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17歳
847 目標
「ジェフリーは、何か目標とかあるの?」
翌日。
予定通りにカル先生と共にジェフリーのもとを訪れた俺。授業中ティアンは別室で待機なので、部屋には俺とカル先生、それにジェフリーだけである。綿毛ちゃんは勉強の邪魔になるので屋敷に置いてきた。
ジェフリーは真面目なので、授業は特にトラブルもなく終了する。手が掛からなくて助かっていると、なぜかカル先生が俺を見ながら言った。もしや俺に対する嫌味なのだろうか。カル先生の授業を散々邪魔してきた自覚のあった俺は、笑って誤魔化しておいた。本当に、ジェフリーは真面目だな。
俺の問いかけに悩む素振りも見せずに、ジェフリーは笑顔を浮かべる。
「目標ですか? 僕はルイス様のお手伝いをします」
「あぁ、そういえばそうだったね」
俺が街で塾のようなことをやりたいと言った時、ジェフリーは自分も手伝うと言ってくれた。もしや本気で考えているのだろうか。ジェフリーの気持ちはありがたいけど、俺の夢に巻き込んでいいものかと悩んでしまう。ジェフリーはもっと、自分自身のために色々と行動するべきだと思う。
しかし絶対にダメと突っぱねるのも、なんか違うと思うし。ようするに、俺はジェフリーのことをどうすればいいのか迷っていた。
教科書を無意味にパラパラ捲っていると、ジェフリーが「ダメですか?」と眉尻を下げた。なんとも情けない表情に、慌てて「ダメではないけど」と言い添える。
「でもジェフリーにだってやりたいことあるでしょ? 俺の手伝いばっかりしてもらうのは悪い気がする」
「そんな。僕はルイス様と一緒にいたいです。だからルイス様が心配する必要はないですよ」
まっすぐに言われて、ちょっと面食らってしまう。俺ってそんなに慕われるような人間じゃないと思うんだけどなぁ。
ちょっと考えた末に、俺はひらめいた。
「じゃあさ。ジェフリーが俺の夢を手伝ってくれるんなら、俺もジェフリーの夢を叶えるために何か手伝うよ!」
「え?」
ぱちぱちと目を瞬くジェフリーは、困惑気味にカル先生を見た。授業終わりで退屈そうにしていたカル先生だったが、一応俺たちの話は聞いていたらしい。控えめに微笑みながら「よろしいのでは」と言ってくれた。
その言葉を受けて、俺をジェフリーを笑顔で見る。しかしジェフリーは、ちょっと困ったように視線を彷徨わせている。
「でも、僕にそんなルイス様に手助けしてもらうような夢なんてないですから」
「じゃあまずは夢を決めるところから始めようよ」
俺だって、明確な目標を決めたのはつい最近である。まだ小さいジェフリーが迷うのも当然だと思う。俺にだって悩んだ時期はあった。だからジェフリーの戸惑いもよくわかる。うんうん頷く俺に、ジェフリーが少しだけ困ったように小首を傾げた。
まぁ、いきなりこんなこと言われても難しいよね。ちょっと先走ってしまったかもしれない。
なんかごめんと呟く俺に、ジェフリーが慌てたように「ルイス様は悪くないです」と言ってくれた。
「僕が、やりたいことないのが悪いので」
「急にネガティブだね」
しゅんと肩を落とすジェフリーは、気まずそうに己の手元を凝視している。そんなに思い悩まなくても。
「でも俺も、ずっと何がやりたいか考えてたんだよ。そんなすんなり目標ができたわけじゃないから」
「そうなんですか?」
「うん」
兄様たちが毎日忙しそうにしている横で、俺とユリスは暇だった。そのうちユリスは魔法の研究を始めてしまって、暇なのは俺ひとりになってしまった。
あの時は、焦ってあれこれ考えていたような気がする。
「別にそんなしっかりした夢じゃなくてもいいよ。犬を捕まえるとかでもいいんじゃない?」
ちらっと脳裏に浮かんだ綿毛ちゃん。
俺の提案に、カル先生が「どうして急に犬」と呆れている。ジェフリーも困惑気味に眉を寄せた。
「犬を捕まえて、どうするんですか」
「ペットにする。大きい犬がいいと思うよ。俺の犬は小さいから」
「はぁ」
ぼんやり相槌を打つジェフリーは、あまり乗り気ではないらしい。絶対に犬を捕まえてほしいわけでもない俺は、話題を変えようと周囲を見渡す。ちょっと例えがよくなかったかもしれない。
「まぁ、つまり。目標なんてなんでもいいんだよ。俺はジェフリーが好きなことやる手伝いをしたいだけで」
無理矢理に話をまとめると、ジェフリーが「僕の好きなこと」と呟いた。ジェフリーはまだ子供である。遠慮せずに好きなことをやっていいと思うのだ。
ジェフリーは、出会った頃から自分の意見をあまり言わない子だったから。
「じゃあ、僕。ルイス様と遠出したいです」
「え? 俺と?」
「はい」
迷いなく頷くジェフリーは、ようするに俺とお出かけしたいということだろう。
「いいけど」
「本当ですか!?」
