810 / 964
17歳
817 結婚するの?
どうしたらいい? とうるさいマーティーは、どうやら本気で悩んでいるらしい。本人が真剣なので、俺も真剣に考えてみる。
とはいえ相手は生まれたばかりの赤ちゃんである。そんなに変なことをしなければ大丈夫だと思うけど。
「とりあえず叩いたらダメだと思う」
『オレもそう思う』
「そんなことは言われなくてもわかっている!」
大声を出すマーティーは、「ふざけていないで、真面目に考えろ」と険しい表情になった。真面目に考えてますけど?
どうやらマーティー、小さい子と接した経験があまりないらしい。それで赤ちゃんという未知の存在を前にして、どうすればいいのか悩んでいるらしかった。
そんなことで悩むなんて、マーティーは真面目である。フローラといい関係を築きたいと思っているからこそ出てくる悩みなのだろう。もうそれでいいと思う。こんな風にいちいち悩んでいるマーティーが、フローラを相手に変なことをするとは思えない。思うがままに行動しても大丈夫だと思うけど。
「勝手にフローラに触らなければ大丈夫だよ」
ね? とユリスに話を向ける。オーガス兄様は、俺がケイシーと遊ぶときには必ずといっていいほど側にいる。
興味なさそうにクッキーを食べているユリスは、勝手に読書を再開してしまう。マーティーの扱いがあまりにも雑。タイラーが「ちょっとユリス様!」と咎めるような声を発するけど、当のユリスはガン無視している。
そんなユリスの姿勢を不満に思いつつも、マーティーは文句を口に出さない。ユリスに睨まれるのが怖いのだろう。ユリスの一体なにが怖いのだろうか。たしかに目つきは悪いけど、それだけである。
「僕は、フローラとうまくやっていけるのだろうか」
「いけるんじゃない?」
正直、そんなこと今から気にしていても仕方がないだろう。なんだかネガティブな思考をするマーティーは、何度もため息を吐いている。
俺が適当な励ましを口にするけど、あまり真剣に受け入れてくれない。マーティーのほうも本気でアドバイスが欲しいとは思っていないような様子だ。まぁ、本気で解決策を探しているのであれば他に適任がいるだろうからね。もしや話を聞いてほしいだけなのか?
「兄上は最近忙しそうで」
「へー。ブルース兄様もいつも忙しそうだよ。オーガス兄様はちょっとサボっているけど」
忙しい忙しいと言いながら、オーガス兄様はよく庭を散歩している。時折そのまま温室に居座ってダラダラしている。対するブルース兄様は、いつ休んでいるのかわからないほど仕事に熱中している。ブルース兄様は、仕事をしていないと落ち着かない質なのだろう。
「僕も最近では兄上の仕事を手伝うのだが、まだまだ未熟で」
「へー。オーガス兄様もだよ。いつもオーガス兄様がやった後、ブルース兄様がぶつぶつ文句言いながら手直ししてるよ」
オーガス兄様は、たぶん普通に仕事しているのだ。けれどもブルース兄様は完璧主義っぽいところがあるので、長男のやった仕事に対してやや不満そうな顔をすることが多い。しかしブルース兄様は兄を敬うのが好きなので、オーガス兄様に直接文句は言わない。いつもひとりで文句言いながら手直ししているのだ。そしてそれを見ていたユリスが、オーガス兄様に「ブルースが文句を言っていたぞ」と告げ口するのが毎度の流れである。
「マーティーも悩みとかあるんだね」
「それはまぁ、それなりに。ルイスにはないだろう。悩みなんて」
「あるけど?」
なんで俺に悩みがないと決めつけるのだ。失礼だぞ。
疑いの目を向けてくるマーティーは「どんな?」と具体的に訊いてくる。
「え、普通に将来のこととか」
「将来……。ルイスは将来なにをするつもりなんだ?」
マーティーの問いかけに、俺はクッキーへと伸ばしていた手を止める。そういえば、俺が先生になりたい云々の話は、あまりマーティーに教えた記憶がない。
「俺は、えっと」
「ティアンと結婚するんだろう?」
唐突なユリスの言葉に、部屋が静まり返った。
ティアンが、驚きに目を見開いている。それよりも、マーティーはもっと驚いたらしい。中途半端に腰を浮かせて「は?」と言った。
余計なことを言うんじゃないと、俺はユリスのことを睨む。涼しい顔のユリスは、「そうだろう?」とティアンを振り返った。その顔が、すごくニヤニヤしていた。こいつ、俺とティアンを揶揄って遊ぶつもりか。
みんなの足元をうろうろしていた綿毛ちゃんが『え! 結婚? 結婚するの?』とティアンに寄っていくのを、俺はぼんやり眺めていた。
とはいえ相手は生まれたばかりの赤ちゃんである。そんなに変なことをしなければ大丈夫だと思うけど。
「とりあえず叩いたらダメだと思う」
『オレもそう思う』
「そんなことは言われなくてもわかっている!」
大声を出すマーティーは、「ふざけていないで、真面目に考えろ」と険しい表情になった。真面目に考えてますけど?
