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17歳
819 わかっていない
「ちょっと来い」
突然マーティーに腕を引かれた俺は、咄嗟に「嫌だ!」と振り払う。これにマーティーだけではなく、居合わせた全員がびっくりした。俺もちょっとびっくりした。
俺に手を振り払われた姿勢のまま固まってしまったマーティーは、これでもかと言わんばかりに目を見開いている。別にマーティーを拒絶する理由はない。
なんか自分でもよくわからないけど、反射的に振り払ってしまった。変な空気をどうにかしようと、今度は俺からマーティーの手を握ってみる。
「どうした。マーティー」
「は、いや」
それはこちらのセリフだと苦々しく吐き出したマーティーは、気を取り直して俺の手を引いた。
どうやら内緒話がしたいらしいので、ティアンに「ちょっと俺の部屋で待っててね」と言い置いてからユリスの部屋を出る。ガブリエルも空気を読んだのか、追いかけてこない。唯一空気の読めない毛玉が追いかけてくるが、まぁ毛玉だからいいだろう。
内緒話なら、人のいないところである。
周りを見回しながら、俺はとりあえず物置きスペースまでやってきた。使用人さんが近くにいないことを確認してから、ドアを開け放つ。
「なんだここは」
「物置き」
「なぜ物置きに」
「人が来ないから」
「は?」
目を瞬くマーティーの背中を押して、物置きに押し込もうと奮闘する。しかし無駄に足を踏ん張るマーティーは「やめろ!」と抵抗してくる。
「こんな狭いところに入れるわけがないだろう!」
「たしかに」
物置きは、普段は使わないものが押し込まれている。正直にいえば、人が入れるスペースはないと俺も思っていた。
「でも綿毛ちゃんは入れるよ」
『え?』
間抜けな顔になる綿毛ちゃんを持ち上げて、物置きの隙間に押し込んでおく。『え?』とぼんやり繰り返す毛玉を残して、俺は素早くドアを閉めた。
「ほら。綿毛ちゃんは入るよ」
「なんでそんな可哀想なことをするんだ」
退けと俺を押しのけたマーティーは、せっかく閉めた物置きのドアを開けてしまう。途端に毛玉が飛び出してきた。
『ありがとうね。マーティーくん。君はオレの命の恩人だよ』
「そんな大袈裟な」
謙遜するマーティーは、すり寄ってくる毛玉からさりげなく距離をとる。服が毛だらけになるのが嫌なのだろう。
「じゃあ温室だ! 温室に行こう!」
「今度こそ大丈夫なんだろうな」
不安そうな顔になってしまうマーティーを引き連れて、温室に向かう。綿毛ちゃんも短い足で追いかけてくる。
「温室はあんまり人いないからね。たまにオーガス兄様がいるけど。オーガス兄様は簡単に追い払えるから大丈夫だよ!」
「それは本当に大丈夫なのか?」
兄を追い払うなんて言い方するなと、変な小言をもらすマーティー。でもオーガス兄様が、お願いすれば簡単に譲ってくれるのは事実である。それに今はエリックが来ているから。オーガス兄様もエリックと一緒にいるはず。なので温室は無人だと思う。
思った通り、温室には誰もいなかった。
花が咲きほこる空間にて、綿毛ちゃんが楽しそうに跳ねている。綿毛ちゃんは犬だよね。たまにウサギなんじゃないかと心配になる。もし綿毛ちゃんがウサギだったらどうすればいいのだろうか。ニンジンを食べさせるべき?
「綿毛ちゃん、ニンジン好き?」
『急にどうしたの? あんまり好きじゃないかも』
「じゃあ綿毛ちゃんはウサギじゃないね」
『なんの話ぃ?』
わかんなぁいと首を傾げる綿毛ちゃん。
温室内を見回したマーティーは、「なんでティアンと付き合うなんてことになるんだ」と突然言った。
「ダメなの? だってティアンが俺のこと好きって言うから」
「好きと言われたら誰とでも付き合うのか? おまえは昔から自分の立場がよくわかってないよな。もう少し真剣に考えたらどうなんだ」
「考えてるけど?」
なんでマーティーにそんなこと言われなければならないのか。半眼になる俺に、マーティーが腕を組んだ。どこか偉そうな態度である。
「なにか下心があるに決まっている」
「下心……」
そうなの?
