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17歳
閑話41 言いたかったこと(sideタイラー)
「あー、疲れた」
ボソッと呟いて肩を回す。今日も疲れた。数年前、成り行きでユリス様の面倒を見ることになってから俺は毎日全力で仕事していると思う。頼りにならない先輩たちに囲まれ、よくわからない面倒事を押し付けられて。毎日本当に頑張っていると自分でも思う。
ルイス様の世話も大変だが、ユリス様の世話もそこそこ大変だ。基本的には静かなユリス様であるが、あの人は色々と自由だ。その後始末を当然のように任される俺は気苦労が絶えない。
今日もようやく一日が終わった。
ユリス様には夜更かしするなと言い聞かせてきたのだが、どうだろうか。ユリス様は時折、読書に夢中になって夜遅くまで起きていることがある。ルイス様と一緒になって夜中にコソコソ何か企んでいることもある。まぁ、そんなことを心配してもキリがないのだが。
自室のドアに手をかけたところで、「お疲れ様です」というティアンの声が聞こえてきた。ティアンは、うちの騎士団の中でもまともな人間だ。俺と同じく意味不明な先輩たちの言動に振り回されている。それゆえにティアンには妙な親近感を覚えるのだ。
「お疲れ」
片手をあげて応じると、ティアンがそのまま笑顔で通り過ぎようとする。ふと思いついて、呼び止めた。
「ティアン」
「はい?」
目を瞬くティアンを手招いて、ドアを指さす。「寄っていく?」と我ながら唐突な提案をすれば、ティアンが少し迷った末に「じゃあ少しだけ」と控えめに笑みを浮かべた。
誘っておいてなんだが、特に面白いものはない。散らかっているわけでもないが、部屋に人を入れることはあまりない。
「えっと。特になにもないんだけど」
腰に手を当てて室内を見回す俺に、ティアンが「片付いてますね」と言ってくれた。おそらくアロンさんの部屋と比べているのだろう。あの人は、気軽に人を招く割には片付けをしない。見かねたアリア様が毎度文句を言いながら片付けている。
ちなみにアリア様がヴィアン家に来る前は、事務のミゲルに片付けを頼んでいたらしい。ミゲルも大変だな。きっと断りきれなかったに違いない。
適当に座ってくれとソファを勧めてから、「ところで」とずっと言いたかったことを口にする。
「ルイス様と付き合うことになったんだって? よかったね」
いや、本当に。本当によかったと思う。
ティアンの長年に渡る一途な想いを知っている身としては、ようやくといった感じである。お付き合いを始めたのだと知った時には、心底胸を撫で下ろした。同時にルイス様は結局のところティアンを選ぶのかと目を見張ったものだ。散々彼女を作ると宣言していたルイス様である。てっきりティアンのことは眼中にないのかと。
「えっと、はい。ありがとうございます」
どこか照れたような仕草で頬をかくティアンは、「まだちょっと実感がなくて」と初々しいことを言う。なんだか俺まで照れてくる。
ルイス様といえば、アロンさんもかなり昔から想いを寄せていた。あちらは好意を隠しもせずにひたすらアタックしていた。ルイス様は、あれでいて押しに弱い一面もある。何度も何度も懲りずに向かっていくアロンさんに、俺は内心でひやひやしていた。
正直、アロンさんとルイス様はあまり合わないと思っていた。どちらも自由というか、自分勝手というか。基本的に相手に合わせることをしないふたりである。付き合えば、事あるごとに揉めるのが目に見えている。そんでもって俺かティアンが仲裁に入る羽目になるのだ。
その点、ティアンは基本ルイス様に合わせるタイプである。こっちのほうが色々スムーズにいくだろう。平和でなにより。
「でもティアンは、ルイス様のこと諦めたんだと思ってた」
「いや、そうですね。言うつもりはなかったんですけど」
「あ、なかったの?」
ティアンから告ったと聞いたのだが。
どうやら本当に好きだと言うつもりはなく、気がついたら口から告白めいた言葉が溢れていたのだという。なんだよ、甘酸っぱいな。
ティアンのなんだか締まらない返答に、思わず笑ってしまう。ばつが悪そうに視線を彷徨わせたティアンは「でもそれでよかったと思ってます」と言った。そうだな。その溢れた言葉があったからこそ、今があるわけで。
「ルイス様のこと、頼んだよ。いや俺が頼むような立場でもないけどね」
なんというか、くれぐれも変なことをしないように見張っておいてほしい。そう言い添えれば、ティアンが「僕が見張り役をしろと?」とくすくす笑った。
そうだな。俺はユリス様の世話で手一杯だから。ルイス様のことはティアンに任せよう。
