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17歳
816 相談
ユリスの冷たい態度にも泣かないマーティーは、成長したと思う。以前はユリスに睨まれるとすぐに泣いていた。泣きながら「泣いてない!」と主張していた。あの姿はもう見られないのだろうか。
昔を懐かしんでいると、部屋を見回したマーティーが腰に手を当てた。なんだか偉そうな姿勢で佇むマーティーは、息を吸い込んでから口を開いた。
「実は、今日僕がここに来たのは、おまえたちに相談があっ」
『マーティーくん、おやつ来たよ! おやつ!』
「綿毛ちゃんのおやつとかないから! それ全部俺のだから!」
『ひどいよ。オレがタイラーさんに頼んだのに。横取りはダメだよ、坊ちゃん』
「うるさいぞ、犬!」
『犬じゃないもんねぇ。犬って誰のことですかぁ』
へらへら笑いながら逃げ回る毛玉を、頑張って追いかける。綿毛ちゃんは犬なのだから、人間の食べ物は食べちゃいけないと思う。それより綿毛ちゃんには、ハドリーがくれたどんぐりがある。『どんぐり食べません』とふざけた主張をする綿毛ちゃんは諦めが悪い。
タイラーからおやつのクッキーを受け取る俺に、ユリスが無言で寄ってくる。じっと皿を見つめて、おそらくクッキーの数を数えているユリスは、「これをふたりで分けるのか」と眉を寄せた。
「ふたり? いいよ。俺とユリスの分ね」
『オレの分はぁ? オレがお願いしたのにぃ』
ジタバタ暴れる綿毛ちゃんを避けて、マーティーがうろうろしている。
「いや、ちょっと。僕の話を聞け。今日僕がここに来たのは、実はおまえらに相談したいことが」
「綿毛ちゃんはあっち行って!」
『行かないもん! オレのクッキーだもん』
ムッと変な顔になる綿毛ちゃんを無視して、ユリスがクッキーを一枚手にした。立ったままのユリスに、タイラーが「お行儀悪いですよ」と注意しているが、ユリスは当然のように耳を貸さない。
そんな中、部屋の隅に立っていたマーティーが、突然大声を上げた。
「聞けよ! 僕の話を!」
マーティーの声が響いて、部屋が静まり返る。その息苦しい静寂に、マーティーが困惑した。
「いや、なんで急に黙るんだ」
自分がうるさいって言ったんだろ。
俺は親切なので、マーティーの話も聞いてやろうと思う。綿毛ちゃんもお座りして、聞く準備はバッチリだ。
『マーティーくん。クッキー何枚食べる?』
「おまえはいらないだろ」
『ユリス坊ちゃんには聞いてないよぉ』
マーティーのクッキーはないと断言するユリスは、別に食い意地が張っているとかではなくて、単にマーティーをいじめたいだけ。
「マーティーの代わりに、おまえが食べるといい」
綿毛ちゃんを見下ろして、勝手なことを言っている。これに綿毛ちゃんが『わーい! マーティーくん、ありがとう』と飛び跳ねる。
「食べないなんて言っていない」
小声で抗議したマーティーは、憐れだった。あまりにも可哀想なので、俺のクッキーを少し分けてやろうと思う。
「それで? 何しに来たの」
いつまで待っても話を始めないマーティーに焦れて、こっちから話題を振ってあげた。途端に表情を引き締めるマーティーは「実は相談があるんだ」と真剣な声色で告げた。
「相談? 猫飼いたいって相談? ラッセルに頼むといいよ。なんかどこかで拾ってきてくれるから」
「猫を飼いたいなんてひと言も言っていない。勝手に話を決めつけるな」
真面目に答えてあげたのに、マーティーは素っ気ない。だって俺に聞きたいことなんて、犬猫のことくらいしかなくない? ペット欲しいという相談であれば、俺は全力で協力する。
忖度が大好きなラッセルにお願いすれば、どうにかしてくれると思う。白猫エリスちゃんを持ってきてくれたのも、ラッセルなのだ。
こほこほと無意味な咳払いを繰り返すマーティーは、ちらりとガブリエルを見た。部屋の隅で気配を殺すガブリエルは、マーティーの視線に気がついて小さく微笑んだ。
ガブリエルを追い出さないところを見るに、彼に関する相談ではないらしい。
マーティーにクッキーを一枚渡すと、彼は遠慮なく受け取った。そのまま椅子に座ったので、俺とユリスも座っておく。
「聞いていると思うが、兄上に子供ができた」
「女の子でしょ? お母様が羨ましいって言ってたよ」
お母様は、ずっと女の子が欲しかったらしい。それなのに男の子ばかりでちょっとガッカリしているのだ。最近ではブルース兄様が標的になっている。
「それで、どう接すればいいのかわからなくて」
「エリックに? 普通に接すればいいと思うよ」
子供ができたからといって兄弟の関係が変わるわけでもない。しかしマーティーは「違う」と鋭く言った。
「兄上ではなくフローラのことだ」
「……」
フローラとは、エリックの子供である。え? フローラとの関係で悩んでるの? なんか悩むことある?
