851 / 965
17歳
852 思わぬ味方
テオドールが来たとティアンに教えられたのだが、会ってみるとカミールも一緒だった。
このふたり、俺の知る限りいつも一緒である。仲良しなのだろうか。学園からここまで、ふたりで来たのだろう。楽しそうでいいな。
カミールはジェフリーのことを知らなかった。いや、存在自体は知っていたらしいけど初対面なのだとか。カミールはデニスと仲がいい。そのデニスも来ていると告げると、なぜかカミールの顔が引きつってしまった。
デニスに挨拶したいと言うので、ユリスの部屋にいると教えてあげた。今頃、ユリスの部屋でお喋りでもしているのだろう。ほとんどデニスがひとりで喋っているらしいけど。ユリスは基本的にやる気がないからね。
興味津々に俺の部屋を見回すテオドールは、窓際で丸くなっているエリスちゃんを見つけたようだ。じっと見つめている。猫が好きなのだろうか。ニヤッと笑った俺は、エリスちゃんのもとへ行く。テオドールもついてくる。
「触っていいよ。エリスちゃんって言うんだ」
「可愛い猫ちゃんですね」
「でしょ!」
猫を褒められると嬉しい。
にこにこ笑っていると、カミールがなんだか絶望したような面持ちで固まっている。一体なにを絶望しているのだろうか。あ、早くデニスのところに行きたいのか?
行ってきていいよと声をかけるが、カミールは小さく「え」ともらしたきり動きを止めてしまった。
あ、ユリスの部屋って言われても場所がわからないのか。
案内してあげようと思ったのだが、テオドールを放置するわけにもいかない。そこで視界に入ったティアンに「ユリスの部屋教えてあげて」と頼んでみたのだが、これにカミールが狼狽えた。
「……もしかして、ひとりで行きたくないの?」
なんとなくカミールの様子からそう思ったのだが、どうやら正解だったらしい。カミールが気まずそうに視線を逸らした。
初めて来る家で、人の部屋を訪ねるのは確かに勇気がいるな。おまけに相手はユリスの部屋である。ユリスはカミールが来たことも知らないだろうし。躊躇するカミールの気持ちもわからなくはない。
すべてを察した俺は「じゃあ一緒に行こう」と微笑みかけた。ジェフリーとテオドールも連れていけば大丈夫だろう。テオドールだって、前にデニスと会ったことあるし。
みんなで行こうと宣言すると、ジェフリーは「はい」と二つ返事で了承してくれた。テオドールも異論はないらしい。そうと決まれば、話ははやい。
早速ユリスの部屋に向かった。ノックもそこそこにドアを開け放てば、ユリスの隣にぴたりとくっついて座るデニスと目が合った。距離近くない?
途端に嫌な顔をするデニスは、帰れと言わんばかりに手を振ってくる。相変わらず俺の扱いが雑である。ユリスと同じ顔しているはずなのに、なんでだろうか。
気にせず入室してから、カミールたちを手招きする。
「デニス! カミール来たよ」
「お久しぶりです」
愛想笑いを浮かべたカミール。それに対して、デニスが露骨に眉を寄せた。そんな顔してやるなよ。
気まずい空気を察知した俺は、どうにかふたりの仲を取り持とうと奮闘する。
「わざわざ来てくれたんだよ。あ、テオドールも一緒だよ」
この変な空気をどうにかしてくれと。無言で事の成り行きを眺めているユリスに視線を送るが、ユリスは鼻で笑うだけで動いてくれない。ユリスめ。空気を読むんだ。
お子様なユリスはあてにならない。この空気も他人事だと思って楽しんでいるのだ。
切り替えた俺は、自分でどうにかしようと決心した。
けれどもここで、この気まずい空気を変えてくれる思わぬ味方が現れた。
さっと前に出てきたテオドールが、ソファを陣取るデニスの前に片膝をついたのだ。
「お久しぶりですね。テオドールです。以前お会いしたのですが」
「あぁ、君ね。覚えてるよ」
にこりと笑ったデニスは、前にパーティーで出会ったテオドールのことをきちんと覚えていたらしい。テオドールは色々と目立つからね。
「デニス様は、相変わらずのお美しさで」
「えー? ありがとう」
「またお会いできて光栄です」
テオドールの言葉に、デニスが上機嫌に微笑んだ。
よくわからないが、テオドールのおかげで助かった。どうやらデニスは、褒められて純粋に嬉しいと思っているらしい。まぁ、テオドールの言葉には裏表がなくてまっすぐだからね。悪い気はしないよね。
このふたり、俺の知る限りいつも一緒である。仲良しなのだろうか。学園からここまで、ふたりで来たのだろう。楽しそうでいいな。
カミールはジェフリーのことを知らなかった。いや、存在自体は知っていたらしいけど初対面なのだとか。カミールはデニスと仲がいい。そのデニスも来ていると告げると、なぜかカミールの顔が引きつってしまった。
デニスに挨拶したいと言うので、ユリスの部屋にいると教えてあげた。今頃、ユリスの部屋でお喋りでもしているのだろう。ほとんどデニスがひとりで喋っているらしいけど。ユリスは基本的にやる気がないからね。
興味津々に俺の部屋を見回すテオドールは、窓際で丸くなっているエリスちゃんを見つけたようだ。じっと見つめている。猫が好きなのだろうか。ニヤッと笑った俺は、エリスちゃんのもとへ行く。テオドールもついてくる。
「触っていいよ。エリスちゃんって言うんだ」
「可愛い猫ちゃんですね」
「でしょ!」
猫を褒められると嬉しい。
にこにこ笑っていると、カミールがなんだか絶望したような面持ちで固まっている。一体なにを絶望しているのだろうか。あ、早くデニスのところに行きたいのか?
