嫌われ令息に成り代わった俺、なぜか過保護に愛でられています

岩永みやび

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17歳

833 期待したのに

 エドウィンをお供に加えて、アロン探しを再開する。

「あ、見てユリス。あっち行こう」
「おい、やめろ。引っ張るな」

 俺の手を振り払うユリスは、呆れたような顔で「少し落ち着け」と言ってくる。俺はずっと落ち着いているが?

 自分勝手なユリスは、行き先をひとりで決めてしまおうとする。少しは俺の意見も聞けよ。

「あの。どこへ向かっておられるのですか?」

 ちょっと揉め始めていた俺とユリスの間に、エドウィンが割り込んできた。アロンを探すといっても闇雲では時間がかかる。どこかあてはあるのかと、エドウィンが問いかけてきた。

 俺に訊かれてもな。

 俺とユリスは、街に来ることは少ない。アロンの行きそうなところと言われても、よくわからないのだ。

 周囲を見渡していた俺は、ちょっと先にお菓子屋さんのような建物を見つけて目を輝かせた。

「あそこ! あそこにアロンがいるような気がする!」

 ビシッと指さしてみると、エドウィンが「そんなわけ」と真顔で言い返してきた。

「あの人が、あんな健全な店にいるとは思えません」
「エドウィンは、アロンをなんだと思ってるの?」

 苦笑する俺だけど、エドウィンの言いたいことも理解できた。まぁ相手はアロンだからね。変なところに居そう。

「でもとりあえず、あの店に行こう」

 美味しいお菓子が食べたい。というか時間を見ないで出てきたからてっきり夜遅い時間だと思っていたのだが、普通に店が開いているのをみるとそこまで遅い時間でもないのかもしれない。

 駆け出そうとする俺だったが、エドウィンに邪魔されてしまう。

「ルイス様。財布はお持ちなのですか?」
「あるよ!」

 得意な顔で肩にかけていたカバンを開ける。

「ほら」
「おわっ!」

 カバンを覗いた途端、エドウィンが変な声を出した。急いでカバンを閉じたエドウィンは「え、なんですかそれ」と絞り出すような声を発した。

「金塊」
「おまえ、馬鹿なのか?」

 エドウィンではなく、ユリスが言った。
 馬鹿ってなんだよ。半眼になる俺に、ユリスがやれやれとため息を吐く。

 これは綿毛ちゃんに貰った金塊である。俺の大事なもの。お小遣い代わりに持ってきたのだ。

「店ごと買うおつもりですか?」

 真顔で問うてきたエドウィンに、目を瞬く。これって店ごと買えるような価値があるのか? 危な。綿毛ちゃんめ。

「わかった。これは使わないでおく」
「はい。そうしてください」

 胸を撫で下ろすエドウィンは、代わりに自分の財布を取り出した。それを横からサッとグリシャが持って行った。突然財布を奪われたエドウィンが「え?」と面食らっている。

「私が預かりますよ」
「なぜ……?」
「いえ、そんなお礼なんて」
「いや、誰も礼なんて言っていませんが」

 たぶんグリシャに財布を預けると、空になって返ってくると思うけど。

 ユリスの手を引いて、お菓子屋さんに入る。甘い香りにわくわくが止まらない。

「これ食べたい。あ、これはティアンが好きそう」

 目についた物をあれこれ示していると急にティアンの顔を思い出してしまった。そういえば、ティアンはどこに行ったんだ。アロンと一緒にいるのだろうか。

 黙り込んだ俺に、ユリスが「買わないのか?」と眉を寄せた。

「ティアンの分も買っていい?」

 エドウィンがお金を出してくれるらしいので、お伺いを立てる。すぐに「構いませんよ」と笑顔で応じてくれたエドウィンだけど、彼の財布はグリシャが持っている。

 そうしてエドウィンにお菓子を買ってもらった俺は、そろそろ本格的にアロンを探そうと決意した。

「それで、アロンはどこ?」

 グリシャに居場所を尋ねてみると、彼の表情が曇る。やっぱり心当たりがあるらしい。しかし俺を連れて行ってもいいのか悩んでいる。

 俺を連れて行けないような場所にいるのだろうか。アロンめ。どんな店に通っているんだ。

「連れて行って。別にアロンが不健全なお店にいても今更驚かないから」
「……」

 お願いとグリシャを見上げると、エドウィンが「おやめになった方が」と横から口を挟んでくる。

 けれども俺は決めたのだ。あとちょっと不健全なお店に興味がある。こんな時でなければ、俺が入れる機会なんてない。幸い今日はティアンもいないし、すごくチャンスだと思う。

 グッと拳を握る俺に、諦めたようにグリシャが首を左右に振った。

「期待しているところ悪いのですが。そこまで不健全な店でもないです」
「あ、そうなの?」

 グリシャいわく、アロンたち行きつけの飲み屋があるらしい。本当に普通のお酒を出すだけの店で、別にエッチなお店ではないらしい。じゃあなんでそこまで渋ったんだよ、グリシャ。ちょっとだけ期待してたのに。
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