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17歳
837 違うんです
ティアンを見つめる俺は、今の状況を整理する。
ティアンは、アロン行きつけの店にいた。それは別にいいと思う。どうせアロンから強引に誘われたのだろう。店内には、アロンとニックがいた。呑気にグラスを傾けているアロンの横で、ニックが目に見えてオロオロしていた。
問題は、ティアンの立ち位置である。
椅子に座っているのはいい。しかしなぜ膝にお姉さんをのせているのか。そのお姉さんの手が、ティアンの首に回されていたのはなんなのか。まるでキスをする直前のような様子であった。一体なんなのか。
立ち尽くす俺の前で、立ち上がったティアンは「違うんです」と言った。
「この人、僕の命を狙っているんです」
……なんて??
ティアンの口から予想外の言葉出てきて、俺は面食らう。ティアンの背後で、アロンが思わずといった感じで噴き出した。そのまま肩を震わせるアロンは、ひとりで楽しそうに笑っている。
それを見て「なにを笑っているんですか!」と半ば叫ぶように言ったティアンは、すぐに俺へと向き直ると「危うく首を絞められるところでした」と本当か嘘かわからないことを言い始めた。
そんな中、俺の前にいたユリスが呆れたように息を吐いた。
「浮気の言い訳、下手すぎないか? おまえ色々と大丈夫か?」
「浮気なんてしてませんよ!」
すぐに言い返すティアンは、床に倒れているお姉さんを指さした。どうやらティアンに突き飛ばされた拍子に、倒れてしまったらしい。起き上がる気配のないお姉さんは、長い黒髪を背中に垂らしている。
その後ろ姿を見て、ユリスが眉を寄せた。俺とお姉さんを静かに見比べたユリスは、またしてもティアンに呆れたような目を向けた。
「……黒髪が好きなのか?」
「だから違うって言ってるじゃないですか!」
声を荒げるティアンは、お姉さんから距離を取る。
どうやら酔っているらしいお姉さんは、床に両手をついて「気持ち悪い……」と小声で呟いた。体調でも悪いのだろうか。
「あ! 坊ちゃん。ティアンさんのこと信じてあげてよぉ。本当だよ。そのお姉さん、ティアンさんを殺して自分も死んでやるって言ってたんだよぉ。突然ね、酒瓶でティアンさんのこと殴ろうとしてぇ。それに失敗したから今度はティアンさんの首絞めようとしてたよ」
どんな状況だよ。
というか、いたのか。綿毛ちゃん。
こちらに寄ってくる綿毛ちゃんは、人間姿だ。やはりアロンたちと一緒に行動していたようだ。
ふらりと立ち上がった綿毛ちゃんは、俺の隣にやって来た。
「坊ちゃん、助けてぇ。あのお姉さん止めてよ。あれ? なんで坊ちゃんがこんなところにいるのぉ?」
へらへら笑う綿毛ちゃんは、おそらく酔っている。毛玉のくせに。
半眼になる俺は、ティアンを眺めた。
しかし綿毛ちゃんの言う通り、アロンたちが座っているあたりに砕け散った瓶の残骸があった。
え、あれでティアンを殴ろうとしたの?
どういう状況だよ。
ここまでの話をまとめると、これはティアンの浮気ではないらしい。単にお姉さんがティアンの息の根を止めようとしただけのようだ。
……いや、どういう状況だよ。
というか。お姉さんから殺意を向けられるって、ティアンは何をしたんだよ。ティアンは時折すごく失礼なことを言っちゃう。なんか口からポロッとこぼれるのだろう。こっちがびっくりするくらい失礼なことを口走ることがある。
なのでうっかりお姉さんを怒らせてしまった可能性も皆無ではない。
けれども頭の中に少しだけ。もしかしてティアンが咄嗟に浮気を誤魔化した可能性も浮かんでくる。しかし綿毛ちゃんの証言もあるからね。毛玉はあんまり大胆な嘘は吐かないと思う。それに修羅場大好きな綿毛ちゃんだ。ティアンの浮気現場なんて目撃した日には、嬉々として俺に報告してくると思う。
「いえ、すべては僕の軽率な行動が原因なんです。すみません」
俺に心底申し訳なさそうな顔を向けてくるティアンは、そう言って頭を下げてきた。
その姿をぼんやり眺めていた俺は、グリシャを振り返る。俺たちよりも前に入店していた彼であれば、どうしてこういう状況になったのか把握しているかもしれない。
「なにがあったの、グリシャ」
俺の問いかけに、グリシャは顎に手をやった。
「そうですね……。私が店に入った時ですよね。そこの店員さんがティアンさんに対して、恋人いる奴がうちの店に来るんじゃないって感じで怒鳴っているところでしたよ」
そこの店員さんと言ってグリシャが示したのは、ティアンの膝に乗っていたあのお姉さんである。あ、お店の人だったのか。
「このお店、恋人いる人は来たらダメなの?」
思わずグリシャに聞き返すと「さぁ?」と肩をすくめられてしまった。グリシャもよくわからないらしい。
「酔ってるんですよ、そいつ!」
困惑する中、ニックが突然声をあげた。
「酔うとどうしようもなくなるんですよ! そんなんだから彼氏できないんですよ」
叫ぶようにニックが言ったときであった。今まで床に倒れていたお姉さんが素早く起き上がった。と思った次の瞬間、お姉さんが勢いよくニックに掴み掛かった。
「おまえもモテないくせに。わかったような口きいてんじゃないわよ!」
「俺にだけ当たりが強い!」
ニックの胸元をガッチリ掴んで揺さぶるお姉さんには、変な迫力があった。その鬼気迫る表情に、俺はユリスの手を握ってお姉さんから静かに距離をとった。
ティアンは、アロン行きつけの店にいた。それは別にいいと思う。どうせアロンから強引に誘われたのだろう。店内には、アロンとニックがいた。呑気にグラスを傾けているアロンの横で、ニックが目に見えてオロオロしていた。
問題は、ティアンの立ち位置である。
椅子に座っているのはいい。しかしなぜ膝にお姉さんをのせているのか。そのお姉さんの手が、ティアンの首に回されていたのはなんなのか。まるでキスをする直前のような様子であった。一体なんなのか。
立ち尽くす俺の前で、立ち上がったティアンは「違うんです」と言った。
「この人、僕の命を狙っているんです」
……なんて??
