嫌われ令息に成り代わった俺、なぜか過保護に愛でられています

岩永みやび

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17歳

828 不安な夜

 ふと夜中に目が覚めた。

 窓の外を確認するけど真っ暗だ。どうやら夜中らしいと考えて、俺はベッドの上を手探りで探してみた。すぐにもふもふに手が当たった。これはエリスちゃんだな。

 俺の枕の横に丸まっているエリスちゃんは、すやすや寝ている。起こすのは可哀想なので、そのままにしておくことにした。

 エリスちゃんから手を離して、綿毛ちゃんを探す。しかし枕元には見当たらない。上半身を起こした俺は、布団をめくった。

「綿毛ちゃん?」

 毛玉がいない。
 あの悪毛玉め。

 どうせアロンの部屋にいるのだろう。綿毛ちゃんは時折そういう悪いことをする。アロンもなぜか綿毛ちゃんを追い返したりせずに、受け入れている。

 俺のもふもふで勝手に遊ぶなんて許せない。
 腹の立った俺は、ベッドを抜け出した。

 廊下に出て、アロンのいるであろう彼の自室に向かう。しかしふと思い立って、その前にティアンの部屋に寄ってみた。

 ノックをして、しばらく待ってみる。
 普段であればすぐに出てきてくれるティアンなのだが、今日は一向に出てくる気配がない。寝ているのだろうか。もう夜中だしね。熟睡していてもおかしくはない時間帯である。

 何度かノックしてみるが、やはりティアンは出てこない。まさか出かけているとか?

 ティアンは、たまに友達であるホレイシオとご飯を食べに行っている。でもそういう時は事前に俺に教えてくれるし、こんなに遅くなることはないはずなのだが。

 ちょっと不思議に思いつつも、まぁそんなこともあるだろうとその場を離れた。

 二階に上がって、今度はアロンの部屋をノックした。

 しかし誰も出てこない。
 え、なんで?

 綿毛ちゃんが不在の時は、いつもアロンの部屋でお酒を飲んでいるはずなのだ。

「アロン? いないの?」

 ちょっとドアの下の隙間を覗いてみるけど、中は真っ暗。人のいる気配がない。

「……」

 他は、どこだろう。厨房でおつまみでも探しているのかもしれない。ニックの部屋に集まっているのかもしれない。

 思い立った俺は、急いで考えられるだけの場所を探してみた。けれどもどこにも綿毛ちゃんはいなかった。おまけにティアンもアロンもいない。

「え? みんなどこ行ったの?」

 急に心細くなった俺は、部屋に戻る。ベッドで呑気に寝ていたエリスちゃんを抱っこしてから、ユリスの部屋に向かった。叩き起こされたエリスちゃんが、ちょっと不満そうににゃーにゃー言っていた。その声に、少しだけ安心した俺はユリスの寝室に突撃した。

「ユリス! 起きて!」
「……」
「起きろ!」
「痛っ」

 ユリスの頭を引っ叩くと、短い悲鳴があがった。
 勢いよく起き上がったユリスは「なんだ!?」と周囲を見渡した。

 寝起きの悪いユリスにしては、珍しくすぐに起きたな。

 特に危険はないと判断したらしいユリスは、大きな欠伸をした。

「いま何時だ」
「知らない」

 でも夜中だよと教えてあげると、ユリスが「はぁ?」と眉を寄せた。一気に不機嫌になったユリスは、「なんでそんな時間に起こす」と舌打ちした。

「ね! ね! 誰もいないんだけど」
「は?」

 ユリスの肩を叩きながら説明すると、ユリスが「それは本当か?」と食いついてきた。

「うん。綿毛ちゃんもいない」
「ベッドの下で寝てるんじゃないのか?」
「なんでだよ」

 綿毛ちゃんはベッドの下に潜り込んだりしない。いつも俺の布団の中で寝ている。

「ティアンもいない」
「ふーん」

 腕を組んだユリスは、窓の外に目をやった。
 そうしてしばらく考える素振りを見せた彼は、おもむろに立ち上がった。

「行くぞ」
「どこに?」
「ブルースの部屋」

 なんで? とは思ったものの、他に何か案があるわけでもないので従っておく。

 上着を羽織ったユリスは、意気揚々と兄様の部屋に向かった。

「おい、ブルース! 出てこい」
「ブルース兄様、起きてる?」

 ふたりで声をかけていると、しばらくしてからドアが開いた。

「なんの用だ。こんな時間に」

 すごく険しい表情のブルース兄様は、出てくるなり俺たちを睨みつけてきた。寝起きということもあり顔が怖い。キャンベルが見たら悲鳴をあげそうな表情だ。

「ティアンはどこだ」

 遠慮を知らないユリスは、なんの前置きもなく尋ねた。

「ティアン? 部屋にいないのか?」
「いないから訊きに来たんだろ」

 相変わらず偉そうなユリスは、ブルース兄様の真似して腕を組んだ。俺は抱えていたエリスちゃんをぎゅっと抱きしめる。

「知らない。どこか出かけたんじゃないのか」
「こんな時間に?」

 横から口を挟んだ俺に、ブルース兄様が「俺に言われても」と困った顔になる。そうだよな。ブルース兄様だってなんでも知ってるわけじゃないよね。

 しゅんと肩を落とす俺に、兄様は「ティアンに急用なのか?」と心配そうに尋ねてくれる。

「ううん。ちょっと部屋にいないから気になっただけ」
「そうか」

 頷いた兄様は「朝になれば戻ってるだろ」と言ってくれた。そうだね。たぶん綿毛ちゃんはアロンやニックと一緒にいるのだろう。

 朝になれば、みんな戻ってくるよね。
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