嫌われ令息に成り代わった俺、なぜか過保護に愛でられています

岩永みやび

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17歳

836 衝撃

 ロニーのお兄さんというすごく興味深い存在に、俺はそわそわする。しかしユリスは興味がないらしく「おい、まだなのか?」と俺を急かしてくる。

 本当はもっとお話したいのだが、ユリスがうるさい。おまけにエドウィンとグリシャもあんまりいい顔をしていない。

 いくらロニーのお兄さんとはいえ、言ってしまえば知らない人であることに変わりはない。エドウィンたちが警戒するのも無理はないだろう。それにお兄さんだって、急に引き止められて困惑しているに違いない。あまり無茶を言うべきではないと判断した俺は、お兄さんに手を振る。

「ロニーね。ちゃんと仕事してるよ」
「あぁ、はい。それはよかったです」

 なんだか苦笑するお兄さん。そうだね。ちゃんと仕事してるなんて、褒め言葉としては不十分だったかもしれない。しかしうちは仕事をサボりがちな人が多いから。ロニーはいつも苦労している。

 急に呼び止めてしまったことを謝罪してから、今度こそお兄さんと別れた。

「遅くなっちゃった! まだアロンたちいるかな?」

 街へ出てきた本来の目的は、アロンたちの捜索である。駆け足気味になる俺たちに、グリシャが「あそこです」と前方を示した。

「アロンさん。いつもあそこに入り浸っていますよ」
「へぇ!」

 外観は普通の店である。飲み屋なのかな。どちらにせよ俺には普段、無縁の店である。なんだか緊張してきた俺は、ユリスの腕を掴む。「なんだ。鬱陶しい」と眉を寄せるユリスであるが、俺を振り払うことはしない。

「……どうする?」

 店の前にたどり着いたはいいが、ここからどうするべきなのか。情けなく眉尻を下げる俺に、ユリスが「中に入ればいいだろう」と不思議そうに言った。

 いや、そうなんだけどさ。
 でも緊張するだろう。アロンだけならいいけど、もしティアンも一緒にいたらどうしよう。普通に怒られる。

「ちょっと先に行って様子見てきて」

 エドウィンにお願いすると、彼は「え?」と戸惑ったように視線を彷徨わせる。その表情は面倒事を押し付けられたというよりも、俺とユリスから目を離すことに対して不安を抱いているような様子であった。

 グリシャの隣にぴたりと並んで「一緒に待っておくから大丈夫」とアピールしてみる。しかしエドウィンは、グリシャに対して疑いの目を向けている。

 どうやらグリシャのことが信用できないらしい。あれかな。グリシャに財布を奪われたことを根に持っているのかもしれない。とりあえず「財布返してあげたら?」とグリシャの袖を引いてみる。少しだけ嫌そうな顔になったグリシャであるが、渋々といった感じで財布を懐から取り出した。

 それをすかさず奪い取るエドウィンは、念入りに中身を確認している。その表情が、ホッと緩んだ。どうやら中身は無事だったらしい。

「私がここで待ちますから。あなたが中を見てきてください」

 財布を己の懐に戻しながら、エドウィンがグリシャに向かってそんな提案をした。これにちょっと顔をしかめたグリシャであるが、俺も「お願い!」と手を合わせると折れてくれた。

 そうしてグリシャが店に入って行くのを見届けてから、ユリスが「なぜ中に入らないんだ」とポケットに両手を突っ込んだまま訊いてきた。

「だってティアンがいたらどうするの。勝手にこんなところに来て怒られるよ」
「はぁ? どうして僕がティアンなんかに遠慮しなければならない」

 そういう問題ではないだろ。変な対抗心を燃やすユリスは「ティアンのことは僕が黙らせる」と安請け合いした。別にティアンを黙らせたいわけではないんだけど。

「行くぞ。待っていても仕方がない」
「えー?」

 焦れたユリスに腕を引かれて、俺は店に足を向けた。エドウィンもちょっと心配そうな面持ちでぴたりとついてくる。

 そうしてろくな決心もできないままに、俺はユリスに引かれて店に踏み入った。その瞬間、前方にいたユリスが「あ」というなんとも間の抜けた声を発する。何かまずいものでも見てしまったような反応であった。

 一体なんだろうと顔を上げた俺は、ちょっと信じられないものを目撃してしまった。

「……ティアン?」

 小声で呟いたら、ティアンが俺の存在に気が付いたらしい。ハッとした顔で、こっちを見た。

 けれどもその顔がすぐに、若い女性へと向けられた。椅子に座ったティアン。その膝に座ってティアンの首に両腕を回す女性へと。

「……」

 言葉を失う俺に、ティアンが慌てて女性を突き飛ばすようにして立ち上がった。

「いやっ、これは」

 焦ったように何事かを弁解しようとするティアンを前にして、俺は一歩後ろに下がった。
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