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17歳
827 処分する
「オーガス兄様、どんぐり好きでしょ?」
「え、好きじゃないけど」
きっぱり嫌いと口にしたオーガス兄様を「まあまあ」と適当に宥める。
袋を執務机の上に置いて、中に入ったどんぐりを披露する。
「好きなだけあげるよ」
「いらない」
「遠慮せずに」
「いや本当にいらない」
変な顔で「どこから持ってきたの?」と尋ねてくる兄様は、本当にどんぐりなんて好きじゃないらしい。
「オーガス兄様の好きな物ってなに?」
「え、僕の?」
兄様の好きな物なんて、あまり考えたことがない。流れで質問してみると、兄様は「うーん」と眉を寄せた。
「お酒は結構好きだよ」
「飲めないのに?」
「飲めるけど」
嘘だぁ。
オーガス兄様は、酔うと途端に泣き始める。よくわからないけど気がつくと泣いているのだ。なのでお酒にはあんまり強くないんだと思う。ブルース兄様も酔うと面倒くさい。
「なんでお酒飲むと泣いちゃうの?」
「泣いてないよ」
「泣いてるよ」
「え、それ本当に?」
なぜか俺の言葉を疑ってくる兄様は、自分の酒癖の悪さに自覚がないらしい。一番厄介なタイプだと思う。ティアンを振り返って「オーガス兄様、いっつも泣いてるよね?」と訊いてみた。
「はい。泣いていらっしゃいますね」
「え……」
ティアンが言ったことで信じたのか。オーガス兄様が情けない顔になった。
「いやでも毎回ではないでしょ? たまにだよ、たまに」
「毎回だよ」
「嘘だぁ……」
絶望したように両手で顔を覆った兄様は、「僕もう禁酒しようかな」と唐突に言った。それは好きにしてくれ。
オーガス兄様の執務室に、どんぐりを一個ずつ並べていく。十個を超えたあたりで、兄様が「ちょっとやめて」と制止に入った。
「大丈夫だよ。ちゃんと煮たから」
「なんで?」
「虫が出てきたら困るから」
「なんでそこまでどんぐりに労力を費やせるの?」
細かいことを気にする兄様を無視して、俺はどんぐり並べを再開する。「ルイス、やめよう?」と弱々しく抗議してくる兄様はなんとも頼りない姿である。
「ブルースにあげなよ」
「ブルース兄様、どんぐり好きなの?」
「好きだよ、たぶん」
絶対に嘘だ。平気な顔で嘘を吐くオーガス兄様は情けない。半眼になる俺に、兄様が慌てて「嘘じゃないよ、きっと!」と曖昧発言を繰り返す。
「だってブルース、花とか好きだろ。どんぐりだって一応植物なんだし。たぶん好きだよ」
「なるほど」
言われてみれば確かに。
ブルース兄様は、よく花壇の花を摘んでいる。顔に似合わず、この屋敷では一番花壇に出入りしているかもしれない。
「じゃあ残りはブルース兄様にあげよう」
「うん。そうして」
できればこれもブルースに持っていってあげて、と机に並んだどんぐりを指さすオーガス兄様。このままだと捨てられてしまいそうなので、仕方なく俺はどんぐりを袋に戻した。
そうしてどんぐりの入った袋を振りまわしながら、俺はブルース兄様の部屋を目指した。
ブルース兄様は、ひとりで仕事をしていた。アロンの姿がないので、きっとサボっているのだろう。
ここ最近、グリシャがアロンと仲良くしているのが少し気になる。あとグリシャはニックとも仲良しだ。
真面目に仕事に取り組むグリシャである。アロンとニックのことは苦手そうなのに、そんなことはないらしい。
まぁ、グリシャは賭け事が好きだからね。その関係で、アロンやニックとも気が合うのかもしれない。ちょっとどうかと思うけど。
「ブルース兄様ぁ、どんぐりあげる」
「なんだって?」
眉をひそめた兄様は、「どんぐりってなんだ」と衝撃の質問をしてきた。驚愕する俺は、袋から急いでどんぐりを取り出した。
「これだよ。見たことないの?」
「いや、どんぐりは知っている」
知ってるのかよ。
驚いて損した。
肩の力を抜く俺に、ブルース兄様が「そうじゃなくて」と眉間を揉んだ。
「どこから持ってきたんだ」
「前にハドリーから貰ったやつだよ」
「あぁ、あの情報屋の」
ハドリーの顔を思い出したのだろう。途端に苦い顔になる兄様は「早く捨てろ、そんな物」と冷たいことを言った。
「捨てるのはもったいないから、今みんなに配ってるんだ」
「そんな物配っても仕方がないだろ」
そうかな?
文句をつけてくる兄様は、どんぐりに目をやってからため息を吐いた。
「庭にでも捨ててこい」
「えー?」
そんなことして、どんぐりの木が大量に生えてきたらどうするつもりだ。いや、煮沸したから生えてこないのかな?
