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17歳
856 自由な弟(sideブルース)
ルイスが突然やって来るのは、いつものことである。遠慮を知らない弟は、呑気な顔で友達が来ていると言った。
ジェフリーなら先程ちらっと見かけた。いつもはそんな報告してこないのに、どういう風の吹きまわしなのだろうか。というかジェフリーはどうしたんだ。まさか放置してきたのか?
また何か変なことを企んでいるんじゃないだろうな。巻き込まれる前にルイスを追い返そうとしたのだが、なぜか得意気なルイスは嬉々として友達を招き入れた。やめろ。勝手に俺の部屋に人を入れるな。というかジェフリーじゃないのかよ。いやしかし、ジェフリーもいたはずだ。
え、おまえ本当にジェフリーのことどうしたんだ。
慌ててジェフリーの所在を問えば、ルイスは首を傾げながら「ティアンと一緒」と答えた。ひとりで放置しているわけではないとわかり、とりあえず胸を撫で下ろす。
ルイスが連れて来たのはテオドールとカミールであった。以前、ルイスが学園へ遊びに行った時に仲良くなったらしい。少し前には、カミールの誕生日パーティーに参加すると言ってうきうきで出かけて行った。
なぜそのふたりがここに。
困惑しつつも、とりあえず歓迎しておく。するとなぜかカミールが青い顔で後ろに下がってしまった。
「ブルース兄様! 顔怖いよ!」
「うるさい」
嬉々として指摘するルイスを睨んで、咳払いで取り繕う。一体なにが楽しいのか。やたらとニヤニヤしているルイスは「ブルース兄様、もっと笑ったほうがいいよ」とその場で小さく飛び跳ねている。なぜ跳ねる。ちょっとは落ち着け。
テオドールとカミールの紹介を簡単に済ませたルイスは、くるりとドアに向き直る。
「じゃあ俺はジェフリーと遊ぶから。ブルース兄様は、ふたりと遊んであげてね」
「……はっ!?」
言葉の意味をゆっくり理解して、目を見開く。
いやいや、なんだって!?
そのまま「ばいばい!」と勢いよく立ち去ろうとするルイスの襟首を慌てて引っ掴む。
「おいこら! 勝手なこと言うな」
「なんで? ブルース兄様忙しいの?」
いや、これは忙しいとかそういう問題じゃないだろう。そもそも遊んであげてってなんだ。無理だよ。どうやって遊ぶんだよ。
そもそもテオドールとカミールだって困るだろ。相変わらず意味不明なことをするルイスは、小さくテオドールに向けて手を振っている。やめろ、おい。
ふたりを連れて帰れとルイスに視線で訴えるが、自分勝手な弟は察しが悪い。
「ジェフリーも入れてみんなで遊べばいいだろ」
「ジェフリーが嫌って言う」
それ本当か?
ジェフリーはそんな我儘言うような子だっただろうか。あまり話したことはないが、年齢の割には落ち着いている印象だった記憶があるのだが。
なんだか困ったように眉を寄せたルイスは、俺とテオドールたちを見比べている。
「ねー、兄様。今日はもともとジェフリーと遊ぶ予定だったんだけどテオドールたちが来て。でもせっかく遠くから来てくれたんだし、ジェフリーいるから帰ってとは言えないじゃん? どうすればいいと思う?」
「……」
この馬鹿。
ルイスの悩みもわからないことはないが、それをふたりの前で相談するか? 嘘だろ。
もはやテオドールたちに帰れと言っているに等しい発言を受けて、カミールが恐縮したように視線を床に落とした。テオドールのほうは、特に気にする素振りなど見せず平然としているが。
「す、すみません。急に訪ねた俺たちが悪いので」
「カミールは悪くないよ!」
ルイスおまえ、よくそんな発言ができたな。
どう考えても今カミールに謝罪させたのはルイスだろうが。なぜそんな他人事みたいな。
自由な弟を呆れ気味に眺めていると、テオドールが「じゃあ俺たちとは明日遊ぶということで」と勝手な結論を出した。
これにルイスが目を輝かせた。対するカミールは、聞いていないと言わんばかりの表情でテオドールを睨みつけている。
「おい待て。帰るんじゃなかったのか?」
テオドールの腕を引くカミールは、険しい表情。突然の事態にカミールも困惑しているようだ。
「いいだろ。一日ズレるくらい」
「いや。宿のあてはあるのか?」
「どうにかなるって」
小声で言い合うふたりの横で、ルイスがこちらに駆け寄って来た。その期待に満ちた瞳を見て、ルイスの言いたい事が理解できてしまった。
いいでしょ!? と言わんばかりのきらきらした表情に、もはやダメとは言えなくなる。
諦めたように息を吐けば、ルイスが「やったぁ!」と両手をあげる。おい、俺はまだ何も言ってないだろ。
「カミール、テオドール! 今日はうちに泊まっていいよ!」
「え、いいんですか!?」
すかさず応じるテオドールは、肝が据わっていると思う。
空いている部屋ならたくさんある。せっかく足を運んでくれた弟の友人をもてなすくらいなんてことはない。
使用人に部屋を用意するよう告げると、ルイスがにこにこしながら「ありがとう、兄様」と言う。
「いや。あまり暴れるなよ」
「暴れないよ。どういう心配?」
失礼だぞと憤るルイスを一瞥して、俺は小さく笑みを浮かべた。
ジェフリーなら先程ちらっと見かけた。いつもはそんな報告してこないのに、どういう風の吹きまわしなのだろうか。というかジェフリーはどうしたんだ。まさか放置してきたのか?