どうやらマーティー、小さい子と接した経験があまりないらしい。それで赤ちゃんという未知の存在を前にして、どうすればいいのか悩んでいるらしかった。
そんなことで悩むなんて、マーティーは真面目である。フローラといい関係を築きたいと思っているからこそ出てくる悩みなのだろう。もうそれでいいと思う。こんな風にいちいち悩んでいるマーティーが、フローラを相手に変なことをするとは思えない。思うがままに行動しても大丈夫だと思うけど。
「勝手にフローラに触らなければ大丈夫だよ」
ね? とユリスに話を向ける。オーガス兄様は、俺がケイシーと遊ぶときには必ずといっていいほど側にいる。
興味なさそうにクッキーを食べているユリスは、勝手に読書を再開してしまう。マーティーの扱いがあまりにも雑。タイラーが「ちょっとユリス様!」と咎めるような声を発するけど、当のユリスはガン無視している。
そんなユリスの姿勢を不満に思いつつも、マーティーは文句を口に出さない。ユリスに睨まれるのが怖いのだろう。ユリスの一体なにが怖いのだろうか。たしかに目つきは悪いけど、それだけである。
「僕は、フローラとうまくやっていけるのだろうか」
「いけるんじゃない?」
正直、そんなこと今から気にしていても仕方がないだろう。なんだかネガティブな思考をするマーティーは、何度もため息を吐いている。
俺が適当な励ましを口にするけど、あまり真剣に受け入れてくれない。マーティーのほうも本気でアドバイスが欲しいとは思っていないような様子だ。まぁ、本気で解決策を探しているのであれば他に適任がいるだろうからね。もしや話を聞いてほしいだけなのか?
「兄上は最近忙しそうで」
「へー。ブルース兄様もいつも忙しそうだよ。オーガス兄様はちょっとサボっているけど」
忙しい忙しいと言いながら、オーガス兄様はよく庭を散歩している。時折そのまま温室に居座ってダラダラしている。対するブルース兄様は、いつ休んでいるのかわからないほど仕事に熱中している。ブルース兄様は、仕事をしていないと落ち着かない質なのだろう。
「僕も最近では兄上の仕事を手伝うのだが、まだまだ未熟で」
「へー。オーガス兄様もだよ。いつもオーガス兄様がやった後、ブルース兄様がぶつぶつ文句言いながら手直ししてるよ」
オーガス兄様は、たぶん普通に仕事しているのだ。けれどもブルース兄様は完璧主義っぽいところがあるので、長男のやった仕事に対してやや不満そうな顔をすることが多い。しかしブルース兄様は兄を敬うのが好きなので、オーガス兄様に直接文句は言わない。いつもひとりで文句言いながら手直ししているのだ。そしてそれを見ていたユリスが、オーガス兄様に「ブルースが文句を言っていたぞ」と告げ口するのが毎度の流れである。
「マーティーも悩みとかあるんだね」
「それはまぁ、それなりに。ルイスにはないだろう。悩みなんて」
「あるけど?」
なんで俺に悩みがないと決めつけるのだ。失礼だぞ。
疑いの目を向けてくるマーティーは「どんな?」と具体的に訊いてくる。
「え、普通に将来のこととか」
「将来……。ルイスは将来なにをするつもりなんだ?」
マーティーの問いかけに、俺はクッキーへと伸ばしていた手を止める。そういえば、俺が先生になりたい云々の話は、あまりマーティーに教えた記憶がない。
「俺は、えっと」
「ティアンと結婚するんだろう?」
唐突なユリスの言葉に、部屋が静まり返った。
ティアンが、驚きに目を見開いている。それよりも、マーティーはもっと驚いたらしい。中途半端に腰を浮かせて「は?」と言った。
余計なことを言うんじゃないと、俺はユリスのことを睨む。涼しい顔のユリスは、「そうだろう?」とティアンを振り返った。その顔が、すごくニヤニヤしていた。こいつ、俺とティアンを揶揄って遊ぶつもりか。
みんなの足元をうろうろしていた綿毛ちゃんが『え! 結婚? 結婚するの?』とティアンに寄っていくのを、俺はぼんやり眺めていた。
あなたにおすすめの小説
転生したら、主人公の宿敵(でも俺の推し)の側近でした
リリーブルー
BL
「しごとより、いのち」厚労省の過労死等防止対策のスローガンです。過労死をゼロにし、健康で充実して働き続けることのできる社会へ。この小説の主人公は、仕事依存で過労死し異世界転生します。
仕事依存だった主人公(20代社畜)は、過労で倒れた拍子に異世界へ転生。目を覚ますと、そこは剣と魔法の世界——。愛読していた小説のラスボス貴族、すなわち原作主人公の宿敵(ライバル)レオナルト公爵に仕える側近の美青年貴族・シリル(20代)になっていた!