目を瞬く俺に、マーティーは「間違いない。ティアンはそういう奴だ」とわかったような口をきく。
ティアンは、昔からなんだか偉そうなお子様だった。おまけに団長になりたいとか言っていた。しかしティアンが出世したいという下心だけで俺と付き合うとは思えない。
「心配してくれるの? でもティアンはちゃんと俺のこと好きだから大丈夫だよ」
「ルイスはなにもわかっていない」
「はぁ?」
わかっていないのはマーティーである。
俺はずっとティアンと一緒にいるので、ティアンのことはわかっているつもりである。少なくともマーティーよりはティアンのことを知っている。
そう説明するけど、マーティーはやれやれと言わんばかりに肩をすくめた。
「そりゃ下心があるなんて普通はバレないように気をつける」
「ティアンのことなんだと思ってるの?」
マーティーはティアンを嫌っているのだろうか。でもその理由がわからない。それとも本当に俺を心配してくれているだけなのだろうか。
突然マーティーに腕を引かれた俺は、咄嗟に「嫌だ!」と振り払う。これにマーティーだけではなく、居合わせた全員がびっくりした。俺もちょっとびっくりした。
俺に手を振り払われた姿勢のまま固まってしまったマーティーは、これでもかと言わんばかりに目を見開いている。別にマーティーを拒絶する理由はない。
なんか自分でもよくわからないけど、反射的に振り払ってしまった。変な空気をどうにかしようと、今度は俺からマーティーの手を握ってみる。
「どうした。マーティー」
「は、いや」
それはこちらのセリフだと苦々しく吐き出したマーティーは、気を取り直して俺の手を引いた。
どうやら内緒話がしたいらしいので、ティアンに「ちょっと俺の部屋で待っててね」と言い置いてからユリスの部屋を出る。ガブリエルも空気を読んだのか、追いかけてこない。唯一空気の読めない毛玉が追いかけてくるが、まぁ毛玉だからいいだろう。
内緒話なら、人のいないところである。
周りを見回しながら、俺はとりあえず物置きスペースまでやってきた。使用人さんが近くにいないことを確認してから、ドアを開け放つ。
「なんだここは」
「物置き」
「なぜ物置きに」
「人が来ないから」
「は?」
目を瞬くマーティーの背中を押して、物置きに押し込もうと奮闘する。しかし無駄に足を踏ん張るマーティーは「やめろ!」と抵抗してくる。
「こんな狭いところに入れるわけがないだろう!」
「たしかに」
物置きは、普段は使わないものが押し込まれている。正直にいえば、人が入れるスペースはないと俺も思っていた。
「でも綿毛ちゃんは入れるよ」
『え?』
間抜けな顔になる綿毛ちゃんを持ち上げて、物置きの隙間に押し込んでおく。『え?』とぼんやり繰り返す毛玉を残して、俺は素早くドアを閉めた。
「ほら。綿毛ちゃんは入るよ」
「なんでそんな可哀想なことをするんだ」
退けと俺を押しのけたマーティーは、せっかく閉めた物置きのドアを開けてしまう。途端に毛玉が飛び出してきた。
『ありがとうね。マーティーくん。君はオレの命の恩人だよ』
「そんな大袈裟な」
謙遜するマーティーは、すり寄ってくる毛玉からさりげなく距離をとる。服が毛だらけになるのが嫌なのだろう。
「じゃあ温室だ! 温室に行こう!」
「今度こそ大丈夫なんだろうな」
不安そうな顔になってしまうマーティーを引き連れて、温室に向かう。綿毛ちゃんも短い足で追いかけてくる。
「温室はあんまり人いないからね。たまにオーガス兄様がいるけど。オーガス兄様は簡単に追い払えるから大丈夫だよ!」
「それは本当に大丈夫なのか?」
兄を追い払うなんて言い方するなと、変な小言をもらすマーティー。でもオーガス兄様が、お願いすれば簡単に譲ってくれるのは事実である。それに今はエリックが来ているから。オーガス兄様もエリックと一緒にいるはず。なので温室は無人だと思う。
思った通り、温室には誰もいなかった。
花が咲きほこる空間にて、綿毛ちゃんが楽しそうに跳ねている。綿毛ちゃんは犬だよね。たまにウサギなんじゃないかと心配になる。もし綿毛ちゃんがウサギだったらどうすればいいのだろうか。ニンジンを食べさせるべき?
「綿毛ちゃん、ニンジン好き?」
『急にどうしたの? あんまり好きじゃないかも』
「じゃあ綿毛ちゃんはウサギじゃないね」
『なんの話ぃ?』
わかんなぁいと首を傾げる綿毛ちゃん。
温室内を見回したマーティーは、「なんでティアンと付き合うなんてことになるんだ」と突然言った。
「ダメなの? だってティアンが俺のこと好きって言うから」
「好きと言われたら誰とでも付き合うのか? おまえは昔から自分の立場がよくわかってないよな。もう少し真剣に考えたらどうなんだ」
「考えてるけど?」
なんでマーティーにそんなこと言われなければならないのか。半眼になる俺に、マーティーが腕を組んだ。どこか偉そうな態度である。
「なにか下心があるに決まっている」
「下心……」
そうなの?
目を瞬く俺に、マーティーは「間違いない。ティアンはそういう奴だ」とわかったような口をきく。
ティアンは、昔からなんだか偉そうなお子様だった。おまけに団長になりたいとか言っていた。しかしティアンが出世したいという下心だけで俺と付き合うとは思えない。
「心配してくれるの? でもティアンはちゃんと俺のこと好きだから大丈夫だよ」
「ルイスはなにもわかっていない」
「はぁ?」
わかっていないのはマーティーである。
俺はずっとティアンと一緒にいるので、ティアンのことはわかっているつもりである。少なくともマーティーよりはティアンのことを知っている。
そう説明するけど、マーティーはやれやれと言わんばかりに肩をすくめた。
「そりゃ下心があるなんて普通はバレないように気をつける」
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マーティーはティアンを嫌っているのだろうか。でもその理由がわからない。それとも本当に俺を心配してくれているだけなのだろうか。
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