また何か変なことを企んでいるんじゃないだろうな。巻き込まれる前にルイスを追い返そうとしたのだが、なぜか得意気なルイスは嬉々として友達を招き入れた。やめろ。勝手に俺の部屋に人を入れるな。というかジェフリーじゃないのかよ。いやしかし、ジェフリーもいたはずだ。
え、おまえ本当にジェフリーのことどうしたんだ。
慌ててジェフリーの所在を問えば、ルイスは首を傾げながら「ティアンと一緒」と答えた。ひとりで放置しているわけではないとわかり、とりあえず胸を撫で下ろす。
ルイスが連れて来たのはテオドールとカミールであった。以前、ルイスが学園へ遊びに行った時に仲良くなったらしい。少し前には、カミールの誕生日パーティーに参加すると言ってうきうきで出かけて行った。
なぜそのふたりがここに。
困惑しつつも、とりあえず歓迎しておく。するとなぜかカミールが青い顔で後ろに下がってしまった。
「ブルース兄様! 顔怖いよ!」
「うるさい」
嬉々として指摘するルイスを睨んで、咳払いで取り繕う。一体なにが楽しいのか。やたらとニヤニヤしているルイスは「ブルース兄様、もっと笑ったほうがいいよ」とその場で小さく飛び跳ねている。なぜ跳ねる。ちょっとは落ち着け。
テオドールとカミールの紹介を簡単に済ませたルイスは、くるりとドアに向き直る。
「じゃあ俺はジェフリーと遊ぶから。ブルース兄様は、ふたりと遊んであげてね」
「……はっ!?」
言葉の意味をゆっくり理解して、目を見開く。
いやいや、なんだって!?
そのまま「ばいばい!」と勢いよく立ち去ろうとするルイスの襟首を慌てて引っ掴む。
「おいこら! 勝手なこと言うな」
「なんで? ブルース兄様忙しいの?」
いや、これは忙しいとかそういう問題じゃないだろう。そもそも遊んであげてってなんだ。無理だよ。どうやって遊ぶんだよ。
そもそもテオドールとカミールだって困るだろ。相変わらず意味不明なことをするルイスは、小さくテオドールに向けて手を振っている。やめろ、おい。
ふたりを連れて帰れとルイスに視線で訴えるが、自分勝手な弟は察しが悪い。
「ジェフリーも入れてみんなで遊べばいいだろ」
「ジェフリーが嫌って言う」
それ本当か?
ジェフリーはそんな我儘言うような子だっただろうか。あまり話したことはないが、年齢の割には落ち着いている印象だった記憶があるのだが。
なんだか困ったように眉を寄せたルイスは、俺とテオドールたちを見比べている。
「ねー、兄様。今日はもともとジェフリーと遊ぶ予定だったんだけどテオドールたちが来て。でもせっかく遠くから来てくれたんだし、ジェフリーいるから帰ってとは言えないじゃん? どうすればいいと思う?」
「……」
この馬鹿。
ルイスの悩みもわからないことはないが、それをふたりの前で相談するか? 嘘だろ。
もはやテオドールたちに帰れと言っているに等しい発言を受けて、カミールが恐縮したように視線を床に落とした。テオドールのほうは、特に気にする素振りなど見せず平然としているが。
「す、すみません。急に訪ねた俺たちが悪いので」
「カミールは悪くないよ!」
ルイスおまえ、よくそんな発言ができたな。
どう考えても今カミールに謝罪させたのはルイスだろうが。なぜそんな他人事みたいな。
自由な弟を呆れ気味に眺めていると、テオドールが「じゃあ俺たちとは明日遊ぶということで」と勝手な結論を出した。
これにルイスが目を輝かせた。対するカミールは、聞いていないと言わんばかりの表情でテオドールを睨みつけている。
「おい待て。帰るんじゃなかったのか?」
テオドールの腕を引くカミールは、険しい表情。突然の事態にカミールも困惑しているようだ。
「いいだろ。一日ズレるくらい」
「いや。宿のあてはあるのか?」
「どうにかなるって」
小声で言い合うふたりの横で、ルイスがこちらに駆け寄って来た。その期待に満ちた瞳を見て、ルイスの言いたい事が理解できてしまった。
いいでしょ!? と言わんばかりのきらきらした表情に、もはやダメとは言えなくなる。
諦めたように息を吐けば、ルイスが「やったぁ!」と両手をあげる。おい、俺はまだ何も言ってないだろ。
「カミール、テオドール! 今日はうちに泊まっていいよ!」
「え、いいんですか!?」
すかさず応じるテオドールは、肝が据わっていると思う。
空いている部屋ならたくさんある。せっかく足を運んでくれた弟の友人をもてなすくらいなんてことはない。
使用人に部屋を用意するよう告げると、ルイスがにこにこしながら「ありがとう、兄様」と言う。
「いや。あまり暴れるなよ」
「暴れないよ。どういう心配?」
失礼だぞと憤るルイスを一瞥して、俺は小さく笑みを浮かべた。
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