ティアンの口から予想外の言葉出てきて、俺は面食らう。ティアンの背後で、アロンが思わずといった感じで噴き出した。そのまま肩を震わせるアロンは、ひとりで楽しそうに笑っている。
それを見て「なにを笑っているんですか!」と半ば叫ぶように言ったティアンは、すぐに俺へと向き直ると「危うく首を絞められるところでした」と本当か嘘かわからないことを言い始めた。
そんな中、俺の前にいたユリスが呆れたように息を吐いた。
「浮気の言い訳、下手すぎないか? おまえ色々と大丈夫か?」
「浮気なんてしてませんよ!」
すぐに言い返すティアンは、床に倒れているお姉さんを指さした。どうやらティアンに突き飛ばされた拍子に、倒れてしまったらしい。起き上がる気配のないお姉さんは、長い黒髪を背中に垂らしている。
その後ろ姿を見て、ユリスが眉を寄せた。俺とお姉さんを静かに見比べたユリスは、またしてもティアンに呆れたような目を向けた。
「……黒髪が好きなのか?」
「だから違うって言ってるじゃないですか!」
声を荒げるティアンは、お姉さんから距離を取る。
どうやら酔っているらしいお姉さんは、床に両手をついて「気持ち悪い……」と小声で呟いた。体調でも悪いのだろうか。
「あ! 坊ちゃん。ティアンさんのこと信じてあげてよぉ。本当だよ。そのお姉さん、ティアンさんを殺して自分も死んでやるって言ってたんだよぉ。突然ね、酒瓶でティアンさんのこと殴ろうとしてぇ。それに失敗したから今度はティアンさんの首絞めようとしてたよ」
どんな状況だよ。
というか、いたのか。綿毛ちゃん。
こちらに寄ってくる綿毛ちゃんは、人間姿だ。やはりアロンたちと一緒に行動していたようだ。
ふらりと立ち上がった綿毛ちゃんは、俺の隣にやって来た。
「坊ちゃん、助けてぇ。あのお姉さん止めてよ。あれ? なんで坊ちゃんがこんなところにいるのぉ?」
へらへら笑う綿毛ちゃんは、おそらく酔っている。毛玉のくせに。
半眼になる俺は、ティアンを眺めた。
しかし綿毛ちゃんの言う通り、アロンたちが座っているあたりに砕け散った瓶の残骸があった。
え、あれでティアンを殴ろうとしたの?
どういう状況だよ。
ここまでの話をまとめると、これはティアンの浮気ではないらしい。単にお姉さんがティアンの息の根を止めようとしただけのようだ。
……いや、どういう状況だよ。
というか。お姉さんから殺意を向けられるって、ティアンは何をしたんだよ。ティアンは時折すごく失礼なことを言っちゃう。なんか口からポロッとこぼれるのだろう。こっちがびっくりするくらい失礼なことを口走ることがある。
なのでうっかりお姉さんを怒らせてしまった可能性も皆無ではない。
けれども頭の中に少しだけ。もしかしてティアンが咄嗟に浮気を誤魔化した可能性も浮かんでくる。しかし綿毛ちゃんの証言もあるからね。毛玉はあんまり大胆な嘘は吐かないと思う。それに修羅場大好きな綿毛ちゃんだ。ティアンの浮気現場なんて目撃した日には、嬉々として俺に報告してくると思う。
「いえ、すべては僕の軽率な行動が原因なんです。すみません」
俺に心底申し訳なさそうな顔を向けてくるティアンは、そう言って頭を下げてきた。
その姿をぼんやり眺めていた俺は、グリシャを振り返る。俺たちよりも前に入店していた彼であれば、どうしてこういう状況になったのか把握しているかもしれない。
「なにがあったの、グリシャ」
俺の問いかけに、グリシャは顎に手をやった。
「そうですね……。私が店に入った時ですよね。そこの店員さんがティアンさんに対して、恋人いる奴がうちの店に来るんじゃないって感じで怒鳴っているところでしたよ」
そこの店員さんと言ってグリシャが示したのは、ティアンの膝に乗っていたあのお姉さんである。あ、お店の人だったのか。
「このお店、恋人いる人は来たらダメなの?」
思わずグリシャに聞き返すと「さぁ?」と肩をすくめられてしまった。グリシャもよくわからないらしい。
「酔ってるんですよ、そいつ!」
困惑する中、ニックが突然声をあげた。
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