ボソッと呟いて肩を回す。今日も疲れた。数年前、成り行きでユリス様の面倒を見ることになってから俺は毎日全力で仕事していると思う。頼りにならない先輩たちに囲まれ、よくわからない面倒事を押し付けられて。毎日本当に頑張っていると自分でも思う。
ルイス様の世話も大変だが、ユリス様の世話もそこそこ大変だ。基本的には静かなユリス様であるが、あの人は色々と自由だ。その後始末を当然のように任される俺は気苦労が絶えない。
今日もようやく一日が終わった。
ユリス様には夜更かしするなと言い聞かせてきたのだが、どうだろうか。ユリス様は時折、読書に夢中になって夜遅くまで起きていることがある。ルイス様と一緒になって夜中にコソコソ何か企んでいることもある。まぁ、そんなことを心配してもキリがないのだが。
自室のドアに手をかけたところで、「お疲れ様です」というティアンの声が聞こえてきた。ティアンは、うちの騎士団の中でもまともな人間だ。俺と同じく意味不明な先輩たちの言動に振り回されている。それゆえにティアンには妙な親近感を覚えるのだ。
「お疲れ」
片手をあげて応じると、ティアンがそのまま笑顔で通り過ぎようとする。ふと思いついて、呼び止めた。
「ティアン」
「はい?」
目を瞬くティアンを手招いて、ドアを指さす。「寄っていく?」と我ながら唐突な提案をすれば、ティアンが少し迷った末に「じゃあ少しだけ」と控えめに笑みを浮かべた。
誘っておいてなんだが、特に面白いものはない。散らかっているわけでもないが、部屋に人を入れることはあまりない。
「えっと。特になにもないんだけど」
腰に手を当てて室内を見回す俺に、ティアンが「片付いてますね」と言ってくれた。おそらくアロンさんの部屋と比べているのだろう。あの人は、気軽に人を招く割には片付けをしない。見かねたアリア様が毎度文句を言いながら片付けている。
ちなみにアリア様がヴィアン家に来る前は、事務のミゲルに片付けを頼んでいたらしい。ミゲルも大変だな。きっと断りきれなかったに違いない。
適当に座ってくれとソファを勧めてから、「ところで」とずっと言いたかったことを口にする。
「ルイス様と付き合うことになったんだって? よかったね」
いや、本当に。本当によかったと思う。
ティアンの長年に渡る一途な想いを知っている身としては、ようやくといった感じである。お付き合いを始めたのだと知った時には、心底胸を撫で下ろした。同時にルイス様は結局のところティアンを選ぶのかと目を見張ったものだ。散々彼女を作ると宣言していたルイス様である。てっきりティアンのことは眼中にないのかと。
「えっと、はい。ありがとうございます」
どこか照れたような仕草で頬をかくティアンは、「まだちょっと実感がなくて」と初々しいことを言う。なんだか俺まで照れてくる。
ルイス様といえば、アロンさんもかなり昔から想いを寄せていた。あちらは好意を隠しもせずにひたすらアタックしていた。ルイス様は、あれでいて押しに弱い一面もある。何度も何度も懲りずに向かっていくアロンさんに、俺は内心でひやひやしていた。
正直、アロンさんとルイス様はあまり合わないと思っていた。どちらも自由というか、自分勝手というか。基本的に相手に合わせることをしないふたりである。付き合えば、事あるごとに揉めるのが目に見えている。そんでもって俺かティアンが仲裁に入る羽目になるのだ。
その点、ティアンは基本ルイス様に合わせるタイプである。こっちのほうが色々スムーズにいくだろう。平和でなにより。
「でもティアンは、ルイス様のこと諦めたんだと思ってた」
「いや、そうですね。言うつもりはなかったんですけど」
「あ、なかったの?」
ティアンから告ったと聞いたのだが。
どうやら本当に好きだと言うつもりはなく、気がついたら口から告白めいた言葉が溢れていたのだという。なんだよ、甘酸っぱいな。
ティアンのなんだか締まらない返答に、思わず笑ってしまう。ばつが悪そうに視線を彷徨わせたティアンは「でもそれでよかったと思ってます」と言った。そうだな。その溢れた言葉があったからこそ、今があるわけで。
「ルイス様のこと、頼んだよ。いや俺が頼むような立場でもないけどね」
なんというか、くれぐれも変なことをしないように見張っておいてほしい。そう言い添えれば、ティアンが「僕が見張り役をしろと?」とくすくす笑った。
そうだな。俺はユリス様の世話で手一杯だから。ルイス様のことはティアンに任せよう。
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