行ってきていいよと声をかけるが、カミールは小さく「え」ともらしたきり動きを止めてしまった。
あ、ユリスの部屋って言われても場所がわからないのか。
案内してあげようと思ったのだが、テオドールを放置するわけにもいかない。そこで視界に入ったティアンに「ユリスの部屋教えてあげて」と頼んでみたのだが、これにカミールが狼狽えた。
「……もしかして、ひとりで行きたくないの?」
なんとなくカミールの様子からそう思ったのだが、どうやら正解だったらしい。カミールが気まずそうに視線を逸らした。
初めて来る家で、人の部屋を訪ねるのは確かに勇気がいるな。おまけに相手はユリスの部屋である。ユリスはカミールが来たことも知らないだろうし。躊躇するカミールの気持ちもわからなくはない。
すべてを察した俺は「じゃあ一緒に行こう」と微笑みかけた。ジェフリーとテオドールも連れていけば大丈夫だろう。テオドールだって、前にデニスと会ったことあるし。
みんなで行こうと宣言すると、ジェフリーは「はい」と二つ返事で了承してくれた。テオドールも異論はないらしい。そうと決まれば、話ははやい。
早速ユリスの部屋に向かった。ノックもそこそこにドアを開け放てば、ユリスの隣にぴたりとくっついて座るデニスと目が合った。距離近くない?
途端に嫌な顔をするデニスは、帰れと言わんばかりに手を振ってくる。相変わらず俺の扱いが雑である。ユリスと同じ顔しているはずなのに、なんでだろうか。
気にせず入室してから、カミールたちを手招きする。
「デニス! カミール来たよ」
「お久しぶりです」
愛想笑いを浮かべたカミール。それに対して、デニスが露骨に眉を寄せた。そんな顔してやるなよ。
気まずい空気を察知した俺は、どうにかふたりの仲を取り持とうと奮闘する。
「わざわざ来てくれたんだよ。あ、テオドールも一緒だよ」
この変な空気をどうにかしてくれと。無言で事の成り行きを眺めているユリスに視線を送るが、ユリスは鼻で笑うだけで動いてくれない。ユリスめ。空気を読むんだ。
お子様なユリスはあてにならない。この空気も他人事だと思って楽しんでいるのだ。
切り替えた俺は、自分でどうにかしようと決心した。
けれどもここで、この気まずい空気を変えてくれる思わぬ味方が現れた。
さっと前に出てきたテオドールが、ソファを陣取るデニスの前に片膝をついたのだ。
「お久しぶりですね。テオドールです。以前お会いしたのですが」
「あぁ、君ね。覚えてるよ」
にこりと笑ったデニスは、前にパーティーで出会ったテオドールのことをきちんと覚えていたらしい。テオドールは色々と目立つからね。
「デニス様は、相変わらずのお美しさで」
「えー? ありがとう」
「またお会いできて光栄です」
テオドールの言葉に、デニスが上機嫌に微笑んだ。
よくわからないが、テオドールのおかげで助かった。どうやらデニスは、褒められて純粋に嬉しいと思っているらしい。まぁ、テオドールの言葉には裏表がなくてまっすぐだからね。悪い気はしないよね。
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢にされたので婚約破棄を受け入れたら、なぜか全員困っています
かきんとう
恋愛
王城の大広間は、いつも以上に華やいでいた。
磨き上げられた床は燭台の光を反射し、色とりどりのドレスが揺れるたびに、まるで花畑が動いているかのように見える。貴族たちの笑い声、楽団の優雅な旋律、そして、ひそやかな噂話が、空気を満たしていた。
その中心に、私は立っていた。
――今日、この瞬間のために。
「エレノア・フォン・リーベルト嬢」
高らかに呼ばれた私の名に、ざわめきがぴたりと止む。
ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました
あと
BL
「お兄ちゃん!一肌脱ぎます!」
完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け
可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…?