「え、好きじゃないけど」
きっぱり嫌いと口にしたオーガス兄様を「まあまあ」と適当に宥める。
袋を執務机の上に置いて、中に入ったどんぐりを披露する。
「好きなだけあげるよ」
「いらない」
「遠慮せずに」
「いや本当にいらない」
変な顔で「どこから持ってきたの?」と尋ねてくる兄様は、本当にどんぐりなんて好きじゃないらしい。
「オーガス兄様の好きな物ってなに?」
「え、僕の?」
兄様の好きな物なんて、あまり考えたことがない。流れで質問してみると、兄様は「うーん」と眉を寄せた。
「お酒は結構好きだよ」
「飲めないのに?」
「飲めるけど」
嘘だぁ。
オーガス兄様は、酔うと途端に泣き始める。よくわからないけど気がつくと泣いているのだ。なのでお酒にはあんまり強くないんだと思う。ブルース兄様も酔うと面倒くさい。
「なんでお酒飲むと泣いちゃうの?」
「泣いてないよ」
「泣いてるよ」
「え、それ本当に?」
なぜか俺の言葉を疑ってくる兄様は、自分の酒癖の悪さに自覚がないらしい。一番厄介なタイプだと思う。ティアンを振り返って「オーガス兄様、いっつも泣いてるよね?」と訊いてみた。
「はい。泣いていらっしゃいますね」
「え……」
ティアンが言ったことで信じたのか。オーガス兄様が情けない顔になった。
「いやでも毎回ではないでしょ? たまにだよ、たまに」
「毎回だよ」
「嘘だぁ……」
絶望したように両手で顔を覆った兄様は、「僕もう禁酒しようかな」と唐突に言った。それは好きにしてくれ。
オーガス兄様の執務室に、どんぐりを一個ずつ並べていく。十個を超えたあたりで、兄様が「ちょっとやめて」と制止に入った。
「大丈夫だよ。ちゃんと煮たから」
「なんで?」
「虫が出てきたら困るから」
「なんでそこまでどんぐりに労力を費やせるの?」
細かいことを気にする兄様を無視して、俺はどんぐり並べを再開する。「ルイス、やめよう?」と弱々しく抗議してくる兄様はなんとも頼りない姿である。
「ブルースにあげなよ」
「ブルース兄様、どんぐり好きなの?」
「好きだよ、たぶん」
絶対に嘘だ。平気な顔で嘘を吐くオーガス兄様は情けない。半眼になる俺に、兄様が慌てて「嘘じゃないよ、きっと!」と曖昧発言を繰り返す。
「だってブルース、花とか好きだろ。どんぐりだって一応植物なんだし。たぶん好きだよ」
「なるほど」
言われてみれば確かに。
ブルース兄様は、よく花壇の花を摘んでいる。顔に似合わず、この屋敷では一番花壇に出入りしているかもしれない。
「じゃあ残りはブルース兄様にあげよう」
「うん。そうして」
できればこれもブルースに持っていってあげて、と机に並んだどんぐりを指さすオーガス兄様。このままだと捨てられてしまいそうなので、仕方なく俺はどんぐりを袋に戻した。
そうしてどんぐりの入った袋を振りまわしながら、俺はブルース兄様の部屋を目指した。
ブルース兄様は、ひとりで仕事をしていた。アロンの姿がないので、きっとサボっているのだろう。
ここ最近、グリシャがアロンと仲良くしているのが少し気になる。あとグリシャはニックとも仲良しだ。
真面目に仕事に取り組むグリシャである。アロンとニックのことは苦手そうなのに、そんなことはないらしい。
まぁ、グリシャは賭け事が好きだからね。その関係で、アロンやニックとも気が合うのかもしれない。ちょっとどうかと思うけど。
「ブルース兄様ぁ、どんぐりあげる」
「なんだって?」
眉をひそめた兄様は、「どんぐりってなんだ」と衝撃の質問をしてきた。驚愕する俺は、袋から急いでどんぐりを取り出した。
「これだよ。見たことないの?」
「いや、どんぐりは知っている」
知ってるのかよ。
驚いて損した。
肩の力を抜く俺に、ブルース兄様が「そうじゃなくて」と眉間を揉んだ。
「どこから持ってきたんだ」
「前にハドリーから貰ったやつだよ」
「あぁ、あの情報屋の」
ハドリーの顔を思い出したのだろう。途端に苦い顔になる兄様は「早く捨てろ、そんな物」と冷たいことを言った。
「捨てるのはもったいないから、今みんなに配ってるんだ」
「そんな物配っても仕方がないだろ」
そうかな?
文句をつけてくる兄様は、どんぐりに目をやってからため息を吐いた。
「庭にでも捨ててこい」
「えー?」
そんなことして、どんぐりの木が大量に生えてきたらどうするつもりだ。いや、煮沸したから生えてこないのかな?
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