断る理由もないので即座に応じると、ジェフリーが目を輝かせた。小さい目標だけど、いいと思う。なんだか楽しそうな気もするしね。
翌日。
予定通りにカル先生と共にジェフリーのもとを訪れた俺。授業中ティアンは別室で待機なので、部屋には俺とカル先生、それにジェフリーだけである。綿毛ちゃんは勉強の邪魔になるので屋敷に置いてきた。
ジェフリーは真面目なので、授業は特にトラブルもなく終了する。手が掛からなくて助かっていると、なぜかカル先生が俺を見ながら言った。もしや俺に対する嫌味なのだろうか。カル先生の授業を散々邪魔してきた自覚のあった俺は、笑って誤魔化しておいた。本当に、ジェフリーは真面目だな。
俺の問いかけに悩む素振りも見せずに、ジェフリーは笑顔を浮かべる。
「目標ですか? 僕はルイス様のお手伝いをします」
「あぁ、そういえばそうだったね」
俺が街で塾のようなことをやりたいと言った時、ジェフリーは自分も手伝うと言ってくれた。もしや本気で考えているのだろうか。ジェフリーの気持ちはありがたいけど、俺の夢に巻き込んでいいものかと悩んでしまう。ジェフリーはもっと、自分自身のために色々と行動するべきだと思う。
しかし絶対にダメと突っぱねるのも、なんか違うと思うし。ようするに、俺はジェフリーのことをどうすればいいのか迷っていた。
教科書を無意味にパラパラ捲っていると、ジェフリーが「ダメですか?」と眉尻を下げた。なんとも情けない表情に、慌てて「ダメではないけど」と言い添える。
「でもジェフリーにだってやりたいことあるでしょ? 俺の手伝いばっかりしてもらうのは悪い気がする」
「そんな。僕はルイス様と一緒にいたいです。だからルイス様が心配する必要はないですよ」
まっすぐに言われて、ちょっと面食らってしまう。俺ってそんなに慕われるような人間じゃないと思うんだけどなぁ。
ちょっと考えた末に、俺はひらめいた。
「じゃあさ。ジェフリーが俺の夢を手伝ってくれるんなら、俺もジェフリーの夢を叶えるために何か手伝うよ!」
「え?」
ぱちぱちと目を瞬くジェフリーは、困惑気味にカル先生を見た。授業終わりで退屈そうにしていたカル先生だったが、一応俺たちの話は聞いていたらしい。控えめに微笑みながら「よろしいのでは」と言ってくれた。
その言葉を受けて、俺をジェフリーを笑顔で見る。しかしジェフリーは、ちょっと困ったように視線を彷徨わせている。
「でも、僕にそんなルイス様に手助けしてもらうような夢なんてないですから」
「じゃあまずは夢を決めるところから始めようよ」
俺だって、明確な目標を決めたのはつい最近である。まだ小さいジェフリーが迷うのも当然だと思う。俺にだって悩んだ時期はあった。だからジェフリーの戸惑いもよくわかる。うんうん頷く俺に、ジェフリーが少しだけ困ったように小首を傾げた。
まぁ、いきなりこんなこと言われても難しいよね。ちょっと先走ってしまったかもしれない。
なんかごめんと呟く俺に、ジェフリーが慌てたように「ルイス様は悪くないです」と言ってくれた。
「僕が、やりたいことないのが悪いので」
「急にネガティブだね」
しゅんと肩を落とすジェフリーは、気まずそうに己の手元を凝視している。そんなに思い悩まなくても。
「でも俺も、ずっと何がやりたいか考えてたんだよ。そんなすんなり目標ができたわけじゃないから」
「そうなんですか?」
「うん」
兄様たちが毎日忙しそうにしている横で、俺とユリスは暇だった。そのうちユリスは魔法の研究を始めてしまって、暇なのは俺ひとりになってしまった。
あの時は、焦ってあれこれ考えていたような気がする。
「別にそんなしっかりした夢じゃなくてもいいよ。犬を捕まえるとかでもいいんじゃない?」
ちらっと脳裏に浮かんだ綿毛ちゃん。
俺の提案に、カル先生が「どうして急に犬」と呆れている。ジェフリーも困惑気味に眉を寄せた。
「犬を捕まえて、どうするんですか」
「ペットにする。大きい犬がいいと思うよ。俺の犬は小さいから」
「はぁ」
ぼんやり相槌を打つジェフリーは、あまり乗り気ではないらしい。絶対に犬を捕まえてほしいわけでもない俺は、話題を変えようと周囲を見渡す。ちょっと例えがよくなかったかもしれない。
「まぁ、つまり。目標なんてなんでもいいんだよ。俺はジェフリーが好きなことやる手伝いをしたいだけで」
無理矢理に話をまとめると、ジェフリーが「僕の好きなこと」と呟いた。ジェフリーはまだ子供である。遠慮せずに好きなことをやっていいと思うのだ。
ジェフリーは、出会った頃から自分の意見をあまり言わない子だったから。
「じゃあ、僕。ルイス様と遠出したいです」
「え? 俺と?」
「はい」
迷いなく頷くジェフリーは、ようするに俺とお出かけしたいということだろう。
「いいけど」
「本当ですか!?」
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