「フローラは、まだ一歳にもなってないじゃん」
生まれたばかりのフローラである。そんなに接し方に悩むことがあるのだろうか。普通に笑って接しておけばいいと思うけど。
予想外の相談に、ユリスも「変なことで悩むんだな」と呆れている。しかしマーティーは真剣なようだ。「真面目に聞いてくれ」と情けない顔をした。
昔を懐かしんでいると、部屋を見回したマーティーが腰に手を当てた。なんだか偉そうな姿勢で佇むマーティーは、息を吸い込んでから口を開いた。
「実は、今日僕がここに来たのは、おまえたちに相談があっ」
『マーティーくん、おやつ来たよ! おやつ!』
「綿毛ちゃんのおやつとかないから! それ全部俺のだから!」
『ひどいよ。オレがタイラーさんに頼んだのに。横取りはダメだよ、坊ちゃん』
「うるさいぞ、犬!」
『犬じゃないもんねぇ。犬って誰のことですかぁ』
へらへら笑いながら逃げ回る毛玉を、頑張って追いかける。綿毛ちゃんは犬なのだから、人間の食べ物は食べちゃいけないと思う。それより綿毛ちゃんには、ハドリーがくれたどんぐりがある。『どんぐり食べません』とふざけた主張をする綿毛ちゃんは諦めが悪い。
タイラーからおやつのクッキーを受け取る俺に、ユリスが無言で寄ってくる。じっと皿を見つめて、おそらくクッキーの数を数えているユリスは、「これをふたりで分けるのか」と眉を寄せた。
「ふたり? いいよ。俺とユリスの分ね」
『オレの分はぁ? オレがお願いしたのにぃ』
ジタバタ暴れる綿毛ちゃんを避けて、マーティーがうろうろしている。
「いや、ちょっと。僕の話を聞け。今日僕がここに来たのは、実はおまえらに相談したいことが」
「綿毛ちゃんはあっち行って!」
『行かないもん! オレのクッキーだもん』
ムッと変な顔になる綿毛ちゃんを無視して、ユリスがクッキーを一枚手にした。立ったままのユリスに、タイラーが「お行儀悪いですよ」と注意しているが、ユリスは当然のように耳を貸さない。
そんな中、部屋の隅に立っていたマーティーが、突然大声を上げた。
「聞けよ! 僕の話を!」
マーティーの声が響いて、部屋が静まり返る。その息苦しい静寂に、マーティーが困惑した。
「いや、なんで急に黙るんだ」
自分がうるさいって言ったんだろ。
俺は親切なので、マーティーの話も聞いてやろうと思う。綿毛ちゃんもお座りして、聞く準備はバッチリだ。
『マーティーくん。クッキー何枚食べる?』
「おまえはいらないだろ」
『ユリス坊ちゃんには聞いてないよぉ』
マーティーのクッキーはないと断言するユリスは、別に食い意地が張っているとかではなくて、単にマーティーをいじめたいだけ。
「マーティーの代わりに、おまえが食べるといい」
綿毛ちゃんを見下ろして、勝手なことを言っている。これに綿毛ちゃんが『わーい! マーティーくん、ありがとう』と飛び跳ねる。
「食べないなんて言っていない」
小声で抗議したマーティーは、憐れだった。あまりにも可哀想なので、俺のクッキーを少し分けてやろうと思う。
「それで? 何しに来たの」
いつまで待っても話を始めないマーティーに焦れて、こっちから話題を振ってあげた。途端に表情を引き締めるマーティーは「実は相談があるんだ」と真剣な声色で告げた。
「相談? 猫飼いたいって相談? ラッセルに頼むといいよ。なんかどこかで拾ってきてくれるから」
「猫を飼いたいなんてひと言も言っていない。勝手に話を決めつけるな」
真面目に答えてあげたのに、マーティーは素っ気ない。だって俺に聞きたいことなんて、犬猫のことくらいしかなくない? ペット欲しいという相談であれば、俺は全力で協力する。
忖度が大好きなラッセルにお願いすれば、どうにかしてくれると思う。白猫エリスちゃんを持ってきてくれたのも、ラッセルなのだ。
こほこほと無意味な咳払いを繰り返すマーティーは、ちらりとガブリエルを見た。部屋の隅で気配を殺すガブリエルは、マーティーの視線に気がついて小さく微笑んだ。
ガブリエルを追い出さないところを見るに、彼に関する相談ではないらしい。
マーティーにクッキーを一枚渡すと、彼は遠慮なく受け取った。そのまま椅子に座ったので、俺とユリスも座っておく。
「聞いていると思うが、兄上に子供ができた」
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お母様は、ずっと女の子が欲しかったらしい。それなのに男の子ばかりでちょっとガッカリしているのだ。最近ではブルース兄様が標的になっている。
「それで、どう接すればいいのかわからなくて」
「エリックに? 普通に接すればいいと思うよ」
子供ができたからといって兄弟の関係が変わるわけでもない。しかしマーティーは「違う」と鋭く言った。
「兄上ではなくフローラのことだ」
「……」
フローラとは、エリックの子供である。え? フローラとの関係で悩んでるの? なんか悩むことある?
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生まれたばかりのフローラである。そんなに接し方に悩むことがあるのだろうか。普通に笑って接しておけばいいと思うけど。
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