嫌われ令息に成り代わった俺、なぜか過保護に愛でられています

岩永みやび

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17歳

855 敵対心

 テオドールとカミールは、ふらっと遊びにきてくれただけ。せっかくなので一緒に遊ぼうと思う。

「学園って今日は休みなの?」
「いいえ。普通に授業やってますよ」

 にこりと答えたテオドール。休みじゃないのに、なんでここにいるんだろうか。サボりってこと?

 テオドールいわく、特に帰宅を急いでいるわけではないらしい。本当だろうか。カミールに視線を向けても、曖昧な笑みが返ってくるだけ。

 どうやらカミールは、テオドールに振り回されているらしい。なんか可哀想。

 先程からずっと俺にぴたりと引っ付いているジェフリーは、いまだにテオドールのことを警戒していた。自分より年上のテオドールたちが怖いのかと思っていたのだが、どうもそういう感じではない。むしろジェフリーは、テオドールに対して敵対心のようなものを抱いている。

 なんだろう。アロンを前にした時と同じような反応だ。ジェフリーは、アロンのことをとても警戒している。気持ちはわかるぞ。アロンはちょっと得体が知れない感じあるよね。あと大人げない。ジェフリー相手にも容赦しないのだ。

 しかしテオドールたちは普通に優しいだろう。なにが気に入らないのだろうか。やっぱり急にやって来て邪魔されたと思っているのだろうか。

「ルイス様は、僕と遊んでいる最中なのでとても忙しいです」
「どうしたの? ジェフリー」

 なぜか俺はとても忙しいことにされてしまった。
 けれども今日はもともとジェフリーと遊ぶ予定だった。ジェフリーは構わないと言ってくれたけど、やはり後から友達が増えるのは嫌だったようである。

 ジェフリーの不満もわかるので、俺は困ってしまった。とはいえ、わざわざ来てくれたカミール達を追い返すわけにもいかないし。

 なんか板挟み状態に陥ってしまった俺は、とりあえずジェフリーの手を握っておく。

 ジェフリーの不満な顔に、テオドールが「すみません」と苦笑した。その背中をカミールが強めに小突いている。謝れと言わんばかりの仕草に、テオドールが「はい。本当に申し訳ありません」とジェフリーに向かって頭を下げた。

 頬を膨らませるジェフリーは、微妙にテオドールと視線を合わせない。いつも控えめなジェフリーが、ここまで不満を前面に出すのは珍しい。そんなに嫌だったのだろうか。悪いことをした。

「ごめんね、ジェフリー。今日はジェフリーと遊ぶ約束だったもんね」

 ごめんねとジェフリーの背中を軽く叩くと、今度はジェフリーが落ち込むような表情になってしまった。

「僕は、ルイス様を困らせたいわけじゃなくて。ごめんなさい」
「謝んなくていいよ。ジェフリーは悪くないから」

 にこりと微笑んでから、しかしどうしたものかと考える。

 友達いっぱいいたらみんなで遊べて楽しいと思ったんだけどな。そんなに単純な話ではなかったらしい。

 俺が全員と遊ぶのは難しい。あれこれ考えた俺は、急に名案を思いついた。

「わかった!」
「なにがですか?」

 思わずと言った感じでカミールが尋ねてきた。それにニヤッと笑みを返して、俺はジェフリーに「ちょっと待っててね」と告げる。ティアンにジェフリーのことを任せて、俺はテオドールとカミールを連れて廊下に出た。

「あの、ルイス様。どちらへ?」
「テオドールさ、前に俺の兄様に会いたいって言ってたよね?」

 たしか言われたような気がする。
 ヴィアン家はどうのこうのという話が出た際に、長男次男にも会ってみたいとテオドールがこぼしたのだ。それをバッチリ覚えていた俺はすごい。

「え、まさか」

 得意な顔で階段をあがる俺。なぜかカミールの顔色が悪くなってしまった。

「あの、ルイス様? 俺たちは別に」

 カミールの言葉を聞きながら、俺は兄様の部屋をノックする。すぐに中からブルース兄様の「どうぞ」というちょっと不機嫌そうな声が聞こえてきた。ブルース兄様は、仕事中はだいたい不機嫌だ。アロンが余計なことをするから疲れているのだろう。

「兄様! ひま?」
「暇ではない」

 ピシャリと言い切った兄様は、書類を忙しそうに眺めていた。室内にアロンの姿がない。またサボりかな。

「ねぇ、兄様。俺の友達きたよ」
「ジェフリーか? 向こうで遊んでろ」

 しっしと追い払うように手を振った兄様は普通に失礼だ。

 ジェフリーも来ているけど、それだけではない。
 入口付近で固まっているカミールを手招いて、兄様に紹介しておく。

「ほら! この前、学園で知り合ったテオドールとカミールだよ」

 挨拶して! とブルース兄様を振り返ると、テオドールたちの姿を認識した兄様が慌てて立ち上がった。なにやら小声で「急に連れてくる奴があるか」と俺に向けて文句を言った兄様。しかしすぐテオドールたちに向き直ると「よく来てくれた」と上司のような労い方をする。

「ルイスがいつも世話になっているらしいな」
「あ、いえ! すみません!!」

 ブルース兄様に気圧されて、カミールが青い顔で謝罪してしまった。これにブルース兄様の顔が引きつった。なぜ自分が怖がられているのか理解できないといった表情だ。兄様は、もうちょい自分の顔の怖さを自覚した方がいいと思うぞ。
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