攻め:ヴィクター・ローレンツ
受け:リアム・グレイソン
弟:リチャード・グレイソン
pixivにも投稿しています。
ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。
俺は夜、社長の猫になる
衣草 薫
BL
冤罪で職を追われた葵は、若き社長・鷹宮に拾われる。
ただし条件は――夜は“猫”として過ごすこと。
言葉を話さず、ただ撫でられるだけの奇妙な同居生活。
タワマン高層階の部屋で、葵は距離を崩さない鷹宮に少しずつ惹かれていく。
けれど葵はまだ知らない。自分が拾われた本当の理由を。
人気アイドルの俺、なぜかメンバー全員に好かれてます
七瀬
BL
デビュー4年目の人気アイドルグループ「ECLIPSE(エクリプス)」に所属する芹沢 美澄(せりざわみすみ)は、昔からどこか抜けていてマイペースな性格。
歌もダンスも決して一番ではないはずなのに、なぜかファンからもメンバーからも目を離されない存在だった。
世話焼きな幼なじみ、明るく距離の近い同い年、しっかり者で面倒見のいい年上、掴みどころのない自由人、そして無言で隣にいるリーダー——。
気づけば、美澄の周りにはいつも誰かがいて、当たり前のように甘やかされていく。
転生したら、主人公の宿敵(でも俺の推し)の側近でした
リリーブルー
BL
「しごとより、いのち」厚労省の過労死等防止対策のスローガンです。過労死をゼロにし、健康で充実して働き続けることのできる社会へ。この小説の主人公は、仕事依存で過労死し異世界転生します。
仕事依存だった主人公(20代社畜)は、過労で倒れた拍子に異世界へ転生。目を覚ますと、そこは剣と魔法の世界——。愛読していた小説のラスボス貴族、すなわち原作主人公の宿敵(ライバル)レオナルト公爵に仕える側近の美青年貴族・シリル(20代)になっていた!
原作小説では悪役のレオナルト公爵。でも主人公はレオナルトに感情移入して読んでおり彼が推しだった! なので嬉しい!
だが問題は、そのラスボス貴族・レオナルト公爵(30代)が、物語の中では原作主人公にとっての宿敵ゆえに、原作小説では彼の冷酷な策略によって国家間の戦争へと突き進み、最終的にレオナルトと側近のシリルは処刑される運命だったことだ。
「俺、このままだと死ぬやつじゃん……」
死を回避するために、主人公、すなわち転生先の新しいシリルは、レオナルト公爵の信頼を得て歴史を変えようと決意。しかし、レオナルトは原作とは違い、どこか寂しげで孤独を抱えている様子。さらに、主人公が意外な才覚を発揮するたびに、公爵の態度が甘くなり、なぜか距離が近くなっていく。主人公は気づく。レオナルト公爵が悪に染まる原因は、彼の孤独と裏切られ続けた過去にあるのではないかと。そして彼を救おうと奔走するが、それは同時に、公爵からの執着を招くことになり——!?
原作主人公ラセル王太子も出てきて話は複雑に!
見どころ
・転生
・主従
・推しである原作悪役に溺愛される
・前世の経験と知識を活かす
・政治的な駆け引きとバトル要素(少し)
・ダークヒーロー(攻め)の変化(冷酷な公爵が愛を知り、主人公に執着・溺愛する過程)
・黒猫もふもふ
番外編では。
・もふもふ獣人化
・切ない裏側
・少年時代
などなど
最初は、推しの信頼を得るために、ほのぼの日常スローライフ、かわいい黒猫が出てきます。中盤にバトルがあって、解決、という流れ。後日譚は、ほのぼのに戻るかも。本編は完結しましたが、後日譚や番外編、ifルートなど、続々更新中。
氷の婚約者様に破談を申し出たら号泣された
楽矢
BL
【完結/番外編準備中】
目が覚めると、レースの牢獄のような天蓋付きベッドの上だった。
何も覚えていない出来損ない下級貴族ミラ。無能だクズだと冷酷な罵詈雑言を浴びせてくる氷の騎士セティアス。
記憶喪失から始まる、2人のファンタジー貴族ラブコメディ。
----------
※注)
かっこいい攻はいません。
タイトル通りそのうち号泣しますのでご注意!
貴族描写は緩い目で雰囲気だけお読みいただけると幸いです。
ハッピーエンドです。
激重感情をこじらせた攻→受な関係がお好きな同志の方、どうぞよろしくお願いします!
全16話 完結済み
他サイトにも同作品を投稿しています。
様子を見ながらそのうち統合するかもしれません。
初めての一次創作でまだよく分かっておらず、何かおかしなことをしでかしていたら申し訳ないです!
----------
追記:読んでくださった皆さま、本当にどうもありがとうございました!!
完結しましたが回収しきれていないエピソードが私の中でいくつかあるので笑、後日番外編をアップしたいなと現在準備中です。
詳しい更新日まだ未定ですが、もしよろしかったらゼヒまた覗いてやってくださいねー!