原作小説では悪役のレオナルト公爵。でも主人公はレオナルトに感情移入して読んでおり彼が推しだった! なので嬉しい!
だが問題は、そのラスボス貴族・レオナルト公爵(30代)が、物語の中では原作主人公にとっての宿敵ゆえに、原作小説では彼の冷酷な策略によって国家間の戦争へと突き進み、最終的にレオナルトと側近のシリルは処刑される運命だったことだ。
「俺、このままだと死ぬやつじゃん……」
死を回避するために、主人公、すなわち転生先の新しいシリルは、レオナルト公爵の信頼を得て歴史を変えようと決意。しかし、レオナルトは原作とは違い、どこか寂しげで孤独を抱えている様子。さらに、主人公が意外な才覚を発揮するたびに、公爵の態度が甘くなり、なぜか距離が近くなっていく。主人公は気づく。レオナルト公爵が悪に染まる原因は、彼の孤独と裏切られ続けた過去にあるのではないかと。そして彼を救おうと奔走するが、それは同時に、公爵からの執着を招くことになり——!?
原作主人公ラセル王太子も出てきて話は複雑に!
見どころ
・転生
・主従
・推しである原作悪役に溺愛される
・前世の経験と知識を活かす
・政治的な駆け引きとバトル要素(少し)
・ダークヒーロー(攻め)の変化(冷酷な公爵が愛を知り、主人公に執着・溺愛する過程)
・黒猫もふもふ
番外編では。
・もふもふ獣人化
・切ない裏側
・少年時代
などなど
最初は、推しの信頼を得るために、ほのぼの日常スローライフ、かわいい黒猫が出てきます。中盤にバトルがあって、解決、という流れ。後日譚は、ほのぼのに戻るかも。本編は完結しましたが、後日譚や番外編、ifルートなど、続々更新中。
人気アイドルの俺、なぜかメンバー全員に好かれてます
七瀬
BL
デビュー4年目の人気アイドルグループ「ECLIPSE(エクリプス)」に所属する芹沢 美澄(せりざわみすみ)は、昔からどこか抜けていてマイペースな性格。
歌もダンスも決して一番ではないはずなのに、なぜかファンからもメンバーからも目を離されない存在だった。
世話焼きな幼なじみ、明るく距離の近い同い年、しっかり者で面倒見のいい年上、掴みどころのない自由人、そして無言で隣にいるリーダー——。
気づけば、美澄の周りにはいつも誰かがいて、当たり前のように甘やかされていく。
妖精です、囲われてます
うあゆ
BL
僕は妖精
森で気ままに暮らしていました。
ふと気づいたら人間に囲まれてました。
でもこの人間のそばはとても心地いいし、森に帰るタイミング見つからないなぁ、なんて思いながらダラダラ暮らしてます。
__________
妖精の前だけはドロ甘の冷徹公爵×引きこもり妖精
なんやかんやお互い幸せに暮らします。
【完結】第三王子、ただいま輸送中。理由は多分、大臣です
ナポ
BL
ラクス王子、目覚めたら馬車の中。
理由は不明、手紙一通とパン一個。
どうやら「王宮の空気を乱したため、左遷」だそうです。
そんな理由でいいのか!?
でもなぜか辺境での暮らしが思いのほか快適!
自由だし、食事は美味しいし、うるさい兄たちもいない!
……と思いきや、襲撃事件に巻き込まれたり、何かの教祖にされたり、ドタバタと騒がしい!!
氷の婚約者様に破談を申し出たら号泣された
楽矢
BL
【完結/番外編準備中】
目が覚めると、レースの牢獄のような天蓋付きベッドの上だった。
何も覚えていない出来損ない下級貴族ミラ。無能だクズだと冷酷な罵詈雑言を浴びせてくる氷の騎士セティアス。
記憶喪失から始まる、2人のファンタジー貴族ラブコメディ。
----------
※注)
かっこいい攻はいません。
タイトル通りそのうち号泣しますのでご注意!
貴族描写は緩い目で雰囲気だけお読みいただけると幸いです。
ハッピーエンドです。
激重感情をこじらせた攻→受な関係がお好きな同志の方、どうぞよろしくお願いします!
全16話 完結済み
他サイトにも同作品を投稿しています。
様子を見ながらそのうち統合するかもしれません。
初めての一次創作でまだよく分かっておらず、何かおかしなことをしでかしていたら申し訳ないです!
----------
追記:読んでくださった皆さま、本当にどうもありがとうございました!!
完結しましたが回収しきれていないエピソードが私の中でいくつかあるので笑、後日番外編をアップしたいなと現在準備中です。
詳しい更新日まだ未定ですが、もしよろしかったらゼヒまた覗いてやってくださいねー!
ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました
あと
BL
「お兄ちゃん!一肌脱ぎます!」
完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け
可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…?
攻め:ヴィクター・ローレンツ
受け:リアム・グレイソン
弟:リチャード・グレイソン
pixivにも投稿しています。
ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。