嫌われ令息に成り代わった俺、なぜか過保護に愛でられています

岩永みやび

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17歳

852 思わぬ味方

 テオドールが来たとティアンに教えられたのだが、会ってみるとカミールも一緒だった。

 このふたり、俺の知る限りいつも一緒である。仲良しなのだろうか。学園からここまで、ふたりで来たのだろう。楽しそうでいいな。

 カミールはジェフリーのことを知らなかった。いや、存在自体は知っていたらしいけど初対面なのだとか。カミールはデニスと仲がいい。そのデニスも来ていると告げると、なぜかカミールの顔が引きつってしまった。

 デニスに挨拶したいと言うので、ユリスの部屋にいると教えてあげた。今頃、ユリスの部屋でお喋りでもしているのだろう。ほとんどデニスがひとりで喋っているらしいけど。ユリスは基本的にやる気がないからね。

 興味津々に俺の部屋を見回すテオドールは、窓際で丸くなっているエリスちゃんを見つけたようだ。じっと見つめている。猫が好きなのだろうか。ニヤッと笑った俺は、エリスちゃんのもとへ行く。テオドールもついてくる。

「触っていいよ。エリスちゃんって言うんだ」
「可愛い猫ちゃんですね」
「でしょ!」

 猫を褒められると嬉しい。
 にこにこ笑っていると、カミールがなんだか絶望したような面持ちで固まっている。一体なにを絶望しているのだろうか。あ、早くデニスのところに行きたいのか?

 行ってきていいよと声をかけるが、カミールは小さく「え」ともらしたきり動きを止めてしまった。

 あ、ユリスの部屋って言われても場所がわからないのか。

 案内してあげようと思ったのだが、テオドールを放置するわけにもいかない。そこで視界に入ったティアンに「ユリスの部屋教えてあげて」と頼んでみたのだが、これにカミールが狼狽えた。

「……もしかして、ひとりで行きたくないの?」

 なんとなくカミールの様子からそう思ったのだが、どうやら正解だったらしい。カミールが気まずそうに視線を逸らした。

 初めて来る家で、人の部屋を訪ねるのは確かに勇気がいるな。おまけに相手はユリスの部屋である。ユリスはカミールが来たことも知らないだろうし。躊躇するカミールの気持ちもわからなくはない。

 すべてを察した俺は「じゃあ一緒に行こう」と微笑みかけた。ジェフリーとテオドールも連れていけば大丈夫だろう。テオドールだって、前にデニスと会ったことあるし。

 みんなで行こうと宣言すると、ジェフリーは「はい」と二つ返事で了承してくれた。テオドールも異論はないらしい。そうと決まれば、話ははやい。

 早速ユリスの部屋に向かった。ノックもそこそこにドアを開け放てば、ユリスの隣にぴたりとくっついて座るデニスと目が合った。距離近くない?

 途端に嫌な顔をするデニスは、帰れと言わんばかりに手を振ってくる。相変わらず俺の扱いが雑である。ユリスと同じ顔しているはずなのに、なんでだろうか。

 気にせず入室してから、カミールたちを手招きする。

「デニス! カミール来たよ」
「お久しぶりです」

 愛想笑いを浮かべたカミール。それに対して、デニスが露骨に眉を寄せた。そんな顔してやるなよ。

 気まずい空気を察知した俺は、どうにかふたりの仲を取り持とうと奮闘する。

「わざわざ来てくれたんだよ。あ、テオドールも一緒だよ」

 この変な空気をどうにかしてくれと。無言で事の成り行きを眺めているユリスに視線を送るが、ユリスは鼻で笑うだけで動いてくれない。ユリスめ。空気を読むんだ。

 お子様なユリスはあてにならない。この空気も他人事だと思って楽しんでいるのだ。

 切り替えた俺は、自分でどうにかしようと決心した。

 けれどもここで、この気まずい空気を変えてくれる思わぬ味方が現れた。

 さっと前に出てきたテオドールが、ソファを陣取るデニスの前に片膝をついたのだ。

「お久しぶりですね。テオドールです。以前お会いしたのですが」
「あぁ、君ね。覚えてるよ」

 にこりと笑ったデニスは、前にパーティーで出会ったテオドールのことをきちんと覚えていたらしい。テオドールは色々と目立つからね。

「デニス様は、相変わらずのお美しさで」
「えー? ありがとう」
「またお会いできて光栄です」

 テオドールの言葉に、デニスが上機嫌に微笑んだ。

 よくわからないが、テオドールのおかげで助かった。どうやらデニスは、褒められて純粋に嬉しいと思っているらしい。まぁ、テオドールの言葉には裏表がなくてまっすぐだからね。悪い気はしないよね。
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