の存在を受け入れられないようだ。エリックは綿毛ちゃんを面白がっているのに、弟のマーティーは怖がっている。その対照的な態度に、なんだか笑えてきた。
さりげなくティアンの背中に隠れるマーティーは「わかったから。それ以上は近寄るな」と毛玉を相手に酷いことを言い始める。
「綿毛ちゃんは別に噛んだりしないよ?」
『そうだよ。そんなことしないよ。仲良くしよう?』
オレ、子守りは得意なんだと妙なことを口走る綿毛ちゃんは、マーティーのことを小さなお子様扱いしているらしい。マーティーはもう十七歳だってば。そんなに小さい子じゃない。
背中に隠れたマーティーに少々困った顔を向けて、ティアンが咳払いをする。ハッとしたマーティーが、ティアンの背中から離れた。咳払いで誤魔化そうとしているが、無理だと思う。
今日はガブリエルも一緒である。ガブリエルはマーティーの従者。優しそうなお兄さんである。
マーティーは、なぜかいつもガブリエルの前では格好つけたがる。従者に情けない姿を見せたくないというのが理由らしい。よくわからない。俺はジャンの前で格好つけようと思ったことはないから。
「ユリスに会う? 部屋にいると思うけど」
せっかく来たのだから、少しくらい会っていくといい。そう提案してみるが、マーティーは苦い顔で「いや」と言いかける。どうやら本音では、ユリスには会いたくないのだろう。情けないぞ。
しかしガブリエルの存在を意識しているのか。やがて「ま、まぁ。たまには会ってやらないとな」と謎の言い訳めいた発言をする。
「ユリスはなにをするかわからないから。僕がきちんと見張っておかねばならないだろう」
「なに言ってんの?」
今日一日だけユリスを見張ったところで、どうにもならないだろう。意味不明な発言をするマーティーに首を傾げて、俺はユリスの部屋を目指す。
一応ユリスにもエリックが来ると伝えていたのだが、すごく興味なさそうだった。だよね。
「マーティー。身長間違ってない?」
廊下を歩きながら、俺は隣にいたマーティーを見上げた。
「間違うってなんだ。どういう意味だ」
困惑するマーティーは、なんだか俺よりも背が高いように見えた。これはなにかの間違いだ。
「俺より大きくならないで」
「そんな無茶な」
困ったように眉を寄せるマーティーは、「僕にはどうにもできない問題だ」と真面目に答えてくれた。
「たまには息抜きも必要だろう」
笑いながらブルース兄様にそう告げたエリックは、前髪をかき上げて「元気だったか?」と俺に問いかけてきた。
「うん。元気」
「そうか。それはよかった」
豪快に笑うエリックは、我が物顔で屋敷に入ってくる。「オーガスはどうした」と視線を走らせる彼に、ブルース兄様が「部屋に」と短く応じている。
オーガス兄様は、いまだにエリックのことが苦手である。気の弱い兄様と、豪快なエリックとでは馬が合わないのだろう。タチの悪いことに、エリックはそうは思っていないらしいけど。
ティアンと共にエリックを庭先で出迎えた俺は、しかしエリックの後を追うことはしなかった。エリックに続いて馬車からおりてきた人物を目にしたからである。
「マーティーだ。何しに来た!」
マーティーが来るなんて聞いていない。強気に問い掛ければ、「なんでそんな喧嘩腰なんだ」と、やや呆れたようにマーティーが応じた。
すっかり成長したマーティーは、やれやれと言わんばかりに肩をすくめてみせた。
「たまには顔を見てやろうと思って」
なぜか上から目線でそう告げるマーティーに、俺は「ふーん」と返しておく。おまえ、ユリスにもその偉そうな態度でいけるのか?
マーティーは小さい頃は泣き虫だった。さすがに十七歳になった今では、泣くことはない。しかし根は弱虫である。いまだにユリスのことをどこか恐れているのだ。
『マーティーくんだぁ。久しぶり』
へらへら笑いながらマーティーに駆け寄る綿毛ちゃん。それにマーティーがギョッとする。素早く後ろに下がったマーティーであるが、相手は空気の読めない毛玉である。気にせずマーティーに突進していく。
『元気ぃ? オレは元気だよ。触る? もふもふだよ』
やたらと毛を触らせたがる綿毛ちゃんに、マーティーが小さく悲鳴をあげた。なんでだよ。
どうやらしゃべる犬の存在を受け入れられないようだ。エリックは綿毛ちゃんを面白がっているのに、弟のマーティーは怖がっている。その対照的な態度に、なんだか笑えてきた。
さりげなくティアンの背中に隠れるマーティーは「わかったから。それ以上は近寄るな」と毛玉を相手に酷いことを言い始める。
「綿毛ちゃんは別に噛んだりしないよ?」
『そうだよ。そんなことしないよ。仲良くしよう?』
オレ、子守りは得意なんだと妙なことを口走る綿毛ちゃんは、マーティーのことを小さなお子様扱いしているらしい。マーティーはもう十七歳だってば。そんなに小さい子じゃない。
背中に隠れたマーティーに少々困った顔を向けて、ティアンが咳払いをする。ハッとしたマーティーが、ティアンの背中から離れた。咳払いで誤魔化そうとしているが、無理だと思う。
今日はガブリエルも一緒である。ガブリエルはマーティーの従者。優しそうなお兄さんである。
マーティーは、なぜかいつもガブリエルの前では格好つけたがる。従者に情けない姿を見せたくないというのが理由らしい。よくわからない。俺はジャンの前で格好つけようと思ったことはないから。
「ユリスに会う? 部屋にいると思うけど」
せっかく来たのだから、少しくらい会っていくといい。そう提案してみるが、マーティーは苦い顔で「いや」と言いかける。どうやら本音では、ユリスには会いたくないのだろう。情けないぞ。
しかしガブリエルの存在を意識しているのか。やがて「ま、まぁ。たまには会ってやらないとな」と謎の言い訳めいた発言をする。
「ユリスはなにをするかわからないから。僕がきちんと見張っておかねばならないだろう」
「なに言ってんの?」
今日一日だけユリスを見張ったところで、どうにもならないだろう。意味不明な発言をするマーティーに首を傾げて、俺はユリスの部屋を目指す。
一応ユリスにもエリックが来ると伝えていたのだが、すごく興味なさそうだった。だよね。
「マーティー。身長間違ってない?」
廊下を歩きながら、俺は隣にいたマーティーを見上げた。
「間違うってなんだ。どういう意味だ」
困惑するマーティーは、なんだか俺よりも背が高いように見えた。これはなにかの間違いだ。
「俺より大きくならないで」
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